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2026-02-08

左派の「絶望」が鬱陶しいと思う人に読んで欲しい

https://numagasablog.com/entry/2026/02/08/221502

ここで示されている民主主義指数だが、日本が低いのは「政治参加である

自民党なんて欠片も関係ない

いや、ジェンダー比率なども影響しているため、高市氏が総理になったことで改善されている

この民主主義指数を上げたいなら自民だのサイコパスだの関係なく

皆が投票に行くなど、政治への関心を増やす必要がある

しかし、これを都合よく持ち出す人間は、そんなこと触れやしない

自民所為日本民主主義が終了してしまう、という使い方をする

徴兵といい、民主主義指数といい、もうウンザリなんだよ

【だから】勝てないんだよ

Permalink |記事への反応(1) | 23:40

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[アニメ感想]2026冬アニメ

アニメ多くて1回じゃ書ききれないので複数に分けて書いてます

星は個人的な好みを表したもの作品への評価ではないです。アニメ会社とか声優はよく分からんので。あとテレビ放送中心で書いてます

好みの星はたぶん見ていくうちに変わるし変えてる。自分と違ったとしたら「こいつとは趣味があわんな」くらいのレベルで見てください。

今期はWOWOWにて「カヤちゃんはコワくない」「魔術師クノンは見えている」「死亡遊戯で飯を食う。」が無料放送されている。

中でも「カヤちゃんはコワくない」は地上波テレ東系だがBSテレ東でやっていないので助かる。

勇者刑に処す懲罰勇者9004隊刑務記録 ⭐️⭐️⭐️

ダークファンタジー勇者=罪人。女神=生体兵器世界

この世界では「勇者」という罪があり、殺されても蘇生され魔王と戦い続けるという重い罪。

女神嫌いの元聖騎士団長ザイロは戦いの中で女神出会い不本意ながらも魔王を倒すため契約することになる。

このザイロも今では勇者勇者になった際の罪状は―――

混沌とした世界で輝かない勇者活躍し、気持ち悪い魔獣によってモブキャラが殺されまくるところはクレバテスを思いだす。

初回1時間枠。しかほとんどCMしなので58分間あった。陛下いいキャラだわー。

呪術廻戦 第3期死滅回游 前編 ⭐️⭐️☆

頭が悪いんで理解するため呪術廻戦 第2期を見直した。すげー時間かかった。

話が難しいな。理解はできるんだけど。分かりやすプレゼン資料ものも見せてくれるんだけど難しいと思う。

OPKing Gnu映像は別作品アニメ絵画オマージュがあると少し話題になった。

映像がすごい。すごい。すごいんだけど演出でおなか一杯になる。いやすごいんだけどね。私の中ではアニメ作品というよりアート作品

多聞くん今どっち!? ⭐️☆☆

JKハウスキーパーバイトで行った先が推しアイドルの家だった。

そんなことある若い男性の家に?女子高生を行かせる?というのは置いておいて、王道少女漫画ストーリーは嫌いじゃないぜ。

推しアイドル福原多聞くん、アイドルの顔ではセクシーワイルド担当イケメン。「イケ原さん」

でも家の中では自己肯定感の低い、キノコが生えるくらいジメジメと輝きのない男の子だった「ジメ原さん」(シャンピニオンかな?)

イケ原さんモード、ジメ原さんモード、どちらも全肯定して応援するのであった。ちょっと母性も感じるが。

最初の方は結構好きだったんだけど、多聞くんに恐怖を感じるようになってきた・・。

OPで二人が踊るとこ、スキップローファーみたいで好き。

Si-Vis The Sound ofHeroes ⭐️☆☆

音楽世界を救うアーティストヒーロー、キョウヤと凪のボーイ・ミーツ・ガールでもあるように思える。

過去が、背景がだんだん分かって来て面白くなってきた。

この2クール目はキョウヤ挫折から。そんな彼を心配するソウジ。これソウジの株が爆上がりだろ。

ヨースケは色んな人を泣かせて罪な男よのう。

青のオーケストラシーズン2 ⭐️☆☆

世界ジュニアオーケストラコンクール編となるのかな。

今までOPを見てて青野君の髪型違和感を持っていた人もいるかもしれないが、ここで髪型が変わる。

花ざかりの君たちへ ☆☆☆

花とゆめ漫画原作ドラマ版「花ざかりの君たちへイケメンパラダイス~」が有名かもしれない。

2回もドラマ版が作られた。ドラマ化は日本より台湾が先。韓国でもドラマ化された人気作品

私は日本ドラマ1作目世代堀北真希小栗旬など)なので、

この作品といえば大塚愛PEACH」とオレンジレンジイケナイ太陽なのだけど、今作のアニメ版はOPEDもYOASOBIです。

原作者が亡くなったのは2023年10月と約2年前。1話最後に作者の冥福を祈るメッセージが出る。

拷問バイトくんの日常 ☆☆☆

拷問殺人合法世界。マジかよ。いかにも4コマ漫画原作というペース。

拷問シーンの直接的な描写はない。日常アニメとして見る感じ。拷問である必要あるのか

MFゴースト3ndSeason ⭐️☆☆

1期はそうでもなかったけど、2期のレースから好きになってきた本作。藤原拓海のその後も語られる。

実際の公道でのモータースポーツを見ている感じで熱中して見ててあっという間に時間が過ぎる。

EDm-floTaku OP・・・ボンレスハムwwwww

火喰鳥羽州ぼろ鳶組 ⭐️☆☆

小説ラジオドラマにもなっている。時は江戸時代中期。火消の話。

かつて「火喰鳥」と称された火消し・松永源吾と、彼のもとに集まったクセ者ぞろいの「ぼろ鳶組」が、次々と起こる付け火の謎を追う。

人物は主に3DCGで描かれる。この辺が苦手な人がいるかもね。

OPポルノグラフィティED大泉洋作曲玉置浩二ED最後風景では仲間がだんだん増えていく。

転生したらドラゴンの卵だった~最強以外目指さねぇ~  ☆☆☆

こんなタイトルだけど1話ふ化します。ドラゴンデザインデジモン寄りに見える。

そんなに好きじゃない。「最強以外目指さねぇ」ってこの言い回しも好きじゃない。

違国日記 ⭐️⭐️⭐️

2024年実写映画化されている。

突然の交通事故で両親が亡くなり、小説家で人見知りな叔母に引き取られる。

少しぎこちない姪と叔母の共同生活めっちゃ雰囲気好き。とても繊細に言葉を選ぶ。タイミングを伺う。

見ていて時にホッとして、時に息苦しくなって、気が気じゃなくて、見終わったら「はぁ・・」とため息がでる。

声の演技もすばらしく、感情移入できる好きな作品

魔術師クノンは見えている ⭐️⭐️⭐️

今期一番笑わせてもらってるアニメかも。

まれつき目の見えない少年クノンだが、水魔法を使って視覚を作る。得意魔法は水魔法「ア・オリ」

主人公が変な子で、会話の中で煽ってんのかってくらいボケる。こんな性格になったのはだいたい侍女所為

「ア・オリ」と「煽り」このコントみたいな掛け合いが面白いと思うか、寒いと思うかは人それぞれか。私は好き。

ゴールデンカムイ最終章) ⭐️⭐️⭐️

第55話でタイトル回収。長かったなー

実写版2月20日2月27日金曜ロードショーでありますので、そちらもお忘れなく。

ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS- ⭐️☆☆

半年ぶりくらいの2期。師匠(おじさん)とはいつ合流するか。

勇者パーティを追い出された器用貧乏 ☆☆☆

いつもの追放刑。元々剣士なんだけど、器用な事に付与術士としてもいけるんで付与術士として勇者パーティーで活躍

勇者からは本職の付与術士と比べて劣ると見られ追放される。

ほんで本職の剣士として再開。付与術士として培った経験技術によって常識外れな強さを発揮する。

ちょっとこういう話は飽きてきたかな。もうこいつ一人でいいんじゃないかな

真夜中ハートチューン ⭐️☆☆

4等分の声姫(アポロ)。中学時代のあの頃、あの真夜中の時間、熱中して聴いていた配信者を高校生になって追い続ける。

候補放送部の4人。どの子なのだろうか。

みんな声に関係するお仕事に憧れている。完璧主義者の俺が全員プロにしてやるさ。

そんな主人公だけど言動ユニークで、それに影響されたりツッコミを入れる女の子面白い。

話が進むにつれてラブコメしてきたし、主人公の人柄の良さも伝わってきて好きになってきた。

幼馴染とはラブコメにならない ☆☆☆

まあラブコメになってんですけどね。

カノジョ彼女黒岩メダカに私の可愛いが通じないを足して割った印象。

ラッキースケベシーンがあるやつです。

勇者パーティーにかわいい子がいたので、告白してみた。 ⭐️☆☆

転生もの。魔族に転生した主人公勇者パーティーの僧侶に一目ぼれ。告白するが撃沈。

勇者魔王を討伐した後は一人前の冒険者になり、僧侶アタックしようと志す。

初々しいのう。8話のED特殊らしい。CMでやってた

カヤちゃんはコワくない ⭐️⭐️☆

戦う見える子ちゃん

最強の霊能者であり幼稚園児のカヤちゃん幼稚園舞台にカヤちゃん悪霊をなぎ倒していく。

でも本当の強敵は・・家に・・・個人的にはぬ〜べ〜より怖いアニメだと思う。

テレ東系、BSテレ東ではやっていない。BSWOWOWでやっているのでテレ東が映らない地域配信WOWOWAT-Xになる。

そういえばこれも海外の人に見せたらTofuonfireと言われるのだろうか

異世界の沙汰は社畜次第 ⭐️⭐️☆

BLです。主人公社畜経験のある男性

女性が何かの光に吸い込まれそうになっていたので助けようとした。が、それは聖女召喚の光で、

巻き込まれ女性と一緒に異世界へと転移してしまった。

異世界で慣れた経理仕事で正直に、それはもう正直に生きて評価されるわけだが・・・

「いやだ、管理職なんてうんざりだ。俺は責任もしがらみもない状態仕事をしたいんだ」

わかる。わかるよ。

BLでやることやる。馴染ませる(キス)って表現エロいな。でも(BL苦手な人でも)社会人経験がある人は楽しめるかも。

6話でもうひとつ好きになった。一般的日本企業の予算編成時期にこういう話を入れてくるのはズルい。

地獄先生ぬ~べ~ ⭐️☆☆

2クール目。OPED変更。セレクションリメイクといった感じで、

ジャンプはたまに読んでた程度で単行本は持っていないのだが、印象的で覚えているストーリーが再アニメ化している感じ。

アルネ事件簿 ☆☆☆

ゲーム(RPGツクール作)が原作

ゲーム版は吸血鬼探偵アルネ貴族の娘リンがメインだったが、アニメ版は少年探偵ルイス中心で物語が進む感じ?

と思ったが、それはミスリードで、まさか1話展開だった。

2話でOPが少し変わり、いなくなった人が消えたりゾンビになったり。

5話かけてプロローグをやった感じ。長かったなー。

鎧真伝サムライトルーパー ⭐️☆☆

鎧伝サムライトルーパーの続編。リメイクではない。

旧作をリアルタイムで見ていたが、別にそこまで好きじゃなかったな。まだシュラトの方が好きだったかも。

前作主人公真田遼(烈火リョウ)も登場する。

80年代音楽流れるのが面白い。それだけで私は視聴決定かもしれない。

OPblankpaper。謎のユニットっぽくしてるけど倖田來未よね。

ダーウィン事変 ⭐️⭐️⭐️

実験動物チンパンジー出産。子は人間チンパンジー交雑種ヒューマンジー」だった。

そんなチャーリーが「ALA」(動物解放同盟)の行動に巻き込まれていく。

設定だけで注目作なんじゃないでしょうか。かつて日本でも話題になったオリバー君を思い出す人もいるかもしれない。

人間学校動物とのハーフが加わるのは「キミと越えて恋になる」が記憶に新しいが、世界が、背景が異なるので、

あそこまで優しい世界ではない。「キミと越えて恋になる」は既に前例があるし。

OPOfficial髭男dism

魔王の娘は優しすぎる!! ⭐️⭐️⭐️

人間天界も敵わない魔王だけど、可愛いくて優しい娘にはやはり敵わない。

ほっこりアニメ。姫様“拷問”の時間ですくらい緩い。

急に おうた が始まるのがくっそ面白い。Eテレでやれ。

優しい世界。笑いあり、涙ありで大好きです。一番口角上がってみるアニメだと思う。

いや人によってはこの緩い魔王の娘にイラッと来る人もいるかもしれないが。

EDの「みんな一緒でみんなニコニコ」の部分が毎回違う。

29歳独身中堅冒険者日常 ⭐️⭐️☆

転生ものではない。子供の頃に辛い人生を送って来て29歳になった冒険者が親に捨てられた少女出会う話。

異世界うさぎドロップ境遇境遇だけに見ちゃう

少女サキュバスで、夜になると大人の姿になってしまう。エッチな感じになっては欲しくないなー

いい温度で暖かく笑って見れるアニメOPEDHoneyWorks

透明男と人間女~そのうち夫婦になるふたり~ ⭐️⭐️⭐️

めっちゃ好き

目の見えない人間女性・夜香しずかは、透明男の探偵・透乃眼あきらに想いを寄せている。

タイトルネタバレする作品はその過程絶対面白いに違いない。

透明人間と目が見えない人のカップリングってよく思いついたよね。

副音声解説音声が流れる。私は毎回副音声ありで見てる。他もそうだけど、こういうテーマアニメちゃん配慮があるよね。

(ゆびさきと恋々みたいに耳が聞こえないアニメ場合字幕を用意しているとか)

種族共存する世界透明人間人間ホワイトエルフダークエルフ、同性でのパートナーの話もあって、多様性ってやつ?

OP阿部真央関係ないけど今の時期のみんなのうた2026年2月3月)も阿部真央の曲がありますED映像は毎回少しだけ違う。

エリス聖杯 ⭐️⭐️☆

今期のスカーレット枠。拳ではなくて言葉スカッスカーレット

地味なコニー貴族社会で窮地に立たされるも、故人で悪女スカーレットが乗り移り、言葉で殴っての逆転劇。

登場人物が多いことに加え、さくさく話が進むので結構忙しい。

OP鷲尾伶菜(元E-girls)、ED田村ゆかり

穏やか貴族の休暇のすすめ。 ☆☆☆

異世界転移もの国王に仕えていた貴族が別の世界へ突然転移

よくある現代からナーロッパ異世界転移とは違いそう。

突然の転移でも落ち着いた貴族様と、彼の相棒となる冒険者とのバディもの

異世界の沙汰は社畜次第はBLだけど、こっちはブロマンス寄り。

お前ごとき魔王に勝てると思うな ☆☆☆

タイトルは、"「お前ごとき魔王に勝てると思うな」と勇者パーティ追放されたので、王都で気ままに暮らしたい"

追放系。ステータスオール0な女の子主人公奴隷少女パートナー

何故か神のお告げで勇者パーティーに選ばれたが、このステータスなもんで仲間からゴミ扱いされ奴隷商に売られてしまう。

だが特殊属性「反転」が覚醒奴隷生活から少女脱出。この絶望的な運命をも反転させていく。

世界名作劇場や日本昔話くらいナレーションが多い。解説用の副音声にしてたかな?と思うことがある。

話が進むにつれてEDテーブル席につくキャラクターが増えていく。

シャンピニオン魔女 ⭐️⭐️☆

学園アリスでおなじみ、樋口橘作品

人のいない森に住む魔女お話。薬づくりが趣味で、作った薬は街に卸している。

彼女が通る道には毒キノコが生えることからシャンピニオンきのこ)の魔女と呼ばれ、誰も近づこうとはしない。

街の人からは忌み嫌われている存在だが、実はかなり街に貢献している存在でもある。

そんな彼女少年保護し、一人前の魔法使いとして育てるお話

初回は1話+2話の放送ルーナがリゼに出会うまでを語る。

  

書ききれないので続きはこの下へ

Permalink |記事への反応(8) | 22:29

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2026-01-15

anond:20260115111119

俺はウサギのように臆病だ・・・・・・だが・・・・・・臆病の所為でこうして生きている・・・・・・・・・・・・

Permalink |記事への反応(0) | 21:39

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2026-01-13

小川市長が再選した理由群馬県民が教えてやるよ

ちなみに自分高崎市民。

なんで再選したか

前橋市長の山本元市長群馬県知事山本一太知事が嫌われているから。

なんでこの二人に反発を感じている前橋市民が多いかって言うと、二人とも新しもの好きでキラキラワードにすぐ飛びつく質で、デロイトーマツアクセンチュアみたいな民間コンサル企業ベタベタ地方再生プロジェクトかに税金注ぎ込んでたから。

なにせアクセンチュアに関しては群馬県庁の中にオフィスかまえてるからな。民間コンサル会社自治体の公舎の中に入ったの全国でも初らしい。まぁ、そんぐらいズブズブだったところに「福祉ちゃん税金使います」を公約に掲げた小川氏が出てきて、地元民ですら「群馬じゃ自民党の後押しないと勝てなくね?」と思われていた中、市長選勝利した。

ある種革命だったんだよね。

それだけに、スキャンダルが報じられたときは幻滅したって人も多かったんだけど、そこで知事が嬉々としてめっちゃはしゃぎながら小川市長を叩き始めたので、それが逆に市民感情を煽って小川市長への支持を増やしたところがある。「なんで知事が市政に口出してんだ。前の市長ときはなんも言わねぇくせに」みたいな感じ。

選挙中のブログの内容とかも酷かったし。

あと、スキャンダルの内容が金絡みだったら致命傷だったんだろうけど、下半身問題だったので外部の批判の声もセクハラまがいの揶揄だったり、下品だったり下卑たものが多かったので、逆に同情票が集まったってところもある。もとから女性からの支持も高かったし。

まぁ、結論としてはだいたい一太の所為

---

"地元民ですら「群馬じゃ自民党の後押しないと勝てなくね?」と思われていた中、市長選勝利した。"って説明している文章に「山本一太知事はなんども選挙で勝ってるんだから人気なんでしょ」って反論する奴、流石に文盲低能すぎないか? その牙城を崩せたかスキャンダル後も支持されてるの。

あと上記の内容は知事自身がある程度認めてることだからな。

https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/849543

知事就任から6年目を迎えた山本知事は、「自分の中に慢心や油断は全くないつもりでいるが、知事活動に全身全霊で当たってきたことで、国会議員時代に行っていた市民県民の中に飛び込んでいくことができていなかった」と言及。そのことで、「(小川氏の一連の問題以上に)しがらみや利権の絡むような政治に対する市民の不信感や嫌悪感をすくい取れなかった」とした。

 また、山本知事が連日、小川氏を批判する持論を自身ブログで展開していたことが同情票につながった可能性があるとの指摘に対し「いじめていると捉えられ、判官びいきで動いた部分もあるとしたら、丸山陣営迷惑をかけたと思う」と述べた。

Permalink |記事への反応(21) | 20:36

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2026-01-10

anond:20260110005415

あいつ等の所為で200万くらい損してる(うち100万は含み損

AIカス

Permalink |記事への反応(0) | 01:02

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2026-01-09

セシウムさん

なんつうかさ

福島放射性ヨウ素に絡んだ甲状腺がんの話、あれただただ可哀そうよね

ガンそのもの結構な人が内部に持っていて

でも自然消滅するもの

悪性で体を蝕む域までいくのが稀だから、経過観察とか普通にするんよね

甲状腺がんなんかまず検査されないんだよ

全国一律に検査したら、福島とか関係なく一定発見される類の奴なの

それを、騒いだ一部バカによって全数検査とかしたもんだから大騒ぎよ

見つかって当たり前のもの検査で見つかって、すわ原発災害だと


それによって手術とかしちゃった人とかが後年になって批判しだしたら

その当時「検査しろ」って騒いだバカリベラル)が

今度は「なぜ検査したんだ」と政府所為にしてる

醜悪だよね


ロシア甲状腺がん問題になったのは、何も知らずに牛乳飲んだからなんだよ

放射性ヨウ素たっぷりと含まれたそれを

誰も注意しないし、危険だと思わず摂取して害が出た

日本でそんなことあったか

しろ、速攻で市場が反応したろ

それに日本人は海藻食べてるから体内のヨウ素が多く取り込まれにくい

でも、危険アブナイと叫んで当時の福島の子らを実際に検査などで傷つけた


そういう事を理解できないバカ

未だに危険アブナイと叫んでる

危険理解できない奴は愚か者だと叫んでる

アホかと

日本なんてもうずいぶん前から放射能塗れなんだよ

昭和の頃なんか「大気圏内核実験」だぞ

そこら中に降り注いでるよ

震災の後の計測値は昭和の頃より低い所もあったのに

汚染オセンガーと言われた


そういう人間が嘯く「科学」とやらはどういうものなのかね

しか

一番悲しいのは

そういう所にしか場所がない事なのかもしれないよな

左派リベラル系の人って結構割合言論過激化して

周りを侮蔑しだして

一線超えて消えていく

最初はそこそこまともなこと言っていても

大体似たような末路を辿る

そういう惨めさが、なんかいっそ哀れよね

Permalink |記事への反応(1) | 14:30

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2025-12-30

チアプという全自動精神摩耗機

この駄文を目に留めてくれた貴方にまず断っておかなければならないのは、以下に書き散らかしているルサンチマンは大方自分所為であることをこれを書いてるヤツは理解していることである

そのうえでマッチングアプリという全自動精神摩耗機に、ひいては恋愛のものに疲れてしまった。

自分で言うのもなんだが社会的地位収入はまあまあある職業に就くくらいには努力したし、4割くらいの女性よりも低いかもしれない身長はどうしようもないが似合う髪型服装模索し、眉毛サロンスキンケアでかつてのチーズ香る雰囲気ごまかせるくらいにはなったと思う。こればっかりはお世辞かもしれないがトーク力や気遣いを良く褒められるくらいにはコミュニケーション能力は身に着けたつもりだ。

ついでに家事炊事も一般主婦くらいには問題なく可能である。正直容姿を除けば悪くないんじゃないかと思いたかった。しか幻想はあえなく打ち砕かれた。

いざマッチングアプリをやってみると自分自身の需要のなさは予想以上であった。

馬鹿正直に身長とか書いてフィルタリングがあるのか、それともシンプル女性特有のチーズセンサーが働いているのかは存じないが兎に角自分内面や外見でいいなと思った人からはまず見向きもされず、偶にマッチたかと思えばお世辞にも仕事面や容姿に魅力を感じないような人で、それでも関係性を深めていけば、などと考えやり取りを続け何とか食事に行って話を盛り上げてもその後は芳しくなく、気づけばフェードアウトはざらである別に大した額をおごっているわけではないが、少しづ疲労がたまってくる。

一方で女性趣味は寝ること/韓国得体のしれないアイドルの「推し活」、いまひとつはっきりしない仕事とお世辞にも優れているとも思えない容姿で200いいねくらいはざらについている。これだけならまだしも里芋みたいな容姿の、男ならまず見向きもされなさそうな人物にも自分の倍くらいのいいねがついている。

別に向こうに全く非があるわけではないが、あちら側は何か月続けようと鐚一文かけずに無限アプローチされていることに対して不平等さに対して、静かな憤りが自分の中に生まれ、そのたびに自分が情けなくなる。

そしてイケメン高身長は向こうから勝手アプローチ普通に来ると聞いて心底馬鹿らしくなった。結局自分のような生き物はどんなにオメカシしてもジャージを着たイケメン高身長が吹けば消し飛ぶような存在であることを思い知った。

別にモテたくて努力してきたわけではないし、恋愛がすべてではないだろう。そもそも自分のような男はプライドを捨てて好きでもなく魅力も感じない人と付き合ってしまうのが正解なのかもしれない。それでも生きるためにそれなりの努力を重ねてきたのにこちからいいねは見向きもされないことが続くと流石に精神は無事では済まなくなってくる。

しかし、こんないかにも怨嗟たっぷりで情けない懊悩現実で打ち明けられる筈もない。

それでも巷でよく言う男性ハードモードっぷりを語る言説を見ているとこんな女々しい書き散らかしにも、共感とまではいかずとも少しばかりの理解を示してくれる人もいるのではないか、と淡く期待してしまう。

Permalink |記事への反応(1) | 02:46

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2025-12-28

anond:20251228151622

やっぱり婚姻数減少/少子化の原因は女性の選り好みの所為だよな

男は若くて穴がある女なら8割OKだもん

Permalink |記事への反応(3) | 19:55

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2025-12-21

anond:20251221111012

それ気の所為

そもそもお前何歳?年齢層で政党の移動範囲が違う

Permalink |記事への反応(0) | 11:11

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2025-11-14

ブクマカってめまいがするほど頭が悪いよな

ヤマト運輸ベトナム人運転手500人採用へ 27年から距離輸送

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/www.nikkei.com/article/DGXZQOUC134QC0T11C25A1000000/


Gelsy自動運転技術投資するよりベトナム人運転手を連れてきた方が安い。こういう発想が日本技術先進国の座から引きずり下ろしたんだ

dounasatta技術投資するより安く済むという発想(ベトナム人技術育成という皮を被った搾取)なんだけど、こうやって技術力に遅れを取るって何回目なんだろ。目先の欲ばっかりで未来を見れない高齢化社会所為なのか。


「開発中の自動運転技術」が荷物を運んでくれるとでも思ってるのだろうか

Permalink |記事への反応(9) | 08:46

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2025-10-27

anond:20251027234256

あご削った所為で肉が噛み切れないという話を聞いてコワワだった;((∩´﹏`∩));

Permalink |記事への反応(0) | 23:52

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2025-10-06

anond:20251005140044

俺も忙しいか適当に探して適当に読んだだけだけど

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2024.03.05.583605v2.full.pdf

Genomesketchingis a fast and memory-efficient solution to estimateANI similarityby distilling representative k-

mers fromthe original sequences.

