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2025-04-08

Ave Mujica』における睦と解離性同一性障害DID)の描写DIDシステムによる情報提供分析スレッド

https://x.com/__digitaldreams/status/1879928073854046510

私たちDIDを持っており、自分システムに気づいてから4年以上が経ちました。これまでにも、好きな他のメディアに登場する複数人格のキャラクターについて分析を行ってきました。また、散文や詩を通じて私たち経験を詳しく書いてきました。このスレッドでその知識を共有します。

解離性同一性障害DID)とは何か?

DIDは、1人の人間複数アイデンティティを持つ精神的な健康状態です。これらのアイデンティティは「オルター(alters)」と呼ばれ、システム内に存在します。オルターは「スイッチング」を通じて、誰がフロント身体制御する状態)に立つかを変えます

名前の通り、DIDには多くの解離が含まれます。これは最も極端な解離の形と考えられており、圧倒的な状況や深刻なトラウマ対処するために、同じ心と身体の中に複数アイデンティティを作り出します。

DIDは、幼少期のトラウマや(複雑性)PTSDのようなトラウマ関連障害と強く関連しています。また、離人感(自分の心や身体から乖離)や現実感喪失現実から乖離)といった他の解離性障害と併発することもよくあります

DIDの症状には以下が含まれます

自分感情の分離

周囲の人や物が本物ではないと感じること

自己アイデンティティ不安定

記憶喪失やアムネジア

時間喪失(解離による)

突然かつ顕著な人格アイデンティティの変化

[画像:アニメのシーンが複数添付されています。例: 「あ!にゃむちもいる!超かっこいい~」「おー、幼馴染?」「うーん…でも美波森織の娘であることが大きいかな」「長くは続かないよ」などの字幕付きシーン]

第2話全体を通して、睦は解離状態にあります

彼女ほとんど何も話さず、いつもガラス玉のような目で前方を見つめています。これは若葉家でも、インタビュー中でも、フォトシュート中でも同様です。

ほとんどの会話中、彼女は完全にそこにいるようには見えません。これが外部から見た解離の様子です。彼女は全く集中できていません。なぜなら、精神的に「そこ」にいないため、何が起こっているかに集中できないのです。

(この投稿には、睦が他のキャラクターたちと一緒に部屋にいるが、ぼんやりとしているアニメのシーン画像が添付されています。)

同じシーンでスタジオを去る際、睦の動きはぎこちなく不自然で、まるで普通に歩く方法を忘れてしまたかのようです。これは極端な解離によく見られる症状です。身体現実の間に大きな距離があるため、通常の動作抑制されてしまます

睦の解離した視線はそこだけではありません。エピソードの残りの部分でも非常に顕著です。フォトシュート中も彼女ガラス玉のような目をしており、カメラマンがそれに気づくほどです。彼女は全く集中しておらず、それが明らかです。

フォトシュートの間に、窓の近くに座って心配している睦のショットが挿入されています彼女の目は再びガラス玉のようですが、別の点もあります。窓の外を見ると、照明の変化によって時間が目に見えて経過しているのが分かります

睦は一部のショットで激しく心配していますが、他のショットでは全く何も感じていないように見えます。これは睦と彼女感情の間の乖離です。この特定現象は「感情的健忘」と呼ばれ、DIDでよく起こることです。

感情的健忘とは

トラウマ的な状況でどのように感じたかを覚えていない状態を指します。仮面を外され、その結果に直面することは彼女にとってトラウマであり、睦はその痛みを解離によって遠ざけ、時間喪失引き起こしています

時間喪失が最もよく表れているのは、フォトシュートシーンの最後カットです。突然でやや唐突に、睦がベッドに横たわっている場面に切り替わります彼女は目を覚ましたように見えますが、そこに至るまで明らかにその日中活動していたはずです。

この場面の切り替わりの直前、音声が遠くなり、歪んでいきます。解離は現実から乖離の一環として、音の歪みを引き起こすことがあります。声が不明瞭になり、カメラ映像がどんどん柔らかくなって、最終的に完全にフェードアウトします。これは現実感喪失(derealization)を明確に示しています

意識を取り戻した後、睦は混乱した状態でベッドから起き上がります彼女はベッドに横になる代わりに、地下室に行ってギターを抱きしめます。これはベッドに横たわっていた時の睦と同じ人物には見えません。彼女はフォトシュートの間にスイッチングし、今、再びスイッチングして戻ってきたのです。

このエピソードでの健忘の例はこれだけではありません。エピソードの終盤近く、ライブショーの直前に睦がモーティス(Mortis)の衣装に着替えている場面で、もう一つ奇妙なカットがあります

ここでのカメラフラッシュ音は重要です。第2話では、カメラフラッシュが睦とモーティスがスイッチングする際の合図となっています。フォトシュート中のスイッチングで最後に聞こえたのは、大きなフラッシュ音でした。

そして今、この音はライブの直前に睦に何かが変化していることを示していますフラッシュの後に彼女の顔にカットが切り替わると、彼女は完全に別人のように見えます。もはや激しく呼吸しておらず、突然落ち着いています

直後、睦はステージに立っていますが、どのようにしてそこにたどり着いたのか明らかに混乱しています。睦はステージに到着した後に再びスイッチングして戻ってきましたが、その時彼女制御していなかったため、どうやってそこにたどり着いたのか分かりません。

まり、第2話の後、睦はすでに激しい解離、現実感喪失離人感、自身感情の分離、時間喪失、そして記憶喪失を示しています。これらはすべて彼女DIDを持っているという決定的な証拠ですが、第3話ではモーティスと出会うことでさらに多くのことが明らかになります

モーティスはこのパズルの欠けていたピースです

彼女は睦のオルターであり、保護者であり、記憶時間喪失の原因です。第2話でのカメラフラッシュは、睦が過度にストレスを感じて解離した際に、モーティスがスイッチングして制御を取ったためでした。

スイッチングはしばしば外部のストレスや引き金によって起こります。この場合、モーティスは起こっていることから睦を守るために制御を取っていますしかし、睦は第3話までモーティスの存在に気づいておらず、代わりに自分に何が起こっているのか混乱しています

モーティスが睦の人生について説明する際、いくつか注目すべき点があります。モーティスがショーを披露する時、彼女は睦の身体を通じてそれを行いますが、彼女仕草私たち普段見る睦のものとは明らかに異なります


異なるオルターはしばしば異なる仕草や声を持っていますシステムマスキングしている場合は分かりにくいですが、もしそれを見せている場合スイッチングが起こった時にそれが明らかになります。そして、このバージョンの睦は明らかに睦ではありません。

睦の人生全体のショーは、モーティスが睦に彼らの記憶への完全なアクセスを与えていると解釈できます。睦はストレスの多い時期についての健忘があり、モーティスが代わりに記憶しています。今、モーティスはもう隠れることができず、睦に彼女経験したすべてを見せています


人形の家ショットも興味深いです

モーティスに似た睦の人形が両親と一緒に下の階にいる一方で、睦自身は上の階でパニックになっています。睦は体外離脱体験をしており、自分がその部屋にいると思えていません(現実感喪失)。

睦の人生全体のショーは、モーティスが睦に彼らの記憶への完全なアクセスを与えていると解釈できます。睦はストレスの多い時期についての健忘があり、モーティスが代わりに記憶しています。今、モーティスはもう隠れることができず、睦に彼女経験したすべてを見せています

エピソード全体を通して、モーティスは睦に身体の完全な制御を渡すよう説得しようとしています

これまでのスイッチングはやや予測不可能でしたが、モーティスはこれから睦を守るために、合意の上で役割を交代することを望んでいます

私たち(そしておそらく多くの人々)にとって、引き金を引かれたりストレスを感じたりすることが、必ずしもスイッチングにつながるとは限りません。時には、フロントにいるオルターが「固まって」しまい、スイッチングできなくなることがあります。睦にもそれが起こっているようで、特に彼女制御を譲ることを恐れているため、その傾向が強いようです。

そのため、モーティスはさらに強く迫り、睦は解離し続けます。にゃむが彼女の家に到着した時、睦は反応しません。咲子とうみりが入ってきた時、睦は会話から完全に意識を外し、代わりにモーティスや他の人形たちが話すのを聞いています

(この投稿には2枚の画像が添付されています。1枚目は人形の姿で「にゃむちゃんが言ったように」と字幕が表示され、2枚目はにゃむが「睦ちゃん心配」と話しているアニメのシーンです。)

