「任天堂が”スーパーマリオ”を訴えるも敗訴」という釣りタイトルっぽい記事(Gigazine)を読みました。コスタリカで"Super Mario"というスーパーマーケットを営業していたホセ・マリオ・アルファロ・ゴンザレス氏が商標権に関する任天堂との法的争いに勝利したという話です。Gigazineの記事を見ると法廷での争い(裁判)のように読めますが、英文の元記事を見ると、任天堂はコスタリカでは"Super Mario"を35類の小売役務を指定して商標登録していなかったため、マリオ氏の商標が登録、その後、任天堂が無効審判を請求したがコスタリカ商標局は請求棄却ということのようです(裁判(司法)と審判(行政)の区別がはっきりしないのは一般メディア記事あるあるです)。 さて、ここから先は、同じようなことが日本で起こりえるかの話です。日本でも真理夫さんという名前の方はいらっしゃいます。その人が「スーパ


今月、 AFURI 社が当社の商標「雨降(筆文字)」に対して提起した「無効審判」に係る訴訟について、最高裁判所は AFURI 社の上告および上告受理申立てを認めないとの決定を下しました。 これにより、高裁判決通り当社・吉川醸造の勝訴が確定したことをご報告申し上げます。 ▼ 高裁判決: https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/011/093011_hanrei.pdf さて、一部で報じられた通り、両社間では現在も複数の裁判および審判が進行中です。 例えば AFURI 社が当社商品ラベル等の商標権侵害を主張し、ライセンス料相当額( AFURI 社によればお酒の売上の 30 %)を損害賠償請求している訴訟については、東京地裁における審理が現在も継続しています。(事件番号:令和 5 年(ワ)第 70297 号) 私が当初想像していた以上に係争の長期


昨年の6月と7月に安倍昭恵さんが「安倍晋三」を商標登録出願(商願2023-066597および商願2023-076608)していた件について書いていますが、この2件とも9月24日付で登録査定が出ていました。この後、所定の登録料が支払われれば、登録設定となり安倍昭恵さんを権利者とする商標権が発生します。登録料を支払わないという選択は想定し難いのでほぼ確実に登録されることになるでしょう。(追記:両両件とも9月25日付けで支払われていたことが判明しました。) 審査において拒絶理由通知(一種の暫定的拒絶)が出ることなく、一発登録査定となっています。過去記事では、拒絶理由通知が出るとしたら同姓同名の他人の存在(たとえば、地元山口県であやかって子供に同名を付けた人がいないとは言えません)、または、公序良俗違反(安倍氏に縁もゆかりもない人が出願すれば確実にこの拒絶理由が通知されたでしょう)の可能性に言及し

東宝株式会社による、シン・ゴジラ(第4形態)のフィギュア(タイトル画像参照)の立体商標登録出願(商願2020-120003)が拒絶査定となり、不服審判においても登録を認めないとの審決が4月12日に出されています。 なお、この出願は、9類(コンピュータ関係)、16類(文具、印刷物関係)、25類(衣類)、28類(おもちゃ)、41類(エンタメ関係)を広く指定した商願2019-131821の分割出願です。この元出願の方は、28類の「縫いぐるみ,アクションフィギュア,その他のおもちゃ,人形」を除いて、無事登録(6312530号)になっています。 一部の指定商品に対してのみ拒絶理由が指摘された場合に、問題ない指定商品だけを残して補正することで先に登録してしまい、拒絶理由が指摘された指定商品は分割出願として別途争うというのはごく一般的な手順です。 一般に、立体商標の扱いは、その立体が商品の形状そのものと

「極度乾燥(しなさい)」等のめちゃくちゃ日本語でご存知の方はご存知の英国の服飾メーカーSuperdryが、サッカーのユニフォームにスポンサーであるアサヒビールのSuper ’Dry’のロゴを付けたことに対して差止と損害賠償を求めて商標権侵害訴訟を提起したというニュースがありました(参照記事)。なお、この訴訟の被告はクラブのマンチェスター・シティであり、アサヒビールではない点にご注意ください。 商標権は国ごとに発生し、かつ、Superdry社は、英国では衣服を指定商品にして"Superdry"を商標登録しています(なお、当然ながらアサヒビールは"Super ‘Dry’ "を商標登録していますがビールおよび飲食役務についてのみです)ので、この動きは法律的にはつじつまが合っています。 [追記:どうやら試合ユニフォームだけではなく公式グッズとして販売されるウェアへのロゴ使用が問題とされているような


イギリスの人気アパレルブランド「Superdry」がアサヒビールの「スーパードライ」のロゴが商標権の侵害にあたるとして訴えを起こしました。 イギリスのアパレルブランド「Superdry」は「極度乾燥(しなさい)」のデザインで知られ、47の国や地域で事業を展開しています。 Superdryは先月、アサヒビールのノンアルコールビールのロゴが似ているとして、イギリスの高等裁判所に訴えを起こしました。 アサヒビールのロゴはイングランド・プレミアリーグ、マンチェスター・シティの選手らが着用するトレーニングウェアなどのスポンサーに採用されていて、商標権を侵害していると主張しています。 マンチェスター・シティとアサヒビールは2022年からスポンサー契約を結んでいて、今シーズンからスーパードライがトレーニングウェアなどのスポンサーになりました。 アパレルブランドのSuperdryは「ブランドのSuperd

