その朝も冷え込んでいました。
湯を沸かしながら、ふと台所の床に目をやりましたら、
3〜4センチほどの黒いものがうずくまっています。
それは黒くて楕円形で微動だにしません。
(なんだろう?虫?)
黒くて楕円形…
ハッと思い当たり、あらゆる虫が怖いわたしは
一瞬で震え上がりました。
きっとアレに違いない
ゴキ団子をいくつも設置してあるのに何ということだ!
それ以上近寄ることもできず、
震えながら布団に逃げ込みました。
(こんなところに逃げても解決にならん)
分かっていても動けません。
夜までの長い時間、どうしたらいいのでしょう。
しばらく経ってから、恐る恐る様子を見に行きましたが、
黒いものは先ほどと同じ場所に、まだうずくまっているではありませんか。
死んだのか?
それとも最初から死んでいたのか?
だからヤツ特有のツヤがないのか?
触るなんてとんでもないことですが、
近寄ることすらできません。
思い余って、2軒隣の方に助けを求めました。
懐中電灯片手に、息を詰めて黒い物体を覗き込む2人
ほ〜っと一息ついた隣人が一言
「…これ、レーズンの塊だよ」
そういえば、昨夜この場所で鉄分補給をしようと急に思い立って、
レーズンをいくつか口にしたことを思いだしました。
よかった
ゴキじゃなくて本当によかったです。
そんな些細な『いいこと』があるから、
こんな世の中でも、まぁまぁ生きていられるのだと思います。
…いいこと?
それ、いいことなのか?

(今日は床に落とさないよう気をつけて食べました)