モーティスは明らかに悪意を持っていません。彼女はやり取りの最中に睦の靴を抱きしめさえします。モーティスはどんな手段を使ってでも睦を守りたいと思っています。このままでは睦が壊れてしまうため、モーティスはどんな方法でも彼女を世話すると誓っています

https://note.com/s_superdry/n/nbe54ca3ab4c7

Permalink |記事への反応(0) | 08:04

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2025-01-04

ネタバレになるけど、イプセンの「人形の家」は妻が偽造文書銀行融資を受けたうえ、夫の銀行頭取言いがかりをつけて、子供もおいて、不良弁護士と夜逃げするじゃん

犯罪物語だけど、なんで有名なんだろ

Permalink |記事への反応(1) | 20:44

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2024-10-13

名作といわれるドラマおしんをみたので感想を書く その4

https://anond.hatelabo.jp/20241010224911から続く

おしん物語根底を流れているのが、「恩」であり「仁義であるということをこれまでの感想でも書いてきた。おしんイコール辛抱する精神というイメージが広く流布するなか、金儲けに走った息子の根性を叩き直すために、田倉家を滅ぼしてでもライバル会社に利する行動に出た、という物語ハイライトは、意外にもあまり注目されていない。私も正直なところ、全話を通してみるまで知らなかった。

今回は、物語類型としての「おしん」をみてみたい。

流浪するおしん股旅物としての評価

おしんは一代記ものとしては、タイムスケールがとても長い。おしん1901年昭和天皇と同年に生まれた設定である

そしておしんが生きた少女時代から後期高齢者の83歳になった1984年まで、それぞれの時代があまりにも違い過ぎるので、1983年の田倉家のシーンから明治回想シーン時代を一気に2世代くらい遡るときタイムトリップ感が半端ない

1983年おしんが息子・仁を裏切って、並木商店への説得どころか、積極的大手スーパーへの並木土地の売却を進めてくれとお願いした背景には、並木商店隠居の大旦那並木浩太に対する並々ならぬ恩があるからである

それは、どのような恩だったのか。おしんは息子たちには何も過去を語ってこなかったので、仁には知る由もなかった。そもそも並木浩太とは何者なのか。

おしんも誤解されるのが嫌でそれまで息子には一度も語ってこなかった。しかし、前年の1982年17号店進出を知ったおしんが息子の行動を阻止しようとしたとき、仁は、それが母の初恋の人への配慮であることを悟る。そして、仁はいう。商売ってそういうものじゃない、「母さん、みっともないよ。」と。今風にいえばいい歳してエモいことを言い出してんじゃねえよと思われたのであろう。案の上、誤解されてしまったおしんであったが、なすすべなく工事は進み、ついに開店当日を迎える。おしんはこれまでの人生の回顧の旅に出るのである

おしんと人の縁

おしんと浩太のいきさつをかいつまんでかくのも、がっつり書くのもいずれもけっこうしんどいしかし、今回のテーマの「股旅物」がわかるように、ややガッツリ目に書いておこう。股旅とは、大正時代に生み出された物語類型ひとつで、一宿一飯の義理人情に従って流浪する物語であり、多くは渡世人やくざなどが主人公である股旅物の元祖長谷川伸は、その後の日本小説戯曲、そして映画テレビドラマに至るまで多大な影響を与えた人物である。「飢餓海峡」で知られる水上勉は、長谷川伸の「夜もすがら検校」を読んで作家を志したことはよく知られている。「夜もすがら検校」を発表したのは1924年である明治が遠く過ぎさり、大衆大正デモクラシー自由への過大な期待から人々が少しずつ醒め始め、もう一度生き方を見直そうしていた時代である

おしん回想シーンだけをみると、浪花節にあふれた、まごうことな股旅であるしかし、おしん物語面白いところは、浪花節陳腐化し、古臭いものになってしまった現代1980年代)と交差している点である

キーワード加賀屋への恩】

並木浩太とおしん最初出会いは、おしん16歳、山形酒田の米問屋加賀屋奉公へ来てから7年が経った頃だ。おしんは、加賀屋の跡取りの長女・八代加代と姉妹同然に育ちながらも、大奥様・八代くにからは、肉親の孫娘・加代よりも商売イロハから茶道裁縫など良家の子女としての教養を徹底的に教え込まれていた。このときにの指導によって身に着けたものの考え方や教養が、のちのおしん人生で役に立つのである。加代はというと、将来は良家から婿をもらって加賀屋をどうせ継がさせられる自分のつまらない運命うんざりしていた。絵画が好きだった加代は、東京で別の”自由”な人生があるのではと夢をみる少女だった。そんな折、農民運動活動家・浩太と出会った。酒田訪問した際、官憲の目を逃れるためにおしんとお加代に助けを求めたのが最初出会いであるおしんとお加代は同時に、浩太に恋心をもってしまう。大正デモクラシー時代だった。インテリかぶれした加代は平塚雷鳥の本を手元におき、人形の家を著したイプセンなどに憧れを抱いていた。当時、大衆のなかで勃興していた人権運動先進的だと中身もわからず憧れていたのである農民運動、カッコいい!加代は浩太の活動ロマンを感じて恋に落ちてしまった。一方、おしんは、土地を持たない小作農民の自立を助けたい、という浩太の純粋な思いに心を打たれていた。おしん小作の娘であった。小林綾子が主演した「おしん少女編」では、おしんの母・ふじが冬の川に下半身を沈めて妊娠中絶を図ったり、小作農民の悲哀がこれでもかというくらい暗く描かれていた。そしておしんは冬の川に入った母の姿をみて、6歳で材木問屋奉公へ行く決心をしたのであるいかだに乗って、母ちゃんと叫ぶ、有名なシーンのアレである

ともあれ、加代とおしんは同時に同じ男性に恋をした。そしておおらかで情熱的な性格の加代は恋心を隠すことができず、おしんに打ち明けていた。そしてやがて加賀屋の跡取り娘でありながら、何もかも捨てて浩太へ会いに東京家出してしまう。しかし、おしんは、奉公先の跡取り娘であるお加代様の恋を大切に思い、自分の思いはそっと封印した。一方の浩太は、東京に出てきた加代の猛烈な求愛を受け止めつつ(東京で加代と同棲までした)、本心最初からおしんが好きだったのである

おしんは加代の家出理由加賀屋に伝えることが忍びなく、おしん加賀屋から暇をもらって帰郷する。帰郷したおしんを待っていたのは、おしん女郎部屋へ売り飛ばそうとする父・作造と口利きの男であった。さら実家で目にしたのは、奉公先の製紙工場の過重労働健康を害し、肺結核で放り出され、今や死を目前にした姉・はるの姿であった。いまわの際に、はるは女衒に騙されそうになっているおしんを救うべく、自分の夢が髪結いになることだったことをおしんに告げ、東京の知人の髪結い師匠長谷川たかの住所を訪ねるように、伝えて息絶えた。

一方、加代は、浩太の心がおしんしか向いていないことを悟り、浩太のいない東京を去り、加賀屋を継いで見合い結婚する。

キーワード日本髪結いのおたかへの恩】

こうして、はる姉ちゃんが叶えなかった夢を託されたおしん東京へ出た。女郎部屋を売り飛ばそうとした父のいる故郷に心を残すものはなかった。髪結い師匠たかは、江戸時代から続く髪結いの昔気質職業観を持った女性だった。一人前になるための6~7年の下積みの苦労は当然であり、弟子には甘えを許さなかった。

しかし、大正という時代は、江戸から明治まで続いてきた日本髪の伝統の衰退期であった。大正浪漫とか大正モダンと言われる時代が到来しており、洋髪が東京流行し始めていた。おしんが修業している3年間の間に大きく時代が変わりつつあったのである

大衆身分から解放され、より自由髪型を求めるようになっていた。髪型をみれば、人妻なのかそうでないのか、はたまた、その人の職業身分がわかる、という時代は終わりつつあった。弟子入りなんてせず洋髪の専門学校をでて、理髪を仕事にする時代がきていた。おしんには洋髪のセンスがあった。たかおしん独立をすすめる。たかはいう。「昔は厳しかったんですよ。6年も7年も修業してやっと一人前になったら、それからまた、お礼奉公をして。10年近くもただ働きをして覚えたもんなんですよ。そんなことは今は通んなくなっちまったけど。やっぱりご時世ってもんですかね」。これは紆余曲折を経ておしんたかの元から独立し、その後、客先で出会った男性・田倉竜三と結婚挨拶たかを訪れたとき言葉である。その時、5人いたたか弟子はついにたった一人だけになっていた。

