
はてなキーワード:メヒコとは
元増田よ。英語の国名はあくまで「英語読み」に過ぎないのであって、日本語読みが現地語に寄せてるものまで英語でジャッジしようとするのはどうよ。
ウクライナ語ではУкраїнаと綴って「ウクライーナ」と読むので日本語読みは現地語に忠実です。何でもかんでも英語読みを基準にすんのやめろ。っていうか英語ならユークレインだろ。
スイスには4つの公用語があるけど、そのうちフランス語ではSuisseと呼ぶので日本語の「スイス」はむしろ現地語に近いぞ(4つの公用語のうち1つに基づく呼び方を採用しているのは中立的ではないのでは? という異論はあってよい。ちなみにスイスでは4言語で国名を併記するけど、切手とかで4言語を併記するスペースがないときにはラテン語の「ヘルウェティア」を使う。日本もヘルベチアって呼ぶべきなのかもだけど今更無理だよね……)。
ドイツ語だとDeutschlandと綴って「ドイチュラント」と読むので、「日本語読みは英語読みよりマシ」とドイツ人にも好評だったぞ(n=1)。
ロシア語のМоскваを綴りに忠実にカナ表記すると「モスクワ」になるんやで。まあ発音は「マスクヴァー」だけど(アクセントのない母音оはаのように読まれるから)。
いや、メヒコはスペイン語読みでメキシコが英語読みだからね!?
ついでにブコメにも。
モスカウってなんだったんや…
ドイツ語のMoskauでは。
北京(ペキン)はそのうちに、Beijing呼びになるかも。
東アジアの固有名詞については相互主義が取られている。韓国では日本語の固有名詞を日本語に即して発音するので我々も韓国の固有名詞は韓国語読みを取り入れているが、中国では日本語の漢字を中国語読みするので、日本でも中国の漢字は日本語で読んでいる。だから金大中は「キム・デジュン」だけど習近平は「しゅう・きんぺい」なのよ(中国語なら「シー・ジンピン」になる)。
ギリシャ→エリニキ
フィンランドではフィンランド語とスウェーデン語の2つが同格の公用語で(『ムーミン』を書いたのはスウェーデン語系フィンランド人の作家)、フィンランド語での呼称がSuomiでスウェーデン語の呼称がFinland。なので「フィンランドは現地語ではスオミ」と「フィンランドは現地語でもフィンランド」は両方正しい。
ギリシャの正式国名はΕλληνική Δημοκρατίαで、これは「エリニキ・ジモクラティア」と読むけども、「エリニキ」は「ギリシャ」という意味ではなくて「ギリシャの」という形容詞なんだよね(後ろにある「ジモクラティア=共和国」を修飾して「ギリシャ人の共和国」という意味)。なので「エリニキ」を単独で国名として使うことはできない。単独で使うときは「エラザ(Ελλάδα)」。
国名が形容詞になってる例としては、他にもチェコがある。正式名称はČeská republika「チェスカー・レプブリカ」で「チェコ人の共和国」。要するに、もともとギリシャやチェコという国があったわけではなくて、近代以降に民族主義が芽生えてギリシャ人やチェコ人が住んでるところを1つの国にしたという順序なのでこういう国名になっているのね。
同じ反ロシア仲間のウクライナではフルジヤ(Грузія)、ポーランドではグルジヤ(Gruzja)、リトアニア&ラトヴィアでもグルジヤ(Gruzija)なのに、日本語でわざわざ変える必要あったの? ってなるよね。ウクライナがフルジヤって呼んでるんだから日本でもグルジアのままでよくね?
