Windows Info第430回
2024年05月05日 10時00分更新
文● 塩田紳二 編集● ASCII
Windowsの標準アプリとして長らく含まれていた「WordPad」が廃止になる。今秋のWindows 11 Ver.24H2から同梱されなくなるようだ。これにより、Windows単体では、RTF形式のファイルを編集できなくなる。
といっても多くの人は、RTFファイルなんか使ってないだろう。まあ、Microsoftの考えも理解できないわけではない。ユーザーが少ないプログラムのメンテナンスをいつまでも続けたくないのだ。
すでに時計やカレンダーのプログラムがなくなり、電卓はオープンソースになった。Windowsに付属する「アプリケーション」と呼べるプログラムは段々と減っている。もっともWindows 1.0xの頃は、サードパーティアプリケーションがまったくなかったため、必要なものであった。
WordPadの廃止に関しては、「Windows クライアントの非推奨機能のリソース」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/whats-new/deprecated-features-resources#wordpad)に記述がある。ちなみに日本語訳は間違っており、「その結果、Windowsには既定のRTFリーダーが組み込まれています」と翻訳されている部分は、原文(https://learn.microsoft.com/en-us/windows/whats-new/deprecated-features-resources#wordpad)では「As a result, Windows will no longer have a built-in, default RTF reader.(その結果、WindowsにはデフォルトのRTFリーダーが組み込まれなくなります)」となっている。RTFリーダーとは、RTFを解釈するプログラムのことだ(RTFの文書で定義されている用語)。
MicrosoftのWebサイトの翻訳は、否定と肯定を逆にすることがある。この程度ならまだ“カワイイ”話で、Win32APIや.NETのドキュメントだと、「すべきでない」が「すべきである」とされると、かなり厳しいことにある。日本語ドキュメントのとおりにプログラムを書いたら全然動かない、さんざん悩んだ挙げ句に、ふと英語見ると逆のことが書かかれている、なんてことがあるのだ。
WordPadは、1985年登場のWindows 1.01からWindows 3.1まで搭載されたMicrosoft Write(write.exe、以下Write)の後継として、Windows 95/NT 4.0に含まれるようになった。現在でも、WordPadはwrite.exeという名前で起動できるようになっている。WordPadはWriteの後継であったため、RTF(というよりはWRI形式)を読み書きできる必要があった。
WordPadは、その名のとおりに無料のWord扱いでWordのDOCファイルを読み書きしていたが、Windows 2000からは、RTF形式が主流となった。Office 2007でWordのドキュメント形式がDOCXに変更され、WordPadもDOCXに対応している。
RTF(Rich Text Format)は、Writeの文書ファイル形式であるWRIをベースに作られ、MS-DOS版のWord 3.0(1987年)でRTFの仕様が確定し、文書が公開された。RTFはワープロアプリ間のデータ交換形式として登場した。
ASCIIテキストのみで記述できるRTFは、そのままテキストファイルとして通信で扱うことができた。RTFは、Windows以外のプラットフォームへの転送を想定していたが、相手側のシリアル通信機能をユーザーが常に制御できるとは限らない。
当時の通信手段であるRS-232(シリアル)は、もともと端末装置などを接続するための仕様であり、制御コードを利用することがある。WindowsでもXON/XOFF(Ctrl+S、Ctrl+Q)などの制御コードでフロー制御ができた。たとえば、BBS(パソコン通信)などを介してファイルをやりとりするような場合、バイナリファイルよりテキストファイルのほうが扱いやすかった。
Windowsでも、プログラム間で書式付きテキストを交換するため、クリップボードでRTFがサポートされている。たとえば、Windows Terminalは、クリップボードのコピーで、プレーンテキスト以外にRTFとHTML形式をサポートしている。
そういうわけで、WordPadはWindowsに付属する唯一のRTFエディタだったのだが、これが廃止されることで、Wordなどの別途プログラムを導入しないかぎりRTFを編集することはできなくなった。ちなみに無料で利用できるWord for the Web(Web版Word)には、RTFファイルを編集する機能はない。
Windows 11 Ver.24H2から同梱されなくなるのは、以下の3つのファイルである。
・wordpad.exe(本体)
・wordpadfilter.dll
・write.exe
2つ目のwordpadfilter.dllは、wordpad本体から、ファイル形式変換フィルタープログラムを分離するためのものと考えられる。wordpadは、RTF以外にDOCX(OfficeオープンXMLドキュメント形式)などに対応している。DLLファイルとして分離することで、ファイル形式の改良などに対応するとき、本体(wordpad.exe)はそのままに、DLLのみ更新することで開発工程やアップデートを簡略化できる。
3つ目のwrite.exeは、wordpad.exeを起動するだけのプログラムだ。古いプログラムがwrite.exeを直接起動していた場合に互換性を保つために用意されている。
wordpad.exeとwordpadfilter.dllは、「C:\Program Files\Windows NT\Accessories」にある。write.exeは「C:\Windows\System32」と「C:\Windows」の両方に入っている。
RTFは、ワープロ文書のような書式やレイアウト、フォントなどの指定が可能なファイル形式だ。逆スラッシュを先頭に、アルファベットのコントロールワードが続き、その後に数字によるパラメーターを置くことができる(なくてもかまわない)。
また、波括弧「{」「}」を使ってコントロールワードの効果が及ぶ範囲を指定することができる。それ以外は、ASCIIによるテキストになる。コントロールワードやパラメーターの後ろにテキストが来る場合で、それがアルファベットの場合に限り、スペースなどでコントロールワードと区切る必要がある。
以下の画像は、WordPadの画面とメモ帳でRTFを表示させたもの。RTFはこんな感じで書式付きのテキストを表現する。RTFの4行目に「\b RTF\b0」という記述があるが、これがWordPadでの「RTF」を太字で表示する部分の記述だ。
WordPadで「RTF」に太字を設定してRTFファイルを作成、それをメモ帳で表示した。RTFは、テキストでレイアウトや書式を記述する。メモ帳の4行目がテキストの部分、それ以前は、ページや文書内で利用するフォントの設定などである
さらに日本語を追加したものが、以下の画面になる。原則ASCIIコードを使うRTFでは、漢字などは文字コードで表現する。
Windows 11のエクスプローラーにあるプレビューペインでは、RTFの表示が可能だ。Windows 11には、プレビューペインにRTFの表示を行う「プレビューハンドラ」が用意されている。システム標準のプレビューハンドラは、レジストリの
Hkey_Local_machine\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\PreviewHandlers
に記述されている。ここに「Windows RTF Previewer」という名前を持つGUIDがある。レジストリを追っていくと、RTFのプレビューハンドラはC:\Windows\System32\Shell32.dllの中にある。このため、WordPadがなくなっても、エクスプローラーでの表示は可能と思われる。実際、すでにWordPadが含まれていないDevチャンネルプレビュー版(ビルド26100)では、エクスプローラーのプレビューペインでRTFファイルの表示はできた。
また、RTFは、WPFのコントロールである「RichTextBox」でも利用可能で、こちらについては、RTFが使えなくなるという話は出ていない。少なくともRichTextBoxでRTFの表示が可能なら、プログラムを書いてRTFを表示/編集することは可能だ。
そういうわけで、WordPadの廃止は、今のところWindowsの標準添付アプリの1つが消えるということで、RTFの扱いに関しては当面変化はなさそうだ。
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