ほーん

ToolkSketch SizeMAE RMSE ↓ MPAE ↓ Pearson ↑
FastANI16-0.3120.3680.3340.999
Skani-198MB(850×)0.3540.4220.3770.996
Mash21830KB(3.6×)0.3990.5910.4300.981
Bindash21351KB(1.5×)0.3600.5300.3850.986
Dashing2211.2MB(5.2×)0.5000.6500.5370.981

...

MAE> 0.3 なんて個人特定にゃ使いもんにならねーじゃん・・・

単なる予想でエビデンスなんて無いけどヒトの全ゲノム入れたら繰り返し領域イントロン部分で誤差さらデカくなるんじゃねえの・・・

個人特定できるレベルまで精度を上げようとしたら次はシーケンサエラー体細胞変異所為で合わなくなる

からk-merだろうが何だろうが全ゲノムを使ってハッシュ化しちゃダメでしょ

十分な深度でシーケンシング言うて今ショートリード100xで20万くらい。これがゲノム全体を読めないのはご存じの通り。

それでも男性全員いうたら6000万として200,000*60,000,000=12,000,000,000,000

12兆。

ゲノムを読むためにロングリードを十分な深度で使うならその10倍くらい?やったことないから知らんけど。

Permalink |記事への反応(0) | 00:01

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2025-10-04

男性向け作品と、女性向け作品のズレ

最近男性向けより女性向けの方が欲望に忠実な作品が多いように思えるんだけど気の所為

 

欲望に忠実な男性向け作品」というのは例えば

厨二病キャラみたいな、痛い少年感情移入やすそうなキャラを出して、ヒロインめっちゃ可愛くて都合のいい女子を出すみたいな、あるいはメインヒロインが居るのにどんどんハーレムになるとか

一番わかり易いところで言えばラッキースケベとか

 

いつ頃までこういうの多かったっけ?と思い返してみると、Re:ゼロ当りまでかな?

1期が2016年、で2期もかなり盛り上がったイメージが合って、これが2020年,2021年

あるいは五等分の花嫁もそうかも(2019年2021年

 

から、ここ4年くらい、そういうの減ったように思える

減ったか、盛り上がってないかのどっちか

おそらくなろう系の台頭か、なろう系の流行の変化によるもの想像しているが

 

一方で女性向けは詳しくないんだけど

これ明らかに腐女子狙ってるだろっていう作品も増えたし、イケメンバンバン出てくるアニメも増えた

女子オタクのほうがカネを落とす、みたいに言われ始めたのが2010年代だったと思うが、要は金を持った喪女世代が成長してきたことで、今丁度そういう時期なんじゃないか想像している

おそらく次男性向けと同じように、飽きというかブームの変化が訪れるんだろうけど

 

ちょっと心配なのが、最近話題になるアニメって男女どっちも見てるせいで、都合のいい異性を描きづらくなってる感じがするんだよね

男女両方に一定の遠慮があるというか

こういうのが主流になりすぎると面白くないなとは思う

もっとボーイミーツガールファンタジー!バトル!ハーレム!みたいな、コテコテB級作品がなんか上手くハマってS級になるみたいな作品もっとみたいでござる

 

最近は誤魔化して百合ものにした上でセクハラさせるみたいな作品あるけど、それももうよくね?

Permalink |記事への反応(0) | 20:47

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2025-09-29

自転車乗ってる奴らって頑なに押して歩こうとしないよな

車道歩道も狭くて車や歩行者は絶えず動いている

そんな時普通な自転車は降りてから押して歩道を歩くものだけど

乗ってる奴は頑なに降りずに車や歩行者に当たるスレスレを走っていく

車や歩行者自転車を避けようとしても奴らから近づいてくるのが現実

道路所為にする前に押して歩く習慣をつけてくれ

Permalink |記事への反応(1) | 10:46

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2025-08-28

アロエパウチが安いか最近毎日と言っていいくらヨーグルトに入れて食ってるんだけど

味は多分調味料によるものなんだけど、ブドウ味がほんのりするのね

食感といい見た目といいほぼシャインマスカットだよこれ

皮も無くて食べやすい(皮まで食べられるって言うけどシャインマスカットの皮はニガテだ)

これでいいんじゃない

安いし

温暖化所為日本暑くなってるから国産アロエ栽培推奨してはどうだろうか

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2025-08-13

anond:20250813155033

本当にたわわ炎上所為廃業たかは知らないけどたか漫画広告にブチ切れたって仕方ないだろってまともな価値観持ってただけなのにな

これを客の方向いてないって言うのはむしろ客を馬鹿にしてないか

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2025-07-27

anond:20250727031723

結局なになにの所為でとか言うのは全部言い訳に過ぎないんだけどな

ならお前はテロ起こしまくった共産主義規制に賛成なのかって言うとそんな事は無いだろ

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2025-07-15

https://archive.md/Tngpihttps://archive.md/VEWImhttps://archive.md/o1Iivhttps://archive.md/3y1VV :https://archive.md/ad5Q7

https://archive.md/asdBT

“まったく逆で、組合デモなどのごく正当な政治活動を「左翼」とか「パヨク」とかいって叩いてきたのが2ちゃんと中心とするネット文化であり冷笑文化なんだよね。実はそれが必要だと明らかになっても、自分たちが叩いてきたものからいまだに肯定できず、自滅していくわけです。”

https://archive.md/TVw9F

デモをやらない理由まで左翼所為にしてて本当しょうもない。”

https://archive.md/OVELg

“いや、そんな腐った左翼からデモをぶんどってやればよかったじゃん。きっと左翼は悔しがったぞ。結局キミら責任性を左翼におっかぶせて何もしない言い訳をしたい怠惰なだけだろ。”

https://archive.md/3PDZk

政治参加社会運動忌避し、その代わりになるものを何一つ構築することもないまま他者否定自己憐憫に沈んでいった”

“こういう馬鹿が大量にいて、既存労働組合はもちろん同世代非正規雇用者組合待遇改善デモすら嘲笑していた”

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2025-07-13

anond:20250713225126

続き 今期チャーハンネタ多すぎやろ

属性魔法使い ☆☆☆

転生もの事故にあったら天使に会って転生先でスローライフを望む。

主人公の喋り方が独り言でも丁寧語で独特な感じ。

OPを見て期待すると、結構がっかり作品だと思う。

12話。えぇ、ここで終わりなの。この(遅い)スピード感なら連続2クールくらいあるものだと思ってた。

しかセーラの登場少なかったなー。ヒロインアベルだな。

ぷにるはかわいいスライム⭐️☆☆

1年ぶりの2期。また大根おろし青年出てくれないかな。

今回のカバー曲はミセスの青と夏。

ルンルが話すようになってさらに可愛くなった。

あれ、これ。後半すごいな。結構哲学的

本物?理想?ホビー・・はいつまでも人間とは居られない・・?

姿形が変わったらそれはもう別物?新しく新調されたら前のはどうなるの?

『やってることって、普通のお人形遊びの事じゃないですか!

 だって自分の中に生まれたコタロー像を現実のコタローに入れて、

 そうやって頭の中で作り上げた理想世界でコタローと遊んでたってことですよね!?

この辺のセリフ好き。今までへらへら見てたけど、いつの間にか結構真顔で見てた。

12話(#13-#24

渡くんの××が崩壊寸前 ⭐️☆☆

ハーレム系。女の子に酷く振り回される感じなので、理解のある男友達徳井癒し

それぞれのキャラクターの悩みが結構重たい感じなのがいい

藤岡先輩やべぇ奴だな。

周りが可愛い子だらけとはいえ性格立場特殊すぎてしんどいなー。全然うらやましくない。

石原さんと付き合うことができた。今度は幼馴染である紗月の実家が明らかになる。

引き続き2クール突入

ネクロノミ子のコズミックホラーショウ ☆☆☆

人気動画配信者が昏睡状態発狂状態になっていると噂の中、主人公ミコたち動画配信者(ライバー)はVRゲームイベントに参加する。

しかしそれは邪神人類滅亡を目論むによる恐ろしいゲームだった。邪神による悪魔のデスゲームが始まる。

私、デスゲームはそんな好きじゃないのよね。

神椿市建設中。 ☆☆☆

なんか世界観ちょっとよく分からない。

よく分からないんだけど一部の人が消え、消えた人が魔獣化してたり。

やっぱりよく分からないんだけど世界崩壊に近づいてそうなんだけど、歌の力で救っていく感じ?

神椿を追ってないと理解が難しそう。0~2話まで見たけどもういいかな。

光が死んだ夏 ⭐️⭐️⭐️

ある日、幼馴染の光(ヒカル)が行方不明になった。

戻ってきたのはきたのだが・・・何か表現できないような違和感が・・「お前、ヒカルちゃうやろ?」

なんだこれは。なんなんだこれは

世界の不気味さ、人と人との距離感気持ち悪さがよく表現できていると思う。

ブロマンスなところがあるのでBLが嫌いな人とか、人を選ぶかもしれないが閉鎖的かつ、この言葉では表現しづらい異様な世界から妙にマッチしている感じもある。

面白いかは別として(私は面白いと思うが、そうでない人に対しても)見ていて欲しい作品ではある。

12話。第2期制作決定

フードコートでまた明日 ⭐️⭐️☆

花田十輝

見た目が真逆な二人。どちらもクラスメートから距離があり学校では孤独な感じなんだけどー

そんな二人がフードコートでひたすら日常会話をする感じ。なのでちょっと退屈かも。

舞台イオンモール名取か。実際のKFCサーティワンヴィレバンが登場する。

自分は2話でなんとなく見方が分かった気がする。スルメ系ですね。見ていくうちに面白さが分かっていくやつ。

全6話。あー終わってしまった。結構好きな時間だったなー

からアンコール放送。振り返り放送1回目だけはオーディオコメンタリーがある。

あとEDイントロ部分のセリフが違う。これまで6話全て同じセリフ(だからさぁ、今時音楽にイントロなんている?〜)

だったのが、アンコール放送では毎回違う。その回の話にちなんだセリフになってる。

あと6話Cパートアンコール放送版とで違う。

Summer Pockets ⭐️⭐️☆

前のシーズンから引き続き。私が苦手とするKeyゲーム原作

今のところは蒼の話が一番好きかな。

15話でOP映像が少し変わった?と思ったら以前からちょいちょい変わってたのね。

18話でOPEDががっつり変わる。結構好きになってきた。

25話で一応話がすっきりした。子が親の幸せを願っての行動。

全26話。最終話CMなしで27分だった。あと30秒〜1分くらい余韻が欲しかたかも。

出禁モグラ ⭐️⭐️⭐️

"大学生の真木と八重子はある夜、上空から落ちてきた広辞苑に頭をぶつけて大怪我をした男・モグラ出会う"(wikipedia引用

この真木と八重子がいい人すぎる。

怪奇を書く話としては、個人的には今期ぬ〜べ〜より好き。

よけいなおしゃべりが多いが、そこがまたいいね

バケモノの話もありながら人間心理思想の話もあったりして、結局は人次第だよねと感じるところもある。

12話。最後モグラが何者なのか語られる。面白かった。2期やって欲しい。

わたし恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) ⭐️⭐️☆

百合アニメキャラ原案がささ恋の作者なので既視感があるよね。

いいですね!ささ恋とはうってかわって綺麗な作画百合ハーレム

3話で百合情事家族に見られる衝撃の展開なんてもう、

百合とか関係なくこの年頃の恋愛事情暴走するものですからね、気持ちがあふれる表現とかそういうの好き

言いたいこと言えなかったり、逆に言ったり、変な行動したり暴走したり。まぁアニメではよくあることなんだけど表現が好きだった。

12話。え

まさかの続編13話〜17話の全5話制作放送が決定。放送に先駆け劇場上映も。

勇者パーティー追放された白魔導師、Sランク冒険者に拾われる ☆☆☆

追放系。開幕いきなりパーティーから追放される。

今まで実は主人公ロイド縁の下の力持ちで助けていたのを気づかず勇者くん

 「俺は強いからお前いらない」 とロイド追放ちゃう典型的なやつ。

こういうのって追放する方も悪いけど、主人公側のコミュニケーション不足も原因よね。

その主人公無自覚無双できそうなくらい実力はあるのに自己肯定感の低い人。

と、テンプレすぎて不満がありそうに書いたけれど、そこまで鼻につくようには感じられなかったか継続してみると思う。

ハーレムパーティじゃないのもいいね。と思ったのも最初の数話かな。ちょっと退屈かも。これなら強くてニューサーガの方が少しはいいかな。

12話。最後「終」って出るのは意外と珍しい気がする。続きはないんだろうな。

Dr.STONE SCIENCE FUTURE ⭐️⭐️⭐️⭐️

2025年アニメからの続き、4期2クール目にあたる。今回は主要キャラが悲しいことになる、結構お話

OPはカナブーン

22話、23話は涙なしには見れない。あーもうこの23話で気持ちが全部持ってかれた。元々好きだったけどさらに好きになったよ

EDイントロ部分のモールス信号歌詞、超絶100億%あってる。音羽-otoha- 「noman's world」これ聴くだけで泣いちゃう

「応答して、noman's world」 「応答して」 の音は 「Oh, どうして:Why」とも聞こえるよう歌詞をチョイスした?わざと?

12話(#13-#24)第3クール2026年

Turkey! ⭐️☆☆

ボウリングアニメ長野県千曲市舞台

ボウリング部の部内ではエンジョイ勢ガチ勢対立でギスギ状態に。

部長麻衣と本気でボウリングをやりたい利奈のボウリング一騎打ち対決。

そのときふしぎな事が起こった。

目覚めたらそこは戦国時代。は?

青春部活アニメじゃないの!?とまぁ驚きの導入だった。

その後ボウリングしたりボーリングもしたりして、戦乱の世で自分たちや世話になってる戸倉家を守ろうと奮闘する物語

6話はなかなか、命の話でも性の話でも血を感じるお話だったし、8月を感じさせるお話だった。

9話のOP/ED特殊OPメンバー現代組(長野県一刻館高校ボウリング部)から戸倉家の姫たちへと入れ替わり、EDやなぎなぎの曲に。

12話。まさかの侍タイムスリッパーならぬ、姫様タイムスリッパーだった。帰り方あれでええんか。

それぞれの家庭の話をもう少しやって欲しかった。少し話には出てたけど興味深かったので。けど時間ないよね。

帝乃三姉妹は案外、チョロい。⭐️☆☆

一つ屋根の下で女の子と同居してハーレム状態の中、お世話をしたりされたりするよくあるやつ

有名な大女優の息子として生まれ主人公が名門学園へ転校。

母親天才女優ということで周りが勝手に期待するが、顔がいいだけの中身は凡人。

母が亡くなり、引き取られた家「帝乃家」は学園の三帝と呼ばれる才女三姉妹が住む家だった。ということで三姉妹と同居し、周りの世話をすることに。

三姉妹は皆自由勝手に見えるが、各々自分武芸にあわせた必要ルーティーンをこなしている。

そんな3姉妹のことを理解しながら、憧れの "食卓家族で囲む" ことはできるのだろうか。

可愛いげのない3姉妹が何気ないことで可愛くなる変化は楽しい

なにげに音楽がいい

12話。面白かった。

ブサメンガチファイター ⭐️☆☆

今期ブサメンアニメ男性枠。

ブサメンサラリーマン痴漢冤罪から転落人生へ。

冤罪トラウマから社会不適合になり何も出来ない状態に。

ネット情報を基に午前2時、不思議儀式をすることで異世界転生。

初期値にルックスを低く設定、女性と疎遠になりそうな設定にすると、なんとボーナス割り振りポイントが爆上がりに。

この転生の仕方とボーナスパラメーターの割り振りは珍しいかも。

転生先では同じ方法で転生してきた(元)日本人パーティーを組んで冒険をする。

世間は狭いですなあ。全12話。

白豚貴族ですが前世記憶が生えたのでひよこな弟育てます ⭐️☆☆

メタボ少年貴族主人公前世では料理裁縫を得意としたオトメンだったのだが、夏コミの帰りに熱中症で死んだらしい。みんなも気をつけようね。

両親には見放されてしまったが、前世で知っている歌を歌って女神と仲良くなったり、料理裁縫スキル活用して腹違いの弟と育てながら領家運営していくって話かな。

文明の発程している前世記憶があるので、周りとの交流や弟の育成の寄与することになるのだが、

その記憶を思い出しながら脳をフル回転して、こちらの世界の人に対し熱弁すると知恵熱が出てしばらく寝込んでしまうというデメリットもある。

12話。よかった、起業することになった。最後にいつもの野中のばら」を歌って終了。続きやってくれないかな。

カッコウの許嫁Season2 ⭐️☆☆

3年ぶりの2期。許嫁が取り違え子だった!?

そんな複雑な関係の許嫁、片思いしている女の子、実は血が繋がっていないと分かった妹との恋の4角関係

そこに今期ではもう1人幼馴染が加わり、5角関係へと進展するのであった。

ED22/7、ナナニジメンバーは4羽目で祭りの観客役としても参加している。

12話。いつもの調子で終わった。さて、この続きはいつあるのやら。

異世界黙示録マイノグーラ ⭐️⭐️☆

病床でゲームして寝落ちした感じで死んだと思ったら異世界に転生?転移?してた。

そこで出迎えてくれた大好きなゲームキャラクターと共に、邪悪国家マイノグーラの邪神として活動する。

自分ゲームキャラクターが全く別の異世界へ一緒に飛ばされた?

OP佐々木李子でこの曲調なので、もはやAve Mujicaみたいな感じ。

たぶん一般的には評価が低そうだけど私は結構好きです。

5話の容赦なさがいい。やる時もやられる時も出来るだけ残酷なシーンに描くのが好き。

シミュレーション世界RPG世界、異なるジャンルキャラクターが闘うというのが面白いね。

9話で英雄イスラが登場し双子ダークエルフが懐くのだが・・・なるほど、EDはこういうことだったのか。

全13話。予想外に面白かった。

盾の勇者の成り上がりSeason 4 ⭐️☆☆

1年半ぶりくらい?3期も見たと思うんだけれど全然覚えてない・・・

最初最悪だった四聖勇者関係もまとまってきた。

クテンロウ編。ラフタリアの命を守るためクテンロウと話をつけてくる。

と、そこへ行く船を調達するため、亜人たちがたくさんいるシルトヴェルトで一悶着。

フォウルくんも成長した。船をゲットしてクテンロウへ。

悪政の元凶も倒してラフタリアさん天命へ。全12話。Season 5 決定。とことんやるだろうな

転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます ⭐️☆☆

まれ変わって太ももむっちり可愛い男の子が魔術を極めんとするやつ。1年ぶりの2期。

今回から教会編。神聖魔術とはどんなもんや

1期の敵が仲間になった後、2期ではモブっぽく扱われず、割と前線活躍してくれる流れ好き。あとジェイド存在が相変わらず大きいの好き。

12話(#13-#24)ら〜〜〜らら〜ららららら〜🎵

気絶勇者暗殺姫 ⭐️☆☆

勇者の仲間、3人の美女は実は勇者の命を狙う者だった。

アニメ開始30秒で説明がつくスタイルコメディですね。

女同士敵同士なんだけど勇者気絶中に何だかんだで仲良くなる感じ?結構好きかも。

1話勇者何回気絶するんだよw

12話。ゴアガチ泣きよかった。

うたごえミルフィーユ ⭐️☆☆

アカペラ部の活動の話。そういえばもうすぐハモネプの時期でもありますね。

私がそもそも青春部活動系が好きなのでこれは見るでしょうな。

嬉歌のネガティブ精神情緒不安定ぶりはヤバいな。結の言葉キツイけど嬉歌の性格がコレなのでスッキリするわ。

アニメ化は今回からだけどプロジェクトは3年前からあったらしい。

ママの車、左ハンドルか。

10話。結構良かった。最終話を見ると主題歌の「思い出話」の歌詞が身に染みる。

キャラクターではクマちゃんが好き。これまで声の所為で人とのコミュニケーションを取ってなかったけど、人一倍人の気持ち理解できるいい子だった。

カラオケ行こ! ⭐️☆☆

2024年実写映画化されている。

893の狂児は、組長に刺青を彫られるのが嫌で中学生合唱部部長をやっている聡実に歌を教えてほしいとお願いをする。

全5話。4話で一旦終わって、次からこの時間は同作者の短編漫画「夢中さ、きみに。」をアニメ化したもの放送される。

5話は「夢中さ、きみに。」が終わってから放送。4話の中で空白だった時間を埋める話。

夢中さ、きみに。 ⭐️☆☆

かわいいとは程遠い中高一貫男子校、どこかミステリアスな林美良を中心に繰り広げられる青春ストーリー

全5話。面白かった。まだまだ続いてほしかったな。

銀河特急ミルキーサブウェイ ⭐️⭐️⭐️

3年前に公開されたミルキーハイウェイの続編で、スピード違反公務執行妨害警察車両爆破で捕まった後の話。

社会奉仕活動としてミルキーサブウェイと呼ばれてる鉄道車両を清掃することになったのだが・・・・。1話あたり3分半と短い。

面白いんだけど、面白さを説明するより3分からとりあえず見て!となるやつ。

未来的な世界だけどどこかレトロな感じもある。主題歌キャンディーズ銀河系まで飛んで行け!この曲って吉田拓郎節満載だよね。

高校生みたいにノリだけで行動してる感じ、あとプレスコなのか?と思うくらいセリフの抑揚やテンポが生っぽい感じが自然体でいいね

チハかわいい。いやみんなかわいい

12話。めちゃくちゃ面白かった。全12話を再編集&新作パートも追加した劇場版公開決定

Permalink |記事への反応(1) | 22:52

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2025-07-08

anond:20250708044816

 辺鄙な、村はずれの丘には、いつの間にか、華やかな幕を沢山吊るした急拵ごしらえの小屋掛が出来て、極東曲馬団の名がかけられ、狂燥なジンタと、ヒョロヒョロと空気を伝わるフリュートの音に、村人は、老おいも若きも、しばし、強烈な色彩と音楽スリル享楽し、又、いつの間にか曲馬団が他へ流れて行っても、しばらくは、フト白い流れ雲の中に、少年少女の縊くびれた肢体を思い出すのである

 トテモ華やかな、その空気の中にも、やっぱり、小さな「悩める虫」がいるのだ。

一ノ二

莫迦ッ、そんな事が出来ねエのか、間抜けめ!」

 親方は、野卑な言葉で、そう呶鳴どなると、手に持った革の鞭で、床をビシビシ撲りつけながら、黒吉くろきちを、グッと睨みつけるのだった。

 まだいたいけな少年の黒吉は、恐ろしさにオドオドして、

「済みません、済みません」

 そんな事を、呟くようにいうと、ぼろぼろに裂けた肉襦袢じゅばんの、肩の辺を擦さすりながら、氷のように冷めたい床の上に、又無器用な体つきで、ゴロンゴロンと幾度も「逆立ち」を遣り直していた。

 饑ひもじさと、恐ろしさと、苦痛と、寒気と、そして他の座員の嘲笑とが、もう毎度の事だったが、黒吉の身の周りに、犇々ひしひしと迫って、思わずホロホロと滾こぼした血のような涙が、荒削りの床に、黒い斑点を残して、音もなく滲しみ込んで行った。

 ――ここは、極東曲馬団の楽屋裏だった。

 逆立ちの下手な、無器用な黒吉は、ここの少年座員なのだ

 鴉からす黒吉。というのが彼の名前だった。しかしこれは舞台だけの芸名か、それとも本当の名前か、恐らくこれは字面じづらから見て、親方が、勝手につけた名前に違いないが、本名となると彼自身は勿論の事、親方だってハッキリ知っているかどうかは疑わしいものだった。

 黒吉自身記憶といっては、極めてぼんやりしたものだったけれど、いたましい事には、それは何時も、この曲馬団の片隅の、衣裳戸棚から始まっていた。

 それで、彼がもの心のついた時からは、――彼の記憶が始まった時からは、いつも周囲には、悲壮ジンタと、くしゃくしゃになったあくどい色の衣裳と、そして、それらを罩こめた安白粉おしろいの匂いや、汗のしみた肉襦袢の、ムッとした嗅気が、重なり合って、色彩っていた。

 こうした頽廃的な雰囲気の中に、いつも絶えない、座員間の軋轢あつれきと、華やかな底に澱む、ひがんだ蒼黒い空気とは、幼い黒吉の心から、跡形もなく「朗らかさ」を毟むしり取って仕舞った。そして、あとに残った陰欝な、日陰の虫のような少年の心に、世の中というものを、一風変った方向からのみ、見詰めさせていた。

 彼は用のない時には、何時も、太い丸太が荒縄で、蜘蛛の巣のように、縦横無尽に張りまわされている薄暗い楽屋の隅で、何かぼんやりえこんでいた。それは少年らしくもない憂欝な、女々しい姿だった。

 黒吉は明かに、他の同輩の少年から

「オイ、こっちへこいよ」

 と声をかけられるのを恐れているように見えた。

 しかし、それは、単に彼の危惧に過ぎなかった。

 他の少年座員達は、誰も、この憂欝な顔をした、芸の不器用な、そして親方におぼえのよくない黒吉と、進んで遊ぼうというものはなかった。(それは恐ろしい団長への、気兼ねもあったろうが)寧ろ彼等は、黒吉の方からしかけても、決して色よい返事は、しないように思われた。