(キリル文字のГはもともとガ行を表すんだけど、ウクライナ語とベラルーシ語ではハ行を表している。スラヴ語圏の真ん中に「gの音がhの音に変わったエリア」(チェコ・スロヴァキア・上ソルブ・ウクライナ・ベラルーシ・ルシン)があって、そのエリアでは本来ガ行だった音がハ行で読まれるんだよね。たとえばスロヴァキアにある世界遺産のスピシュ城はSpišský hrad「スピシュスキー・フラト」って綴るけど、後ろのhradは語源的にはgrad、つまりベオグラードとかスターリングラードとかと同じ。だからロシア語の「グルジヤ」をウクライナ語やベラルーシ語では「フルジヤ」って読むんやね)
ミュンヒェン、ワルシャワは英語読みよりも日本語の方が原音に近い事例。「アテネ」は結構面白い事例で、まず古典ギリシャ語ではἈθῆναι「アテーナイ」。ギリシャ語は長い歴史を経て発音が変わって、Ηの文字は古典語では「エー」を表す文字だけど近代語では「イ」に変わった。さらに、θの文字も、古典語だとタ行で表されることになってるけど、近代語では英語のthに近い音というか、要するにサ行で表すのが相応しい音になっている(Θεσσαλονίκη「セサロニキ」がキリスト教関係文献では「テッサロニケー」と表記されてるのは古典語読みだからなんだよね)。で、現在ギリシャで使われてるジモティキの語形はΑθήνα「アシナ」……あれ? 「アテネ」の最後の「ネ」ってどっから来たん? 現代ギリシャ語ではαιと綴って「アイ」ではなく「エ」と読むので、古典語(あるいはカサレヴサの)Ἀθῆναιを古典語と近代語のちゃんぽんで読むと「アテネ」になるのかな? それとも西欧人の読みをそのまんま取り入れたん?
(近代ギリシャ語には2つの正書法がある。1つ目が、現在広く使われている「ジモティキ/民衆語(Δημοτική)」で、もう1つが「カサレヴサ/純正語(Καθαρεύουσα)」。近代ギリシャ語の標準語を作り出すときに、古典ギリシャ語を参考にして古文っぽさを残して作られたのがカサレヴサで、20世紀前半までは公用語として用いられていたんだけど、話し言葉からかけ離れすぎててわかりづらいわ! ということで、より言文一致(当社比)したジモティキが作られて、現代のギリシャではこちらが「現代ギリシャ語」として流通している。まあ、明治時代の日本語と現代日本語の違いを想像してもらえれば)。
そもそもカタカナで表記できない発音があるのにそれを使って記載するのが間違っている。外国語教育がそもそも問題だろうけど日本語読みで役に立つ場面なんかほぼないよね。全部現地語で表記、現地読みすべきだと思うんだけどなぁ。
「საქართველოは、Україна侵攻後のРоссияに対する経済制裁には参加していません」っていうニュースを流すことが日本人のためになるとはまったく思えない。多少厳密さを欠いたとしても、「グルジアは、ウクライナ侵攻後のロシアに対する経済制裁には参加していません」って書いたほうが日本人の外国理解に資するんだから、日本語の媒体では基本的に日本語の文字を使って表記すべき(だいたい、英語圏の連中だってニュースで日本の固有名詞を漢字や仮名で表記せずにラテン・アルファベットで書いてるんだから、当然、我々も日本語のニュースでは英語圏の固有名詞をラテン・アルファベットではなく日本の文字で書いてよい。真に公平な世界というのはそういうものじゃないだろうか)。
BBCラジオを聴いていると非英語圏の人名をわざわざ英語読みしていてそのまま現地語読みすればいいのに…と思うことがよくある。
これはしゃーないと思う。我々にはカナという便利な文字があるから、Richardをリチャードとリシャールとリヒャルトに訳し分けることができるけど、英語母語話者はラテン文字しか知らないんだから、そりゃ英語読みしかできないよ。我々だって、たとえば「『マイケル』と綴って『まいこー』と読んでクダサーイ」って言われても困るっしょ? 「いや、『マイケル』って書かれたら『まいける』としか読めんだろ」って思うっしょ? Michaelをミヒャエルと読めと言われた英語母語話者の気持ちもそれと同じだと思う。だいたい、我々もDonald Trump「ダナー・トランプ」を「ドナルド・トランプ」と書いて恥じないわけで……