この度文字商標「フルトラ」(商標登録第6586026号)について、2023年8月21日付で特許庁に商標登録無効審判を請求いたしましたのでお知らせいたします。本無効審判は、当社関係先に対して、商標権者である株式会社Shiftallより、「フルトラ」という語の使用を中止し、また過去に遡ってその表示を削除するよう求める連絡があったことに対して行ったものです。 「フルトラ」とは、VR機器におけるフルボディトラッキングを示す為、当社で把握している限りにおいても2018年以前より広く使われている語で、特定の企業によって独占されるべき語ではありません。 また、「HaritoraX」のキャッチコピー「フルトラを民主化する」からもわかる通り、Shiftall社自身も「フルトラ」を広く一般に普及させることを事業の趣旨としております。したがって、Shiftall社自身にも「フルトラ」という語の独占の意図はない

今回のAFURIのケース、いろいろ論点はありますが、かいつまんでいうと、吉川醸造が、類似の可能性がある登録商標があるにもかかわらず、商品の販売を始めてしまったということに尽きます。ツイッター(X)の知財クラスタや法曹クラスタでは、AFURIは正当な権利を行使しているだけという見方が大多数ですが、それ以外のユーザーでは「吉川醸造かわいそう」「もうAFURIのラーメンは食べない」といった、AFURI側を批判する意見も見られます。 B2C系の企業が普通に知財の権利を行使しているだけなのに、権利行使した側が消費者の批判の対象になるケースはこれ以外にもありました(最近で言うと、コナミによるサイゲームスに対する特許権侵害訴訟が思い浮かびます)。以下、そうなりがちな理由と対策について考えてみたいと思います。なお、「ゆっくり茶番劇」事件のように、不正目的の(あるいは信義に反する)行為で炎上する話はまた別で


ラーメンチェーンAFURIによる商標権の争いが依然として話題になっています。既に解説記事を書いていますが、記事公開後にも様々な情報、特に、AFURIのプレスリリースでいくつか新情報が出てきていますので追加で解説します。なお、本記事では法的論点のみを論じ、このような知財関連の抗争があった場合の広報的考慮については別記事で解説することにします。 「商品全廃棄」の要求について この事件の報道があった際に、吉川醸造の雨降(AFURI)の販売差し止めに加えて在庫の廃棄が要求されたことが大きく報道されました(記事のタイトル部分にわざわざカッコ付で”要求は「商品の全廃棄」”と書かれたりしました)。記者さんには法外な要求という認識があったのかもしれませんが、一般に商標権侵害訴訟において在庫の廃棄が請求されるのは普通です。商標法に以下の規定があります。 第三十六条 商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又



ラーメンチェーン店AFURIと言えば、ランキング上位に入ることも多く、少なくとも東京圏では周知だと思います(私もたまに行きます)。そのAFURIが、吉川醸造という清酒メーカーを商標権侵害で提訴したというニュースがありました。吉川醸造は「雨降」と書いて「アフリ」と読ませる商標(タイトル画像参照)を使用して清酒を販売しています。 AFURI社は、ラーメン関連に限らず、多くの指定商品・役務でAFURIの商標登録を行っています。「清酒」については2020年4月14日に登録(6245408号)しています。 AFURI社がAFURIというブランドの清酒を販売しているという話は知らないので調べてみましたが、少なくともネット上では販売の形跡が見つかりません。一般に、3年以上使用されていない登録商標に対しては不使用取消審判を請求することで取消できます。吉川醸造側が何故不使用取消審判を請求していないのか不思議

昨年8月、ラーメンチェーン店 AFURI株式会社(以下「AFURI社」といいます)から、当社商品である日本酒「雨降(あふり)」に付された商標(以下「当社商標」といいます)がAFURI社の商標権を侵害している旨の文書を受け取りました。 文書の大意としては、”AFURI”と記載した当社商標の使用はAFURI社の著名性にフリーライドしその商標権を侵害するものであり、商品を全て廃棄処分すること等を要求するものでした。 これにつき、双方弁護士を交えた協議を重ねて参りましたが、最終的に不調に終わったことから、AFURI社は、当社商標の使用差止や損害賠償等を求めて東京地方裁判所に提訴しました。 当サイトにも記載の通り、「雨降(あふり)」銘柄は、丹沢大山の古名「あめふり(あふり)山」と、酒造の神を祀る近隣の大山阿夫利神社(以下「阿夫利神社」といいます)にちなんで命名したものであり、ラベル「雨降」の文字も阿