田倉商店を竜三の妻として支えるようになったおしんであったが、商売は順風ではなかった。おしん夫婦を陰で支えていたのはたかであった。田倉の経営が傾くと、おしんたかを訪れ、髪結いをして夫を支えた。たかもまた、洋髪の時代おしんの才覚を必要としていた。客商売は人の縁、ひととのつながりを大切にすることだと心に刻んだのはこの頃である

一方、田倉商店開店休業状態に陥るほど経営悪化していたが、おしん髪結いで稼いでいたので竜三はプライドを傷つけられ、すっかりおしんが稼ぎ出した金で遊び歩くようになってしまった。師匠たか相談すると別れちまえという。「ダメな男はどこまでいったってダメなんだよ」とすっぱり切り捨てるが、おしんは亭主をダメにしたのは自分だとと気が付いた。夫の更生のために妻の自分は黙って夫についていく姿勢を示すことを決意し、長谷川洋髪をやめることをたかに申し出る。稼ぎ頭のおしんに辞められるのはたかにとってもつらいが、受け入れる。やがて蓄えもつき、明日食べるコメもないどん底におちて初めて竜三は再起を決意する。しばらくは順調に田倉商店再生が進んで、おしん洋裁の才能も手伝って、田倉は子供服店を開店することになった。しかし、その直後、関東大震災おしん夫婦の夢を完膚なきまでに打ち砕いてしまうのである工場火災で焼かれ、絶望した竜三は「佐賀ゆっくり休みたかおしん佐賀はいいとこばい。。。」といって佐賀への帰郷の心を固める。竜三は大地主の三男坊なのである。こうしておしんにとって地獄佐賀編がスタートすることになった。

さて、佐賀に三男の嫁として入ったおしんを待ち構えていたのは、姑による徹底的な虐待だった。数か月もすると、おしん佐賀地獄から脱出を心ひそかに誓い、東京師匠たかのもとに、東京に戻りたいと手紙を書くのであるたかの元にいけば助かる、自分の腕一本で生きていると信じた。必死の決意で脱出し、やっと髪結いを再開しようとするも、さらなる不幸がおしん絶望に突き落とす。佐賀で夫に振るわれた暴力が原因で、右手の神経に麻痺が残ってしまっていた。髪結いを諦めざるを得なくなった。

こうしておしん流転の人生が始まる。屋台出店からまり故郷山形酒田と流れ流れ、ついに浩太の紹介で三重伊勢の魚の行商に落ち着き先を見出すのである佐賀に残った夫といつかは一緒になれると信じて手紙を書き続けるのである

キーワード:浩太の恩】

浩太の実家貴族院議員の父を持つ、太い実家だと先に書いた。しかし、浩太にとって本当のやすらぎのふるさとは、おばの伊勢実家網元のひさの家であった。浩太は、流浪人生を送るおしんを見かねて、伊勢網元をやっているおばのところに下宿し、行商を勧めるのである。これまで米問屋での奉公に始まり、ラシャ問屋子供服洋裁、洋髪・日本髪、農家の嫁地獄酒田の飯屋をやってきたおしんめし加賀屋は加代とおしんが切り盛りし、おしんにとって加代の元気な姿をみた最後の思い出となった。その職業遍歴に今度は魚売りが加わることになった。

伊勢に来て、笑顔を取り戻したおしん。竜三もおしん魚屋をやる決意をしてくれ、おしん人生好転し始めていた。

一方、加代の人生は、暗転した。加賀屋本体が夫の先物取引の失敗で負債を抱え倒産した挙句、夫は自殺してしまう。八代家の両親は過労で衰弱、入院費を工面するために加代は借金のかたに売春宿に沈められてしまう。両親は相次いで亡くなり、生まれたばかりの希望を抱えた加代をみて、おしんは救出を誓うが、借金の額に手が出せなかった。加代は翌日酒を煽って死んでしまった。希望は田倉で引き取ることにし、加賀屋の再興を果たしたい思いから、養子にはせず、八代苗字も変えなかった。

一方、浩太は長く続けてきた農民運動に行き詰っていた。治安維持法により、弾圧が厳しくなり、ついに6年間も投獄され、苛烈拷問の末、転向を迫られた。敗北者となった浩太は、心身の傷をいやすために伊勢のおばのところに帰るのである。すっかり引きこもってしまい、おしんとも口を聞こうとしなかった。やがて、浩太は実家の縁談に応じて、並木家へ婿入りすることになって静かな人生を送るのである。やがて少しずつおしんとも再び心を開くようになるまで十数年を要した。

田倉家では、雄、次男の仁、そして希望がすくすくと育っていった。雄は戦争で亡くなるが、戦後も仁と希望兄弟のように母おしん魚屋を支えていた。大人になった仁が商才を発揮する一方で、希望商売に向いていない自分を見つめ直し、自己実現のために陶芸の道を歩みだす。

屈折10年、陶芸師匠の元で修業した希望がようやく独り立ちできる時期が来た。そのときに、希望のための釜・新居の支援をしたのは浩太である。お加代さんとの縁を思い出してのことである。浩太は、折に触れて田倉家のおしんを見守るように生きていた。おしんセルフサービスの店に挑戦するときも、銀行からの借り入れにあたって、浩太は並木の自宅を抵当にいれてくれたこともあった。

股旅物を取り込んだ現代劇~義理人情は古臭い観念かという現代人への問いか

さて、長いことおしんの半生を振り返ってきたが、一旦冒頭の仁のセリフ1983年の場面)に戻りたい。

仁が17号店の出店を並木商店の近くに計画していることを知っておしんが反対したときのことである初恋のひとに迷惑がかかる?「母さん、みっともないよ。」というのが仁の反応であった。しかし、もし仁が母おしんの半生をもう少し知っていればそんな言い方はなかっただろう。おしんは人の恩に深く支えられて生きてきたのである。田倉スーパーの出発点となったセルフサービスの店にしても浩太の支援があってこそであった。

ここには、自ら築き上げてきたスーパー廃業も辞さなおしんの思いは、長谷川伸の「夜もすがら検校」で大切な琵琶を燃やしてまで恩に報いたい思いと通じるものがある。

ドラマ構成として興味深いのは、おしんの半生を、徹底的に(一年間のドラマの大半部分を費やして)一宿一飯の義理人情で「世話物」的に(つまり当時の生活感覚として)描いておきながら、おしん戦後現代にいたる高度経済成長おしん自身義理人情を忘れてしまたことに気が付く、というメタで重層的な構成であるおしんにしても、商売は食うか食われるかだ、という厳しい姿勢戦後を突っ走り、16号店までたのくらスーパー事業拡大させてきた戦犯なのである。それが今になって17号店は昔に世話になった人に迷惑がかかるから反対、はない。突然反対し始めた母を見た1983年の仁の目からは、義理人情なんて古臭いものだという感覚であり、母の物語は「世話物」ではなく完全に「時代物」なのである。大切なものを置き忘れてしまった気がしたおしん問題17号店開店当日、失踪する。この世話物時代物が交差する、ところもドラマおしんの魅力である

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2024-06-28

anond:20240628162409

ある人妻相続人女性私文書偽造のうえの融資を受けたことで弁護士から脅迫されたが、弁護士はのち脅迫撤回し、女性は夫と別れる

これが演劇人形の家」だ(1879年ノルウェー

私文書偽造起訴され難いのは…

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2024-01-13

ON STAGEオンステージ Z-PK30(S)

