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ジュリー・ビンデル「イギリスの『グルーミング・ギャング』スキャンダルにおける人種、階級、ミソジニー」

【解説】以下に訳したのは、イギリスのラディカル・フェミニストのジャーナリスト、ジュリー・ビンデルさんの、イギリスのグルーミング・ギャング・スキャンダルに関する最新記事です。

ジュリー・ビンデル

『アルジャジーラ』2025年4月5日

 「私の娘が集団レイプされ、無数の男たちに売られているんです」と、悲嘆に暮れる母親のこの言葉が、私が、イングランド北部で若い少女たちを標的とする組織的なレイプ・人身売買組織(現在は「グルーミング・ギャング」として広く知られている)の存在に初めて気付いたきっかけだった。

 1990年代後半のことだ。私が児童性虐待反対の運動家であることを知っていたこれらの被害少女の母親たちが、私に助けを求めてきた。彼女たちは絶望的な状況にあった。

 彼女たちが相談したのは、私が初めてではなかった。警察や児童保護機関などの当局にも助けを求めたが、助けは得られず、親としての監督責任を問われたり、娘について非難されるだけだった。ある警察官は、被害少女を「問題ばかり起こすあばずれ」と表現した。彼女を虐待したギャングは、その後、恐るべき児童レイプの罪で有罪判決を受けた。

 私は、彼女たちの目に浮かぶ苦痛を身近に見ながら、彼女たちの意志の強さに驚嘆した。13歳の娘が、大麻とアルコールで酩酊状態になり、下半身を血だらけにして泣きながら帰宅したという話を一人から聞いたとき、私は高まる感情をおさえられなかった。彼女は、集団でアナルレイプされたのだ。

 ソーシャルワーカーたちは、被害者家族に対して、あなたたちの娘は「このライフスタイルを自分で選んだ」のだから、自分たちには何もできないと伝えてきた。子供たちを守るべき立場にある大人たちにとって、子供たちの被るレイプや売買春は「ライフスタイルの選択」だったのだ。

 私は恐怖と怒りに震えた。「私たちは知らなかったんです」と母親たちは繰り返し言った。「私たちに何の問題があったというのでしょう!」

 彼女たちは、さまざまなバックグランドを持っていたが、主に労働者階級だった。幸せな安定した家庭を営む者もいれば、娘が自治体の養護施設に預けられるなど、混沌とした家庭環境の者もいた。被害少女たちの中には、近隣の少年たちや家族内の男たちから性的虐待を受けていた者もいた。学校でいじめを受けていた者もいた。自閉症の少女もいた。しかし、全員に共通していたことが一つだけあった。警察も児童保護の専門家も、彼女たちに助けの手を差し伸べなかったことだ。

 最も脆弱な立場にあったのは、児童養護施設に入所していた少女たちだった。これらの施設の職員は、高級車に乗って外で待っている男たちを傍観していた。少女たちが何日も行方不明になっても、警察はほとんど捜索しなかった。

 ギャングから逃れることのできた少女たちや、被害者の母親たちと話してみると、これはけっして未知の現象ではないことがわかった。医療従事者、近隣住民、教師たちは、何が起こっていたのかを知っていた。犯罪者が大金を手にするための主要な商品として、ヘロインに代わって少女たちが利用されるようになったことは、秘密ではなかったのだ。

 私は以前、神父による大規模な性的虐待やオンライン児童虐待ネットワークについて調査したことがある。今回、私はこれらの母親たちが語ってくれたことを調査することにした。ある夜、私はイングランド北部のブラックプールにある児童養護施設の外で、職員に「入所中の少女たちをどのように守っているのか」と尋ねようと思っていたところ、角を曲がったところに新車のようにピカピカの車が停まるのを見た。運転手は40代くらいの男だった。後部座席には 2人の若い男が座っていた。そのうちの 1 人が車から降りて、養護施設のドアまで行き、ドアベルを鳴らした。ドアを開けた職員と、彼は何か言葉を交わした。5 分後、14 歳にも見えない少女が飛び出してきて、車の後部座席に飛び乗った。車は走り去った。

 タクシーの運転手は、ギャングのメンバー(主に 20 代から 30 代の男性)に少女を 1 人届けるごとに報酬を受け取っていたが、その報酬には、被害者を無料でレイプできる権利が含まれている場合が多かった。

 これらのギャングの中には、若い使い走りが被害者に最初に接触し、家主が少女たちをレイプするためにアパートを貸し出すなど、非常に組織的なものもあった。それほど組織的でなく、出たとこ勝負の犯罪者もいた。だが、いずれも、女性と少女に対する性的虐待に依然としてつきまとっている「不処罰の文化」から恩恵を受けていた。つまり起訴率や有罪判決率が異常に低く、レイプが事実上野放しにされていることから恩恵を受けていた。

 ほとんどのメディアは、このような複雑な事件を、人種の問題として、あるいは階級の問題として、あるいは性別の問題として別々に報じるが、3つすべてを同時に取り上げることはけっしてない。しかし、事実としては、これらの子供たちは、女の子であるがゆえに虐待を受けたのであり、貧しいがゆえに、当局による保護をいっさい受けられなかったのであり、その人種を理由にグルーミングの標的にされたのだ。そして、レイシズムだと非難されるのを恐れた当局によって無視されたのだが、その一方で、当局は、褐色の肌の男と「寝る」ような白人少女について、人種差別的な先入観を抱いていたのである。これは人種、階級、性別に関する物語だ。そして、その 3つすべてにミソジニーが深く貫かれている。

 これらの少女たちは、事件のことで非難されるか、事件のことをそもそも信じてもらえなかった。それどころか、彼女たちは、飲酒したことで公序良俗違反で起訴されることもあった。だが、彼女たちにお酒を提供した、つまり彼女たちをレイプした男たちはほとんど起訴されなかった。

 これらの少女たちは、「グルーミング」という言葉が示すような、単に「だまされた」だけではない。たしかに、若い一人の女衒を自分のボーイフレンドだと信じ込まされたのだが、単にだまされて終わりではなく、レイプされ、売春させられ、虐待され、場合によっては拷問さえ受けたのだ。

 私が初めてあの母親たちと話してからほぼ30年が経った現在でも、状況は何も変わっていない。組織的な性搾取に対する驚くべき無関心は依然として続いており、加害者の人種・国籍を問わず、有罪判決はほとんど下されていない。警察は依然として十分な対策を講じていない。そして人々は依然として被害者を責めることを選んでいるのだ。

出典:https://www.aljazeera.com/opinions/2025/4/5/the-uks-grooming-gang-scandal-is-about-race-class-and-misogyny

投稿者: appjp

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