
いまや誰もが当たり前に利用しているインターネット。だが、そんなインターネットの存在がもしかしたらその人の歴史や社会に、大きく関わっている可能性があるかもしれない…。この連載では、さまざまな方面で活躍する方のこれまでの歴史についてインタビューしながら「インターネット」との関わりについて紐解く。いま活躍するあの人は、いったいどんな軌跡を、インターネットとともに歩んできたのだろう?
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今回話を伺うのは、2000年生まれのアーティスト・Mega Shinnosukeさん。福岡にいた10代の頃からYouTubeにアップロードした音楽が注目を浴び、2024年にリリースした「愛とU」のSNS総再生回数は13億回を突破。菅田将暉やKing&Princeへの楽曲提供、崎山蒼志のMVを監督するなど、多方面でその才能を発揮している。
2025年11月19日には、ニューアルバム『天使様†』をリリース。2026年1月には全国ツアーが控えている。これからも躍進を続けるであろうMega Shinnosukeさんの、新作に至るまでを改めて振り返る。そこで見つけた、インターネットとの接点とは?
初めてインターネットに触れたときのことを覚えていますか?
うーん(考えるポーズ)。僕は子どもの頃は携帯を持たせてもらえなくて。小6くらいのときにインターネットに繋がるニンテンドー3DSを持っていたんですけど、父の部屋の前まで行ってWi-Fiを繋いで、エロ画像をダウンロードしていました。これが僕の最初のインターネット体験です。いや絶対書けないな…書けますか?
(笑)。Mega Shinnosukeさん的には書いてOKですか?
あ、僕は全然大丈夫です。書いちゃってください。大体みんなそうだと思うんですよね。そのとき、電波があんまり良くなくてゆーっくり上からエロ画像が読み込まれてきて、ドキドキしましたね。今じゃ、そんなことないじゃないですか。
当時とは通信速度が全然違いますよね。他にハマっていたインターネットのコンテンツはありますか?
中学生の頃はiPod touchでYouTubeをめっちゃ見てました。「HIKAKIN」に始まり「東海オンエア」「水溜りボンド」とか、とにかくそのとき活躍していたYouTuberは全部見ていましたね。
ありとあらゆるYouTuberを。ご自身はSNSで発信されていなかったんですか?
たまに流れてくるLINEのタイムラインを見ていたくらいで、SNSを始めるのは遅かったですね。高校生になってから、音楽の繋がりで他校の人達と交流するときにInstagramを始めました。あとはツイ廃に憧れていました。万バズしたいみたいな。
現在はMega Shinnosukeさんもしょっちゅうバズっている印象です。
みんな全然信じてくれてないけど
— Mega Shinnosuke : p (@MegaShinnosuke)2025年10月15日
めがしんのすけ本当に本名だよhttps://t.co/l7ppXDNsnHpic.twitter.com/2O08InrCld
最近も、活動名が本名だという投稿が10万いいねを獲得
表に出てからバズるのとはちょっと違うんですよ。何かこう、ネット上だけで活躍しているというか、ギリギリ人に言っても羨ましがられなさそうな功績を立てる人になりたかったです。まぁ当時は厨二病的な感じでしたね。