曲目

Google翻訳アプリを利用して画像から文字を取得したため、曲名歌手名が正しく表記されていない場合があります

愛燦燦 美空ひばり

愛人 テレサ·テン

愛の終着駅 八代亜紀

蒼い星くず 加山 雄三

青葉城恋唄 さとう 宗幸

アカシアの雨がやむとき 西田 佐知子

秋田おばこ 秋田民謡

アケミという名で十八で 千 昌夫

あざみの歌 伊藤 久男

あじさいの雨 渡 哲也

あずさ2号 狩人

あなた 315小坂 明子

あなたと生きる 1252石原 詢子

あなたならどうする 329 いしだあゆみ

あなたにあげる 1253西川 峰子

あなたブルース 208矢吹

あなたへ 1254香西 かおり

あの鐘を鳴らすのはあなた 286和田 アキ子

あばれ太鼓~無法一代入り~1255坂本 冬美

天城越え 16石川さゆり

雨 1256 三善 英史

酒場 313香西 かおり

雨の西麻布 とんねるず

雨の慕情 八代亜紀

雨の御堂筋 欧陽 菲菲

雨の連絡船田川寿美1257

嵐を呼ぶ男石原裕次郎1258

わずに愛して内山田洋とクール・ファイブ 13

あんたの花道天童よしみ1259

192山口百惠いい日旅立ち

石原裕次郎33 粋な別れ

22小柳ルミ子 漁火恋唄

漁火の宿1260 鏡五郎

346北原ミレイ石狩挽歌

396一円玉の旅がらす晴山 さおり

449いちご白書をもう一度バンバン

熊本県民謡 1552五木の子守唄

射手座の女敏いとうハッピー&ブルー232 愛しき日々堀内孝雄 40

命くれない瀬川瑛子108

命の花大月みやこ 383

さらジロー1261小柳ルミ子

祝い酒坂本冬美 26

455門脇 陸男 祝い船

うそ110中条きよし

ザ・ピーナッツウナ・セラ・ディ東京 355

裏町酒場 368美空ひばり

越冬つばめ 216森昌子

襟裳岬 429森進一

演歌兄弟北島三郎鳥羽一郎

演歌はいいね1263岩本公水

217松原のぶえ演歌みち

東京都民謡 1553年 お江戸日本橋

大阪しぐれ都はるみ 72

角川博大阪ものがたり 348

大阪ラプソディー 海原千里·万里 27

奥飛騨慕情111竜鉄也

贈る言葉海援隊 220

小樽運河都はるみ 352

男侠(おとこぎ)1264坂本冬美

日時ミミ男と女お話1265

男と女の破片100前川清

松原のぶえ 461 男なら

493杉良太郎 男の人生

位山太志郎 29 男の背中

村下孝蔵23踊り子

お久しぶり小柳ルミ子 30

おふくろさん331森進一

221 おまえとふたり五木ひろし

日野美歌332 想い出グラス

おもいで酒小林幸子 195

想い出の渚ザ・ワイルド・ワンズ 199

想いで迷子116チョーヨンピル

父親(おやじ)1266北島三郎

お嫁においで加山雄三

お嫁にゆけないわたし ジジサン 222

俺ら東京さ行ぐだ

鳥羽一郎1267 おれの人生始発駅

原田悠里1268 おんな坂

三笠優子 223女の一生

さくらと一郎1269 女のきずな

松原のぶえ 305 おんなの出船

宮 史郎とぴんからトリオ 309女のみち

八代亜紀117 おんな港町

鳥取県民謡 1554年 貝まつり

ジジサン 474海峡

ガロ 454学生街喫茶店

ペギー葉山233学生時代

堀内孝雄 136影法師

鹿児島はら鹿児島民謡 1555

ちあきなおみ31喝采

悲しい色やね 34上田正樹

1270 悲しみの恋世界前川清

137 哀しみ本線日本海森昌子

がまん坂 18北島三郎

12北島三郎

川の流れのように美空ひばり 35

黄色シャツ浜村 美智子209

木曽路の女原田悠里 87

木曽節 1556年長野県民謡

北へ向かう夜想曲118多摩幸子

和田 弘とマヒナスターズ

北国の春 320千昌夫

北酒場 193細川たかし

北の旅人石原裕次郎20

北の漁場 41北島三郎

1271島倉千代子

君こそわが命205水原弘

君といつまでも 42加山雄三

君は心の妻だから119鶴岡雅義&東京ロマンチ

君は薔薇より美しい1272布施明

今日でお別れ菅原洋一314

京都の恋 196 渚 ゆう子

よしのズンドコ節1273氷川きよし

霧の摩周湖布施明120

銀色の道321ザ・ピーナッツ

空港テレサ・テン 146

空港ラプソディー1274中村美律子

草津群馬県民謡 1557

くちなしの花 462渡哲也

147 グッド・ナイト・ベイビーザ・キングトーンズ

黒の舟唄1275加藤登紀子

1569年軍艦行進曲軍歌

圭子の夢は夜ひらく

369藤圭子 恋あざみ

431 盛彩業 恋唄綴り堀内孝雄

岸洋子326 恋心

小林明子 148恋におちて

323ピンキーとキラーズ恋の季節

奥村チヨ 353 恋の奴隷

45ザ・ピーナッツ恋のバカンス

ザ・ピーナッツ 479恋のフーガ

石原裕次郎 457 恋の町札幌

中村雅俊 150恋人も濡れる街角

46五輪真弓恋人

403香西かおり 愛のボート

大月みやこ432ものがたり

塚田 三喜夫 434 五月のバラ

富山県民謡 1558年キリコ

高山厳 152 心凍らせて

292藤あや子こころ

細川たかし 153心のこり

343森山良子 この広い野原いっぱい

ペドロ&カプリシャス 154五番街マリーへ

284ロス・インディオスコモエスタ赤坂

ごめんねジロー奥村チヨ1276

伊東ゆかり 197 小指の思い出

1559年香川県民謡金毘羅舟々

1560年宮城県民謡太郎祭り

市川由紀乃1277 さいはて海峡

森若里子嵯峨野の女235

酒場にて 492江利チエミ

酒と泪と男と女285河島英五

酒よ 36 ジジサン

さざんかの宿大川栄策 88

さそり座の女 294美川憲一

チコ ニック・ニューサー 481

佐渡おけさ新潟県民謡 495

里がえり 嶋三喜夫1278

サバ女王 グラシェラ・スサーナ 357

さよならだけの人生に 398堀内孝雄

サライ121加山雄三/谷村新司

三都物語谷村新司 306

四季の歌芹洋子 382

布施明シクラメンのかほり 37

435河島英五

時代おくれ311伍代夏子 忍ぶ雨

田端義夫 483 十九の春

北島三郎123終着駅は始発駅

シャオリンシュウ 342 純子

鳥羽一郎1279昭和北前船

菅原洋一201 知りたくないの

大橋 純子 155シルエット・ロマンス

加藤登紀子 65知床旅情

島倉千代子 194人生いろいろ

五木ひろし241人生かくれんぼ

ジジサン 90 酔った歌

杉良太郎 47 すきま風

60谷村新司 1森田公一トップギャラン若者小林幸子1280 雪泣夜(せつないよ)小柳ルミ子 48瀬戸の花嫁森進一1281 セビアの雨ジローズ 7 「戦争を知らない子供たち平和勝次とダークホース360宗右衛門町ブルース北海道民1561年ソーラン節内山田洋とクール・ファイブ 2 そして、神戸 49五木ひろし そして・・・めぐり逢い布施明 50 そっとおやすみにしきのあきら 187 空に太陽がある限り 増位山太志283 そんな女のひとりごと位山太志郎 157 「そんな夕子にほれました上田正樹 301たかこ 真木 柚布子1282黄昏ルンバ