 結局、黒吉はそれをいい事にして、独りぽつねんと、小屋の隅に忘れられた儘、たった一つ、彼に残されたオアシスである他愛もない「空想」に耽っていた。

一ノ三

 憂欝な少年黒吉が、何を考えているのか。

 ――その前に、彼が、なぜ親方のおぼえが悪いのだろうかという事をいわなければならない。

 (それは、彼の憂欝性にも、重大な影響のある事だから

 黒吉は、どう見ても、親方の「お気に入り」とは思えなかった。それは、勿論彼が、芸の未熟な不器用だった事も、確かにその原因の、一つだったけれど、他の大きな原因は、彼が醜い容貌だ、という先天的な不運に、禍わざわいされていたのだった。

 男の子容貌が、そんなにも、幼い心を虐しいたげるものだろうか――。

 如何にも、舞台の上で生活するものにとって、顔の美醜は非常に大きなハンデキャップなのだ。彼の同輩の愛くるしい少年が、舞台で、どうしたはずみか、ストンと尻もちをついたとしたら、観客は

「まあ、可哀そうに……あら、赤くなって、こっちを見てるわ、まるで正美さんみたいね

 そういって可愛い美少年は、失敗をした為に、却って、観客の人気を得るのだ。けれど、それに引きかえて、醜い顔だちを持った黒吉が、舞台でそれと同じような失敗をしても、観客は、何の遠慮もなく、このぎこちない少年の未熟さを嘲笑うのだった。

 この観客にさえ嗤わらわれる黒吉は、勿論親方にとって、どんなに間抜けな、穀潰ごくつぶしに見えたかは充分想像が、出来るのだった。従って、黒吉に対する、親方仕打ちがどんなものだったかも――

(俺は芸が下手なんだ)

(俺は醜い男なんだ)

 薄暗い小屋の片隅で、独りぽつんと、考えこんでいる黒吉は、楽しい空想どころか、彼の幼い心には、この二つの子供らしくもない懊悩が、いつも吹き荒すさんでいるのだった。

 そして、それは彼の心の底へ、少年らしい甘えた気持を、ひた押しに内攻して仕舞って、彼を尚一層、陰気にする外、何んの役にもたたなかった。冷たい冷たい胸の中に、熱いものは、ただ一つ涙だけだった。

 こうした雰囲気の中に、閉じこめられた鴉黒吉が、真直に伸びる筈はなかった。

 ――そして、蒼白い「歪んだ心」を持った少年が、ここに一人生成されて行った。

 世の中の少年少女達が、喜々として、小学校に通い始めた頃だろうか。勿論黒吉には、そんな恵まれ生活は、遠く想像の外だった。

 しかし、この頃から黒吉は、同輩の幼い座員の中でも、少年少女とを、異った眼で見るようになって来た。

「何」という、ハッキリした相違はないのだが、女の子莫迦にされた時には、不思議男の子に罵られたような、憤りは感じなかったのだった。寧ろ、

(いっそ、あの手で打ぶたれたら……)

 と思うと、何かゾクゾクとした、喜びに似た気持を感じるのだ。

 これが何んであるか、黒吉は、次第に、その姿を、ハッキリ見るようになって来た。

一ノ四

 安白粉の匂いと、汗ばんだ体臭と、そして、ぺらぺらなあくどい色の衣裳が、雑巾のように、投げ散らかされた、この頽廃的な曲馬団の楽屋で、侮蔑の中に育てられた、陰気な少年の「歪んだ心」には、もうませた女の子への、不思議な執着が、ジクジクと燃えて来たのだ。

 ――そして、それを尚一層、駆立てるような、出来事が起った。

 それは、やっと敷地小屋掛けも済んで、いよいよ明日から公開、という前の日だった。

 団長は、例の通り、小六ヶ敷こむずかしい顔をして、小屋掛けの監督をしていたが、それが終って仕舞うと、さも「大仕事をした」というような顔をして、他のお気に入り幹部達と一緒に、何処か、遊びに出て行った。

 団長の遊びに行くのを、見送って仕舞うと、他の年かさな座員や、楽隊ジンタの係りの者なども、ようやくのびのびとして、思い思いの雑談に高笑いを立てていたが、剽軽者ひょうきんものの仙次が、自分の役であるピエロ舞台着を調べながら

「オイ、親父おやじが行ったぜ、俺の方も行こうか」

 恰度それが、合図でもあったかのように、急に話声が高くなった。

「ウン、たまには一杯やらなくちゃ……」

「ちえッ、たまには、とはよくもいいやがった。明日があるんだ、大丈夫か」

「ナーニ、少しはやらなくちゃ続かねエよ、いやなら止せよ」

「いやじゃねエよ」

ハハハ、五月蠅うるせえなア」

 と、如何にも嬉しそうに、がやがや喋りながら、それでも大急ぎで支度をして、町の中に開放されて行った。

 そして、何時か、このガランとした小屋の中には、蒲団ふとん係りの源二郎爺さんと、子供の座員だけが、ぽつんつんと取り残されていた。子供の座員は、外出を禁じられていた。それは勿論「脱走」に備えたものだった。その見張りの役が、今は老耄おいぼれて仕舞ったが、昔はこの一座を背負って立った源二郎爺じじいなのだ

 結局、幼い彼等は、小屋の中で、てんでに遊ぶより仕方がなかった。

 男の子男同志で、舞台を駈廻り、女の子は女らしく、固かたまって縄飛びをしていた。――そして、黒吉は、相変らず小屋の隅に、ぽつんと独りだった。

 しかし、何時になく、黒吉の眼は、何か一心に見詰めているようだ。

(この憂欝な、オドオドした少年が、一生懸命に見ているものは、何んだろう)

 誰でも、彼の平生を知っているものが、この様子に気付いたならば、一寸ちょっとをかしげたに相違ない。そして、何気なくこの少年視線を追って見たならば、或はハッと眼を伏せたかも知れないのだ。

 黒吉の恰度眼の前では、少女の座員たちが、簡単アッパッパを着て、縄飛びをしていた――。しかし彼の見ているのは、それではなかった。この少女達が、急いきおいよく自分の背丈せい位もある縄を飛んで、トンと下りると、その瞬間、簡単アッパッパスカートは、風を受けて乱れ、そこから覗くのは、ふっくりとした白い腿だった――。

(十やそこらの少年が、こんなものを、息を殺して見詰めているのだろうか――)

 そう考えると、極めて不快な感じの前に何か、寒む寒むとした、恐ろしさを覚えるのだ。

 しかし、尚そればかりではなかった。

 この憂欝な少年の心を、根柢から、グスグスとゆり動かした、あの「ふっくりとした白い腿」がたえまなく、彼の頭の中に、大きく渦を捲いて、押流れていた。

 やがて、その心の渦が、ようやく鎮まって来ると、その渦の中から、浮び上って来たのは、この一座の花形少女貴志田葉子きしだようこ」の顔だった。

 だが、それと同時に、黒吉は、いきなり打ち前倒のめされたような、劇しい不快な気持を、感じた。

(ちえッ、俺がいくらちゃんと遊ぼうったって、駄目だい。俺は芸が、下手くそなんだ。それに、あんな綺麗な葉ちゃんが、俺みたいな汚い子と遊んでくれるもんか……)

 だが、この少年の心の底へ、しっかり焼付られた、葉ちゃんへの、不思議な執着は、そんな事ぐらいでは、びくともしなかった。寧ろ

(駄目だ)

 と思えば思う程、余計に、いきなり大声で呶鳴ってみたいような焦燥を、いやが上にも煽立あおりたてているのだ。

 ――この頃から、彼のそぶりは、少しずつ変って来たようだった。それはよく気をつけて見たならば、相変らず小屋の片隅に、独りぽっちでいる黒吉の眼が、妙な光を持って来たのに、気がついたろう。そして、その時は彼の視線の先きに必ず幼い花形の、葉子が、愛くるしい姿をして飛廻っていたのだ。

 葉子は、まだ黒吉と同じように、十とう位だったが、顔は綺麗だし、芸は上手いし、自由小鳥のように朗らかで、あの気六ヶ敷い団長にすら、この上もなく可愛がられていたから、この陰惨な曲馬団の中でも、彼女だけは、充分幸福なように見えた。

 そして、勿論、この陰気な、醜い黒吉が、自分一挙一動を、舐めるように、見詰めているとは気づかなかったろう。

 黒吉自身は、彼女が、自分の事など、気にもかけていない、という事が「痛しかゆし」の気持だった。無論彼女

「こっちへいらっしゃいよ」

 とでも、声を掛けられたら、どんなに嬉しい事だろう。――しかし、その半面

「だらしがないのねエ、あんたなんか、大嫌いよ」

 といわれはしまいか、と思うと、彼女に話かけるどころか葉子が、何気なくこっちを見てさえ、

(俺を嗤うんじゃないか

 こうした感じが、脈管の中を、火のように逆流するのだ。それで、つと眼を伏せて仕舞う彼だった。

 黒吉は、自分でさえ、このひねくれた気持を知りながら、尚葉子への愛慕と伴に、どうしても、脱ぎ去る事が、出来なかった。

       ×

 思い出したように、賑やかなジンタが、「敷島マーチ」を一通り済ますと、続いて「カチウシャ」を始めた。フリュートの音が、ひょろひょろと蒼穹あおぞらに消えると、その合間合間に、乾からびた木戸番の「呼び込み」が、座員の心をも、何かそわそわさせるように、響いて来た。

「さあ、葉ちゃんの出番だよ」

「あら、もうあたしなの、いそがしいわ」

「いそいで、いそいで」

 葉子は周章あわててお煎餅せんべい一口齧かじると、衣裳部屋を飛出して行った。

 恰度、通り合せた黒吉は、ちらりとそれを見ると、何を思ったのか、その喰たべかけの煎餅を、そっと、いかにも大事そうに持って行った。

二ノ二

 葉子が、喰いかけて、抛り出して行った煎餅を、そっと、拾って来た黒吉は、座員達が、こってりと白粉を塗った顔を上気させながら、忙しそうに話し合っている所を、知らん顔して通り抜けると小屋の片隅の、座蒲団が山のように積上げられてある陰へ来た。

 黒吉は、経験で、舞台が始まると、こんなところには、滅多に人が来ない事を知っていた。

 それでも、注意深く、あたりに人気のないのを見澄ますと、こそこそと体を跼かがめながら、いまにも崩れそうに積上げられた座蒲団の隙間へ、潜り込んで行った。

 その隙間は、如何にも窮屈だったが、妙にぬくぬくとした弾力があって、何かなつかしいもののようであった。黒吉はやっと※ほっ[#「口+息」、16-9]とした落着きを味わいながら、あの煎餅のかけらを持ち迭かえると、それがさも大切な宝石でもあるかのように、そーっと手の掌ひらに載せて見た。

(これが、葉ちゃんの喰いかけだな)

 そう思うと、つい頬のゆるむ、嬉しさを感じた。……大事大事にとって置きたいような、……ぎゅっと抱締めたいような――。

 黒吉は、充分幸福を味わって、もう一遍沁々と、薄い光の中で、それを見詰めた。こうしてよくよく見ると、気の所為いか、その一かけの煎餅は、幾らか湿っているように思えた。

気をつけて、触ってみると、確かに、喰いかけのところが一寸湿っていた。

(葉ちゃんの唾つばきかな)

 黒吉の、小さい心臓は、この思わぬ、めっけものにガクガクと顫えた。

 彼は、いくら少年とはいえ、無論こんな一っかけの煎餅を、喰べたいばかりに、拾って来たのではなかった。黒吉には「葉子の喰べかけ」というところに、この煎餅が、幾カラットもあるダイヤモンドにも見えたのだ。

 しかし、触って見ると、このかけらは湿っている……

(葉ちゃんの唾だな)

 その瞬間、黒吉の頭には、衣裳部屋で、葉子が忙しそうにこの煎餅を咥くわえていた光景と、それにつづいてクロオズアップされた、彼女の、あの可愛い紅唇くちとが、アリアリと浮んだ。

 それと一緒に、彼は、思わずゴクンと、固い唾を飲んだ。

 黒吉は、妖しく眼を光らせながら、あたりを偸ぬすみ見ると、やがて、意を決したように、その葉子の唾液つばきで湿ったに違いない煎餅のかけらを、そっと唇に近づけた……。

(鹹しょっぱい――な)

 これは、勿論塩煎餅の味だったろう。だが、黒吉の手は、何故かぶるぶると顫えた。

 彼の少年らしくもない、深い陰影かげを持った顔は、何時か熱っぽく上気し、激しく心臓から投出される、血潮は、顳※(「需+頁」、第3水準1-94-6)こめかみをひくひくと波打たせていた。

 そして、もう手の掌に、べとべとと溶けて仕舞った、煎餅のかけらから、尚も「葉子の匂い」を嗅ぎ出そうと、総てを忘れて、ペロペロと舐め続けていた……。

「こらっ。何をしてるんだ、黒公」

 ハッと気がつくと、蒲団の山の向うから、源二郎爺の、怒りを含んだ怪訝な顔が、覗いていた。

「出番じゃねエか。愚図愚図してると、又ひどいぞ」

「ウン」

 黒吉は、瞬間、親方の顔を思い出して、ピョコンと飛起きた。そして、ベタベタと粘る手の掌を肉襦袢にこすりこすり、周章あわてて楽屋の方へ駈けて行った。

二ノ三

 黒吉は、命ぜられた、色々の曲芸をしながらも、頭の中は、いつも葉子の事で一杯だった。

(一度でいいから葉ちゃんと、沁々話したい)

 これが、彼の歪められた心に発生わいて来た、たった一つの望みだった。

 彼がもっと朗らかな、普通の子供であったならば、いつも同じ小屋にいる葉子だもの、そんな事は、造作なく実現したに違いない。

 しかし、それにしては、黒吉は、余りに陰気な、ひねくれた少年だった。――というのも、彼の暗い周囲がそうさせたのだが――。

 そして、早熟ませた葉子への執着が、堰せき切れなくなった時に彼が見つけたのは、あの煎餅のかけらが産んだ、恐ろしい恍惚エクスタシーだった。

 一度こうした排はけ口を見つけた、彼の心が、その儘止まる筈はなかった――寧ろ、津浪のようにその排け口に向って殺到して行ったのだ。

 彼は、そっと、人のいないのを見すまして、衣裳部屋に潜り込み、葉子の小ちっちゃい肉襦袢に、醜悪な顔を、埋うずめていた事もあった。

 その白粉の匂いと、体臭のむんむんする臭いが、彼自身眩暈めまいをさえ伴った、陶酔感を与えるのだ。

 そして、ふと、その肉襦袢に、葉子のオカッパの髪が、二三本ついていたのを見つけると、その大発見に狂喜しながら、注意ぶかく抓つまみ上げて、白い紙につつむと、あり合せの鉛筆で、

「葉子チャンノカミノケ」

 そんな文句を、下手糞な字で、たどたどしく書きつけ、もう一度、上から擦さすって見てから、それを、肌身深く蔵しまいこんで仕舞った……。

 こうした彼の悪癖が、益々慕って行った事は、その後、葉子の持ち物が、ちょいちょい失なくなるようになった事でも、充分想像が出来た。

 失くなるといっても、勿論たいした品物を、曲馬団の少女が、持っている訳はなかったから、もうすり減った、真黒く脂肪あぶら足の跡が附いた、下駄の一方だとか、毛の抜けて仕舞った竹の歯楊子ようじだとか、そういった、極く下らないものだった。それで、

(盗られた)

 という気持を、葉子自身ですら感じなかったのは、彼にとっては、もっけの幸いだった。しかしこれらの「下らない紛失物」が、黒吉にとって、どんなに貴重なものだったかは、また容易に想像出来るのだ。

 ――ここまでは、黒吉少年の心に醗酵した、侘わびしい(しか執拗な)彼一人だけの、胸の中の恋だった。

 だが、ここに葉子が、暴風雨あらしを伴奏にして、颯爽と、現実舞台へ、登場しようとしている。

       ×

 極東曲馬団は、町から町、盛り場から盛り場を、人々の眼を楽しませながら、流れ移っていた。

 そして、ある田舎町に敷地を借り、ようやく小屋掛けも終ったと殆んど同時に、朝から頸を傾かしげさせていた空模様が、一時に頽くずれて、大粒の雨が、無気味な風を含んで、ぽたりぽたり落ちて来たかと思うと、もう篠つくような豪雨に変っていた。

 団長等は、早々に、宿屋に引上げて仕舞ったが、子供の座員や、下っぱの座員などは、経費の関係で、いつも、この小屋に泊る事を言渡されていた。子供等の方では、これは当然だと思っていたし、又団長がいないという事で、却って喜んでいたようでもあった。

 しかし、この急拵えの小屋が、この沛然はいぜんと降る豪雨に、無事な筈はなく、雨漏りをさけて遁げ廻った末、やっと楽屋の隅で、ひと凝固かたまりになって、横になる事が出来たのは、もう大分夜が更けてからだった。

 黒吉は、眼をつぶって、ようやく小降りになって来たらしい、雨の音を聴いていると、もう肩を並べた隣りからは、幽かな寝息さえ聴えて来た。

 それと同時に、黒吉は、何かドキンとしたものを感じた。

(隣りに寝ているのは、葉ちゃんじゃないか――)

二ノ四

 瞬間、黒吉は自分の頭が、シーンと澄み透って行くのを感じた。

(果して、隣りで寝ているのは、葉ちゃんだろうか)

 それは勿論、第六感とでもいうのか、極く曖昧ものだった。が、あの騒ぎで、皆んな、ごたごたに寝て仕舞ったのだから全然あり得ない事でもないのだ。

 そう思うと、隣りと接した、肩の辺が、熱っぽく、暑苦しいようにさえ感じた。そして、心臓はその鼓動と伴に、胸の中、一杯に拡がって行った。

 黒吉は、思い切って、起上り、顔を覗き見たい衝動を感じた。あたりは真暗だが、よく気をつけて覗きこめば、顔の判別がつかぬ、という程でもないように思われた。

 彼は、そーっと、薄い蒲団の縁へりへ、手をかけた。だが――

(まてまて。葉ちゃんならば、こんなに素晴らしい事はない。けれども、こんなにぎっしり寝ている処で、ごそごそ起きたら、どうかすると、彼女は眼を覚ますかも知れない。

 それだけならいいが、眼を覚まして、俺が覗きこんでいた事を知ったら、きっと葉ちゃんは、真赤になって、この醜い俺を罵り、どこか遠くへ寝床をかえて仕舞うに違いないんだ。

 ――そんな莫迦な事をするより、例え短かくとも、夜が明けるまで、こうして葉ちゃんの、ふくよかな肩の感触を恣ほしいままにした方が、どれ程気が利いていることか……)

 黒吉の心の中の、内気な半面が、こう囁いた。

 彼は、蒲団にかけた手を、又静かに戻して仕舞うと、今度は、全身の注意を、細かに砕いて、彼女の方へぴったり、摺り寄って行った。そして、温もりに混った、彼女の穏やかな心臓の響きを、肩の辺に聴いていた……。

 フト、冷めたい風を感じて、何時の間にかつぶっていた眼を明けて見ると、あたりには極くうっすらと、光が射しているのに、気がついた。

(もう夜明けかな――いつの間に寝て仕舞ったんだろう)

 それと一緒に、思わずガクンと体の顫えるような、口惜くやしさに似た後悔を感じた。

(葉ちゃんは……)

 黒吉は、先ずそれが心懸りだったので、ぐっと頸を廻して隣りを確めようとした。

(おや……)

 彼の眼に這入ったのは、葉子より先きに、キンと澄み切った、尖った月の半分だった。

 急拵えの小屋天幕は、夕方の大暴風雨あらしに吹きまくられてぽっかり夜空に口を開け、恰度そこから、のり出すように月が覗き込み、地底のようにシンと澱んだ小屋の中に白々とした、絹糸のような、光を撒いているのだ。暴風雨あらしの後の月は物凄いまでに、冴え冴えとしていた。

(まだ夜中だ)

 黒吉は※ほ[#「口+息」、22-9]っと心配を排はき棄てた。

 彼の隣りには、葉子が、いかにも寝苦しそうに寝ていた。先刻さっきは、確かに葉子だ、とは断言出来なかったが、いまでは極く淡い光ではあったが、その中でも、段々眼の馴れるに従って、黒吉には、ハッキリ葉子の姿が、写って来た。

 黒吉は、意を決したように、半身を蒲団から抜出し、月の光を遮らないように――、音のしないように、そっと彼女の顔を覗きこんだ。

 眼の下には、月の光を受けて、いつもより蒼白く見える葉子の、幼い顔が、少しばかり口さえ開け、寝入っていた。もう少し月の光が強かったら、この房々としたオカッパの頭髪かみのけが黄金のように光るだろう――と思えた。

 又、襟足の洗いおとした白粉が、この幼い葉子の寝姿を少年の心にも、一入ひとしお可憐いじらしく見せていた。

 暫く、ぼんやりと、その夢のように霞んだ、葉子の顔を、見詰めていた黒吉は、ゴクンと固い唾を咽喉へ通すと、その薄く開かれた唇から、寝息でも聴こうとするのか、顔を次第次第に近附けて行った。

 何故か、彼の唇は、ガザガザに乾いていた。

 やがて、この弱々しい月光の下で、二つのさな頭の影が、一つになって仕舞うと、彼は、葉子の頬についている、小さい愛嬌黒子ぼくろが、自分の頬をも、凹へこますのを感じた。

二ノ五

 黒吉の、唇に感じた、葉子の唇の感触は、ぬくぬくとして弾力に富んだはんぺんのようだった。妙な連想だけれど、事実彼の経験では、これが一番よく似ていたのだ。

 唯、違った所――それは非常に違ったところがあるのだが――残念ながら、それをいい表わす言葉を知らなかった。

 彼は、そーっと腕の力を抜こうとした。途端に、肘の下の羽目板が、鈍い音を立てた。造作の悪い掛小屋なので、一寸した重みの加減でも、板が軋むのだ。シンとした周囲あたりと、針のように尖った、彼の神経に、それが幾層倍にも、拡大されて響き渡った。

 黒吉の心臓は、瞬間、ドキンと音がして止ったようだった。

「ク……」

 周章あわてて顔を上げた彼の眼の下で、葉子は、悪い夢でも見たのか、咽喉を鳴らすと、寝返りを打って、向うを向いて仕舞った。

(眼を覚ましたかな)

 黒吉は、思いきり息を深くしながら、葉子の墨のような、後向きの寝姿を、見守った。(いや、大丈夫だ)

 寝返りをした葉子は、幸い、眼を覚まさなかったと見えて、直ぐ又かすかな、寝息が、聴えて来た。

 彼は、ようやく※ほ[#「口+息」、24-4]っと、熱

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anond:20250708044816

 辺鄙な、村はずれの丘には、いつの間にか、華やかな幕を沢山吊るした急拵ごしらえの小屋掛が出来て、極東曲馬団の名がかけられ、狂燥なジンタと、ヒョロヒョロと空気を伝わるフリュートの音に、村人は、老おいも若きも、しばし、強烈な色彩と音楽スリル享楽し、又、いつの間にか曲馬団が他へ流れて行っても、しばらくは、フト白い流れ雲の中に、少年少女の縊くびれた肢体を思い出すのである

 トテモ華やかな、その空気の中にも、やっぱり、小さな「悩める虫」がいるのだ。

一ノ二

莫迦ッ、そんな事が出来ねエのか、間抜けめ!」

 親方は、野卑な言葉で、そう呶鳴どなると、手に持った革の鞭で、床をビシビシ撲りつけながら、黒吉くろきちを、グッと睨みつけるのだった。

 まだいたいけな少年の黒吉は、恐ろしさにオドオドして、

「済みません、済みません」

 そんな事を、呟くようにいうと、ぼろぼろに裂けた肉襦袢じゅばんの、肩の辺を擦さすりながら、氷のように冷めたい床の上に、又無器用な体つきで、ゴロンゴロンと幾度も「逆立ち」を遣り直していた。

 饑ひもじさと、恐ろしさと、苦痛と、寒気と、そして他の座員の嘲笑とが、もう毎度の事だったが、黒吉の身の周りに、犇々ひしひしと迫って、思わずホロホロと滾こぼした血のような涙が、荒削りの床に、黒い斑点を残して、音もなく滲しみ込んで行った。

 ――ここは、極東曲馬団の楽屋裏だった。

 逆立ちの下手な、無器用な黒吉は、ここの少年座員なのだ

 鴉からす黒吉。というのが彼の名前だった。しかしこれは舞台だけの芸名か、それとも本当の名前か、恐らくこれは字面じづらから見て、親方が、勝手につけた名前に違いないが、本名となると彼自身は勿論の事、親方だってハッキリ知っているかどうかは疑わしいものだった。

 黒吉自身記憶といっては、極めてぼんやりしたものだったけれど、いたましい事には、それは何時も、この曲馬団の片隅の、衣裳戸棚から始まっていた。

 それで、彼がもの心のついた時からは、――彼の記憶が始まった時からは、いつも周囲には、悲壮ジンタと、くしゃくしゃになったあくどい色の衣裳と、そして、それらを罩こめた安白粉おしろいの匂いや、汗のしみた肉襦袢の、ムッとした嗅気が、重なり合って、色彩っていた。

 こうした頽廃的な雰囲気の中に、いつも絶えない、座員間の軋轢あつれきと、華やかな底に澱む、ひがんだ蒼黒い空気とは、幼い黒吉の心から、跡形もなく「朗らかさ」を毟むしり取って仕舞った。そして、あとに残った陰欝な、日陰の虫のような少年の心に、世の中というものを、一風変った方向からのみ、見詰めさせていた。

 彼は用のない時には、何時も、太い丸太が荒縄で、蜘蛛の巣のように、縦横無尽に張りまわされている薄暗い楽屋の隅で、何かぼんやりえこんでいた。それは少年らしくもない憂欝な、女々しい姿だった。