Apple が米国で保護対象にライブ演奏を含む商標「AppleMusic」を出願していたが、ライブ演奏に関する類似商標権者からの申立に先使用権を主張するという戦術ミスにより、すべての登録が拒絶されるという結果になったそうだ (9to5Mac の記事、 IPWatchdog の記事、 裁判所文書:PDF)。Apple の商標はビートルズが設立した英Apple Corp から取得したものであり、元々音楽レコードなどが対象に含まれる。そのため、音楽に関連する商標区分はApple の有利に働くとみられていた。しかし、ライブ演奏を対象にした「AppleMusic」商標にトランペット奏者の Charlie Bertini 氏が異議を申し立てる。Bertini 氏は 1985 年から「AppleJazz」というタイトルで演奏会を行っており、「AppleMusic」が演奏会の商標として使わ

id:esuji5 からゆゆ式界隈で実しやかに囁かれている噂として、所謂「マリカー訴訟」において「マリカー」略称の使用事例として『ゆゆ式』が使用されたのではないかという説があるという話をちょうどこういうTweetと共に聞いた。 訳あって株式会社マリカーの件について調べてたんだけどこれってさりげなくゆゆ式が任天堂の訴訟に役立ったのとゆゆ式の例の台詞を任天堂が認めた可能性があるんじゃないだろうかhttps://t.co/tEVCZWEjct pic.twitter.com/ReoFTOXHPY— イコア (@ikoa9)2022年8月14日 東京地裁平成30年9月27日判決より 少なくとも平成22年頃には,ゲームとは関係性の薄い漫画作品においても何らの注釈を付することなく使用されることがあったこと https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/07


英語で使われる「THE」は、すでに会話の中で言及されているもの、あるいは読み手・聞き手にとって既知のものを示す名詞の前につく定冠詞で、英語の中で最も使用頻度が高い単語です。そんな「THE」の商標登録を、アメリカ特許商標庁が2022年6月21日に認めました。この商標はTシャツ・野球帽・その他帽子に適用されます。 The Ohio State University Officially Trademarks the Word ‘THE’ - WSJ https://www.wsj.com/articles/the-ohio-state-university-officially-trademarks-the-word-the-11655926237 Ohio State secures the trademark for the word "THE" — Quartz https://qz.c


「第三者が”スーパーニンテンドーワールド” ”童貞を殺すセーター”を商標出願 第二の ”ゆっくり茶番劇” 騒動に?」というニュースがありました。このような「勝手出願」は商標の世界では日常茶飯事ですが、やはり、「ゆっくり茶番劇」事件があったことでニュースバリューが生まれたということなのでしょう。 「スーパーニンテンドーワールド」の方は、任天堂の登録の指定役務と重複しないように役務が指定されていますので、類似先登録(先願主義)という点ではクリアーなのですが、「ニンテンドー」は著名商標中の著名商標なので、商品・役務が類似しなくても(さらには仮に先願・先登録がなくても)勝手出願は拒絶されます。おそらく、商標法4条1項15号(他人の商品・役務と混同のおそれがある)を理由に拒絶されることになるでしょう。 問題は「童貞を殺すセーター」の方です。体の線が出たり、肌が露出する女性用セーターを指すネットミーム

第三者が「スーパーニンテンドーワールド」「童貞を殺すセーター」を商標出願 第二の「ゆっくり茶番劇」騒動に?:いずれも審査前(1/3 ページ) 第三者が動画サイト「ニコニコ動画」で人気の動画ジャンル「ゆっくり茶番劇」を文字列として商標登録し、物議を醸した問題を巡り、新たな火種が発生している。ゆっくり茶番劇同様、第三者が「スーパーニンテンドーワールド」と「童貞を殺すセーター」を文字列として特許庁に商標出願していることが5月25日、分かった。記事執筆時点(同日午後4時50分)では、いずれも出願が受理されたのみで、審査待ちの状態だが、今後の状況次第では、第二の“「ゆっくり茶番劇」騒動”に発展する可能性がある。 スーパーニンテンドーワールドは、人気テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)内に2021年3月に開業した、任天堂のゲームをテーマにしたアトラクションエリア。24年には「ドン

「ゆっくり茶番劇」の商標登録問題、ネットを中心に大きな議論となりました。 そもそも「商標」って何?私たちが注意しなきゃいけないこともあるの? 「“ゆっくり茶番劇”も“商標登録”もあまり知りませんでした…」という方にもわかるように、あれこれまとめて解説します。それでは… 「ゆっくりしていってね!!!」 (おはよう日本 河野公平 ネットワーク報道部 廣岡千宇 國仲真一郎 今井桃代)

(2023年7月24日追記)2022年2月24日に登録された「ゆっくり茶番劇」商標(登録6518338号)について そもそも商標として登録されるべきではなかったことを明らかにするために無効審判を請求しておりましたが、 7月12日付けで無効審決が下されたとの通知を特許庁より受領いたしました。 すでに本件商標登録は放棄による抹消となっておりますが、登録日から抹消日までの間は商標権が発生しておりました。 この無効審決は、過去にさかのぼり「はじめからなかったこと」にして、当該商標権を打ち消すものです。 一定期間内に審決取消訴訟が提起されなければ、「ゆっくり茶番劇」の登録を無効とすべきと判断した無効審決が確定します。 無効審決の確定をもって、「ゆっくり茶番劇」にまつわる商標権についての問題がすべて解決することになります。 審決が確定しましたら、あらためてお知らせいたします。 当該騒動が発生してから
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