加山雄三1283旅人

トワ・エ・モア 480誰もいない海

三船和子 198 だんな様

石川さゆり1284暖流

パープル・シャドウ125 小さなスナック

五木ひろし 442 契り

五木ひろし 93千曲川

津軽海峡・冬景色 39石川さゆり

津軽恋女282新沼謙治

津軽じょんから1562年青森県民謡

つぐない 458テレサ・テン

津和野1285島津悦子

デカンショ1563年兵庫県民謡

敵は幾万 1570年軍歌

天使の誘惑 138黛ジュン

東京やしきたかじん 77

東京砂漠内山田洋とクール・ファイブ129

どうにもとまらない 426山本リンダ

都会の子守歌山本譲二1286

時には娼婦のように 130黒沢年男

時の流れに身をまかせテレサ・テン 63

年上の女206森進一

和田アキ子 160 どしゃぶりの雨のなかで

445小林幸子まり

370天童よしみ道頓堀人情

五木ひろし1287長崎から船に乗って

内山田洋とクール・ファイブ 191長崎今日も雨だった

内山田洋とクール・ファイブ 131中の島ブルース

五木ひろし 66長良川艶歌

神野美伽1288浪花の春

島津亜矢1289 波

坂本九 392涙くんさよならステージ

殿さまキングス204なみだの操

三好鉄生 132涙をふいて

ペギー葉山202 南国土佐を後にして

岩手県民謡1564南部の牛追い

1571軍歌日本海海戦

1572軍歌日本海

384弘田三枝子人形の家

角川博1290人情つれづれ

328山本リンダ狙いうち

133北島三郎年輪

山川豊 161函館本線

平浩二 162バスストッ

山形県民謡1565 花笠踊り

163島津たかから花へと

14村田英雄 花と竜

ザ・タイガース 164 花の首飾り

78金田たつえ花街の母

165はしだのりひことクライマックス花嫁

167 佳山 明生 氷の雨

伍代夏子 440ひとり酒

火の国の女 350坂本冬美

百万本のバラ加藤登紀子 351

広瀬中佐軍歌(文部省唱歌) 1573

釜山港へ帰れ 67 渥美次郎

二人でお酒を 308梓みちよ

白市 459八代亜紀

冬のリヴィエラ 460森進一

ブランデーグラス 252石原裕次郎

ブルー・シャトウ 169ジャッキー吉川とブルー・コメッツ

ブルーライト・ヨコハマ 189いしだあゆみ

ベット煙草を吸わないで 141沢たまき

ヘッドライト1291新沼謙治

望郷酒場 253千昌夫

望郷じょんから細川たかし 496

王翔旅カラス1292千昌夫

インパチェンス 74島倉千代子

箱崎晋一郎 抱擁 142

星のフラメンコ西郷輝彦170

171平尾昌晃 星はなんでも知っている

敏いとうハッピー&ブルー 62

星降る街角 497北海盆唄

北海道民謡 北帰行 365

シャオリンシュウ島津たか172

ホテル 386チェン・ジュオエ

骨まで愛して大泉逸郎 96 孫

尾崎紀世彦173また逢う日まで

美空ひばり 451 真赤な太陽

2391松平健マツケンサンバ

75北島三郎 まつり

桂銀淑176 真夜中のシャワー

山形県民謡1566真室川音頭

坂本九 83見上げてごらん夜の星を

サーカス 259ミスターサマータイム

伍代夏子 441 水なし川

渡哲也 51 みちづれ

山本譲二 52みちのくひとり旅

軍歌 1574 道は六百八十里

中村美律子1293港町情話

シャオリンシュウ 419昔の名前で出ています

香西かおり 260 静けさ

53尾形大作無錫旅行情報

東八郎 261 娘へのバラード

藤あや子 377 むらさき雨情

1294中村美律子 めおと恋

都はるみ 70夫婦

262三笠 優子夫婦

もしもピアノが弾けたなら 71西田敏行

盛岡ブルース1295青江三奈

1567群馬県民謡八木

矢切の渡し細川たかし10

安来節島根県民謡1568年

やっぱすきやねんやしきたかじん 84

北島三郎 378

ゆうべの秘密小川 知子 340

雪国 59 ジジサン

スノーチュン11小林幸子

雪の進軍 1575軍歌

雪の降る街を 268高英男

夢追い酒 76 渥美次郎

夢芝居179梅沢富美男

千里1296キム・ヨンジャ

夢の夜 181南こうせつ

Permalink |記事への反応(0) | 18:36

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2023-07-23

フェミニスト監修で広末さん主演のドラマが見たいな

上野先生あたりの著作で描かれる自立した女性像、めちゃめちゃ広末さんにしっくり合うのよ。

イプセン人形の家」みたいなやつ。

夫に依存しきってる中年専業主婦から視聴率がとれないかもしれないけど、シンママ独身女性の視聴は固いはず。

Permalink |記事への反応(1) | 14:37

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2022-11-19

anond:20221119135849

北村紗枝氏がむやみに叩かれているそうなので、周辺を調べてみた

表面的な問題草津公職者の冤罪犯罪隠しであるが、あえて掘ってみるならば原因はイプセンの「民衆の敵」ではないかと思われた

 「民衆の敵」(1882年)は鉱毒被害告発本で、明治日本の主要産業は銅の輸出であったので、銅山営業のために、出版禁止にされていたと思われる書籍である

 

主要な銅山である足尾銅山鉱毒は早くも1878年明治11年)には報道されており、酸性雨草木の枯死、魚の大量死洪水もあった

そこで1882年明治15年)、イプセンスウェーデン下のノルウェーで「民衆の敵」を出版した

しか原書英訳を読むことができたのは、商社関係者か、法曹医師ぐらいだったと思われる

日本政府がしぶしぶ鉱毒調査委員会を設置したのは、1897年明治30年)で、その後の1901年明治34年)にようやくイプセン邦訳がある(大阪の元医師高安月郊)

それから更に何年も経過し、「人形の家」(1879年)の29年遅れで1910年大正9年)、「民衆の敵」は39年遅れで1921年大正10年)にようやく邦訳

   

戦後高度成長期には、日本の銅は1ドル360円の固定相場で輸出された

僅かな被害対策が行われたまま鉱山は稼働し続け、1973年昭和48年)に閉山となったときには、為替レートがあっさり変動制に移行している

したがって、「民衆の敵」の邦訳遅れや円安固定相場制は、日英米共同の銅ダンピング政策だった可能性もあろう

   

まり円安ときは、輸出企業が薄利多売で儲けを出すため、あるいは輸入先がワクチンなどの薬品などを高く売るために

公害放置されたり、メディア操作検閲が行われる恐れがある

北村紗枝氏はそのみなし検閲に引っかかったとも言えよう

日本人が金融に弱いというのは全く嘘だ(少なくとも政治家金融政策を駆使している)

Permalink |記事への反応(0) | 19:07

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2021-11-05

眞子氏が大学生活で人間なっちゃった

眞子氏が小室氏と出会ったICUという大学では、入学式で新入生みんなが「学校生活において世界人権宣言を遵守すること」を誓う学生宣誓に署名する。

https://www.icu.ac.jp/globalicu/pledge/

みなさんは、その世界人権宣言の中身ってどんなものか知ってますか。

第一

 すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳権利とについて平等である人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞精神をもって行動しなければならない。

二条

1  すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語宗教政治上その他の意見国民若しくは社会的出身財産門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利自由とを享有することができる。

2  さらに、個人の属する国又は地域独立国であると、信託統治地域であると、非自治地域であると、又は他のなんらかの主権制限の下にあるとを問わず、その国又は地域政治上管轄上又は国際上の地位に基づくいかなる差別もしてはならない。

第三条

 すべて人は、生命自由及び身体安全に対する権利を有する。

四条

 何人も、奴隷にされ、又は苦役に服することはない。奴隷制度及び奴隷売買は、いかなる形においても禁止する。

五条

 何人も、拷問又は残虐な、非人道的若しくは屈辱的な取扱若しくは刑罰を受けることはない。

六条

 すべて人は、いかなる場所においても、法の下において、人として認められる権利を有する。

七条

 すべての人は、法の下において平等であり、また、いかなる差別もなしに法の平等保護を受ける権利を有する。すべての人は、この宣言違反するいかなる差別に対しても、また、そのような差別をそそのかすいかなる行為に対しても、平等保護を受ける権利を有する。

八条

 すべて人は、憲法又は法律によって与えられた基本的権利侵害する行為に対し、権限を有する国内裁判所による効果的な救済を受ける権利を有する。

第九条

 何人も、ほしいままに逮捕拘禁、又は追放されることはない。

第十条

 すべて人は、自己権利及び義務並びに自己に対する刑事責任が決定されるに当っては、独立の公平な裁判所による公正な公開の審理を受けることについて完全に平等権利を有する。

第十一条

1  犯罪の訴追を受けた者は、すべて、自己の弁護に必要なすべての保障を与えられた公開の裁判において法律に従って有罪の立証があるまでは、無罪推定される権利を有する。

2  何人も、実行の時に国内法又は国際法により犯罪構成しなかった作為又は不作為のために有罪とされることはない。また、犯罪が行われた時に適用される刑罰より重い刑罰を課せられない。

第十二条

 何人も、自己私事家族、家庭若しくは通信に対して、ほしいままに干渉され、又は名誉及び信用に対して攻撃を受けることはない。人はすべて、このような干渉又は攻撃に対して法の保護を受ける権利を有する。

十三条

1  すべて人は、各国の境界内において自由移転及び居住する権利を有する。

2  すべて人は、自国その他いずれの国をも立ち去り、及び自国に帰る権利を有する。



これで全部。眞子氏の境遇に照らしてみれば、皇籍離脱前の彼女人権がどれだけ制約されていたかが改めてわかる。民主主義国家標榜する日本で、大半の日本国籍の人々が当然のように享受している人権の多くが制約された、とても特殊立場の人が、自らこの大学への編入を選び、4年間の教養教育人間中心主義(humanism)の理念と気風を涵養され、立派に「人間」になった。というか、人間としての自覚を得た。そういうことなのだ。