 黒吉は明かに、他の同輩の少年から

「オイ、こっちへこいよ」

 と声をかけられるのを恐れているように見えた。

 しかし、それは、単に彼の危惧に過ぎなかった。

 他の少年座員達は、誰も、この憂欝な顔をした、芸の不器用な、そして親方におぼえのよくない黒吉と、進んで遊ぼうというものはなかった。(それは恐ろしい団長への、気兼ねもあったろうが)寧ろ彼等は、黒吉の方からしかけても、決して色よい返事は、しないように思われた。

 結局、黒吉はそれをいい事にして、独りぽつねんと、小屋の隅に忘れられた儘、たった一つ、彼に残されたオアシスである他愛もない「空想」に耽っていた。

一ノ三

 憂欝な少年黒吉が、何を考えているのか。

 ――その前に、彼が、なぜ親方のおぼえが悪いのだろうかという事をいわなければならない。

 (それは、彼の憂欝性にも、重大な影響のある事だから

 黒吉は、どう見ても、親方の「お気に入り」とは思えなかった。それは、勿論彼が、芸の未熟な不器用だった事も、確かにその原因の、一つだったけれど、他の大きな原因は、彼が醜い容貌だ、という先天的な不運に、禍わざわいされていたのだった。

 男の子容貌が、そんなにも、幼い心を虐しいたげるものだろうか――。

 如何にも、舞台の上で生活するものにとって、顔の美醜は非常に大きなハンデキャップなのだ。彼の同輩の愛くるしい少年が、舞台で、どうしたはずみか、ストンと尻もちをついたとしたら、観客は

「まあ、可哀そうに……あら、赤くなって、こっちを見てるわ、まるで正美さんみたいね

 そういって可愛い美少年は、失敗をした為に、却って、観客の人気を得るのだ。けれど、それに引きかえて、醜い顔だちを持った黒吉が、舞台でそれと同じような失敗をしても、観客は、何の遠慮もなく、このぎこちない少年の未熟さを嘲笑うのだった。

 この観客にさえ嗤わらわれる黒吉は、勿論親方にとって、どんなに間抜けな、穀潰ごくつぶしに見えたかは充分想像が、出来るのだった。従って、黒吉に対する、親方仕打ちがどんなものだったかも――

(俺は芸が下手なんだ)

(俺は醜い男なんだ)

 薄暗い小屋の片隅で、独りぽつんと、考えこんでいる黒吉は、楽しい空想どころか、彼の幼い心には、この二つの子供らしくもない懊悩が、いつも吹き荒すさんでいるのだった。

 そして、それは彼の心の底へ、少年らしい甘えた気持を、ひた押しに内攻して仕舞って、彼を尚一層、陰気にする外、何んの役にもたたなかった。冷たい冷たい胸の中に、熱いものは、ただ一つ涙だけだった。

 こうした雰囲気の中に、閉じこめられた鴉黒吉が、真直に伸びる筈はなかった。

 ――そして、蒼白い「歪んだ心」を持った少年が、ここに一人生成されて行った。

 世の中の少年少女達が、喜々として、小学校に通い始めた頃だろうか。勿論黒吉には、そんな恵まれ生活は、遠く想像の外だった。

 しかし、この頃から黒吉は、同輩の幼い座員の中でも、少年少女とを、異った眼で見るようになって来た。

「何」という、ハッキリした相違はないのだが、女の子莫迦にされた時には、不思議男の子に罵られたような、憤りは感じなかったのだった。寧ろ、

(いっそ、あの手で打ぶたれたら……)

 と思うと、何かゾクゾクとした、喜びに似た気持を感じるのだ。

 これが何んであるか、黒吉は、次第に、その姿を、ハッキリ見るようになって来た。

一ノ四

 安白粉の匂いと、汗ばんだ体臭と、そして、ぺらぺらなあくどい色の衣裳が、雑巾のように、投げ散らかされた、この頽廃的な曲馬団の楽屋で、侮蔑の中に育てられた、陰気な少年の「歪んだ心」には、もうませた女の子への、不思議な執着が、ジクジクと燃えて来たのだ。

 ――そして、それを尚一層、駆立てるような、出来事が起った。

 それは、やっと敷地小屋掛けも済んで、いよいよ明日から公開、という前の日だった。

 団長は、例の通り、小六ヶ敷こむずかしい顔をして、小屋掛けの監督をしていたが、それが終って仕舞うと、さも「大仕事をした」というような顔をして、他のお気に入り幹部達と一緒に、何処か、遊びに出て行った。

 団長の遊びに行くのを、見送って仕舞うと、他の年かさな座員や、楽隊ジンタの係りの者なども、ようやくのびのびとして、思い思いの雑談に高笑いを立てていたが、剽軽者ひょうきんものの仙次が、自分の役であるピエロ舞台着を調べながら

「オイ、親父おやじが行ったぜ、俺の方も行こうか」

 恰度それが、合図でもあったかのように、急に話声が高くなった。

「ウン、たまには一杯やらなくちゃ……」

「ちえッ、たまには、とはよくもいいやがった。明日があるんだ、大丈夫か」

「ナーニ、少しはやらなくちゃ続かねエよ、いやなら止せよ」

「いやじゃねエよ」

ハハハ、五月蠅うるせえなア」

 と、如何にも嬉しそうに、がやがや喋りながら、それでも大急ぎで支度をして、町の中に開放されて行った。

 そして、何時か、このガランとした小屋の中には、蒲団ふとん係りの源二郎爺さんと、子供の座員だけが、ぽつんつんと取り残されていた。子供の座員は、外出を禁じられていた。それは勿論「脱走」に備えたものだった。その見張りの役が、今は老耄おいぼれて仕舞ったが、昔はこの一座を背負って立った源二郎爺じじいなのだ

 結局、幼い彼等は、小屋の中で、てんでに遊ぶより仕方がなかった。

 男の子男同志で、舞台を駈廻り、女の子は女らしく、固かたまって縄飛びをしていた。――そして、黒吉は、相変らず小屋の隅に、ぽつんと独りだった。

 しかし、何時になく、黒吉の眼は、何か一心に見詰めているようだ。

(この憂欝な、オドオドした少年が、一生懸命に見ているものは、何んだろう)

 誰でも、彼の平生を知っているものが、この様子に気付いたならば、一寸ちょっとをかしげたに相違ない。そして、何気なくこの少年視線を追って見たならば、或はハッと眼を伏せたかも知れないのだ。

 黒吉の恰度眼の前では、少女の座員たちが、簡単アッパッパを着て、縄飛びをしていた――。しかし彼の見ているのは、それではなかった。この少女達が、急いきおいよく自分の背丈せい位もある縄を飛んで、トンと下りると、その瞬間、簡単アッパッパスカートは、風を受けて乱れ、そこから覗くのは、ふっくりとした白い腿だった――。

(十やそこらの少年が、こんなものを、息を殺して見詰めているのだろうか――)

 そう考えると、極めて不快な感じの前に何か、寒む寒むとした、恐ろしさを覚えるのだ。

 しかし、尚そればかりではなかった。

 この憂欝な少年の心を、根柢から、グスグスとゆり動かした、あの「ふっくりとした白い腿」がたえまなく、彼の頭の中に、大きく渦を捲いて、押流れていた。

 やがて、その心の渦が、ようやく鎮まって来ると、その渦の中から、浮び上って来たのは、この一座の花形少女貴志田葉子きしだようこ」の顔だった。

 だが、それと同時に、黒吉は、いきなり打ち前倒のめされたような、劇しい不快な気持を、感じた。

(ちえッ、俺がいくらちゃんと遊ぼうったって、駄目だい。俺は芸が、下手くそなんだ。それに、あんな綺麗な葉ちゃんが、俺みたいな汚い子と遊んでくれるもんか……)

 だが、この少年の心の底へ、しっかり焼付られた、葉ちゃんへの、不思議な執着は、そんな事ぐらいでは、びくともしなかった。寧ろ

(駄目だ)

 と思えば思う程、余計に、いきなり大声で呶鳴ってみたいような焦燥を、いやが上にも煽立あおりたてているのだ。

 ――この頃から、彼のそぶりは、少しずつ変って来たようだった。それはよく気をつけて見たならば、相変らず小屋の片隅に、独りぽっちでいる黒吉の眼が、妙な光を持って来たのに、気がついたろう。そして、その時は彼の視線の先きに必ず幼い花形の、葉子が、愛くるしい姿をして飛廻っていたのだ。

 葉子は、まだ黒吉と同じように、十とう位だったが、顔は綺麗だし、芸は上手いし、自由小鳥のように朗らかで、あの気六ヶ敷い団長にすら、この上もなく可愛がられていたから、この陰惨な曲馬団の中でも、彼女だけは、充分幸福なように見えた。

 そして、勿論、この陰気な、醜い黒吉が、自分一挙一動を、舐めるように、見詰めているとは気づかなかったろう。

 黒吉自身は、彼女が、自分の事など、気にもかけていない、という事が「痛しかゆし」の気持だった。無論彼女

「こっちへいらっしゃいよ」

 とでも、声を掛けられたら、どんなに嬉しい事だろう。――しかし、その半面

「だらしがないのねエ、あんたなんか、大嫌いよ」

 といわれはしまいか、と思うと、彼女に話かけるどころか葉子が、何気なくこっちを見てさえ、

(俺を嗤うんじゃないか

 こうした感じが、脈管の中を、火のように逆流するのだ。それで、つと眼を伏せて仕舞う彼だった。

 黒吉は、自分でさえ、このひねくれた気持を知りながら、尚葉子への愛慕と伴に、どうしても、脱ぎ去る事が、出来なかった。

       ×

 思い出したように、賑やかなジンタが、「敷島マーチ」を一通り済ますと、続いて「カチウシャ」を始めた。フリュートの音が、ひょろひょろと蒼穹あおぞらに消えると、その合間合間に、乾からびた木戸番の「呼び込み」が、座員の心をも、何かそわそわさせるように、響いて来た。

「さあ、葉ちゃんの出番だよ」

「あら、もうあたしなの、いそがしいわ」

「いそいで、いそいで」

 葉子は周章あわててお煎餅せんべい一口齧かじると、衣裳部屋を飛出して行った。

 恰度、通り合せた黒吉は、ちらりとそれを見ると、何を思ったのか、その喰たべかけの煎餅を、そっと、いかにも大事そうに持って行った。

二ノ二

 葉子が、喰いかけて、抛り出して行った煎餅を、そっと、拾って来た黒吉は、座員達が、こってりと白粉を塗った顔を上気させながら、忙しそうに話し合っている所を、知らん顔して通り抜けると小屋の片隅の、座蒲団が山のように積上げられてある陰へ来た。

 黒吉は、経験で、舞台が始まると、こんなところには、滅多に人が来ない事を知っていた。

 それでも、注意深く、あたりに人気のないのを見澄ますと、こそこそと体を跼かがめながら、いまにも崩れそうに積上げられた座蒲団の隙間へ、潜り込んで行った。

 その隙間は、如何にも窮屈だったが、妙にぬくぬくとした弾力があって、何かなつかしいもののようであった。黒吉はやっと※ほっ[#「口+息」、16-9]とした落着きを味わいながら、あの煎餅のかけらを持ち迭かえると、それがさも大切な宝石でもあるかのように、そーっと手の掌ひらに載せて見た。

(これが、葉ちゃんの喰いかけだな)

 そう思うと、つい頬のゆるむ、嬉しさを感じた。……大事大事にとって置きたいような、……ぎゅっと抱締めたいような――。

 黒吉は、充分幸福を味わって、もう一遍沁々と、薄い光の中で、それを見詰めた。こうしてよくよく見ると、気の所為いか、その一かけの煎餅は、幾らか湿っているように思えた。

気をつけて、触ってみると、確かに、喰いかけのところが一寸湿っていた。

(葉ちゃんの唾つばきかな)

 黒吉の、小さい心臓は、この思わぬ、めっけものにガクガクと顫えた。

 彼は、いくら少年とはいえ、無論こんな一っかけの煎餅を、喰べたいばかりに、拾って来たのではなかった。黒吉には「葉子の喰べかけ」というところに、この煎餅が、幾カラットもあるダイヤモンドにも見えたのだ。

 しかし、触って見ると、このかけらは湿っている……

(葉ちゃんの唾だな)

 その瞬間、黒吉の頭には、衣裳部屋で、葉子が忙しそうにこの煎餅を咥くわえていた光景と、それにつづいてクロオズアップされた、彼女の、あの可愛い紅唇くちとが、アリアリと浮んだ。

 それと一緒に、彼は、思わずゴクンと、固い唾を飲んだ。

 黒吉は、妖しく眼を光らせながら、あたりを偸ぬすみ見ると、やがて、意を決したように、その葉子の唾液つばきで湿ったに違いない煎餅のかけらを、そっと唇に近づけた……。

(鹹しょっぱい――な)

 これは、勿論塩煎餅の味だったろう。だが、黒吉の手は、何故かぶるぶると顫えた。

 彼の少年らしくもない、深い陰影かげを持った顔は、何時か熱っぽく上気し、激しく心臓から投出される、血潮は、顳※(「需+頁」、第3水準1-94-6)こめかみをひくひくと波打たせていた。

 そして、もう手の掌に、べとべとと溶けて仕舞った、煎餅のかけらから、尚も「葉子の匂い」を嗅ぎ出そうと、総てを忘れて、ペロペロと舐め続けていた……。

「こらっ。何をしてるんだ、黒公」

 ハッと気がつくと、蒲団の山の向うから、源二郎爺の、怒りを含んだ怪訝な顔が、覗いていた。

「出番じゃねエか。愚図愚図してると、又ひどいぞ」

「ウン」

 黒吉は、瞬間、親方の顔を思い出して、ピョコンと飛起きた。そして、ベタベタと粘る手の掌を肉襦袢にこすりこすり、周章あわてて楽屋の方へ駈けて行った。

二ノ三

 黒吉は、命ぜられた、色々の曲芸をしながらも、頭の中は、いつも葉子の事で一杯だった。

(一度でいいから葉ちゃんと、沁々話したい)

 これが、彼の歪められた心に発生わいて来た、たった一つの望みだった。

 彼がもっと朗らかな、普通の子供であったならば、いつも同じ小屋にいる葉子だもの、そんな事は、造作なく実現したに違いない。

 しかし、それにしては、黒吉は、余りに陰気な、ひねくれた少年だった。――というのも、彼の暗い周囲がそうさせたのだが――。

 そして、早熟ませた葉子への執着が、堰せき切れなくなった時に彼が見つけたのは、あの煎餅のかけらが産んだ、恐ろしい恍惚エクスタシーだった。

 一度こうした排はけ口を見つけた、彼の心が、その儘止まる筈はなかった――寧ろ、津浪のようにその排け口に向って殺到して行ったのだ。

 彼は、そっと、人のいないのを見すまして、衣裳部屋に潜り込み、葉子の小ちっちゃい肉襦袢に、醜悪な顔を、埋うずめていた事もあった。

 その白粉の匂いと、体臭のむんむんする臭いが、彼自身眩暈めまいをさえ伴った、陶酔感を与えるのだ。

 そして、ふと、その肉襦袢に、葉子のオカッパの髪が、二三本ついていたのを見つけると、その大発見に狂喜しながら、注意ぶかく抓つまみ上げて、白い紙につつむと、あり合せの鉛筆で、

「葉子チャンノカミノケ」

 そんな文句を、下手糞な字で、たどたどしく書きつけ、もう一度、上から擦さすって見てから、それを、肌身深く蔵しまいこんで仕舞った……。

 こうした彼の悪癖が、益々慕って行った事は、その後、葉子の持ち物が、ちょいちょい失なくなるようになった事でも、充分想像が出来た。

 失くなるといっても、勿論たいした品物を、曲馬団の少女が、持っている訳はなかったから、もうすり減った、真黒く脂肪あぶら足の跡が附いた、下駄の一方だとか、毛の抜けて仕舞った竹の歯楊子ようじだとか、そういった、極く下らないものだった。それで、

(盗られた)

 という気持を、葉子自身ですら感じなかったのは、彼にとっては、もっけの幸いだった。しかしこれらの「下らない紛失物」が、黒吉にとって、どんなに貴重なものだったかは、また容易に想像出来るのだ。

 ――ここまでは、黒吉少年の心に醗酵した、侘わびしい(しか執拗な)彼一人だけの、胸の中の恋だった。

 だが、ここに葉子が、暴風雨あらしを伴奏にして、颯爽と、現実舞台へ、登場しようとしている。

       ×

 極東曲馬団は、町から町、盛り場から盛り場を、人々の眼を楽しませながら、流れ移っていた。

 そして、ある田舎町に敷地を借り、ようやく小屋掛けも終ったと殆んど同時に、朝から頸を傾かしげさせていた空模様が、一時に頽くずれて、大粒の雨が、無気味な風を含んで、ぽたりぽたり落ちて来たかと思うと、もう篠つくような豪雨に変っていた。

 団長等は、早々に、宿屋に引上げて仕舞ったが、子供の座員や、下っぱの座員などは、経費の関係で、いつも、この小屋に泊る事を言渡されていた。子供等の方では、これは当然だと思っていたし、又団長がいないという事で、却って喜んでいたようでもあった。

 しかし、この急拵えの小屋が、この沛然はいぜんと降る豪雨に、無事な筈はなく、雨漏りをさけて遁げ廻った末、やっと楽屋の隅で、ひと凝固かたまりになって、横になる事が出来たのは、もう大分夜が更けてからだった。

 黒吉は、眼をつぶって、ようやく小降りになって来たらしい、雨の音を聴いていると、もう肩を並べた隣りからは、幽かな寝息さえ聴えて来た。

 それと同時に、黒吉は、何かドキンとしたものを感じた。

(隣りに寝ているのは、葉ちゃんじゃないか――)

二ノ四

 瞬間、黒吉は自分の頭が、シーンと澄み透って行くのを感じた。

(果して、隣りで寝ているのは、葉ちゃんだろうか)

 それは勿論、第六感とでもいうのか、極く曖昧ものだった。が、あの騒ぎで、皆んな、ごたごたに寝て仕舞ったのだから全然あり得ない事でもないのだ。

 そう思うと、隣りと接した、肩の辺が、熱っぽく、暑苦しいようにさえ感じた。そして、心臓はその鼓動と伴に、胸の中、一杯に拡がって行った。

 黒吉は、思い切って、起上り、顔を覗き見たい衝動を感じた。あたりは真暗だが、よく気をつけて覗きこめば、顔の判別がつかぬ、という程でもないように思われた。

 彼は、そーっと、薄い蒲団の縁へりへ、手をかけた。だが――

(まてまて。葉ちゃんならば、こんなに素晴らしい事はない。けれども、こんなにぎっしり寝ている処で、ごそごそ起きたら、どうかすると、彼女は眼を覚ますかも知れない。

 それだけならいいが、眼を覚まして、俺が覗きこんでいた事を知ったら、きっと葉ちゃんは、真赤になって、この醜い俺を罵り、どこか遠くへ寝床をかえて仕舞うに違いないんだ。

 ――そんな莫迦な事をするより、例え短かくとも、夜が明けるまで、こうして葉ちゃんの、ふくよかな肩の感触を恣ほしいままにした方が、どれ程気が利いていることか……)

 黒吉の心の中の、内気な半面が、こう囁いた。

 彼は、蒲団にかけた手を、又静かに戻して仕舞うと、今度は、全身の注意を、細かに砕いて、彼女の方へぴったり、摺り寄って行った。そして、温もりに混った、彼女の穏やかな心臓の響きを、肩の辺に聴いていた……。

 フト、冷めたい風を感じて、何時の間にかつぶっていた眼を明けて見ると、あたりには極くうっすらと、光が射しているのに、気がついた。

(もう夜明けかな――いつの間に寝て仕舞ったんだろう)

 それと一緒に、思わずガクンと体の顫えるような、口惜くやしさに似た後悔を感じた。

(葉ちゃんは……)

 黒吉は、先ずそれが心懸りだったので、ぐっと頸を廻して隣りを確めようとした。

(おや……)

 彼の眼に這入ったのは、葉子より先きに、キンと澄み切った、尖った月の半分だった。

 急拵えの小屋天幕は、夕方の大暴風雨あらしに吹きまくられてぽっかり夜空に口を開け、恰度そこから、のり出すように月が覗き込み、地底のようにシンと澱んだ小屋の中に白々とした、絹糸のような、光を撒いているのだ。暴風雨あらしの後の月は物凄いまでに、冴え冴えとしていた。

(まだ夜中だ)

 黒吉は※ほ[#「口+息」、22-9]っと心配を排はき棄てた。

 彼の隣りには、葉子が、いかにも寝苦しそうに寝ていた。先刻さっきは、確かに葉子だ、とは断言出来なかったが、いまでは極く淡い光ではあったが、その中でも、段々眼の馴れるに従って、黒吉には、ハッキリ葉子の姿が、写って来た。

 黒吉は、意を決したように、半身を蒲団から抜出し、月の光を遮らないように――、音のしないように、そっと彼女の顔を覗きこんだ。

 眼の下には、月の光を受けて、いつもより蒼白く見える葉子の、幼い顔が、少しばかり口さえ開け、寝入っていた。もう少し月の光が強かったら、この房々としたオカッパの頭髪かみのけが黄金のように光るだろう――と思えた。

 又、襟足の洗いおとした白粉が、この幼い葉子の寝姿を少年の心にも、一入ひとしお可憐いじらしく見せていた。

 暫く、ぼんやりと、その夢のように霞んだ、葉子の顔を、見詰めていた黒吉は、ゴクンと固い唾を咽喉へ通すと、その薄く開かれた唇から、寝息でも聴こうとするのか、顔を次第次第に近附けて行った。

 何故か、彼の唇は、ガザガザに乾いていた。

 やがて、この弱々しい月光の下で、二つのさな頭の影が、一つになって仕舞うと、彼は、葉子の頬についている、小さい愛嬌黒子ぼくろが、自分の頬をも、凹へこますのを感じた。

二ノ五

 黒吉の、唇に感じた、葉子の唇の感触は、ぬくぬくとして弾力に富んだはんぺんのようだった。妙な連想だけれど、事実彼の経験では、これが一番よく似ていたのだ。

 唯、違った所――それは非常に違ったところがあるのだが――残念ながら、それをいい表わす言葉を知らなかった。

 彼は、そーっと腕の力を抜こうとした。途端に、肘の下の羽目板が、鈍い音を立てた。造作の悪い掛小屋なので、一寸した重みの加減でも、板が軋むのだ。シンとした周囲あたりと、針のように尖った、彼の神経に、それが幾層倍にも、拡大されて響き渡った。

 黒吉の心臓は、瞬間、ドキンと音がして止ったようだった。

「ク……」

 周章あわてて顔を上げた彼の眼の下で、葉子は、悪い夢でも見たのか、咽喉を鳴らすと、寝返りを打って、向うを向いて仕舞った。

(眼を覚ましたかな)

 黒吉は、思いきり息を深くしながら、葉子の墨のような、後向きの寝姿を、見守った。(いや、大丈夫だ)

 寝返りをした葉子は、幸い、眼を覚まさなかったと見えて、直ぐ又かすかな、寝息が、聴えて来た。

 彼は、ようやく※ほ[#「口+息」、24-4]っと、熱

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anond:20250708044816

 辺鄙な、村はずれの丘には、いつの間にか、華やかな幕を沢山吊るした急拵ごしらえの小屋掛が出来て、極東曲馬団の名がかけられ、狂燥なジンタと、ヒョロヒョロと空気を伝わるフリュートの音に、村人は、老おいも若きも、しばし、強烈な色彩と音楽スリル享楽し、又、いつの間にか曲馬団が他へ流れて行っても、しばらくは、フト白い流れ雲の中に、少年少女の縊くびれた肢体を思い出すのである

 トテモ華やかな、その空気の中にも、やっぱり、小さな「悩める虫」がいるのだ。

一ノ二

莫迦ッ、そんな事が出来ねエのか、間抜けめ!」

 親方は、野卑な言葉で、そう呶鳴どなると、手に持った革の鞭で、床をビシビシ撲りつけながら、黒吉くろきちを、グッと睨みつけるのだった。

 まだいたいけな少年の黒吉は、恐ろしさにオドオドして、

「済みません、済みません」

 そんな事を、呟くようにいうと、ぼろぼろに裂けた肉襦袢じゅばんの、肩の辺を擦さすりながら、氷のように冷めたい床の上に、又無器用な体つきで、ゴロンゴロンと幾度も「逆立ち」を遣り直していた。

 饑ひもじさと、恐ろしさと、苦痛と、寒気と、そして他の座員の嘲笑とが、もう毎度の事だったが、黒吉の身の周りに、犇々ひしひしと迫って、思わずホロホロと滾こぼした血のような涙が、荒削りの床に、黒い斑点を残して、音もなく滲しみ込んで行った。

 ――ここは、極東曲馬団の楽屋裏だった。

 逆立ちの下手な、無器用な黒吉は、ここの少年座員なのだ

 鴉からす黒吉。というのが彼の名前だった。しかしこれは舞台だけの芸名か、それとも本当の名前か、恐らくこれは字面じづらから見て、親方が、勝手につけた名前に違いないが、本名となると彼自身は勿論の事、親方だってハッキリ知っているかどうかは疑わしいものだった。

 黒吉自身記憶といっては、極めてぼんやりしたものだったけれど、いたましい事には、それは何時も、この曲馬団の片隅の、衣裳戸棚から始まっていた。

 それで、彼がもの心のついた時からは、――彼の記憶が始まった時からは、いつも周囲には、悲壮ジンタと、くしゃくしゃになったあくどい色の衣裳と、そして、それらを罩こめた安白粉おしろいの匂いや、汗のしみた肉襦袢の、ムッとした嗅気が、重なり合って、色彩っていた。