音楽は幼い頃からたくさん聴かれていたんでしょうか。
小中学生の頃はアニメやテレビの主題歌を聴いていたくらいで、音楽という音楽は聴いていなかったですね。
その後、高校生でコピーバンドに数合わせで呼ばれて音楽を始めるんですが、友達がやっている音楽が正直あんまり好きじゃなくて。自分的にはもっと他に好きな音楽があるな、と思っていました。
その頃はどんな音楽が好きだったんですか?
Suchmosが好きでしたね。インタビューや動画を見ているうちに、他にもオカモトレイジとか、モダンなカルチャーが東京にあることを知りました。
あとはラッパーの部屋を訪ねる「オタク IN THA HOOD」っていうYouTube番組のコーナーを見て、こういう風に生きている人がいるんだなぁと思っていました。「フリースタイルダンジョン」も見ていましたね。たまたまYouTubeで第1話を観て、それからハマって毎週欠かさず見ていました。
周りとは別のジャンルの音楽にアクセスしていたんですね。Mega Shinnosukeさんの楽曲は多彩なジャンルの印象ですが、音楽活動を始めてからは色んな曲を聴いていたんですか?
それこそ最初はどんどん新しいコンテンツを観たいし聴きたいと思っていて、Spotifyに出てくるおすすめを片っ端から聴いてました。逆にじっくりとひとつを聴くことができなかったんですよね。それが現代病だって最近になって気づきました。
あと、見え方で気づいたことといえば、Apple MusicとSpotifyで、かっこいいと思うジャケットが違う気がしていて。それはアーティスト写真や曲名でもそうです。Spotify上でカッコよく見えるアーティストが、Apple Music上だとめちゃくちゃ安っぽく見えることがあるんです。載るフォーマットによって全然見方が変わるんですよね。
なるほど。比べたことがなかったです。
僕の感覚ですが、Apple Musicは良い意味で公式感があって、Spotifyの方がよりインターネットっぽい感じですよね。特にエレクトロ系とかハイパーポップ系とかはSpotifyが格好良く見えると思っていて、逆にロックバンドのデザインはあんまりハマっていないような気がするんです。音の聴こえ方も若干違います。だから色んなアプリで音楽を聴くようにしていますね。

高校生のときに作ったという楽曲「O.W.A」は、当時YouTubeにアップされ注目を浴びました。そのときのことを伺ってもいいですか?
音楽をやっている人が自分でMVをYouTubeにアップロードする流れが結構あって、自分もやってみたいなと思ってやりました。当時、モノマネでは無い曲を作りたいという気持ちが強くて、それを意識していたのが評価されたのか、アップした次の日にスカウトがめちゃくちゃ来ました。
それは予想通りでしたか?
予想も何もしてなかったですね。その時はただただ自分のチャンネルに曲をアップロードできたことが嬉しかったです。
いまそのMVは見れませんが、代わりにアップされたMVも格好良いですよね。出演者にはDMでオファーしたとか。躊躇いはなかったんですか?
全くなかったですね。アホだったんです。当時働いたことがなかったので、人の時間を奪ってお願いするということも全然分かってなくて。いまは一緒に制作してくれる方が沢山いらっしゃるのでしなくなりましたけど、最初はそんな風に連絡していましたね。
その後、2019年の上京後すぐはコロナ禍でしたよね。音楽の向き合い方に変化はありましたか?
本格的に活動する前にコロナ禍になっちゃったんで、奪われた感覚や焦りも特になかったんです。コロナ禍は、お酒ばっかり飲んでました。あ、でも、音楽の広まり方が変わったなと思いました。純粋にインターネットを見ている人が増えて、ネット上の音楽が売れるようになったなという感覚がありましたね。
詳しく聞いてもいいですか?
器用な人が作った「売れそう」な曲が増えていて、衝動的にできた意味の分からない音楽が流行らなくなっちゃったなと。好きなシーンの音楽に混ざりたいという気持ちの強い人が多くて、オンリーワンが無くなったし、皆もオンリーワンになろうとしていない感じがしました。
それは商業としては意味があるのかもしれないですけど、創作活動、芸術としては意味がないのかなと感じていて。僕自身は人と一緒のことをしたくないという気持ちが強かったですね。