天皇は「人間宣言」していない

ちなみに天皇敗戦後に「人間宣言」したと言われているけど、実は「ぼかぁ人間なんです、すまんかった」などとは言ってない。原文の官報詔書新年ニ當リ誓ヲ新ニシテ國運ヲ開カント欲ス國民ハ朕ト心ヲ一ニシテ此ノ大業ヲ成就センコトヲ庶幾フ』(1946/1/1)、別名『新日本建設に関する詔書』に書かれている該当箇所は

朕ト爾等国民トノ間ノ紐帯ハ、終始相互ノ信頼ト敬愛トニ依リテ結バレ、単ナル神話伝説トニ依リテ生ゼルモノニ非ズ。天皇ヲ以テ現御神トシ、且日本国民ヲ以テ他ノ民族優越セル民族ニシテ、延テ世界支配スベキ運命ヲ有ストノ架空ナル観念ニ基クモノニモ非ズ


となっている。「天皇は現御神で、日本国民優越民族で、世界支配する運命にある」という戦前に言ってたことは「架空なる観念」でした、としか言っていないのだ。じゃあ現御神ではなくなった天皇戦後どうなったかといえば、「日本国及び日本国民統合象徴」になった。それはもはや神ではないし、といってただの人間日本国民でもない。それは「日本は一体である」という(敗戦後にギリギリ交渉の結果残すことができた)国民国家ファンタジーをまるごと引き受ける、人間ではない何かだ。天皇皇族は「平和憲法を遵守する新国家」を象徴する「何か」として、常に国民をいたわり思いやる理知的で心優しいファミリー役回りを多世代にわたって演じ続けることになった。それって、ありていに言えば「人形」でしょ。

人形の家には、人間は住めない

かつてのように神聖不可侵でもなく、かといって市民国民としての人権を与えられてもいない「人形」は、やがては人々のおもちゃにされてしまう。今はみんながそれを使って「人形遊び」という娯楽に興じている。政治家宮内庁職員皇室ジャーナリスト評論家らが「本人が言った言葉」とその解釈あいだにいくらでも恣意的な読み替えを挟み込むのも、メディア皇居というドールハウスの内情について真偽不明ゴシップを書き立てるのも、辛酸なめ子倉田真由美赤の他人同士の結婚について大仰に憂いたり消耗したり絶望したりしてみせるのも、本質人形遊びだからだ。相手人間ではないから、そういう非人間的な扱いをしても許されるし、人形のほうが「与えられた役柄」を勝手に逸脱し始めたら嘆いたり憤ったりしてもいいのだ。

本件をイプセンの『人形の家』をひいて論じていたのは、意外なことに山口真由ぐらいだったけど、今回の騒動を見ていて、天皇家が「人形の家」ではないと言い切れる人はだいぶ減ったんじゃないか人形の家には人間は住めない。だから人間になった眞子氏は人形の家を出た。

そろそろ人形遊びを卒業しよう

窮屈な人形の家を、人間が住めるような間取りと風通しにしてやらない限り、そのうちまた同じことが起こるだろう(直近では、同じ大学で同じように「人間」に目覚めてしまった佳子氏にも同じことが起きるかもしれない)。風通しを良くするには、これまで75年にわたって「人形遊び」をしてきた我々自身がこの遊びを卒業して、その他の「市井のなんでもない人々」に接する時と同じような儀礼的無関心を貫くことなんじゃないかと思う。ことさら敬愛嫌悪もいらない。ただの人間として扱い、他のただの人間に抱くような尊重の念を持って接しよう。

Permalink |記事への反応(1) | 12:12

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2017-11-29

男が男である苦悩を誰も書かないのなんで

"普通の女に擬態して生きること"の地獄を描いた漫画「ダルちゃん」資生堂・花椿にて連載中 - Togetter

女が女である苦しさは

人形の家から今に至るまでテーマにされ続けてきてんのに

男が男である苦しさを描いた作品全然ない

苦悩をかい作品があっても、それは男という性じゃなくて

そいつ個人の弱さの問題になってると思うんだけど

なんで?

Permalink |記事への反応(19) | 08:05

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2013-12-28

人工知能学会リニューアルする学会誌の表紙が物議をかもしてて興味ぶかい

とりあえず、非難の要点は2つあるようだ。

1.表紙のイラスト女性蔑視っぽい

2.女性蔑視っぽいイラスト学会誌の表紙にしちゃう男のひとってサイテー

非難側はそのイラスト女性蔑視かどうかというよりも、そういうものが人目につくところに使われることにサイテーと言っている。言いかえれば、日本人男性って女性への気配りがぜんぜんないよね! もっと海の向こうの男のひとを見習ってよね、プンプン、というところか。

れでぃーふぁあすと発祥西洋紳士には、そりゃあ勝てない。だってだって、そういう文化で育ってないしー、男は背中でかたれ、みたいな文化日本だし―。

たとえば、

男「ごほごほ」

女「あんた、ほら、薬だよ」(男の背をなでながら)

男「すまんねえ、おれが健康だったら、お前にこんな不憫させないのに」

女「それは言わない約束だよ、それに大好きなあんたと一緒にいるんだ、不満なんて」

男「お前・・・!」

女「あんた・・・!」

そんな時代劇っぽいもののワンシーンも女への幻想でできている! と言われるわけだ。いや、まあそのとおりだけど。貧乏になってまで女が男についていくと思うなよ、と言われたら、まあそっすね、としか答えられない。でも、ついていく女の人がまったくゼロというわけでもないだろう。そこは十人十色、ひとの好みはひとの数だけある。集団でみれば類型化は可能でも、個人でみたらそこに類型的なひとってのはいない。それぞれにそれぞれの理由があって、そうしているものだ。

理性的で金勘定も分かる女が理想であり、みんながみんなそうであるべきなら、貧乏になった男にも尽くそうとする女という幻想唾棄すべきものだし、場合によっては駆逐してやる! な価値観なのだろう・・・

で。

学会誌イラストが物議をかもしているところに戻る。

非難の内容は分かる。それはそうだ、多くのひとの目にふれるところに「女は女らしく家に引っこんでいなさい」と垂れ幕があったら、べつにフェミニストでなくても非難したくなる。そう思うのは自由だけれど、ひとが嫌がるようなことをするのは配慮が足りないと思う。街宣車がうっとうしいのと根の感情はおそらく同じ。

じゃあ、なにが興味ぶかいかって、それはあのイラストから女性蔑視的なところを読みとるにはちょっと労力がいるということだ。男の子で、女性蔑視とかそういうことを考えたことがない人間にとっては、取っかかりを見つけるのも難しいんじゃないだろうか。

「なんかのケーブルに繋がれた女性ロボットが箒で部屋の掃除をしながら本を読んでて、なにかに気づいてこっちに目を向ける」という構図。

繋がれている、掃除している、だから、この目は虚ろだね、ああ、女性に旧来な仕事を押しつけるイラストだ。もっと私たちは自由だ、自分意思で行動する! と華麗に女性ロボットが本を読んでいたかもしれない描きこみをスルーしているわけだ。

ロボット女性、繋がれているというフレーズから人形の家のノラを思いだしたのかもしれない。

なんにせよ。

ぼくにはアンドロイド掃除の途中に読書に目覚めた、という小さな出来事だけれど大きな一歩だ的なイラストしか見えなかった。

同じものを見ているのに、感じることが違う。これはまさに価値観の違いだ、もしかしたら文化の違いかもしれない。そのとき・・・どちらかの価値観で相手を強制的に上書きすることではなく、譲歩するのか何なのか手を取りあえるといいよねえ。物差しの目盛り上に価値観の違うひとたちが並んでいて、どっちかがどっちかよりも優れているとか劣っているとかではない、と信じたい。