 こうした頽廃的な雰囲気の中に、いつも絶えない、座員間の軋轢あつれきと、華やかな底に澱む、ひがんだ蒼黒い空気とは、幼い黒吉の心から、跡形もなく「朗らかさ」を毟むしり取って仕舞った。そして、あとに残った陰欝な、日陰の虫のような少年の心に、世の中というものを、一風変った方向からのみ、見詰めさせていた。

 彼は用のない時には、何時も、太い丸太が荒縄で、蜘蛛の巣のように、縦横無尽に張りまわされている薄暗い楽屋の隅で、何かぼんやりえこんでいた。それは少年らしくもない憂欝な、女々しい姿だった。

 黒吉は明かに、他の同輩の少年から

「オイ、こっちへこいよ」

 と声をかけられるのを恐れているように見えた。

 しかし、それは、単に彼の危惧に過ぎなかった。

 他の少年座員達は、誰も、この憂欝な顔をした、芸の不器用な、そして親方におぼえのよくない黒吉と、進んで遊ぼうというものはなかった。(それは恐ろしい団長への、気兼ねもあったろうが)寧ろ彼等は、黒吉の方からしかけても、決して色よい返事は、しないように思われた。

 結局、黒吉はそれをいい事にして、独りぽつねんと、小屋の隅に忘れられた儘、たった一つ、彼に残されたオアシスである他愛もない「空想」に耽っていた。

一ノ三

 憂欝な少年黒吉が、何を考えているのか。

 ――その前に、彼が、なぜ親方のおぼえが悪いのだろうかという事をいわなければならない。

 (それは、彼の憂欝性にも、重大な影響のある事だから

 黒吉は、どう見ても、親方の「お気に入り」とは思えなかった。それは、勿論彼が、芸の未熟な不器用だった事も、確かにその原因の、一つだったけれど、他の大きな原因は、彼が醜い容貌だ、という先天的な不運に、禍わざわいされていたのだった。

 男の子容貌が、そんなにも、幼い心を虐しいたげるものだろうか――。

 如何にも、舞台の上で生活するものにとって、顔の美醜は非常に大きなハンデキャップなのだ。彼の同輩の愛くるしい少年が、舞台で、どうしたはずみか、ストンと尻もちをついたとしたら、観客は

「まあ、可哀そうに……あら、赤くなって、こっちを見てるわ、まるで正美さんみたいね

 そういって可愛い美少年は、失敗をした為に、却って、観客の人気を得るのだ。けれど、それに引きかえて、醜い顔だちを持った黒吉が、舞台でそれと同じような失敗をしても、観客は、何の遠慮もなく、このぎこちない少年の未熟さを嘲笑うのだった。

 この観客にさえ嗤わらわれる黒吉は、勿論親方にとって、どんなに間抜けな、穀潰ごくつぶしに見えたかは充分想像が、出来るのだった。従って、黒吉に対する、親方仕打ちがどんなものだったかも――

(俺は芸が下手なんだ)

(俺は醜い男なんだ)

 薄暗い小屋の片隅で、独りぽつんと、考えこんでいる黒吉は、楽しい空想どころか、彼の幼い心には、この二つの子供らしくもない懊悩が、いつも吹き荒すさんでいるのだった。

 そして、それは彼の心の底へ、少年らしい甘えた気持を、ひた押しに内攻して仕舞って、彼を尚一層、陰気にする外、何んの役にもたたなかった。冷たい冷たい胸の中に、熱いものは、ただ一つ涙だけだった。

 こうした雰囲気の中に、閉じこめられた鴉黒吉が、真直に伸びる筈はなかった。

 ――そして、蒼白い「歪んだ心」を持った少年が、ここに一人生成されて行った。

 世の中の少年少女達が、喜々として、小学校に通い始めた頃だろうか。勿論黒吉には、そんな恵まれ生活は、遠く想像の外だった。

 しかし、この頃から黒吉は、同輩の幼い座員の中でも、少年少女とを、異った眼で見るようになって来た。

「何」という、ハッキリした相違はないのだが、女の子莫迦にされた時には、不思議男の子に罵られたような、憤りは感じなかったのだった。寧ろ、

(いっそ、あの手で打ぶたれたら……)

 と思うと、何かゾクゾクとした、喜びに似た気持を感じるのだ。

 これが何んであるか、黒吉は、次第に、その姿を、ハッキリ見るようになって来た。

一ノ四

 安白粉の匂いと、汗ばんだ体臭と、そして、ぺらぺらなあくどい色の衣裳が、雑巾のように、投げ散らかされた、この頽廃的な曲馬団の楽屋で、侮蔑の中に育てられた、陰気な少年の「歪んだ心」には、もうませた女の子への、不思議な執着が、ジクジクと燃えて来たのだ。

 ――そして、それを尚一層、駆立てるような、出来事が起った。

 それは、やっと敷地小屋掛けも済んで、いよいよ明日から公開、という前の日だった。

 団長は、例の通り、小六ヶ敷こむずかしい顔をして、小屋掛けの監督をしていたが、それが終って仕舞うと、さも「大仕事をした」というような顔をして、他のお気に入り幹部達と一緒に、何処か、遊びに出て行った。

 団長の遊びに行くのを、見送って仕舞うと、他の年かさな座員や、楽隊ジンタの係りの者なども、ようやくのびのびとして、思い思いの雑談に高笑いを立てていたが、剽軽者ひょうきんものの仙次が、自分の役であるピエロ舞台着を調べながら

「オイ、親父おやじが行ったぜ、俺の方も行こうか」

 恰度それが、合図でもあったかのように、急に話声が高くなった。

「ウン、たまには一杯やらなくちゃ……」

「ちえッ、たまには、とはよくもいいやがった。明日があるんだ、大丈夫か」

「ナーニ、少しはやらなくちゃ続かねエよ、いやなら止せよ」

「いやじゃねエよ」

ハハハ、五月蠅うるせえなア」

 と、如何にも嬉しそうに、がやがや喋りながら、それでも大急ぎで支度をして、町の中に開放されて行った。

 そして、何時か、このガランとした小屋の中には、蒲団ふとん係りの源二郎爺さんと、子供の座員だけが、ぽつんつんと取り残されていた。子供の座員は、外出を禁じられていた。それは勿論「脱走」に備えたものだった。その見張りの役が、今は老耄おいぼれて仕舞ったが、昔はこの一座を背負って立った源二郎爺じじいなのだ

 結局、幼い彼等は、小屋の中で、てんでに遊ぶより仕方がなかった。

 男の子男同志で、舞台を駈廻り、女の子は女らしく、固かたまって縄飛びをしていた。――そして、黒吉は、相変らず小屋の隅に、ぽつんと独りだった。

 しかし、何時になく、黒吉の眼は、何か一心に見詰めているようだ。

(この憂欝な、オドオドした少年が、一生懸命に見ているものは、何んだろう)

 誰でも、彼の平生を知っているものが、この様子に気付いたならば、一寸ちょっとをかしげたに相違ない。そして、何気なくこの少年視線を追って見たならば、或はハッと眼を伏せたかも知れないのだ。

 黒吉の恰度眼の前では、少女の座員たちが、簡単アッパッパを着て、縄飛びをしていた――。しかし彼の見ているのは、それではなかった。この少女達が、急いきおいよく自分の背丈せい位もある縄を飛んで、トンと下りると、その瞬間、簡単アッパッパスカートは、風を受けて乱れ、そこから覗くのは、ふっくりとした白い腿だった――。

(十やそこらの少年が、こんなものを、息を殺して見詰めているのだろうか――)

 そう考えると、極めて不快な感じの前に何か、寒む寒むとした、恐ろしさを覚えるのだ。

 しかし、尚そればかりではなかった。

 この憂欝な少年の心を、根柢から、グスグスとゆり動かした、あの「ふっくりとした白い腿」がたえまなく、彼の頭の中に、大きく渦を捲いて、押流れていた。

 やがて、その心の渦が、ようやく鎮まって来ると、その渦の中から、浮び上って来たのは、この一座の花形少女貴志田葉子きしだようこ」の顔だった。

 だが、それと同時に、黒吉は、いきなり打ち前倒のめされたような、劇しい不快な気持を、感じた。

(ちえッ、俺がいくらちゃんと遊ぼうったって、駄目だい。俺は芸が、下手くそなんだ。それに、あんな綺麗な葉ちゃんが、俺みたいな汚い子と遊んでくれるもんか……)

 だが、この少年の心の底へ、しっかり焼付られた、葉ちゃんへの、不思議な執着は、そんな事ぐらいでは、びくともしなかった。寧ろ

(駄目だ)

 と思えば思う程、余計に、いきなり大声で呶鳴ってみたいような焦燥を、いやが上にも煽立あおりたてているのだ。

 ――この頃から、彼のそぶりは、少しずつ変って来たようだった。それはよく気をつけて見たならば、相変らず小屋の片隅に、独りぽっちでいる黒吉の眼が、妙な光を持って来たのに、気がついたろう。そして、その時は彼の視線の先きに必ず幼い花形の、葉子が、愛くるしい姿をして飛廻っていたのだ。

 葉子は、まだ黒吉と同じように、十とう位だったが、顔は綺麗だし、芸は上手いし、自由小鳥のように朗らかで、あの気六ヶ敷い団長にすら、この上もなく可愛がられていたから、この陰惨な曲馬団の中でも、彼女だけは、充分幸福なように見えた。

 そして、勿論、この陰気な、醜い黒吉が、自分一挙一動を、舐めるように、見詰めているとは気づかなかったろう。

 黒吉自身は、彼女が、自分の事など、気にもかけていない、という事が「痛しかゆし」の気持だった。無論彼女

「こっちへいらっしゃいよ」

 とでも、声を掛けられたら、どんなに嬉しい事だろう。――しかし、その半面

「だらしがないのねエ、あんたなんか、大嫌いよ」

 といわれはしまいか、と思うと、彼女に話かけるどころか葉子が、何気なくこっちを見てさえ、

(俺を嗤うんじゃないか

 こうした感じが、脈管の中を、火のように逆流するのだ。それで、つと眼を伏せて仕舞う彼だった。

 黒吉は、自分でさえ、このひねくれた気持を知りながら、尚葉子への愛慕と伴に、どうしても、脱ぎ去る事が、出来なかった。

       ×

 思い出したように、賑やかなジンタが、「敷島マーチ」を一通り済ますと、続いて「カチウシャ」を始めた。フリュートの音が、ひょろひょろと蒼穹あおぞらに消えると、その合間合間に、乾からびた木戸番の「呼び込み」が、座員の心をも、何かそわそわさせるように、響いて来た。

「さあ、葉ちゃんの出番だよ」

「あら、もうあたしなの、いそがしいわ」

「いそいで、いそいで」

 葉子は周章あわててお煎餅せんべい一口齧かじると、衣裳部屋を飛出して行った。

 恰度、通り合せた黒吉は、ちらりとそれを見ると、何を思ったのか、その喰たべかけの煎餅を、そっと、いかにも大事そうに持って行った。

二ノ二

 葉子が、喰いかけて、抛り出して行った煎餅を、そっと、拾って来た黒吉は、座員達が、こってりと白粉を塗った顔を上気させながら、忙しそうに話し合っている所を、知らん顔して通り抜けると小屋の片隅の、座蒲団が山のように積上げられてある陰へ来た。

 黒吉は、経験で、舞台が始まると、こんなところには、滅多に人が来ない事を知っていた。

 それでも、注意深く、あたりに人気のないのを見澄ますと、こそこそと体を跼かがめながら、いまにも崩れそうに積上げられた座蒲団の隙間へ、潜り込んで行った。

 その隙間は、如何にも窮屈だったが、妙にぬくぬくとした弾力があって、何かなつかしいもののようであった。黒吉はやっと※ほっ[#「口+息」、16-9]とした落着きを味わいながら、あの煎餅のかけらを持ち迭かえると、それがさも大切な宝石でもあるかのように、そーっと手の掌ひらに載せて見た。

(これが、葉ちゃんの喰いかけだな)

 そう思うと、つい頬のゆるむ、嬉しさを感じた。……大事大事にとって置きたいような、……ぎゅっと抱締めたいような――。

 黒吉は、充分幸福を味わって、もう一遍沁々と、薄い光の中で、それを見詰めた。こうしてよくよく見ると、気の所為いか、その一かけの煎餅は、幾らか湿っているように思えた。

気をつけて、触ってみると、確かに、喰いかけのところが一寸湿っていた。

(葉ちゃんの唾つばきかな)

 黒吉の、小さい心臓は、この思わぬ、めっけものにガクガクと顫えた。

 彼は、いくら少年とはいえ、無論こんな一っかけの煎餅を、喰べたいばかりに、拾って来たのではなかった。黒吉には「葉子の喰べかけ」というところに、この煎餅が、幾カラットもあるダイヤモンドにも見えたのだ。

 しかし、触って見ると、このかけらは湿っている……

(葉ちゃんの唾だな)

 その瞬間、黒吉の頭には、衣裳部屋で、葉子が忙しそうにこの煎餅を咥くわえていた光景と、それにつづいてクロオズアップされた、彼女の、あの可愛い紅唇くちとが、アリアリと浮んだ。

 それと一緒に、彼は、思わずゴクンと、固い唾を飲んだ。

 黒吉は、妖しく眼を光らせながら、あたりを偸ぬすみ見ると、やがて、意を決したように、その葉子の唾液つばきで湿ったに違いない煎餅のかけらを、そっと唇に近づけた……。

(鹹しょっぱい――な)

 これは、勿論塩煎餅の味だったろう。だが、黒吉の手は、何故かぶるぶると顫えた。

 彼の少年らしくもない、深い陰影かげを持った顔は、何時か熱っぽく上気し、激しく心臓から投出される、血潮は、顳※(「需+頁」、第3水準1-94-6)こめかみをひくひくと波打たせていた。

 そして、もう手の掌に、べとべとと溶けて仕舞った、煎餅のかけらから、尚も「葉子の匂い」を嗅ぎ出そうと、総てを忘れて、ペロペロと舐め続けていた……。

「こらっ。何をしてるんだ、黒公」

 ハッと気がつくと、蒲団の山の向うから、源二郎爺の、怒りを含んだ怪訝な顔が、覗いていた。

「出番じゃねエか。愚図愚図してると、又ひどいぞ」

「ウン」

 黒吉は、瞬間、親方の顔を思い出して、ピョコンと飛起きた。そして、ベタベタと粘る手の掌を肉襦袢にこすりこすり、周章あわてて楽屋の方へ駈けて行った。

二ノ三

 黒吉は、命ぜられた、色々の曲芸をしながらも、頭の中は、いつも葉子の事で一杯だった。

(一度でいいから葉ちゃんと、沁々話したい)

 これが、彼の歪められた心に発生わいて来た、たった一つの望みだった。

 彼がもっと朗らかな、普通の子供であったならば、いつも同じ小屋にいる葉子だもの、そんな事は、造作なく実現したに違いない。

 しかし、それにしては、黒吉は、余りに陰気な、ひねくれた少年だった。――というのも、彼の暗い周囲がそうさせたのだが――。

 そして、早熟ませた葉子への執着が、堰せき切れなくなった時に彼が見つけたのは、あの煎餅のかけらが産んだ、恐ろしい恍惚エクスタシーだった。

 一度こうした排はけ口を見つけた、彼の心が、その儘止まる筈はなかった――寧ろ、津浪のようにその排け口に向って殺到して行ったのだ。

 彼は、そっと、人のいないのを見すまして、衣裳部屋に潜り込み、葉子の小ちっちゃい肉襦袢に、醜悪な顔を、埋うずめていた事もあった。

 その白粉の匂いと、体臭のむんむんする臭いが、彼自身眩暈めまいをさえ伴った、陶酔感を与えるのだ。

 そして、ふと、その肉襦袢に、葉子のオカッパの髪が、二三本ついていたのを見つけると、その大発見に狂喜しながら、注意ぶかく抓つまみ上げて、白い紙につつむと、あり合せの鉛筆で、

「葉子チャンノカミノケ」

 そんな文句を、下手糞な字で、たどたどしく書きつけ、もう一度、上から擦さすって見てから、それを、肌身深く蔵しまいこんで仕舞った……。

 こうした彼の悪癖が、益々慕って行った事は、その後、葉子の持ち物が、ちょいちょい失なくなるようになった事でも、充分想像が出来た。

 失くなるといっても、勿論たいした品物を、曲馬団の少女が、持っている訳はなかったから、もうすり減った、真黒く脂肪あぶら足の跡が附いた、下駄の一方だとか、毛の抜けて仕舞った竹の歯楊子ようじだとか、そういった、極く下らないものだった。それで、

(盗られた)

 という気持を、葉子自身ですら感じなかったのは、彼にとっては、もっけの幸いだった。しかしこれらの「下らない紛失物」が、黒吉にとって、どんなに貴重なものだったかは、また容易に想像出来るのだ。

 ――ここまでは、黒吉少年の心に醗酵した、侘わびしい(しか執拗な)彼一人だけの、胸の中の恋だった。

 だが、ここに葉子が、暴風雨あらしを伴奏にして、颯爽と、現実舞台へ、登場しようとしている。

       ×

 極東曲馬団は、町から町、盛り場から盛り場を、人々の眼を楽しませながら、流れ移っていた。

 そして、ある田舎町に敷地を借り、ようやく小屋掛けも終ったと殆んど同時に、朝から頸を傾かしげさせていた空模様が、一時に頽くずれて、大粒の雨が、無気味な風を含んで、ぽたりぽたり落ちて来たかと思うと、もう篠つくような豪雨に変っていた。

 団長等は、早々に、宿屋に引上げて仕舞ったが、子供の座員や、下っぱの座員などは、経費の関係で、いつも、この小屋に泊る事を言渡されていた。子供等の方では、これは当然だと思っていたし、又団長がいないという事で、却って喜んでいたようでもあった。

 しかし、この急拵えの小屋が、この沛然はいぜんと降る豪雨に、無事な筈はなく、雨漏りをさけて遁げ廻った末、やっと楽屋の隅で、ひと凝固かたまりになって、横になる事が出来たのは、もう大分夜が更けてからだった。

 黒吉は、眼をつぶって、ようやく小降りになって来たらしい、雨の音を聴いていると、もう肩を並べた隣りからは、幽かな寝息さえ聴えて来た。

 それと同時に、黒吉は、何かドキンとしたものを感じた。

(隣りに寝ているのは、葉ちゃんじゃないか――)

二ノ四

 瞬間、黒吉は自分の頭が、シーンと澄み透って行くのを感じた。

(果して、隣りで寝ているのは、葉ちゃんだろうか)

 それは勿論、第六感とでもいうのか、極く曖昧ものだった。が、あの騒ぎで、皆んな、ごたごたに寝て仕舞ったのだから全然あり得ない事でもないのだ。

 そう思うと、隣りと接した、肩の辺が、熱っぽく、暑苦しいようにさえ感じた。そして、心臓はその鼓動と伴に、胸の中、一杯に拡がって行った。

 黒吉は、思い切って、起上り、顔を覗き見たい衝動を感じた。あたりは真暗だが、よく気をつけて覗きこめば、顔の判別がつかぬ、という程でもないように思われた。

 彼は、そーっと、薄い蒲団の縁へりへ、手をかけた。だが――

(まてまて。葉ちゃんならば、こんなに素晴らしい事はない。けれども、こんなにぎっしり寝ている処で、ごそごそ起きたら、どうかすると、彼女は眼を覚ますかも知れない。

 それだけならいいが、眼を覚まして、俺が覗きこんでいた事を知ったら、きっと葉ちゃんは、真赤になって、この醜い俺を罵り、どこか遠くへ寝床をかえて仕舞うに違いないんだ。

 ――そんな莫迦な事をするより、例え短かくとも、夜が明けるまで、こうして葉ちゃんの、ふくよかな肩の感触を恣ほしいままにした方が、どれ程気が利いていることか……)

 黒吉の心の中の、内気な半面が、こう囁いた。

 彼は、蒲団にかけた手を、又静かに戻して仕舞うと、今度は、全身の注意を、細かに砕いて、彼女の方へぴったり、摺り寄って行った。そして、温もりに混った、彼女の穏やかな心臓の響きを、肩の辺に聴いていた……。

 フト、冷めたい風を感じて、何時の間にかつぶっていた眼を明けて見ると、あたりには極くうっすらと、光が射しているのに、気がついた。

(もう夜明けかな――いつの間に寝て仕舞ったんだろう)

 それと一緒に、思わずガクンと体の顫えるような、口惜くやしさに似た後悔を感じた。

(葉ちゃんは……)

 黒吉は、先ずそれが心懸りだったので、ぐっと頸を廻して隣りを確めようとした。

(おや……)

 彼の眼に這入ったのは、葉子より先きに、キンと澄み切った、尖った月の半分だった。

 急拵えの小屋天幕は、夕方の大暴風雨あらしに吹きまくられてぽっかり夜空に口を開け、恰度そこから、のり出すように月が覗き込み、地底のようにシンと澱んだ小屋の中に白々とした、絹糸のような、光を撒いているのだ。暴風雨あらしの後の月は物凄いまでに、冴え冴えとしていた。

(まだ夜中だ)

 黒吉は※ほ[#「口+息」、22-9]っと心配を排はき棄てた。

 彼の隣りには、葉子が、いかにも寝苦しそうに寝ていた。先刻さっきは、確かに葉子だ、とは断言出来なかったが、いまでは極く淡い光ではあったが、その中でも、段々眼の馴れるに従って、黒吉には、ハッキリ葉子の姿が、写って来た。

 黒吉は、意を決したように、半身を蒲団から抜出し、月の光を遮らないように――、音のしないように、そっと彼女の顔を覗きこんだ。

 眼の下には、月の光を受けて、いつもより蒼白く見える葉子の、幼い顔が、少しばかり口さえ開け、寝入っていた。もう少し月の光が強かったら、この房々としたオカッパの頭髪かみのけが黄金のように光るだろう――と思えた。

 又、襟足の洗いおとした白粉が、この幼い葉子の寝姿を少年の心にも、一入ひとしお可憐いじらしく見せていた。

 暫く、ぼんやりと、その夢のように霞んだ、葉子の顔を、見詰めていた黒吉は、ゴクンと固い唾を咽喉へ通すと、その薄く開かれた唇から、寝息でも聴こうとするのか、顔を次第次第に近附けて行った。

 何故か、彼の唇は、ガザガザに乾いていた。

 やがて、この弱々しい月光の下で、二つのさな頭の影が、一つになって仕舞うと、彼は、葉子の頬についている、小さい愛嬌黒子ぼくろが、自分の頬をも、凹へこますのを感じた。

二ノ五

 黒吉の、唇に感じた、葉子の唇の感触は、ぬくぬくとして弾力に富んだはんぺんのようだった。妙な連想だけれど、事実彼の経験では、これが一番よく似ていたのだ。

 唯、違った所――それは非常に違ったところがあるのだが――残念ながら、それをいい表わす言葉を知らなかった。

 彼は、そーっと腕の力を抜こうとした。途端に、肘の下の羽目板が、鈍い音を立てた。造作の悪い掛小屋なので、一寸した重みの加減でも、板が軋むのだ。シンとした周囲あたりと、針のように尖った、彼の神経に、それが幾層倍にも、拡大されて響き渡った。

 黒吉の心臓は、瞬間、ドキンと音がして止ったようだった。

「ク……」

 周章あわてて顔を上げた彼の眼の下で、葉子は、悪い夢でも見たのか、咽喉を鳴らすと、寝返りを打って、向うを向いて仕舞った。

(眼を覚ましたかな)

 黒吉は、思いきり息を深くしながら、葉子の墨のような、後向きの寝姿を、見守った。(いや、大丈夫だ)

 寝返りをした葉子は、幸い、眼を覚まさなかったと見えて、直ぐ又かすかな、寝息が、聴えて来た。

 彼は、ようやく※ほ[#「口+息」、24-4]っと、熱

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anond:20250708044816

 辺鄙な、村はずれの丘には、いつの間にか、華やかな幕を沢山吊るした急拵ごしらえの小屋掛が出来て、極東曲馬団の名がかけられ、狂燥なジンタと、ヒョロヒョロと空気を伝わるフリュートの音に、村人は、老おいも若きも、しばし、強烈な色彩と音楽スリル享楽し、又、いつの間にか曲馬団が他へ流れて行っても、しばらくは、フト白い流れ雲の中に、少年少女の縊くびれた肢体を思い出すのである

 トテモ華やかな、その空気の中にも、やっぱり、小さな「悩める虫」がいるのだ。

一ノ二

莫迦ッ、そんな事が出来ねエのか、間抜けめ!」

 親方は、野卑な言葉で、そう呶鳴どなると、手に持った革の鞭で、床をビシビシ撲りつけながら、黒吉くろきちを、グッと睨みつけるのだった。

 まだいたいけな少年の黒吉は、恐ろしさにオドオドして、

「済みません、済みません」

 そんな事を、呟くようにいうと、ぼろぼろに裂けた肉襦袢じゅばんの、肩の辺を擦さすりながら、氷のように冷めたい床の上に、又無器用な体つきで、ゴロンゴロンと幾度も「逆立ち」を遣り直していた。

 饑ひもじさと、恐ろしさと、苦痛と、寒気と、そして他の座員の嘲笑とが、もう毎度の事だったが、黒吉の身の周りに、犇々ひしひしと迫って、思わずホロホロと滾こぼした血のような涙が、荒削りの床に、黒い斑点を残して、音もなく滲しみ込んで行った。

 ――ここは、極東曲馬団の楽屋裏だった。

 逆立ちの下手な、無器用な黒吉は、ここの少年座員なのだ

 鴉からす黒吉。というのが彼の名前だった。しかしこれは舞台だけの芸名か、それとも本当の名前か、恐らくこれは字面じづらから見て、親方が、勝手につけた名前に違いないが、本名となると彼自身は勿論の事、親方だってハッキリ知っているかどうかは疑わしいものだった。