その後、楽曲「アイシテル人生 feat.初音ミク」で初音ミクとコラボするなど、2000年代のインターネットを感じられる作品が多い時期があったと思うのですが、その影響はどこからですか?
シティポップ以降のムーブメントで、海外のバンドを意識した日本のバンドが多く出てきて「海外でもウケそう」と言われていたのですが、なんでわざわざ日本で海外っぽいバンドに寄せるのか意味がわかんないなと、自分にとっては違和感がありました。
その頃に海外に行く機会があって、改めて日本のカルチャーって珍しいし面白いなと思ったんです。それから自分は日本が産んできたカルチャーを作品に取り入れたいという気持ちになりました。
初音ミクとコラボしたのは、純粋にもともと自分自身がボカロを聴いてきたし、同級生もボカロといえば皆分かります。それくらい普及しているカルチャーって凄いなと思ったからです。
他にもMega Shinnosukeさんの楽曲で特徴的なこととして、曲のタイトルに絵文字が屈託なく使用されていますよね。
そうですね。ちなみにアルバム『ロックはか゛わ゛い゛い゛』の1曲目「・*・:≡( ε:) 」の読みは、平仮名で「ひかきん」なんですよ。楽曲をアップロードするときに登録名をつけなくちゃいけなくて。
一応商標等は調べましたが大丈夫でした。子どもとかが「ひかきん」って検索したときに、メガネの男のアルバムが出てきたら面白いかなと思って。
最近、SNSによる反応の違いを書かれているポストが印象的でした。SNSの反応は、どう感じられているのでしょうか。
ごはん食べヨの動画投稿
— Mega Shinnosuke : p (@MegaShinnosuke)2025年11月13日
tiktokではまだやってんの?と言われ
youtubeではもっとやれと言われ
instaでは芸術として評価されている
投稿している内容は一緒なんですが、メディアによって受け手の反応が全然違うと思いますね。とくにTikTokだけ明らかに違うような気がします。一番頭を使わなくても見られるメディアだから流れて行きやすいし、発信する側は自分を見てほしいという人が多い感じ。でも見ちゃいますよね。
それよりも今自分が好きなのはInstagramのリールです。海外の何にも繋がってなさそうな関係ない動画を見るのが好きです(笑)。ずっとリール動画を見続けてしまうので、もう脳が溶けちゃってると思いますよ。この先目指すものといえば、早くおじさんになりたいですね。
おじさん!それは何故ですか?
解放されたいんです。今ってインターネットを開けば「これがいいでしょ」と言われている感じがありますよね。「こういう暮らしが良いんだ」と言って大衆の数字が取れる方に流されているというか。そんな流れから逸脱して「こっちの方がいいでしょ」と胸張って言えるような創作活動をしたいです。何も気にしないでいたい。
でも…まだちょっと今の自分には早いかなと思いますね。もうスマートフォンを手放してもいいかなってくらいに思えるようになれたらいいんですけど、まだまだ色んなものを見たいし、発信もしていきたいです。

最新のアルバム『天使様†』はこれまでのエレクトロな音楽とは変わって、素に近いような、誰もが歌いやすいような楽曲が多いように感じました。経緯を伺っても良いですか?
アルバムを作っているとき、カラオケスナックにめっちゃ行っていたんですよ。他の卓にいたおじさんの知らない曲を聴いていて、歌詞を見ていいなと思ったり、歌っている姿の雰囲気を見たりしたことが影響していると思います。
アルバムには「さよなら天使様」「ナードと天使」という楽曲もあり、天使というワードが多用されていますよね。タイトル『天使様†』はハンドルネームっぽさもあります。
たしかに。自分のなかで「天使」がマイブームなんですよね。アルバムタイトルに「†」をつけたのは、漢字3文字で「天使様」だと印象が強すぎるかなと思ったからです。なんか、「天津飯」みたいだなと思って。
収録曲「ごはん食べヨ」はTVアニメ「野原ひろし 昼メシの流儀」のオープニング主題歌としても話題となりました。どのように作られましたか?
あまり普段と変わらないようにはしていましたね。主題歌だけど気合いを入れすぎないようにしたのが、かえって良かったかもしれないです。リラックスして作れたので、その軽やかさが結構出ている曲になったと思います。
たくさんの方とご飯を食べるMVも話題です。Mega Shinnosukeさんは、楽曲制作だけでなくMVやジャケット写真などもプロデュースされていますよね。
本当はもっと楽したいんですよ。でも、自分の頭のなかをそっくりそのまま伝えることが無理で、自分でやるしかないなという感じです。
アルバムの1曲目「ohayo」もそうですが、Mega Shinnosukeさんのアルバムには、ハッとさせるようなギミックが隠されています。聴いていて、1回間違えたのかなって思ってしまいました。
ははっ。そうですよね。僕はぼーっと聴ける音楽が好きなんですけど、それだけだとあっという間に終わってしまうので、ちょっと「今なんて言った?」といった仕掛けを作っています。そうすれば、ぼーっと聴いている頭が一度リセットされていいのかなと思って。

