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この町内の片隅から

よく分からない

275円のしあわせ

20分ほど経過したところで、


「わるいけど、引き取りできるものはないですね」


「え?1枚も?」


狼狽えて問うわたしに、彼はあっさり


「はい、ありませんね」


【ノーブランド、シミ有、他社で断られたお品も買い取りいたします】


そんな謳い文句に釣られ、着なくなった洋服の査定、引き取りをお願い
したのは、暮れも押し迫ったある日のことでした。


厳選して買ったつもりでも、どうも着心地がわるかったり、
前の年は気に入って着倒したものでも、次の季節になると妙に
しっくりこなかったり…などなどで整理してみたら
ここ数年着ていない服がどっさり出てきました。
秋冬物ですから嵩張ります。
自宅まで来てくれるなんてありがたい、ノーブランドオッケーありがたい、
査定をお願いしたわけです。


がっかりしました。
がっかりを引き摺ったまま新しい年を迎えました。



年が明けて、2日の夜


「明日、会いにいく」


突然、昔の友だちから連絡がありました。
やり取りの中で、がっかりした洋服買い取りの件に話が及びました。


「リサイクルショップまで一緒に行ったるわ。
買い取ってくれるんじゃない?」


次の日、嵩張る古着を詰めたゴミ袋3袋を車に乗せ、
2人でリサイクルショップに向かったのです。


同じように持ち込みをする方も多く、査定に1時間半ほどかかりました。


台所用品から家具、靴、洋服、傘、果ては楽器類まで並ぶ店内を
うろうろしているうちに、1枚のニットベストに目を奪われました。


(いやいや!しばらくは何も買わないと決めたのだ)
自分に言い聞かせるのですが、一度心を奪われてしまったらどうにもなりません。


コートを選んでいる友人に


「これ、どう思う?」


苦しい胸の内を明かしました。


夢中でコートを見ながら、


「いいんでない?」(どうでもいいんでない?だったかも知れません)


「今日は買いに来たんじゃなくて、売りに来たのだ」


「こういうとこは、売って買って売って買ってするとこだから、いいんだわ。
気に入ったら買えばいい」


なるほど!きっぱり力強い言葉に背中を押され、
500円と値札が付いているニットベストを手にレジに向かいました。


今年はじめての買い物です。
レジで「275円です」と告げられた時、
耳を疑いましたが、運のいいことに半額キャンペーン中でありました。



クローゼットの中は、サッパリしましたが、
1年の終わりには、洋服に限らず、
また余計なモノがじわじわと溜まるかもしれません。



背中にくっつく様々な感情の袋が溜まって重くなると、
近所の川を泳ぐ鯉を見に行きます。
彼らは何も持たず、欲もなく(知らんけど)
争うことも偉ぶることもなく(知らんけど)
過去や未来を思い煩うこともなく(知らんけど)
過去に引き摺られることもなく(知らんけど)
淡々と生きる。ただ、今!この瞬間を粛々と生きる。
橋の上から彼らを眺めながら、自分を面倒に思います。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
持ち込みした洋服は、大した額ではありませんでしたが、
ほとんど買い取ってもらえました。

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