 黒吉自身記憶といっては、極めてぼんやりしたものだったけれど、いたましい事には、それは何時も、この曲馬団の片隅の、衣裳戸棚から始まっていた。

 それで、彼がもの心のついた時からは、――彼の記憶が始まった時からは、いつも周囲には、悲壮ジンタと、くしゃくしゃになったあくどい色の衣裳と、そして、それらを罩こめた安白粉おしろいの匂いや、汗のしみた肉襦袢の、ムッとした嗅気が、重なり合って、色彩っていた。

 こうした頽廃的な雰囲気の中に、いつも絶えない、座員間の軋轢あつれきと、華やかな底に澱む、ひがんだ蒼黒い空気とは、幼い黒吉の心から、跡形もなく「朗らかさ」を毟むしり取って仕舞った。そして、あとに残った陰欝な、日陰の虫のような少年の心に、世の中というものを、一風変った方向からのみ、見詰めさせていた。

 彼は用のない時には、何時も、太い丸太が荒縄で、蜘蛛の巣のように、縦横無尽に張りまわされている薄暗い楽屋の隅で、何かぼんやりえこんでいた。それは少年らしくもない憂欝な、女々しい姿だった。

 黒吉は明かに、他の同輩の少年から

「オイ、こっちへこいよ」

 と声をかけられるのを恐れているように見えた。

 しかし、それは、単に彼の危惧に過ぎなかった。

 他の少年座員達は、誰も、この憂欝な顔をした、芸の不器用な、そして親方におぼえのよくない黒吉と、進んで遊ぼうというものはなかった。(それは恐ろしい団長への、気兼ねもあったろうが)寧ろ彼等は、黒吉の方からしかけても、決して色よい返事は、しないように思われた。

 結局、黒吉はそれをいい事にして、独りぽつねんと、小屋の隅に忘れられた儘、たった一つ、彼に残されたオアシスである他愛もない「空想」に耽っていた。

一ノ三

 憂欝な少年黒吉が、何を考えているのか。

 ――その前に、彼が、なぜ親方のおぼえが悪いのだろうかという事をいわなければならない。

 (それは、彼の憂欝性にも、重大な影響のある事だから

 黒吉は、どう見ても、親方の「お気に入り」とは思えなかった。それは、勿論彼が、芸の未熟な不器用だった事も、確かにその原因の、一つだったけれど、他の大きな原因は、彼が醜い容貌だ、という先天的な不運に、禍わざわいされていたのだった。

 男の子容貌が、そんなにも、幼い心を虐しいたげるものだろうか――。

 如何にも、舞台の上で生活するものにとって、顔の美醜は非常に大きなハンデキャップなのだ。彼の同輩の愛くるしい少年が、舞台で、どうしたはずみか、ストンと尻もちをついたとしたら、観客は

「まあ、可哀そうに……あら、赤くなって、こっちを見てるわ、まるで正美さんみたいね

 そういって可愛い美少年は、失敗をした為に、却って、観客の人気を得るのだ。けれど、それに引きかえて、醜い顔だちを持った黒吉が、舞台でそれと同じような失敗をしても、観客は、何の遠慮もなく、このぎこちない少年の未熟さを嘲笑うのだった。

 この観客にさえ嗤わらわれる黒吉は、勿論親方にとって、どんなに間抜けな、穀潰ごくつぶしに見えたかは充分想像が、出来るのだった。従って、黒吉に対する、親方仕打ちがどんなものだったかも――

(俺は芸が下手なんだ)

(俺は醜い男なんだ)

 薄暗い小屋の片隅で、独りぽつんと、考えこんでいる黒吉は、楽しい空想どころか、彼の幼い心には、この二つの子供らしくもない懊悩が、いつも吹き荒すさんでいるのだった。

 そして、それは彼の心の底へ、少年らしい甘えた気持を、ひた押しに内攻して仕舞って、彼を尚一層、陰気にする外、何んの役にもたたなかった。冷たい冷たい胸の中に、熱いものは、ただ一つ涙だけだった。

 こうした雰囲気の中に、閉じこめられた鴉黒吉が、真直に伸びる筈はなかった。

 ――そして、蒼白い「歪んだ心」を持った少年が、ここに一人生成されて行った。

 世の中の少年少女達が、喜々として、小学校に通い始めた頃だろうか。勿論黒吉には、そんな恵まれ生活は、遠く想像の外だった。

 しかし、この頃から黒吉は、同輩の幼い座員の中でも、少年少女とを、異った眼で見るようになって来た。

「何」という、ハッキリした相違はないのだが、女の子莫迦にされた時には、不思議男の子に罵られたような、憤りは感じなかったのだった。寧ろ、

(いっそ、あの手で打ぶたれたら……)

 と思うと、何かゾクゾクとした、喜びに似た気持を感じるのだ。

 これが何んであるか、黒吉は、次第に、その姿を、ハッキリ見るようになって来た。

一ノ四

 安白粉の匂いと、汗ばんだ体臭と、そして、ぺらぺらなあくどい色の衣裳が、雑巾のように、投げ散らかされた、この頽廃的な曲馬団の楽屋で、侮蔑の中に育てられた、陰気な少年の「歪んだ心」には、もうませた女の子への、不思議な執着が、ジクジクと燃えて来たのだ。

 ――そして、それを尚一層、駆立てるような、出来事が起った。

 それは、やっと敷地小屋掛けも済んで、いよいよ明日から公開、という前の日だった。

 団長は、例の通り、小六ヶ敷こむずかしい顔をして、小屋掛けの監督をしていたが、それが終って仕舞うと、さも「大仕事をした」というような顔をして、他のお気に入り幹部達と一緒に、何処か、遊びに出て行った。

 団長の遊びに行くのを、見送って仕舞うと、他の年かさな座員や、楽隊ジンタの係りの者なども、ようやくのびのびとして、思い思いの雑談に高笑いを立てていたが、剽軽者ひょうきんものの仙次が、自分の役であるピエロ舞台着を調べながら

「オイ、親父おやじが行ったぜ、俺の方も行こうか」

 恰度それが、合図でもあったかのように、急に話声が高くなった。

「ウン、たまには一杯やらなくちゃ……」

「ちえッ、たまには、とはよくもいいやがった。明日があるんだ、大丈夫か」

「ナーニ、少しはやらなくちゃ続かねエよ、いやなら止せよ」

「いやじゃねエよ」

ハハハ、五月蠅うるせえなア」

 と、如何にも嬉しそうに、がやがや喋りながら、それでも大急ぎで支度をして、町の中に開放されて行った。

 そして、何時か、このガランとした小屋の中には、蒲団ふとん係りの源二郎爺さんと、子供の座員だけが、ぽつんつんと取り残されていた。子供の座員は、外出を禁じられていた。それは勿論「脱走」に備えたものだった。その見張りの役が、今は老耄おいぼれて仕舞ったが、昔はこの一座を背負って立った源二郎爺じじいなのだ

 結局、幼い彼等は、小屋の中で、てんでに遊ぶより仕方がなかった。

 男の子男同志で、舞台を駈廻り、女の子は女らしく、固かたまって縄飛びをしていた。――そして、黒吉は、相変らず小屋の隅に、ぽつんと独りだった。

 しかし、何時になく、黒吉の眼は、何か一心に見詰めているようだ。

(この憂欝な、オドオドした少年が、一生懸命に見ているものは、何んだろう)

 誰でも、彼の平生を知っているものが、この様子に気付いたならば、一寸ちょっとをかしげたに相違ない。そして、何気なくこの少年視線を追って見たならば、或はハッと眼を伏せたかも知れないのだ。

 黒吉の恰度眼の前では、少女の座員たちが、簡単アッパッパを着て、縄飛びをしていた――。しかし彼の見ているのは、それではなかった。この少女達が、急いきおいよく自分の背丈せい位もある縄を飛んで、トンと下りると、その瞬間、簡単アッパッパスカートは、風を受けて乱れ、そこから覗くのは、ふっくりとした白い腿だった――。

(十やそこらの少年が、こんなものを、息を殺して見詰めているのだろうか――)

 そう考えると、極めて不快な感じの前に何か、寒む寒むとした、恐ろしさを覚えるのだ。

 しかし、尚そればかりではなかった。

 この憂欝な少年の心を、根柢から、グスグスとゆり動かした、あの「ふっくりとした白い腿」がたえまなく、彼の頭の中に、大きく渦を捲いて、押流れていた。

 やがて、その心の渦が、ようやく鎮まって来ると、その渦の中から、浮び上って来たのは、この一座の花形少女貴志田葉子きしだようこ」の顔だった。

 だが、それと同時に、黒吉は、いきなり打ち前倒のめされたような、劇しい不快な気持を、感じた。

(ちえッ、俺がいくらちゃんと遊ぼうったって、駄目だい。俺は芸が、下手くそなんだ。それに、あんな綺麗な葉ちゃんが、俺みたいな汚い子と遊んでくれるもんか……)

 だが、この少年の心の底へ、しっかり焼付られた、葉ちゃんへの、不思議な執着は、そんな事ぐらいでは、びくともしなかった。寧ろ

(駄目だ)

 と思えば思う程、余計に、いきなり大声で呶鳴ってみたいような焦燥を、いやが上にも煽立あおりたてているのだ。

 ――この頃から、彼のそぶりは、少しずつ変って来たようだった。それはよく気をつけて見たならば、相変らず小屋の片隅に、独りぽっちでいる黒吉の眼が、妙な光を持って来たのに、気がついたろう。そして、その時は彼の視線の先きに必ず幼い花形の、葉子が、愛くるしい姿をして飛廻っていたのだ。

 葉子は、まだ黒吉と同じように、十とう位だったが、顔は綺麗だし、芸は上手いし、自由小鳥のように朗らかで、あの気六ヶ敷い団長にすら、この上もなく可愛がられていたから、この陰惨な曲馬団の中でも、彼女だけは、充分幸福なように見えた。

 そして、勿論、この陰気な、醜い黒吉が、自分一挙一動を、舐めるように、見詰めているとは気づかなかったろう。

 黒吉自身は、彼女が、自分の事など、気にもかけていない、という事が「痛しかゆし」の気持だった。無論彼女

「こっちへいらっしゃいよ」

 とでも、声を掛けられたら、どんなに嬉しい事だろう。――しかし、その半面

「だらしがないのねエ、あんたなんか、大嫌いよ」

 といわれはしまいか、と思うと、彼女に話かけるどころか葉子が、何気なくこっちを見てさえ、

(俺を嗤うんじゃないか

 こうした感じが、脈管の中を、火のように逆流するのだ。それで、つと眼を伏せて仕舞う彼だった。

 黒吉は、自分でさえ、このひねくれた気持を知りながら、尚葉子への愛慕と伴に、どうしても、脱ぎ去る事が、出来なかった。

       ×

 思い出したように、賑やかなジンタが、「敷島マーチ」を一通り済ますと、続いて「カチウシャ」を始めた。フリュートの音が、ひょろひょろと蒼穹あおぞらに消えると、その合間合間に、乾からびた木戸番の「呼び込み」が、座員の心をも、何かそわそわさせるように、響いて来た。

「さあ、葉ちゃんの出番だよ」

「あら、もうあたしなの、いそがしいわ」

「いそいで、いそいで」

 葉子は周章あわててお煎餅せんべい一口齧かじると、衣裳部屋を飛出して行った。

 恰度、通り合せた黒吉は、ちらりとそれを見ると、何を思ったのか、その喰たべかけの煎餅を、そっと、いかにも大事そうに持って行った。

二ノ二

 葉子が、喰いかけて、抛り出して行った煎餅を、そっと、拾って来た黒吉は、座員達が、こってりと白粉を塗った顔を上気させながら、忙しそうに話し合っている所を、知らん顔して通り抜けると小屋の片隅の、座蒲団が山のように積上げられてある陰へ来た。

 黒吉は、経験で、舞台が始まると、こんなところには、滅多に人が来ない事を知っていた。

 それでも、注意深く、あたりに人気のないのを見澄ますと、こそこそと体を跼かがめながら、いまにも崩れそうに積上げられた座蒲団の隙間へ、潜り込んで行った。

 その隙間は、如何にも窮屈だったが、妙にぬくぬくとした弾力があって、何かなつかしいもののようであった。黒吉はやっと※ほっ[#「口+息」、16-9]とした落着きを味わいながら、あの煎餅のかけらを持ち迭かえると、それがさも大切な宝石でもあるかのように、そーっと手の掌ひらに載せて見た。

(これが、葉ちゃんの喰いかけだな)

 そう思うと、つい頬のゆるむ、嬉しさを感じた。……大事大事にとって置きたいような、……ぎゅっと抱締めたいような――。

 黒吉は、充分幸福を味わって、もう一遍沁々と、薄い光の中で、それを見詰めた。こうしてよくよく見ると、気の所為いか、その一かけの煎餅は、幾らか湿っているように思えた。

気をつけて、触ってみると、確かに、喰いかけのところが一寸湿っていた。

(葉ちゃんの唾つばきかな)

 黒吉の、小さい心臓は、この思わぬ、めっけものにガクガクと顫えた。

 彼は、いくら少年とはいえ、無論こんな一っかけの煎餅を、喰べたいばかりに、拾って来たのではなかった。黒吉には「葉子の喰べかけ」というところに、この煎餅が、幾カラットもあるダイヤモンドにも見えたのだ。

 しかし、触って見ると、このかけらは湿っている……

(葉ちゃんの唾だな)

 その瞬間、黒吉の頭には、衣裳部屋で、葉子が忙しそうにこの煎餅を咥くわえていた光景と、それにつづいてクロオズアップされた、彼女の、あの可愛い紅唇くちとが、アリアリと浮んだ。

 それと一緒に、彼は、思わずゴクンと、固い唾を飲んだ。

 黒吉は、妖しく眼を光らせながら、あたりを偸ぬすみ見ると、やがて、意を決したように、その葉子の唾液つばきで湿ったに違いない煎餅のかけらを、そっと唇に近づけた……。

(鹹しょっぱい――な)

 これは、勿論塩煎餅の味だったろう。だが、黒吉の手は、何故かぶるぶると顫えた。

 彼の少年らしくもない、深い陰影かげを持った顔は、何時か熱っぽく上気し、激しく心臓から投出される、血潮は、顳※(「需+頁」、第3水準1-94-6)こめかみをひくひくと波打たせていた。

 そして、もう手の掌に、べとべとと溶けて仕舞った、煎餅のかけらから、尚も「葉子の匂い」を嗅ぎ出そうと、総てを忘れて、ペロペロと舐め続けていた……。

「こらっ。何をしてるんだ、黒公」

 ハッと気がつくと、蒲団の山の向うから、源二郎爺の、怒りを含んだ怪訝な顔が、覗いていた。

「出番じゃねエか。愚図愚図してると、又ひどいぞ」

「ウン」

 黒吉は、瞬間、親方の顔を思い出して、ピョコンと飛起きた。そして、ベタベタと粘る手の掌を肉襦袢にこすりこすり、周章あわてて楽屋の方へ駈けて行った。

二ノ三

 黒吉は、命ぜられた、色々の曲芸をしながらも、頭の中は、いつも葉子の事で一杯だった。

(一度でいいから葉ちゃんと、沁々話したい)

 これが、彼の歪められた心に発生わいて来た、たった一つの望みだった。

 彼がもっと朗らかな、普通の子供であったならば、いつも同じ小屋にいる葉子だもの、そんな事は、造作なく実現したに違いない。

 しかし、それにしては、黒吉は、余りに陰気な、ひねくれた少年だった。――というのも、彼の暗い周囲がそうさせたのだが――。

 そして、早熟ませた葉子への執着が、堰せき切れなくなった時に彼が見つけたのは、あの煎餅のかけらが産んだ、恐ろしい恍惚エクスタシーだった。

 一度こうした排はけ口を見つけた、彼の心が、その儘止まる筈はなかった――寧ろ、津浪のようにその排け口に向って殺到して行ったのだ。

 彼は、そっと、人のいないのを見すまして、衣裳部屋に潜り込み、葉子の小ちっちゃい肉襦袢に、醜悪な顔を、埋うずめていた事もあった。

 その白粉の匂いと、体臭のむんむんする臭いが、彼自身眩暈めまいをさえ伴った、陶酔感を与えるのだ。

 そして、ふと、その肉襦袢に、葉子のオカッパの髪が、二三本ついていたのを見つけると、その大発見に狂喜しながら、注意ぶかく抓つまみ上げて、白い紙につつむと、あり合せの鉛筆で、

「葉子チャンノカミノケ」

 そんな文句を、下手糞な字で、たどたどしく書きつけ、もう一度、上から擦さすって見てから、それを、肌身深く蔵しまいこんで仕舞った……。

 こうした彼の悪癖が、益々慕って行った事は、その後、葉子の持ち物が、ちょいちょい失なくなるようになった事でも、充分想像が出来た。

 失くなるといっても、勿論たいした品物を、曲馬団の少女が、持っている訳はなかったから、もうすり減った、真黒く脂肪あぶら足の跡が附いた、下駄の一方だとか、毛の抜けて仕舞った竹の歯楊子ようじだとか、そういった、極く下らないものだった。それで、

(盗られた)

 という気持を、葉子自身ですら感じなかったのは、彼にとっては、もっけの幸いだった。しかしこれらの「下らない紛失物」が、黒吉にとって、どんなに貴重なものだったかは、また容易に想像出来るのだ。

 ――ここまでは、黒吉少年の心に醗酵した、侘わびしい(しか執拗な)彼一人だけの、胸の中の恋だった。

 だが、ここに葉子が、暴風雨あらしを伴奏にして、颯爽と、現実舞台へ、登場しようとしている。

       ×

 極東曲馬団は、町から町、盛り場から盛り場を、人々の眼を楽しませながら、流れ移っていた。

 そして、ある田舎町に敷地を借り、ようやく小屋掛けも終ったと殆んど同時に、朝から頸を傾かしげさせていた空模様が、一時に頽くずれて、大粒の雨が、無気味な風を含んで、ぽたりぽたり落ちて来たかと思うと、もう篠つくような豪雨に変っていた。

 団長等は、早々に、宿屋に引上げて仕舞ったが、子供の座員や、下っぱの座員などは、経費の関係で、いつも、この小屋に泊る事を言渡されていた。子供等の方では、これは当然だと思っていたし、又団長がいないという事で、却って喜んでいたようでもあった。

 しかし、この急拵えの小屋が、この沛然はいぜんと降る豪雨に、無事な筈はなく、雨漏りをさけて遁げ廻った末、やっと楽屋の隅で、ひと凝固かたまりになって、横になる事が出来たのは、もう大分夜が更けてからだった。

 黒吉は、眼をつぶって、ようやく小降りになって来たらしい、雨の音を聴いていると、もう肩を並べた隣りからは、幽かな寝息さえ聴えて来た。

 それと同時に、黒吉は、何かドキンとしたものを感じた。

(隣りに寝ているのは、葉ちゃんじゃないか――)

二ノ四

 瞬間、黒吉は自分の頭が、シーンと澄み透って行くのを感じた。

(果して、隣りで寝ているのは、葉ちゃんだろうか)

 それは勿論、第六感とでもいうのか、極く曖昧ものだった。が、あの騒ぎで、皆んな、ごたごたに寝て仕舞ったのだから全然あり得ない事でもないのだ。

 そう思うと、隣りと接した、肩の辺が、熱っぽく、暑苦しいようにさえ感じた。そして、心臓はその鼓動と伴に、胸の中、一杯に拡がって行った。

 黒吉は、思い切って、起上り、顔を覗き見たい衝動を感じた。あたりは真暗だが、よく気をつけて覗きこめば、顔の判別がつかぬ、という程でもないように思われた。

 彼は、そーっと、薄い蒲団の縁へりへ、手をかけた。だが――

(まてまて。葉ちゃんならば、こんなに素晴らしい事はない。けれども、こんなにぎっしり寝ている処で、ごそごそ起きたら、どうかすると、彼女は眼を覚ますかも知れない。

 それだけならいいが、眼を覚まして、俺が覗きこんでいた事を知ったら、きっと葉ちゃんは、真赤になって、この醜い俺を罵り、どこか遠くへ寝床をかえて仕舞うに違いないんだ。

 ――そんな莫迦な事をするより、例え短かくとも、夜が明けるまで、こうして葉ちゃんの、ふくよかな肩の感触を恣ほしいままにした方が、どれ程気が利いていることか……)

 黒吉の心の中の、内気な半面が、こう囁いた。

 彼は、蒲団にかけた手を、又静かに戻して仕舞うと、今度は、全身の注意を、細かに砕いて、彼女の方へぴったり、摺り寄って行った。そして、温もりに混った、彼女の穏やかな心臓の響きを、肩の辺に聴いていた……。

 フト、冷めたい風を感じて、何時の間にかつぶっていた眼を明けて見ると、あたりには極くうっすらと、光が射しているのに、気がついた。

(もう夜明けかな――いつの間に寝て仕舞ったんだろう)

 それと一緒に、思わずガクンと体の顫えるような、口惜くやしさに似た後悔を感じた。

(葉ちゃんは……)

 黒吉は、先ずそれが心懸りだったので、ぐっと頸を廻して隣りを確めようとした。

(おや……)

 彼の眼に這入ったのは、葉子より先きに、キンと澄み切った、尖った月の半分だった。

 急拵えの小屋天幕は、夕方の大暴風雨あらしに吹きまくられてぽっかり夜空に口を開け、恰度そこから、のり出すように月が覗き込み、地底のようにシンと澱んだ小屋の中に白々とした、絹糸のような、光を撒いているのだ。暴風雨あらしの後の月は物凄いまでに、冴え冴えとしていた。

(まだ夜中だ)

 黒吉は※ほ[#「口+息」、22-9]っと心配を排はき棄てた。

 彼の隣りには、葉子が、いかにも寝苦しそうに寝ていた。先刻さっきは、確かに葉子だ、とは断言出来なかったが、いまでは極く淡い光ではあったが、その中でも、段々眼の馴れるに従って、黒吉には、ハッキリ葉子の姿が、写って来た。

 黒吉は、意を決したように、半身を蒲団から抜出し、月の光を遮らないように――、音のしないように、そっと彼女の顔を覗きこんだ。

 眼の下には、月の光を受けて、いつもより蒼白く見える葉子の、幼い顔が、少しばかり口さえ開け、寝入っていた。もう少し月の光が強かったら、この房々としたオカッパの頭髪かみのけが黄金のように光るだろう――と思えた。

 又、襟足の洗いおとした白粉が、この幼い葉子の寝姿を少年の心にも、一入ひとしお可憐いじらしく見せていた。

 暫く、ぼんやりと、その夢のように霞んだ、葉子の顔を、見詰めていた黒吉は、ゴクンと固い唾を咽喉へ通すと、その薄く開かれた唇から、寝息でも聴こうとするのか、顔を次第次第に近附けて行った。

 何故か、彼の唇は、ガザガザに乾いていた。

 やがて、この弱々しい月光の下で、二つのさな頭の影が、一つになって仕舞うと、彼は、葉子の頬についている、小さい愛嬌黒子ぼくろが、自分の頬をも、凹へこますのを感じた。

二ノ五

 黒吉の、唇に感じた、葉子の唇の感触は、ぬくぬくとして弾力に富んだはんぺんのようだった。妙な連想だけれど、事実彼の経験では、これが一番よく似ていたのだ。

 唯、違った所――それは非常に違ったところがあるのだが――残念ながら、それをいい表わす言葉を知らなかった。

 彼は、そーっと腕の力を抜こうとした。途端に、肘の下の羽目板が、鈍い音を立てた。造作の悪い掛小屋なので、一寸した重みの加減でも、板が軋むのだ。シンとした周囲あたりと、針のように尖った、彼の神経に、それが幾層倍にも、拡大されて響き渡った。

 黒吉の心臓は、瞬間、ドキンと音がして止ったようだった。

「ク……」

 周章あわてて顔を上げた彼の眼の下で、葉子は、悪い夢でも見たのか、咽喉を鳴らすと、寝返りを打って、向うを向いて仕舞った。

(眼を覚ましたかな)

 黒吉は、思いきり息を深くしながら、葉子の墨のような、後向きの寝姿を、見守った。(いや、大丈夫だ)

 寝返りをした葉子は、幸い、眼を覚まさなかったと見えて、直ぐ又かすかな、寝息が、聴えて来た。

 彼は、ようやく※ほ[#「口+息」、24-4]っと、熱

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 辺鄙な、村はずれの丘には、いつの間にか、華やかな幕を沢山吊るした急拵ごしらえの小屋掛が出来て、極東曲馬団の名がかけられ、狂燥なジンタと、ヒョロヒョロと空気を伝わるフリュートの音に、村人は、老おいも若きも、しばし、強烈な色彩と音楽スリル享楽し、又、いつの間にか曲馬団が他へ流れて行っても、しばらくは、フト白い流れ雲の中に、少年少女の縊くびれた肢体を思い出すのである

 トテモ華やかな、その空気の中にも、やっぱり、小さな「悩める虫」がいるのだ。

一ノ二

莫迦ッ、そんな事が出来ねエのか、間抜けめ!」

 親方は、野卑な言葉で、そう呶鳴どなると、手に持った革の鞭で、床をビシビシ撲りつけながら、黒吉くろきちを、グッと睨みつけるのだった。

 まだいたいけな少年の黒吉は、恐ろしさにオドオドして、

「済みません、済みません」

 そんな事を、呟くようにいうと、ぼろぼろに裂けた肉襦袢じゅばんの、肩の辺を擦さすりながら、氷のように冷めたい床の上に、又無器用な体つきで、ゴロンゴロンと幾度も「逆立ち」を遣り直していた。