楽曲制作時に聴いていたプレイリストはありますか?
プレイリストは作らないんですが、斉藤和義さんや坂本慎太郎さん、ボブ・ディランをよく聴いていましたね。あとは、韓国のバンド・ヒョゴとか、ずっと好きなんですけどレディオヘッドとブラーも聴いていました。色々聴いていますね。エレクトロっぽいポップとかハイパーポップ、ヒップホップ系はあんまり聴かなくなっちゃいました。
そのムードはご自身の曲作りにも反映されていますか?
どちらかというと、作ってから聴く曲が変わる方が多いですね。いまはフォークやロックが中心です。結構いまのムードは僕のなかでしっくりきていて、一度この方向を続けたいなと感じていますね。
アルバムが出来たばかりですが、次回作も楽しみです。
そうですね。でも今はもう何にもしたくないです(笑)。
とはいえ1月からはツアーも控えられています。これまでインターネット等を通じて聴く音楽について伺ってきましたが、ライブでの醍醐味はどんなところですか?
今回のアルバムは口ずさみたくなるようなメロディーが多いので、皆で歌おうって言いたいですね。あとはライブなので、空気感に合わせてテンポを想像してなかったような早さにしたり、遅くしたりするかもしれません。まだ何が起こるかわからないですけど、何かが起こるだろうな…という可能性が曲にあるから、楽しみですね。
<リリース情報>
New Album:「天使様†」
配信リリース日:2025年11月19日(水)
https://mega-shinnosuke.lnk.to/tenshisama
<2026年ワンマンツアー情報>
Mega Shinnosuke ONEMAN TOUR 2026「天使様†」
1/10(土):福岡BEAT STATION
1/11(日):広島 Live Space Reed
1/17(土):大阪BIG CAT
1/18(日):名古屋CLUB QUATTRO
1/24(土):札幌 cube garden
1/31(土):仙台 MACANA
2/08(日):東京Zepp Diver City(TOKYO)
前売りチケット:5,000円+D代
※18歳以下の方は、会場にて¥1,200キャッシュバック
【一般発売】*12月12日(金)18:00解禁*12月13日(土)10:00より受付開始==========================
〈イープラス〉https://eplus.jp/megashinnosuke/
〈ローソン〉http://l-tike.com/megashinnosuke/
〈ぴあ〉https://w.pia.jp/t/megashinnosuke26/
==========================
total info. ライブマスターズ https://livemasters.jp/

<今回のインターネットポイント>
2000年代までは、音楽の公開や視聴の中心は主にCDやテレビ、ライブといった限られた場に依存していましたが、2000年代以降、インターネットの普及は音楽の届け方を大きく変化させました。2005年にYouTubeをはじめとする動画共有サイトが広がると、個人が自宅で制作した音源や映像を公開し、多くの人に届けられる環境が整いました。
2010年代中盤には、スマートフォンの普及とともに定額制ストリーミングサービスが急速に広がり、SpotifyやApple Musicが音楽視聴手段の主流となりました。これにより、リスナーはアルバム単位ではなくプレイリストや個別楽曲を中心に楽しむスタイルが定着し、音楽は従来のように“能動的に探す”だけでなく、SNSやレコメンド機能を通じて“受動的に届く”性質を持つようになりました。またSNSや短尺動画アプリも音楽の拡散に大きく寄与し、投稿が直接的に再生数や話題性につながる仕組みが一般化しました。

Mega Shinnosuke(メガ・シンノスケ)
2000年生まれの25歳。活動名「メガシンノスケ」は本名。東京生まれ福岡育ち。作曲、作詞、編曲、アートワーク、映像制作プロデュースを手がける。2017年秋よりオリジナル楽曲の制作をスタート。毎年コンスタントに自身のリリースを重ね、SUMMER SONIC、FUJI ROCK FESTIVAL、COUNTDOWN JAPANなど多くのフェスやイベントに出演。
2024年6月にリリースした「愛とU」は、Billboard JAPAN TikTok Weekly Top 20で6週連続1位を記録しSNS総再生回数13億回突破している。9月には「愛とU」も収録されたアルバム『君にモテたいっ!!』をリリース。今年10月より放送中のTVアニメ「野原ひろし 昼メシの流儀」のオープニング主題歌を担当しており、楽曲『ごはん食べヨ』がSNS中心に話題を呼んでいる。
取材・文:conomi matsuura
編集:篠ゆりえ
写真:服部芽生
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