Permalink |記事への反応(0) | 13:47

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2013-07-19

弟の結婚生活おかしなことになっている。

たぶん結婚したのが間違いだったような、そういう二人ではある。だけど子供も生まれてるし、間違いだとしてもなんとかうまくやってほしい。

けどそれでうまくやれるなら家庭裁判所かいらないですよね・・・

ここ数日、頭が煮えている。とにかく吐き出す。

弟は十五年前に私の友人に一目惚れし、その恋はいまだ終わらずに続いてる。

弟は貧相な体格でぼそぼそうつむき加減に喋る少年だった。いじめられたりはしなかったようだが、クラスでは冷遇されがちで友人は少なかった。

そんな弟が一目惚れきっかけに体を鍛え始め、ファッション雑誌などを買ってくるようになった。

友人は成績優秀な明るい美少女だったので、少しでもふさわしい男になろうとしたんだと思う。弟の努力は凄かった。

弟は変わった。筋肉がついて体が大きくなったし、表情も変わってよく笑うようになった。他人の目をきちんと見て話が出来るようになって、別人のようになった。

この成長は私をちょっと感動させた。これで弟と友人が付き合い始めたらいい話ぽいのだが、そうはならなかった。

元々顔立ちが悪くなかったのもあって弟はわりとモテるようになった。可愛らしいクラスメート告白された弟は、あっさりとその子と付き合い始めた。

別にいいとは思う。身近な誰かに目を向けることが正解ってこともいっぱいある。

だけど弟の人格はこの頃から少しずつおかしな方向に変わり始めていった気がする。

他の女性と付き合っている間もずっと弟は友人のことが好きで、これは大問題だった。

女神のように神格化された脳内の友人と、短所もある現実の女を、弟は容赦なく比べた。

から歴代の彼女たちとの付き合いは長続きしなかった。オレほんとは他に好きな人がいるけど頼まれたから付き合ってあげてるんだよね、君のあらゆる欠点はオレをうんざりさせるけどそれでも我慢してあげるね、という思いを弟はありありと出していた。

弟は人当たりが柔らかい。"オレってフェミニストで女に優しい"と酔ってるところもある。だから普段は気づきづらいが、相手を恐ろしく見下していることが時々ばれて、修羅場になる。

弟が私の前で愚痴をこぼしたことがあって、その内容も酷かった。

性格は悪くないけど、顔が好きじゃない。メシを作らせるとまずくはないけどものすごく旨いわけでもない。これって付き合ってるメリットが乏しいよね?」

「我慢できるから別れてないだけ。結婚したくはない。期待させたらかわいそうだから『君と結婚とかありえないから』と言ったら泣かれた。うざい」

当時私は結婚を考えていた男性と別れたばかりだったので、弟の発言がむかついてしょうがなかった。

私は弟の発言がいかに失礼か指摘した。弟は私の言葉を「感情的で非合理的でわけわからん」と片づけた。"合理的で論理的で決して感情的にならないオレ"というセルフイメージを弟はとても大事にしている。

こんなやつもう知らんと私は思った。弟も私の発言が気に入らなかったらしく、その手の話をあまりしなくなった。

あれだけ執着しているくせに、弟は本命の友人に対して何もできなかった。電話だの食事だのお出かけだのは何度も繰り返したようだが、そこからさきには全然進まない。

振られるのが怖かったんだろうけど、きっとそれだけじゃない。

弟は歴代の恋人たちに、頼まれたから付き合ってあげると宣言した。相手が不満を言うと「なら別れようか」と笑った。

おかげで弟は圧倒的強者として色々思い通りに出来た。これが駄目だった。

昔の弟は逆だった。何でも周囲の言いなりだった。嫌な思いもいっぱいしたと思う。

相手に合わせることしか知らなかった子供が、相手だけが合わせてくれる関係を知っちゃった。その結果が、今の弟なんだと思う。こっちの方が楽だし上手くいくと思ってるんだろう。弟は話し合いが苦手だ。相手と自分の要求を突き合わせて妥協点を探るという考え方をしない。どっちかがどっちかに合わせる。これしか知らないみたいに見える。

から弟は大好きな友人が相手でも、自分から行けない。頭を下げるようなことをしたら終わりだと思っている。合わせるより合わせてもらう関係にしようと一生懸命だ。

私、姉としてひどくないか。こんな分析して何になるんだ。今更全部手遅れなのか。

弟は友人に対してちょくちょく恋愛相談を持ちかけた。弟の相談内容はいつも決まっていて、

「今の彼女とうまくいってない。別れそう」

「付き合ってくれと言われている。好きじゃないから迷ってる」

のどちらかだった。

要するにオレを口説くなら今だよ、というアピールを何度も繰り返していたわけだ。

受身恋愛しか知らない弟にとってはこれが唯一知っている必勝パターンだったんだろう。本当にバカな子だ。こんなの相手が自分に対して好意がある時しか有効じゃない。

弟の恋愛を終わらせるのはいつも女性の側だった。物腰柔らかな暴君に我慢できなくなった女性がある日爆発する。

浮気もしてない、暴力ギャンブルもなし、なのになんでオレは振られちゃうんだろうね? 女の人を信じるのが、どんどん難しくなる。みんなワガママ感情的

弟のアホなコメント本命の友人以外の女とは何回破局しても弟は平気で、どうして破局したのかその理由を学んで次に生かそうとか、そういうことも全然考えなかった。

弟の恋愛は始めることも続けることも終わらせることも、ぜんぶ相手任せ。自分で決めたことがない。

から弟の暴君ぶりを全部我慢できる女性が相手だと、その関係は終わらなくなる。

とても我慢強い女性が弟の暴君ぶりに耐えきった。絶対に自分から別れようとはしなかった。そうやって彼女結婚まで押し切った。

散々嫌がったけど弟は自分から別れを告げずに時間けが経って、とうとう結婚することになった。一年後には子供も生まれた。

披露宴を三ヶ月後に控えたある日、たまにはきょうだいゆっくり飲みたいからと私は弟に連れ出され、焼鳥屋に行った。

「どうしてこうなる。どうして、なんでだ」

弟は酔いが回るにつれブツブツ同じ言葉を繰り返した。

「どうしてだ、なんでだ。なあ」

弟が血走った眼をこちらに向けた。

「ねえさん教えて。なんであの人はオレを選ばないの? 放っておいたらオレもう他の女と結婚ちゃうのに。手遅れになってもいいのかな」

あの人というのはもちろん友人のことだ。

「あんたマジでアホでしょ。他の女はどうでもいいから、結婚する相手のことだけ考えろ」

「教えてくれよ、なんか聞いてないのか、なんであの人オレに来ないの?」

「我が弟ながらホント気持ち悪い。あんたって思わせぶりにするばっかりで、自分の気持ちを伝えたことないじゃん。今更そんなこと言うなら、自分からもっと動けばよかったのに」

「それはできない。ダメになったら気まずい」

「この話きいたせいで今後、私はあんたの奥さんと顔を合わせるたび気まずくなるんだが。ふざけんな」

だってあの人はねえさんの友達じゃないか。オレ、ねえさんのことだって大事なんだよ。オレのせいでねえさんとあの人が気まずくなったら嫌だから、慎重にしようと思って」

私はその瞬間、人前であることもわきまえず弟の横っ面をひっぱたきそうになって、がまんした。

「わたしたちの友情を尊重するためにあんたは自己犠牲精神でどうでもいい女と泣く泣く結婚してやるってことか?自分が何言ってんのか考えてみろ糞野郎。ゴミ野郎。クズ野郎」

弟は小さい頃と同じ怯えた表情を浮かべ、身を縮めた。

私はカウンター五千円札を叩きつけて店を出た。

弟が交通事故に遭ったのは、妻の妊娠が判明してすぐのことだった。

大した事故ではなかったのだが、これが原因で弟はある厄介な疾患を患った。

弟の場合、主な症状は頭痛と倦怠感。気圧の変化で症状が悪化するため、台風が近づいてきたりすると一日中寝たきりになってトイレにも一人で行けない。当然会社休みがちになる。弟は職場にいづらくなってしまった。

弟の妻は優しく笑ってこう言った。

大丈夫よ。私の稼ぎがあるし。夫婦は助け合って生きるものでしょう?」

その後夫婦は話し合い、弟は会社を辞めて在宅で仕事を始めることにした。妻は出産ちょっと休んで仕事に戻り、家事育児は弟の役割になった。

弟は妻に対して今までずっと強気できた。「なら別れよう」と簡単に言う弟に妻が縋りつく形で関係が成立していた。

その力関係が逆転した。弟は経済的に妻に縋りつく立場になった。

彼女があまりに我慢強かったので弟は気付かずにいたが、弟の妻は寛容な女性じゃなかった。

彼女はこれまでずっと耐え続けただけで、一度も弟を許したことがなかったんじゃないか。たぶんずっと恨みをためていた。

数か月に一度、弟は私に電話を寄こす。いつも深夜だ。妻に見つからないよう家の外に出て、小さな声でひそひそ話す。

弟の妻は変わったらしい。昔とちがう別人みたいだと、弟は怯えた声を出す。

弟の作った食事がまずいと言って捨てる。赤ちゃんの首筋のあせもを指差し育児放棄虐待だと怒鳴る。話しかけて弟の返事が遅れると、テーブルの表面をバンバン叩く。

普段は穏やかなのに何かの拍子にスイッチが入ったように荒れるので怖いと、弟は言う。

弟は涙声で「ワケがわからん」と繰り返すが、話を聞いていると根本原因はなんとなくわかる。妻は弟を信じていない。自分は愛されていないという疑いが常にあって、ちょっとしたことでその疑いがふくらみ、荒れるのだ。