 饑ひもじさと、恐ろしさと、苦痛と、寒気と、そして他の座員の嘲笑とが、もう毎度の事だったが、黒吉の身の周りに、犇々ひしひしと迫って、思わずホロホロと滾こぼした血のような涙が、荒削りの床に、黒い斑点を残して、音もなく滲しみ込んで行った。

 ――ここは、極東曲馬団の楽屋裏だった。

 逆立ちの下手な、無器用な黒吉は、ここの少年座員なのだ

 鴉からす黒吉。というのが彼の名前だった。しかしこれは舞台だけの芸名か、それとも本当の名前か、恐らくこれは字面じづらから見て、親方が、勝手につけた名前に違いないが、本名となると彼自身は勿論の事、親方だってハッキリ知っているかどうかは疑わしいものだった。

 黒吉自身記憶といっては、極めてぼんやりしたものだったけれど、いたましい事には、それは何時も、この曲馬団の片隅の、衣裳戸棚から始まっていた。

 それで、彼がもの心のついた時からは、――彼の記憶が始まった時からは、いつも周囲には、悲壮ジンタと、くしゃくしゃになったあくどい色の衣裳と、そして、それらを罩こめた安白粉おしろいの匂いや、汗のしみた肉襦袢の、ムッとした嗅気が、重なり合って、色彩っていた。

 こうした頽廃的な雰囲気の中に、いつも絶えない、座員間の軋轢あつれきと、華やかな底に澱む、ひがんだ蒼黒い空気とは、幼い黒吉の心から、跡形もなく「朗らかさ」を毟むしり取って仕舞った。そして、あとに残った陰欝な、日陰の虫のような少年の心に、世の中というものを、一風変った方向からのみ、見詰めさせていた。

 彼は用のない時には、何時も、太い丸太が荒縄で、蜘蛛の巣のように、縦横無尽に張りまわされている薄暗い楽屋の隅で、何かぼんやりえこんでいた。それは少年らしくもない憂欝な、女々しい姿だった。

 黒吉は明かに、他の同輩の少年から

「オイ、こっちへこいよ」

 と声をかけられるのを恐れているように見えた。

 しかし、それは、単に彼の危惧に過ぎなかった。

 他の少年座員達は、誰も、この憂欝な顔をした、芸の不器用な、そして親方におぼえのよくない黒吉と、進んで遊ぼうというものはなかった。(それは恐ろしい団長への、気兼ねもあったろうが)寧ろ彼等は、黒吉の方からしかけても、決して色よい返事は、しないように思われた。

 結局、黒吉はそれをいい事にして、独りぽつねんと、小屋の隅に忘れられた儘、たった一つ、彼に残されたオアシスである他愛もない「空想」に耽っていた。

一ノ三

 憂欝な少年黒吉が、何を考えているのか。

 ――その前に、彼が、なぜ親方のおぼえが悪いのだろうかという事をいわなければならない。

 (それは、彼の憂欝性にも、重大な影響のある事だから

 黒吉は、どう見ても、親方の「お気に入り」とは思えなかった。それは、勿論彼が、芸の未熟な不器用だった事も、確かにその原因の、一つだったけれど、他の大きな原因は、彼が醜い容貌だ、という先天的な不運に、禍わざわいされていたのだった。

 男の子容貌が、そんなにも、幼い心を虐しいたげるものだろうか――。

 如何にも、舞台の上で生活するものにとって、顔の美醜は非常に大きなハンデキャップなのだ。彼の同輩の愛くるしい少年が、舞台で、どうしたはずみか、ストンと尻もちをついたとしたら、観客は

「まあ、可哀そうに……あら、赤くなって、こっちを見てるわ、まるで正美さんみたいね

 そういって可愛い美少年は、失敗をした為に、却って、観客の人気を得るのだ。けれど、それに引きかえて、醜い顔だちを持った黒吉が、舞台でそれと同じような失敗をしても、観客は、何の遠慮もなく、このぎこちない少年の未熟さを嘲笑うのだった。

 この観客にさえ嗤わらわれる黒吉は、勿論親方にとって、どんなに間抜けな、穀潰ごくつぶしに見えたかは充分想像が、出来るのだった。従って、黒吉に対する、親方仕打ちがどんなものだったかも――

(俺は芸が下手なんだ)

(俺は醜い男なんだ)

 薄暗い小屋の片隅で、独りぽつんと、考えこんでいる黒吉は、楽しい空想どころか、彼の幼い心には、この二つの子供らしくもない懊悩が、いつも吹き荒すさんでいるのだった。

 そして、それは彼の心の底へ、少年らしい甘えた気持を、ひた押しに内攻して仕舞って、彼を尚一層、陰気にする外、何んの役にもたたなかった。冷たい冷たい胸の中に、熱いものは、ただ一つ涙だけだった。

 こうした雰囲気の中に、閉じこめられた鴉黒吉が、真直に伸びる筈はなかった。

 ――そして、蒼白い「歪んだ心」を持った少年が、ここに一人生成されて行った。

 世の中の少年少女達が、喜々として、小学校に通い始めた頃だろうか。勿論黒吉には、そんな恵まれ生活は、遠く想像の外だった。

 しかし、この頃から黒吉は、同輩の幼い座員の中でも、少年少女とを、異った眼で見るようになって来た。

「何」という、ハッキリした相違はないのだが、女の子莫迦にされた時には、不思議男の子に罵られたような、憤りは感じなかったのだった。寧ろ、

(いっそ、あの手で打ぶたれたら……)

 と思うと、何かゾクゾクとした、喜びに似た気持を感じるのだ。

 これが何んであるか、黒吉は、次第に、その姿を、ハッキリ見るようになって来た。

一ノ四

 安白粉の匂いと、汗ばんだ体臭と、そして、ぺらぺらなあくどい色の衣裳が、雑巾のように、投げ散らかされた、この頽廃的な曲馬団の楽屋で、侮蔑の中に育てられた、陰気な少年の「歪んだ心」には、もうませた女の子への、不思議な執着が、ジクジクと燃えて来たのだ。

 ――そして、それを尚一層、駆立てるような、出来事が起った。

 それは、やっと敷地小屋掛けも済んで、いよいよ明日から公開、という前の日だった。

 団長は、例の通り、小六ヶ敷こむずかしい顔をして、小屋掛けの監督をしていたが、それが終って仕舞うと、さも「大仕事をした」というような顔をして、他のお気に入り幹部達と一緒に、何処か、遊びに出て行った。

 団長の遊びに行くのを、見送って仕舞うと、他の年かさな座員や、楽隊ジンタの係りの者なども、ようやくのびのびとして、思い思いの雑談に高笑いを立てていたが、剽軽者ひょうきんものの仙次が、自分の役であるピエロ舞台着を調べながら

「オイ、親父おやじが行ったぜ、俺の方も行こうか」

 恰度それが、合図でもあったかのように、急に話声が高くなった。

「ウン、たまには一杯やらなくちゃ……」

「ちえッ、たまには、とはよくもいいやがった。明日があるんだ、大丈夫か」

「ナーニ、少しはやらなくちゃ続かねエよ、いやなら止せよ」

「いやじゃねエよ」

ハハハ、五月蠅うるせえなア」

 と、如何にも嬉しそうに、がやがや喋りながら、それでも大急ぎで支度をして、町の中に開放されて行った。

 そして、何時か、このガランとした小屋の中には、蒲団ふとん係りの源二郎爺さんと、子供の座員だけが、ぽつんつんと取り残されていた。子供の座員は、外出を禁じられていた。それは勿論「脱走」に備えたものだった。その見張りの役が、今は老耄おいぼれて仕舞ったが、昔はこの一座を背負って立った源二郎爺じじいなのだ

 結局、幼い彼等は、小屋の中で、てんでに遊ぶより仕方がなかった。

 男の子男同志で、舞台を駈廻り、女の子は女らしく、固かたまって縄飛びをしていた。――そして、黒吉は、相変らず小屋の隅に、ぽつんと独りだった。

 しかし、何時になく、黒吉の眼は、何か一心に見詰めているようだ。

(この憂欝な、オドオドした少年が、一生懸命に見ているものは、何んだろう)

 誰でも、彼の平生を知っているものが、この様子に気付いたならば、一寸ちょっとをかしげたに相違ない。そして、何気なくこの少年視線を追って見たならば、或はハッと眼を伏せたかも知れないのだ。

 黒吉の恰度眼の前では、少女の座員たちが、簡単アッパッパを着て、縄飛びをしていた――。しかし彼の見ているのは、それではなかった。この少女達が、急いきおいよく自分の背丈せい位もある縄を飛んで、トンと下りると、その瞬間、簡単アッパッパスカートは、風を受けて乱れ、そこから覗くのは、ふっくりとした白い腿だった――。

(十やそこらの少年が、こんなものを、息を殺して見詰めているのだろうか――)

 そう考えると、極めて不快な感じの前に何か、寒む寒むとした、恐ろしさを覚えるのだ。

 しかし、尚そればかりではなかった。

 この憂欝な少年の心を、根柢から、グスグスとゆり動かした、あの「ふっくりとした白い腿」がたえまなく、彼の頭の中に、大きく渦を捲いて、押流れていた。

 やがて、その心の渦が、ようやく鎮まって来ると、その渦の中から、浮び上って来たのは、この一座の花形少女貴志田葉子きしだようこ」の顔だった。

 だが、それと同時に、黒吉は、いきなり打ち前倒のめされたような、劇しい不快な気持を、感じた。

(ちえッ、俺がいくらちゃんと遊ぼうったって、駄目だい。俺は芸が、下手くそなんだ。それに、あんな綺麗な葉ちゃんが、俺みたいな汚い子と遊んでくれるもんか……)

 だが、この少年の心の底へ、しっかり焼付られた、葉ちゃんへの、不思議な執着は、そんな事ぐらいでは、びくともしなかった。寧ろ

(駄目だ)

 と思えば思う程、余計に、いきなり大声で呶鳴ってみたいような焦燥を、いやが上にも煽立あおりたてているのだ。

 ――この頃から、彼のそぶりは、少しずつ変って来たようだった。それはよく気をつけて見たならば、相変らず小屋の片隅に、独りぽっちでいる黒吉の眼が、妙な光を持って来たのに、気がついたろう。そして、その時は彼の視線の先きに必ず幼い花形の、葉子が、愛くるしい姿をして飛廻っていたのだ。

 葉子は、まだ黒吉と同じように、十とう位だったが、顔は綺麗だし、芸は上手いし、自由小鳥のように朗らかで、あの気六ヶ敷い団長にすら、この上もなく可愛がられていたから、この陰惨な曲馬団の中でも、彼女だけは、充分幸福なように見えた。

 そして、勿論、この陰気な、醜い黒吉が、自分一挙一動を、舐めるように、見詰めているとは気づかなかったろう。

 黒吉自身は、彼女が、自分の事など、気にもかけていない、という事が「痛しかゆし」の気持だった。無論彼女

「こっちへいらっしゃいよ」

 とでも、声を掛けられたら、どんなに嬉しい事だろう。――しかし、その半面

「だらしがないのねエ、あんたなんか、大嫌いよ」

 といわれはしまいか、と思うと、彼女に話かけるどころか葉子が、何気なくこっちを見てさえ、

(俺を嗤うんじゃないか

 こうした感じが、脈管の中を、火のように逆流するのだ。それで、つと眼を伏せて仕舞う彼だった。

 黒吉は、自分でさえ、このひねくれた気持を知りながら、尚葉子への愛慕と伴に、どうしても、脱ぎ去る事が、出来なかった。

       ×

 思い出したように、賑やかなジンタが、「敷島マーチ」を一通り済ますと、続いて「カチウシャ」を始めた。フリュートの音が、ひょろひょろと蒼穹あおぞらに消えると、その合間合間に、乾からびた木戸番の「呼び込み」が、座員の心をも、何かそわそわさせるように、響いて来た。

「さあ、葉ちゃんの出番だよ」

「あら、もうあたしなの、いそがしいわ」

「いそいで、いそいで」

 葉子は周章あわててお煎餅せんべい一口齧かじると、衣裳部屋を飛出して行った。

 恰度、通り合せた黒吉は、ちらりとそれを見ると、何を思ったのか、その喰たべかけの煎餅を、そっと、いかにも大事そうに持って行った。

二ノ二

 葉子が、喰いかけて、抛り出して行った煎餅を、そっと、拾って来た黒吉は、座員達が、こってりと白粉を塗った顔を上気させながら、忙しそうに話し合っている所を、知らん顔して通り抜けると小屋の片隅の、座蒲団が山のように積上げられてある陰へ来た。

 黒吉は、経験で、舞台が始まると、こんなところには、滅多に人が来ない事を知っていた。

 それでも、注意深く、あたりに人気のないのを見澄ますと、こそこそと体を跼かがめながら、いまにも崩れそうに積上げられた座蒲団の隙間へ、潜り込んで行った。

 その隙間は、如何にも窮屈だったが、妙にぬくぬくとした弾力があって、何かなつかしいもののようであった。黒吉はやっと※ほっ[#「口+息」、16-9]とした落着きを味わいながら、あの煎餅のかけらを持ち迭かえると、それがさも大切な宝石でもあるかのように、そーっと手の掌ひらに載せて見た。

(これが、葉ちゃんの喰いかけだな)

 そう思うと、つい頬のゆるむ、嬉しさを感じた。……大事大事にとって置きたいような、……ぎゅっと抱締めたいような――。

 黒吉は、充分幸福を味わって、もう一遍沁々と、薄い光の中で、それを見詰めた。こうしてよくよく見ると、気の所為いか、その一かけの煎餅は、幾らか湿っているように思えた。

気をつけて、触ってみると、確かに、喰いかけのところが一寸湿っていた。

(葉ちゃんの唾つばきかな)

 黒吉の、小さい心臓は、この思わぬ、めっけものにガクガクと顫えた。

 彼は、いくら少年とはいえ、無論こんな一っかけの煎餅を、喰べたいばかりに、拾って来たのではなかった。黒吉には「葉子の喰べかけ」というところに、この煎餅が、幾カラットもあるダイヤモンドにも見えたのだ。

 しかし、触って見ると、このかけらは湿っている……

(葉ちゃんの唾だな)

 その瞬間、黒吉の頭には、衣裳部屋で、葉子が忙しそうにこの煎餅を咥くわえていた光景と、それにつづいてクロオズアップされた、彼女の、あの可愛い紅唇くちとが、アリアリと浮んだ。

 それと一緒に、彼は、思わずゴクンと、固い唾を飲んだ。

 黒吉は、妖しく眼を光らせながら、あたりを偸ぬすみ見ると、やがて、意を決したように、その葉子の唾液つばきで湿ったに違いない煎餅のかけらを、そっと唇に近づけた……。

(鹹しょっぱい――な)

 これは、勿論塩煎餅の味だったろう。だが、黒吉の手は、何故かぶるぶると顫えた。

 彼の少年らしくもない、深い陰影かげを持った顔は、何時か熱っぽく上気し、激しく心臓から投出される、血潮は、顳※(「需+頁」、第3水準1-94-6)こめかみをひくひくと波打たせていた。

 そして、もう手の掌に、べとべとと溶けて仕舞った、煎餅のかけらから、尚も「葉子の匂い」を嗅ぎ出そうと、総てを忘れて、ペロペロと舐め続けていた……。

「こらっ。何をしてるんだ、黒公」

 ハッと気がつくと、蒲団の山の向うから、源二郎爺の、怒りを含んだ怪訝な顔が、覗いていた。

「出番じゃねエか。愚図愚図してると、又ひどいぞ」

「ウン」

 黒吉は、瞬間、親方の顔を思い出して、ピョコンと飛起きた。そして、ベタベタと粘る手の掌を肉襦袢にこすりこすり、周章あわてて楽屋の方へ駈けて行った。

二ノ三

 黒吉は、命ぜられた、色々の曲芸をしながらも、頭の中は、いつも葉子の事で一杯だった。

(一度でいいから葉ちゃんと、沁々話したい)

 これが、彼の歪められた心に発生わいて来た、たった一つの望みだった。

 彼がもっと朗らかな、普通の子供であったならば、いつも同じ小屋にいる葉子だもの、そんな事は、造作なく実現したに違いない。

 しかし、それにしては、黒吉は、余りに陰気な、ひねくれた少年だった。――というのも、彼の暗い周囲がそうさせたのだが――。

 そして、早熟ませた葉子への執着が、堰せき切れなくなった時に彼が見つけたのは、あの煎餅のかけらが産んだ、恐ろしい恍惚エクスタシーだった。

 一度こうした排はけ口を見つけた、彼の心が、その儘止まる筈はなかった――寧ろ、津浪のようにその排け口に向って殺到して行ったのだ。

 彼は、そっと、人のいないのを見すまして、衣裳部屋に潜り込み、葉子の小ちっちゃい肉襦袢に、醜悪な顔を、埋うずめていた事もあった。

 その白粉の匂いと、体臭のむんむんする臭いが、彼自身眩暈めまいをさえ伴った、陶酔感を与えるのだ。

 そして、ふと、その肉襦袢に、葉子のオカッパの髪が、二三本ついていたのを見つけると、その大発見に狂喜しながら、注意ぶかく抓つまみ上げて、白い紙につつむと、あり合せの鉛筆で、

「葉子チャンノカミノケ」

 そんな文句を、下手糞な字で、たどたどしく書きつけ、もう一度、上から擦さすって見てから、それを、肌身深く蔵しまいこんで仕舞った……。

 こうした彼の悪癖が、益々慕って行った事は、その後、葉子の持ち物が、ちょいちょい失なくなるようになった事でも、充分想像が出来た。

 失くなるといっても、勿論たいした品物を、曲馬団の少女が、持っている訳はなかったから、もうすり減った、真黒く脂肪あぶら足の跡が附いた、下駄の一方だとか、毛の抜けて仕舞った竹の歯楊子ようじだとか、そういった、極く下らないものだった。それで、

(盗られた)

 という気持を、葉子自身ですら感じなかったのは、彼にとっては、もっけの幸いだった。しかしこれらの「下らない紛失物」が、黒吉にとって、どんなに貴重なものだったかは、また容易に想像出来るのだ。

 ――ここまでは、黒吉少年の心に醗酵した、侘わびしい(しか執拗な)彼一人だけの、胸の中の恋だった。

 だが、ここに葉子が、暴風雨あらしを伴奏にして、颯爽と、現実舞台へ、登場しようとしている。

       ×

 極東曲馬団は、町から町、盛り場から盛り場を、人々の眼を楽しませながら、流れ移っていた。

 そして、ある田舎町に敷地を借り、ようやく小屋掛けも終ったと殆んど同時に、朝から頸を傾かしげさせていた空模様が、一時に頽くずれて、大粒の雨が、無気味な風を含んで、ぽたりぽたり落ちて来たかと思うと、もう篠つくような豪雨に変っていた。

 団長等は、早々に、宿屋に引上げて仕舞ったが、子供の座員や、下っぱの座員などは、経費の関係で、いつも、この小屋に泊る事を言渡されていた。子供等の方では、これは当然だと思っていたし、又団長がいないという事で、却って喜んでいたようでもあった。

 しかし、この急拵えの小屋が、この沛然はいぜんと降る豪雨に、無事な筈はなく、雨漏りをさけて遁げ廻った末、やっと楽屋の隅で、ひと凝固かたまりになって、横になる事が出来たのは、もう大分夜が更けてからだった。

 黒吉は、眼をつぶって、ようやく小降りになって来たらしい、雨の音を聴いていると、もう肩を並べた隣りからは、幽かな寝息さえ聴えて来た。

 それと同時に、黒吉は、何かドキンとしたものを感じた。

(隣りに寝ているのは、葉ちゃんじゃないか――)

二ノ四

 瞬間、黒吉は自分の頭が、シーンと澄み透って行くのを感じた。

(果して、隣りで寝ているのは、葉ちゃんだろうか)

 それは勿論、第六感とでもいうのか、極く曖昧ものだった。が、あの騒ぎで、皆んな、ごたごたに寝て仕舞ったのだから全然あり得ない事でもないのだ。

 そう思うと、隣りと接した、肩の辺が、熱っぽく、暑苦しいようにさえ感じた。そして、心臓はその鼓動と伴に、胸の中、一杯に拡がって行った。

 黒吉は、思い切って、起上り、顔を覗き見たい衝動を感じた。あたりは真暗だが、よく気をつけて覗きこめば、顔の判別がつかぬ、という程でもないように思われた。

 彼は、そーっと、薄い蒲団の縁へりへ、手をかけた。だが――

(まてまて。葉ちゃんならば、こんなに素晴らしい事はない。けれども、こんなにぎっしり寝ている処で、ごそごそ起きたら、どうかすると、彼女は眼を覚ますかも知れない。

 それだけならいいが、眼を覚まして、俺が覗きこんでいた事を知ったら、きっと葉ちゃんは、真赤になって、この醜い俺を罵り、どこか遠くへ寝床をかえて仕舞うに違いないんだ。

 ――そんな莫迦な事をするより、例え短かくとも、夜が明けるまで、こうして葉ちゃんの、ふくよかな肩の感触を恣ほしいままにした方が、どれ程気が利いていることか……)

 黒吉の心の中の、内気な半面が、こう囁いた。

 彼は、蒲団にかけた手を、又静かに戻して仕舞うと、今度は、全身の注意を、細かに砕いて、彼女の方へぴったり、摺り寄って行った。そして、温もりに混った、彼女の穏やかな心臓の響きを、肩の辺に聴いていた……。

 フト、冷めたい風を感じて、何時の間にかつぶっていた眼を明けて見ると、あたりには極くうっすらと、光が射しているのに、気がついた。

(もう夜明けかな――いつの間に寝て仕舞ったんだろう)

 それと一緒に、思わずガクンと体の顫えるような、口惜くやしさに似た後悔を感じた。

(葉ちゃんは……)

 黒吉は、先ずそれが心懸りだったので、ぐっと頸を廻して隣りを確めようとした。

(おや……)

 彼の眼に這入ったのは、葉子より先きに、キンと澄み切った、尖った月の半分だった。

 急拵えの小屋天幕は、夕方の大暴風雨あらしに吹きまくられてぽっかり夜空に口を開け、恰度そこから、のり出すように月が覗き込み、地底のようにシンと澱んだ小屋の中に白々とした、絹糸のような、光を撒いているのだ。暴風雨あらしの後の月は物凄いまでに、冴え冴えとしていた。

(まだ夜中だ)

 黒吉は※ほ[#「口+息」、22-9]っと心配を排はき棄てた。

 彼の隣りには、葉子が、いかにも寝苦しそうに寝ていた。先刻さっきは、確かに葉子だ、とは断言出来なかったが、いまでは極く淡い光ではあったが、その中でも、段々眼の馴れるに従って、黒吉には、ハッキリ葉子の姿が、写って来た。

 黒吉は、意を決したように、半身を蒲団から抜出し、月の光を遮らないように――、音のしないように、そっと彼女の顔を覗きこんだ。

 眼の下には、月の光を受けて、いつもより蒼白く見える葉子の、幼い顔が、少しばかり口さえ開け、寝入っていた。もう少し月の光が強かったら、この房々としたオカッパの頭髪かみのけが黄金のように光るだろう――と思えた。

 又、襟足の洗いおとした白粉が、この幼い葉子の寝姿を少年の心にも、一入ひとしお可憐いじらしく見せていた。

 暫く、ぼんやりと、その夢のように霞んだ、葉子の顔を、見詰めていた黒吉は、ゴクンと固い唾を咽喉へ通すと、その薄く開かれた唇から、寝息でも聴こうとするのか、顔を次第次第に近附けて行った。

 何故か、彼の唇は、ガザガザに乾いていた。

 やがて、この弱々しい月光の下で、二つのさな頭の影が、一つになって仕舞うと、彼は、葉子の頬についている、小さい愛嬌黒子ぼくろが、自分の頬をも、凹へこますのを感じた。

二ノ五

 黒吉の、唇に感じた、葉子の唇の感触は、ぬくぬくとして弾力に富んだはんぺんのようだった。妙な連想だけれど、事実彼の経験では、これが一番よく似ていたのだ。

 唯、違った所――それは非常に違ったところがあるのだが――残念ながら、それをいい表わす言葉を知らなかった。

 彼は、そーっと腕の力を抜こうとした。途端に、肘の下の羽目板が、鈍い音を立てた。造作の悪い掛小屋なので、一寸した重みの加減でも、板が軋むのだ。シンとした周囲あたりと、針のように尖った、彼の神経に、それが幾層倍にも、拡大されて響き渡った。

 黒吉の心臓は、瞬間、ドキンと音がして止ったようだった。

「ク……」

 周章あわてて顔を上げた彼の眼の下で、葉子は、悪い夢でも見たのか、咽喉を鳴らすと、寝返りを打って、向うを向いて仕舞った。

(眼を覚ましたかな)

 黒吉は、思いきり息を深くしながら、葉子の墨のような、後向きの寝姿を、見守った。(いや、大丈夫だ)

 寝返りをした葉子は、幸い、眼を覚まさなかったと見えて、直ぐ又かすかな、寝息が、聴えて来た。

 彼は、ようやく※ほ[#「口+息」、24-4]っと、熱

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anond:20250708044816

 辺鄙な、村はずれの丘には、いつの間にか、華やかな幕を沢山吊るした急拵ごしらえの小屋掛が出来て、極東曲馬団の名がかけられ、狂燥なジンタと、ヒョロヒョロと空気を伝わるフリュートの音に、村人は、老おいも若きも、しばし、強烈な色彩と音楽スリル享楽し、又、いつの間にか曲馬団が他へ流れて行っても、しばらくは、フト白い流れ雲の中に、少年少女の縊くびれた肢体を思い出すのである