弟は見栄っ張りだ。全てがうまくいっているみたいに見せたがる。大学会社も、世間では一流といわれる場所に入れた。資格職についている賢明な妻を持ち、フリーランスで働きながら郊外の人気住宅地に住んでいる。"何もかも恵まれた幸せなオレ"というセルフイメージを弟は必死に守りたがっている。

から弟には愚痴をこぼせる相手がいない。感情的で非合理的なことを言う、四つ違いの姉しかいない。これまでそれほど密に連絡をとっていたわけでもないのに。いま私たちきょうだい子供時代に戻ったみたいに、たくさん話をしている。

弟は大人しくてまじめで素直なこどもだった。姉の後ろをちょこちょこと付いて回り、私が繰り出す理不尽な命令に従った。

家中駆け回って材料を集め、SFに出てくる宇宙基地みたいな人形の家を、二人で作ったりした。一緒にたくさん叱られた。

弟は私が何か言うと真剣な顔で耳を傾けた。何もかも弟より上手くできる姉に尊敬まなざしを向けた。四つも年が違うんだから当たり前なのに。

たぶん弟の心のどこかに、まだあの頃の感覚が残っているんだ。だから「ねえさんどうしよう」と途方に暮れた声を出すんだ。

そういえば弟がおねえちゃんじゃなくてねえさんと呼ぶようになったのも、私が頼んだからだ。何かの本を読んで影響された私が

「これからはねえさんて言って。おねえちゃんてなんか子供みたい」

と言ったんだ。子供だったくせに。弟はこくんと頷いて、あれからずっと私のことをねえさんと呼んでいる。

子供を連れて実家に帰りたい」

弟はそう言うが、離婚すればほぼ確実に親権は弟の妻のものになるはずだ。法律は元々母親が有利なようにできてるし、妻の方が経済的にも安定している。

弟の妻は子供のことは可愛がっていて、家にいる間はよく面倒をみている。家事の中心は弟だが、妻もかなりやっている。

この状況で弟が親権をとれるはずない。

子供と離れるのは絶対に嫌だから離婚しない、いつも弟の結論はそうなる。

弟は時々夢見るような口調で友人のことを話す。

あの人はどうしているかな、あの人に会いたい、あの人に似合いそうなピアスを見つけた。

「バカ野郎、そんなだからあんたの妻はいつまで経ってもあんたが信用できないんだよ」

「だけどあの人のことを考えている時が一番楽なんだ。その時間がなくなったらすごく辛い。支えなんだ」

弟が結婚する半年前に友人は仕事の都合で引っ越し、一緒に携帯も変えた。友人の新しい連絡先を弟は知らない。

友人と私で話し合い、知らせない方がいいと判断したのだ。

ところがバカ弟はあの焼鳥屋の夜、私がトイレに行っている隙に私の携帯を調べたそうなのだロックはかけていたが単純な暗証番号だったので、なんとかなったのだろう。

それでも弟は三年我慢した。時々携帯の画面に友人の連絡先を呼び出して、それを眺めることが心の支えだったという。

そして二週間前の夜、またしても妻に怒鳴られた弟は何かが切れてしまったらしい。家を飛び出し友人に電話して、

「どうしても話を聞いてほしい会って欲しい」

と頼んだ。

友人は弟のただならぬ様子に驚き、自宅のすぐ近くにある終夜営業のカフェで話を聞くことにした。

そんでもう、ほんとに今更、お前十五年間何やってたの、何で今なのと私は弟の肩を揺さぶってやりたいんだが、ずっと話し続けて空が明るくなってきた頃弟は「あなたがすきです」と友人に言ったらしい。

「そんなの言われても困る。奥さんに恨まれるの嫌だし、家庭のある人とどうにかなる気はない」

と友人から連絡を受けて頭がカーッとなったというのが、私がこの文章を書いた動機だ。

すごいよね、よくこんな長文書けたよ、自分で感心しちゃうよ。これ書くのに二日かかったバカみたいだ。

友人は弟に「このことはねえさんには話さないで」と頼み込まれて悩んだ末に、それでも黙っていられないと思ったらしい。本当に申し訳ない。うちの愚弟が。マジで愚弟が。ほんとに愚弟でどうしよう。

連絡先が流出してしまった件について、友人には謝罪した。今後弟が彼女を悩ませた場合についても話し合い対策も用意した。弟が予想を越えた暴走をしなければ、なんとかなりそう。

あと他に私ができることってなんだろう。

根本原因は弟夫婦の問題なので本人同士でしっかり話し合ってもらうしかない。お互いの主張と気持ちを突きつけあって、利害の調整をするということをしなかったから、あの夫婦な今みたいになってる。どれほど辛いとしてもまず話し合いだ。私が絡む余地はない。

ということを弟に言いたくて電話を掛けたのだが、繋がったのは最初の一回だけだ。弟が友人の連絡先をどうやって入手したか聞き出したところで妻が帰ってきたらしく、途中で切れてしまった。弟は妻の目の前では絶対に携帯を触らない。弟が携帯で誰かと連絡をとることを、妻が嫌がるからだ。だから弟は夜中隠れて電話するわけで、なんか書いててあらためて気付いたけどこれ結構異常なんじゃないのか。

何度か掛け直したが、全然繋がらない。メールにも返信がない。

だって結婚していて、一番大事なのは自分の家庭で、弟夫婦のゴタゴタなんか巻き込まれたくないので、もう放っておいていいのかな。

だけど甥っ子は可愛いんだよな。うちまだ子供いないからなおさら。両親がうまくいってないというのは、甥っ子のためにも悲しい。

夫婦関係は異常なんじゃないかと書いててあらためて思ったんだけど私の感覚が正しいのかどうかわからない。誰か教えて。

うちは子供がいないか共働きでも時間には結構余裕がある。だからからないことがいっぱいありそう。子供のいる家庭だと余裕がなくてギスギスするのは当たり前、と一度言われた。そんなことないだろうと思うんだが、確信持てない。

電話の終わりで弟はいつも「でも大丈夫。うちはうまくいってる。妻も優しい」と言うんだけど、うそ臭くてしょうがない。でも私が姉ばかで弟のことを心配しすぎてるだけかもしれない。本当は言葉通り幸せな家庭?

うちの両親に相談するのが一番いいのかもしれないけど、弟に激しく口止めされてるんだよなあ。もう喋った方がいい気がする。でも親巻き込むと大ごとになりそうだし、弟にも弟の妻にも恨まれそう。

ほんといくら書いてもまとまらないな。

大人になったら人間て賢くなると思ってた。全然違う。年取るほど実感する。

深夜電話で思ったんだけど、弟夫婦関係ってちょっとDVぽくないか。考えすぎな気はするけど、一番怖いのがそれ。二番目に怖いのが弟がストーカー化することなんだけど、弟がそこまで出歩く自由なさそうだから、こっちはあまり心配しなくていいだろう。とにかくDVだったらどうしよう。こんな長文書いてる場合じゃない。

だけど弟と連絡がとれないから、動けない。

とりあえず留守電きいた弟が今夜くらいに連絡くれるといいんだけど。明日休みから遅くても話せるし。

勉強出来る子だったんだよなあ弟。だから本人も含めてみんな弟をバカだと思ってないんだけど、私はバカだと思う。そんなことを思う姉はひどいよな。ごめん弟。とにかく、電話して来い。姉はけっこう心配してます

Permalink |記事への反応(26) | 21:44

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2009-06-28

http://anond.hatelabo.jp/20090628092228

自分の男としての価値を再確認させてくれるような、か弱くて従順女性が好きなんだよね。

自己主張する女、自分も対等な一人の人間だと認めさせようと女が嫌いなんだよ。

まさに「人形の家

Permalink |記事への反応(2) | 09:27

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