 トテモ華やかな、その空気の中にも、やっぱり、小さな「悩める虫」がいるのだ。

一ノ二

莫迦ッ、そんな事が出来ねエのか、間抜けめ!」

 親方は、野卑な言葉で、そう呶鳴どなると、手に持った革の鞭で、床をビシビシ撲りつけながら、黒吉くろきちを、グッと睨みつけるのだった。

 まだいたいけな少年の黒吉は、恐ろしさにオドオドして、

「済みません、済みません」

 そんな事を、呟くようにいうと、ぼろぼろに裂けた肉襦袢じゅばんの、肩の辺を擦さすりながら、氷のように冷めたい床の上に、又無器用な体つきで、ゴロンゴロンと幾度も「逆立ち」を遣り直していた。

 饑ひもじさと、恐ろしさと、苦痛と、寒気と、そして他の座員の嘲笑とが、もう毎度の事だったが、黒吉の身の周りに、犇々ひしひしと迫って、思わずホロホロと滾こぼした血のような涙が、荒削りの床に、黒い斑点を残して、音もなく滲しみ込んで行った。

 ――ここは、極東曲馬団の楽屋裏だった。

 逆立ちの下手な、無器用な黒吉は、ここの少年座員なのだ

 鴉からす黒吉。というのが彼の名前だった。しかしこれは舞台だけの芸名か、それとも本当の名前か、恐らくこれは字面じづらから見て、親方が、勝手につけた名前に違いないが、本名となると彼自身は勿論の事、親方だってハッキリ知っているかどうかは疑わしいものだった。

 黒吉自身記憶といっては、極めてぼんやりしたものだったけれど、いたましい事には、それは何時も、この曲馬団の片隅の、衣裳戸棚から始まっていた。

 それで、彼がもの心のついた時からは、――彼の記憶が始まった時からは、いつも周囲には、悲壮ジンタと、くしゃくしゃになったあくどい色の衣裳と、そして、それらを罩こめた安白粉おしろいの匂いや、汗のしみた肉襦袢の、ムッとした嗅気が、重なり合って、色彩っていた。

 こうした頽廃的な雰囲気の中に、いつも絶えない、座員間の軋轢あつれきと、華やかな底に澱む、ひがんだ蒼黒い空気とは、幼い黒吉の心から、跡形もなく「朗らかさ」を毟むしり取って仕舞った。そして、あとに残った陰欝な、日陰の虫のような少年の心に、世の中というものを、一風変った方向からのみ、見詰めさせていた。

 彼は用のない時には、何時も、太い丸太が荒縄で、蜘蛛の巣のように、縦横無尽に張りまわされている薄暗い楽屋の隅で、何かぼんやりえこんでいた。それは少年らしくもない憂欝な、女々しい姿だった。

 黒吉は明かに、他の同輩の少年から

「オイ、こっちへこいよ」

 と声をかけられるのを恐れているように見えた。

 しかし、それは、単に彼の危惧に過ぎなかった。

 他の少年座員達は、誰も、この憂欝な顔をした、芸の不器用な、そして親方におぼえのよくない黒吉と、進んで遊ぼうというものはなかった。(それは恐ろしい団長への、気兼ねもあったろうが)寧ろ彼等は、黒吉の方からしかけても、決して色よい返事は、しないように思われた。

 結局、黒吉はそれをいい事にして、独りぽつねんと、小屋の隅に忘れられた儘、たった一つ、彼に残されたオアシスである他愛もない「空想」に耽っていた。

一ノ三

 憂欝な少年黒吉が、何を考えているのか。

 ――その前に、彼が、なぜ親方のおぼえが悪いのだろうかという事をいわなければならない。

 (それは、彼の憂欝性にも、重大な影響のある事だから

 黒吉は、どう見ても、親方の「お気に入り」とは思えなかった。それは、勿論彼が、芸の未熟な不器用だった事も、確かにその原因の、一つだったけれど、他の大きな原因は、彼が醜い容貌だ、という先天的な不運に、禍わざわいされていたのだった。

 男の子容貌が、そんなにも、幼い心を虐しいたげるものだろうか――。

 如何にも、舞台の上で生活するものにとって、顔の美醜は非常に大きなハンデキャップなのだ。彼の同輩の愛くるしい少年が、舞台で、どうしたはずみか、ストンと尻もちをついたとしたら、観客は

「まあ、可哀そうに……あら、赤くなって、こっちを見てるわ、まるで正美さんみたいね

 そういって可愛い美少年は、失敗をした為に、却って、観客の人気を得るのだ。けれど、それに引きかえて、醜い顔だちを持った黒吉が、舞台でそれと同じような失敗をしても、観客は、何の遠慮もなく、このぎこちない少年の未熟さを嘲笑うのだった。

 この観客にさえ嗤わらわれる黒吉は、勿論親方にとって、どんなに間抜けな、穀潰ごくつぶしに見えたかは充分想像が、出来るのだった。従って、黒吉に対する、親方仕打ちがどんなものだったかも――

(俺は芸が下手なんだ)

(俺は醜い男なんだ)

 薄暗い小屋の片隅で、独りぽつんと、考えこんでいる黒吉は、楽しい空想どころか、彼の幼い心には、この二つの子供らしくもない懊悩が、いつも吹き荒すさんでいるのだった。

 そして、それは彼の心の底へ、少年らしい甘えた気持を、ひた押しに内攻して仕舞って、彼を尚一層、陰気にする外、何んの役にもたたなかった。冷たい冷たい胸の中に、熱いものは、ただ一つ涙だけだった。

 こうした雰囲気の中に、閉じこめられた鴉黒吉が、真直に伸びる筈はなかった。

 ――そして、蒼白い「歪んだ心」を持った少年が、ここに一人生成されて行った。

 世の中の少年少女達が、喜々として、小学校に通い始めた頃だろうか。勿論黒吉には、そんな恵まれ生活は、遠く想像の外だった。

 しかし、この頃から黒吉は、同輩の幼い座員の中でも、少年少女とを、異った眼で見るようになって来た。

「何」という、ハッキリした相違はないのだが、女の子莫迦にされた時には、不思議男の子に罵られたような、憤りは感じなかったのだった。寧ろ、

(いっそ、あの手で打ぶたれたら……)

 と思うと、何かゾクゾクとした、喜びに似た気持を感じるのだ。

 これが何んであるか、黒吉は、次第に、その姿を、ハッキリ見るようになって来た。

一ノ四

 安白粉の匂いと、汗ばんだ体臭と、そして、ぺらぺらなあくどい色の衣裳が、雑巾のように、投げ散らかされた、この頽廃的な曲馬団の楽屋で、侮蔑の中に育てられた、陰気な少年の「歪んだ心」には、もうませた女の子への、不思議な執着が、ジクジクと燃えて来たのだ。

 ――そして、それを尚一層、駆立てるような、出来事が起った。

 それは、やっと敷地小屋掛けも済んで、いよいよ明日から公開、という前の日だった。

 団長は、例の通り、小六ヶ敷こむずかしい顔をして、小屋掛けの監督をしていたが、それが終って仕舞うと、さも「大仕事をした」というような顔をして、他のお気に入り幹部達と一緒に、何処か、遊びに出て行った。

 団長の遊びに行くのを、見送って仕舞うと、他の年かさな座員や、楽隊ジンタの係りの者なども、ようやくのびのびとして、思い思いの雑談に高笑いを立てていたが、剽軽者ひょうきんものの仙次が、自分の役であるピエロ舞台着を調べながら

「オイ、親父おやじが行ったぜ、俺の方も行こうか」

 恰度それが、合図でもあったかのように、急に話声が高くなった。

「ウン、たまには一杯やらなくちゃ……」

「ちえッ、たまには、とはよくもいいやがった。明日があるんだ、大丈夫か」

「ナーニ、少しはやらなくちゃ続かねエよ、いやなら止せよ」

「いやじゃねエよ」

ハハハ、五月蠅うるせえなア」

 と、如何にも嬉しそうに、がやがや喋りながら、それでも大急ぎで支度をして、町の中に開放されて行った。

 そして、何時か、このガランとした小屋の中には、蒲団ふとん係りの源二郎爺さんと、子供の座員だけが、ぽつんつんと取り残されていた。子供の座員は、外出を禁じられていた。それは勿論「脱走」に備えたものだった。その見張りの役が、今は老耄おいぼれて仕舞ったが、昔はこの一座を背負って立った源二郎爺じじいなのだ

 結局、幼い彼等は、小屋の中で、てんでに遊ぶより仕方がなかった。

 男の子男同志で、舞台を駈廻り、女の子は女らしく、固かたまって縄飛びをしていた。――そして、黒吉は、相変らず小屋の隅に、ぽつんと独りだった。

 しかし、何時になく、黒吉の眼は、何か一心に見詰めているようだ。

(この憂欝な、オドオドした少年が、一生懸命に見ているものは、何んだろう)

 誰でも、彼の平生を知っているものが、この様子に気付いたならば、一寸ちょっとをかしげたに相違ない。そして、何気なくこの少年視線を追って見たならば、或はハッと眼を伏せたかも知れないのだ。

 黒吉の恰度眼の前では、少女の座員たちが、簡単アッパッパを着て、縄飛びをしていた――。しかし彼の見ているのは、それではなかった。この少女達が、急いきおいよく自分の背丈せい位もある縄を飛んで、トンと下りると、その瞬間、簡単アッパッパスカートは、風を受けて乱れ、そこから覗くのは、ふっくりとした白い腿だった――。

(十やそこらの少年が、こんなものを、息を殺して見詰めているのだろうか――)

 そう考えると、極めて不快な感じの前に何か、寒む寒むとした、恐ろしさを覚えるのだ。

 しかし、尚そればかりではなかった。

 この憂欝な少年の心を、根柢から、グスグスとゆり動かした、あの「ふっくりとした白い腿」がたえまなく、彼の頭の中に、大きく渦を捲いて、押流れていた。

 やがて、その心の渦が、ようやく鎮まって来ると、その渦の中から、浮び上って来たのは、この一座の花形少女貴志田葉子きしだようこ」の顔だった。

 だが、それと同時に、黒吉は、いきなり打ち前倒のめされたような、劇しい不快な気持を、感じた。

(ちえッ、俺がいくらちゃんと遊ぼうったって、駄目だい。俺は芸が、下手くそなんだ。それに、あんな綺麗な葉ちゃんが、俺みたいな汚い子と遊んでくれるもんか……)

 だが、この少年の心の底へ、しっかり焼付られた、葉ちゃんへの、不思議な執着は、そんな事ぐらいでは、びくともしなかった。寧ろ

(駄目だ)

 と思えば思う程、余計に、いきなり大声で呶鳴ってみたいような焦燥を、いやが上にも煽立あおりたてているのだ。

 ――この頃から、彼のそぶりは、少しずつ変って来たようだった。それはよく気をつけて見たならば、相変らず小屋の片隅に、独りぽっちでいる黒吉の眼が、妙な光を持って来たのに、気がついたろう。そして、その時は彼の視線の先きに必ず幼い花形の、葉子が、愛くるしい姿をして飛廻っていたのだ。

 葉子は、まだ黒吉と同じように、十とう位だったが、顔は綺麗だし、芸は上手いし、自由小鳥のように朗らかで、あの気六ヶ敷い団長にすら、この上もなく可愛がられていたから、この陰惨な曲馬団の中でも、彼女だけは、充分幸福なように見えた。

 そして、勿論、この陰気な、醜い黒吉が、自分一挙一動を、舐めるように、見詰めているとは気づかなかったろう。

 黒吉自身は、彼女が、自分の事など、気にもかけていない、という事が「痛しかゆし」の気持だった。無論彼女

「こっちへいらっしゃいよ」

 とでも、声を掛けられたら、どんなに嬉しい事だろう。――しかし、その半面

「だらしがないのねエ、あんたなんか、大嫌いよ」

 といわれはしまいか、と思うと、彼女に話かけるどころか葉子が、何気なくこっちを見てさえ、

(俺を嗤うんじゃないか

 こうした感じが、脈管の中を、火のように逆流するのだ。それで、つと眼を伏せて仕舞う彼だった。

 黒吉は、自分でさえ、このひねくれた気持を知りながら、尚葉子への愛慕と伴に、どうしても、脱ぎ去る事が、出来なかった。

       ×

 思い出したように、賑やかなジンタが、「敷島マーチ」を一通り済ますと、続いて「カチウシャ」を始めた。フリュートの音が、ひょろひょろと蒼穹あおぞらに消えると、その合間合間に、乾からびた木戸番の「呼び込み」が、座員の心をも、何かそわそわさせるように、響いて来た。

「さあ、葉ちゃんの出番だよ」

「あら、もうあたしなの、いそがしいわ」

「いそいで、いそいで」

 葉子は周章あわててお煎餅せんべい一口齧かじると、衣裳部屋を飛出して行った。

 恰度、通り合せた黒吉は、ちらりとそれを見ると、何を思ったのか、その喰たべかけの煎餅を、そっと、いかにも大事そうに持って行った。

二ノ二

 葉子が、喰いかけて、抛り出して行った煎餅を、そっと、拾って来た黒吉は、座員達が、こってりと白粉を塗った顔を上気させながら、忙しそうに話し合っている所を、知らん顔して通り抜けると小屋の片隅の、座蒲団が山のように積上げられてある陰へ来た。

 黒吉は、経験で、舞台が始まると、こんなところには、滅多に人が来ない事を知っていた。

 それでも、注意深く、あたりに人気のないのを見澄ますと、こそこそと体を跼かがめながら、いまにも崩れそうに積上げられた座蒲団の隙間へ、潜り込んで行った。

 その隙間は、如何にも窮屈だったが、妙にぬくぬくとした弾力があって、何かなつかしいもののようであった。黒吉はやっと※ほっ[#「口+息」、16-9]とした落着きを味わいながら、あの煎餅のかけらを持ち迭かえると、それがさも大切な宝石でもあるかのように、そーっと手の掌ひらに載せて見た。

(これが、葉ちゃんの喰いかけだな)

 そう思うと、つい頬のゆるむ、嬉しさを感じた。……大事大事にとって置きたいような、……ぎゅっと抱締めたいような――。

 黒吉は、充分幸福を味わって、もう一遍沁々と、薄い光の中で、それを見詰めた。こうしてよくよく見ると、気の所為いか、その一かけの煎餅は、幾らか湿っているように思えた。

気をつけて、触ってみると、確かに、喰いかけのところが一寸湿っていた。

(葉ちゃんの唾つばきかな)

 黒吉の、小さい心臓は、この思わぬ、めっけものにガクガクと顫えた。

 彼は、いくら少年とはいえ、無論こんな一っかけの煎餅を、喰べたいばかりに、拾って来たのではなかった。黒吉には「葉子の喰べかけ」というところに、この煎餅が、幾カラットもあるダイヤモンドにも見えたのだ。

 しかし、触って見ると、このかけらは湿っている……

(葉ちゃんの唾だな)

 その瞬間、黒吉の頭には、衣裳部屋で、葉子が忙しそうにこの煎餅を咥くわえていた光景と、それにつづいてクロオズアップされた、彼女の、あの可愛い紅唇くちとが、アリアリと浮んだ。

 それと一緒に、彼は、思わずゴクンと、固い唾を飲んだ。

 黒吉は、妖しく眼を光らせながら、あたりを偸ぬすみ見ると、やがて、意を決したように、その葉子の唾液つばきで湿ったに違いない煎餅のかけらを、そっと唇に近づけた……。

(鹹しょっぱい――な)

 これは、勿論塩煎餅の味だったろう。だが、黒吉の手は、何故かぶるぶると顫えた。

 彼の少年らしくもない、深い陰影かげを持った顔は、何時か熱っぽく上気し、激しく心臓から投出される、血潮は、顳※(「需+頁」、第3水準1-94-6)こめかみをひくひくと波打たせていた。

 そして、もう手の掌に、べとべとと溶けて仕舞った、煎餅のかけらから、尚も「葉子の匂い」を嗅ぎ出そうと、総てを忘れて、ペロペロと舐め続けていた……。

「こらっ。何をしてるんだ、黒公」

 ハッと気がつくと、蒲団の山の向うから、源二郎爺の、怒りを含んだ怪訝な顔が、覗いていた。

「出番じゃねエか。愚図愚図してると、又ひどいぞ」

「ウン」

 黒吉は、瞬間、親方の顔を思い出して、ピョコンと飛起きた。そして、ベタベタと粘る手の掌を肉襦袢にこすりこすり、周章あわてて楽屋の方へ駈けて行った。

二ノ三

 黒吉は、命ぜられた、色々の曲芸をしながらも、頭の中は、いつも葉子の事で一杯だった。

(一度でいいから葉ちゃんと、沁々話したい)

 これが、彼の歪められた心に発生わいて来た、たった一つの望みだった。

 彼がもっと朗らかな、普通の子供であったならば、いつも同じ小屋にいる葉子だもの、そんな事は、造作なく実現したに違いない。

 しかし、それにしては、黒吉は、余りに陰気な、ひねくれた少年だった。――というのも、彼の暗い周囲がそうさせたのだが――。

 そして、早熟ませた葉子への執着が、堰せき切れなくなった時に彼が見つけたのは、あの煎餅のかけらが産んだ、恐ろしい恍惚エクスタシーだった。

 一度こうした排はけ口を見つけた、彼の心が、その儘止まる筈はなかった――寧ろ、津浪のようにその排け口に向って殺到して行ったのだ。

 彼は、そっと、人のいないのを見すまして、衣裳部屋に潜り込み、葉子の小ちっちゃい肉襦袢に、醜悪な顔を、埋うずめていた事もあった。

 その白粉の匂いと、体臭のむんむんする臭いが、彼自身眩暈めまいをさえ伴った、陶酔感を与えるのだ。

 そして、ふと、その肉襦袢に、葉子のオカッパの髪が、二三本ついていたのを見つけると、その大発見に狂喜しながら、注意ぶかく抓つまみ上げて、白い紙につつむと、あり合せの鉛筆で、

「葉子チャンノカミノケ」

 そんな文句を、下手糞な字で、たどたどしく書きつけ、もう一度、上から擦さすって見てから、それを、肌身深く蔵しまいこんで仕舞った……。

 こうした彼の悪癖が、益々慕って行った事は、その後、葉子の持ち物が、ちょいちょい失なくなるようになった事でも、充分想像が出来た。

 失くなるといっても、勿論たいした品物を、曲馬団の少女が、持っている訳はなかったから、もうすり減った、真黒く脂肪あぶら足の跡が附いた、下駄の一方だとか、毛の抜けて仕舞った竹の歯楊子ようじだとか、そういった、極く下らないものだった。それで、

(盗られた)

 という気持を、葉子自身ですら感じなかったのは、彼にとっては、もっけの幸いだった。しかしこれらの「下らない紛失物」が、黒吉にとって、どんなに貴重なものだったかは、また容易に想像出来るのだ。

 ――ここまでは、黒吉少年の心に醗酵した、侘わびしい(しか執拗な)彼一人だけの、胸の中の恋だった。

 だが、ここに葉子が、暴風雨あらしを伴奏にして、颯爽と、現実舞台へ、登場しようとしている。

       ×

 極東曲馬団は、町から町、盛り場から盛り場を、人々の眼を楽しませながら、流れ移っていた。

 そして、ある田舎町に敷地を借り、ようやく小屋掛けも終ったと殆んど同時に、朝から頸を傾かしげさせていた空模様が、一時に頽くずれて、大粒の雨が、無気味な風を含んで、ぽたりぽたり落ちて来たかと思うと、もう篠つくような豪雨に変っていた。

 団長等は、早々に、宿屋に引上げて仕舞ったが、子供の座員や、下っぱの座員などは、経費の関係で、いつも、この小屋に泊る事を言渡されていた。子供等の方では、これは当然だと思っていたし、又団長がいないという事で、却って喜んでいたようでもあった。

 しかし、この急拵えの小屋が、この沛然はいぜんと降る豪雨に、無事な筈はなく、雨漏りをさけて遁げ廻った末、やっと楽屋の隅で、ひと凝固かたまりになって、横になる事が出来たのは、もう大分夜が更けてからだった。

 黒吉は、眼をつぶって、ようやく小降りになって来たらしい、雨の音を聴いていると、もう肩を並べた隣りからは、幽かな寝息さえ聴えて来た。

 それと同時に、黒吉は、何かドキンとしたものを感じた。

(隣りに寝ているのは、葉ちゃんじゃないか――)

二ノ四

 瞬間、黒吉は自分の頭が、シーンと澄み透って行くのを感じた。

(果して、隣りで寝ているのは、葉ちゃんだろうか)

 それは勿論、第六感とでもいうのか、極く曖昧ものだった。が、あの騒ぎで、皆んな、ごたごたに寝て仕舞ったのだから全然あり得ない事でもないのだ。

 そう思うと、隣りと接した、肩の辺が、熱っぽく、暑苦しいようにさえ感じた。そして、心臓はその鼓動と伴に、胸の中、一杯に拡がって行った。

 黒吉は、思い切って、起上り、顔を覗き見たい衝動を感じた。あたりは真暗だが、よく気をつけて覗きこめば、顔の判別がつかぬ、という程でもないように思われた。

 彼は、そーっと、薄い蒲団の縁へりへ、手をかけた。だが――

(まてまて。葉ちゃんならば、こんなに素晴らしい事はない。けれども、こんなにぎっしり寝ている処で、ごそごそ起きたら、どうかすると、彼女は眼を覚ますかも知れない。

 それだけならいいが、眼を覚まして、俺が覗きこんでいた事を知ったら、きっと葉ちゃんは、真赤になって、この醜い俺を罵り、どこか遠くへ寝床をかえて仕舞うに違いないんだ。

 ――そんな莫迦な事をするより、例え短かくとも、夜が明けるまで、こうして葉ちゃんの、ふくよかな肩の感触を恣ほしいままにした方が、どれ程気が利いていることか……)

 黒吉の心の中の、内気な半面が、こう囁いた。

 彼は、蒲団にかけた手を、又静かに戻して仕舞うと、今度は、全身の注意を、細かに砕いて、彼女の方へぴったり、摺り寄って行った。そして、温もりに混った、彼女の穏やかな心臓の響きを、肩の辺に聴いていた……。

 フト、冷めたい風を感じて、何時の間にかつぶっていた眼を明けて見ると、あたりには極くうっすらと、光が射しているのに、気がついた。

(もう夜明けかな――いつの間に寝て仕舞ったんだろう)

 それと一緒に、思わずガクンと体の顫えるような、口惜くやしさに似た後悔を感じた。

(葉ちゃんは……)

 黒吉は、先ずそれが心懸りだったので、ぐっと頸を廻して隣りを確めようとした。

(おや……)

 彼の眼に這入ったのは、葉子より先きに、キンと澄み切った、尖った月の半分だった。

 急拵えの小屋天幕は、夕方の大暴風雨あらしに吹きまくられてぽっかり夜空に口を開け、恰度そこから、のり出すように月が覗き込み、地底のようにシンと澱んだ小屋の中に白々とした、絹糸のような、光を撒いているのだ。暴風雨あらしの後の月は物凄いまでに、冴え冴えとしていた。

(まだ夜中だ)

 黒吉は※ほ[#「口+息」、22-9]っと心配を排はき棄てた。

 彼の隣りには、葉子が、いかにも寝苦しそうに寝ていた。先刻さっきは、確かに葉子だ、とは断言出来なかったが、いまでは極く淡い光ではあったが、その中でも、段々眼の馴れるに従って、黒吉には、ハッキリ葉子の姿が、写って来た。

 黒吉は、意を決したように、半身を蒲団から抜出し、月の光を遮らないように――、音のしないように、そっと彼女の顔を覗きこんだ。

 眼の下には、月の光を受けて、いつもより蒼白く見える葉子の、幼い顔が、少しばかり口さえ開け、寝入っていた。もう少し月の光が強かったら、この房々としたオカッパの頭髪かみのけが黄金のように光るだろう――と思えた。

 又、襟足の洗いおとした白粉が、この幼い葉子の寝姿を少年の心にも、一入ひとしお可憐いじらしく見せていた。

 暫く、ぼんやりと、その夢のように霞んだ、葉子の顔を、見詰めていた黒吉は、ゴクンと固い唾を咽喉へ通すと、その薄く開かれた唇から、寝息でも聴こうとするのか、顔を次第次第に近附けて行った。

 何故か、彼の唇は、ガザガザに乾いていた。

 やがて、この弱々しい月光の下で、二つのさな頭の影が、一つになって仕舞うと、彼は、葉子の頬についている、小さい愛嬌黒子ぼくろが、自分の頬をも、凹へこますのを感じた。

二ノ五

 黒吉の、唇に感じた、葉子の唇の感触は、ぬくぬくとして弾力に富んだはんぺんのようだった。妙な連想だけれど、事実彼の経験では、これが一番よく似ていたのだ。

 唯、違った所――それは非常に違ったところがあるのだが――残念ながら、それをいい表わす言葉を知らなかった。

 彼は、そーっと腕の力を抜こうとした。途端に、肘の下の羽目板が、鈍い音を立てた。造作の悪い掛小屋なので、一寸した重みの加減でも、板が軋むのだ。シンとした周囲あたりと、針のように尖った、彼の神経に、それが幾層倍にも、拡大されて響き渡った。

 黒吉の心臓は、瞬間、ドキンと音がして止ったようだった。

「ク……」

 周章あわてて顔を上げた彼の眼の下で、葉子は、悪い夢でも見たのか、咽喉を鳴らすと、寝返りを打って、向うを向いて仕舞った。

(眼を覚ましたかな)

 黒吉は、思いきり息を深くしながら、葉子の墨のような、後向きの寝姿を、見守った。(いや、大丈夫だ)

 寝返りをした葉子は、幸い、眼を覚まさなかったと見えて、直ぐ又かすかな、寝息が、聴えて来た。

 彼は、ようやく※ほ[#「口+息」、24-4]っと、熱

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