えー、我々だってMcDonald’sを「まくだーのーず」じゃなくて「まくどなるど」って発音してるんだから、英語母語話者がIKEAを「いけあ」じゃなくて「あいけあ」って発音しててもよくない? 悪いのは 「英語では『あいけあ』と読むんだから日本人の『いけあ』っていう発音は変!」みたいなデタラメな理屈を振りかざす英語かぶれの名誉白人どもであって、英語母語話者が身近なものを英語ふうに発音すること自体は何も悪くないよ。彼らが身につけた綴りの規則からはそう読む方が自然なんだから。
英語中心主義が悪いのであって英語自体が悪いわけじゃない、という精神でいきましょう。へぇ、ヨーロッパの隅っこにある島々で話されてるローカル言語には変わった発音の規則があるんだなぁ、面白いなぁ、程度の受け止め方をするのが一番適切な付き合い方だと思う。あのへん、デンマーク語とかアイルランド語みたいに発音と綴りの関係が複雑な言語が多いからね……
ドナウ川の語源はラテン語のDanubius「ダヌビウス」だから英語Danube「ダニューブ」の方がドイツ語Donau「ドナウ」よりも語源に忠実だよ! あんまり英語を馬鹿にするのはどうかと思うぞマジで。
ちなみに、チェコ語・スロヴァキア語・ポーランド語・上ソルブ語でドナウはDunaj「ドゥナイ」っていうんだけど(ウクライナ語でもДунай「ドゥナイ」だね)、スロヴェニア語のDunaj「ドゥナイ」はウィーンって意味なの面白いよね(ドナウはDonava「ドナヴァ」)。
ほぼ現地語読みを尊重してるのに「ドナウ川」だけ語源で語るのはブレでは。現地語読み>>慣習読み≒英語読み≒語源くらいのウエイトでよいような。
まるで英語が変わった呼び方をしているかのように書かれていたから、いやいや英語読みは語源に沿った呼び方であって変な呼び方というわけではないのよ、と書いたのであって、英語読みが現地語よりも尊重に値するとは書いてないっす。ところでドナウ川は国際河川なわけだけど、「現地語」ってどの言語のことだと思う?
ジョージア州はジョージ2世にちなんでつけられ両方現地言語読みだからOKと思えば、グルジアも由来の聖ゲオルギオスの現地読み風に読めば良いのでは。
いや、現地語の名称サカルトヴェロは「カルトヴェリ人の国」という意味であって聖ゲオルギオス何も関係ないんよ……素直にサカルトベロと書くべきだよねぇ、やっぱし。
それを言ったらそもそもはカナク人の土地をフランスが植民地化したんだからカナク語でKanaky「カナキ」って呼ぶべきじゃない? 英語もフランス語もどっちも侵略者の言語でしょ。
新カレドニア、いいと思う。アルバニア語のKaledonia e Re「カレドニア・エ・レ」とかトルコ語のYeni Kaledonya「イェニ・カレドンヤ」ももろに「新カレドニア」だし。ただ、そうすると、カナダのノヴァスコシア州は「新スコシア州」にするのかとか(ちなみにアルバニア語ではSkocia e Re「スコツィア・エ・レ」、トルコ語ではYeni İskoçya「イェニ・イスコチヤ」)、プリンスエドワードアイランド州は「エドワード王子島州」にするのかとか(アルバニア語Ishulli i Princit Eduard「イシュリ・イ・プリンツィト・エドゥアルド」、トルコ語Prens Edward Adası「プレンス・エドワルド・アダス」。なお中国語だと愛德華王子島省)、ニューファンドランド・ラブラドール州どうするんですかとか(トルコ語だとNewfoundland ve Labrador「ニューファンドランド・ヴェ・ラブラドール」って日和ってるけどアルバニア語はToka e Re dhe Labradori「トカ・エ・レ・ゼ・ラブラドリ」で「新しい土地とラブラドール」になってて強い。日本語化するなら「新疆・ラブラドール州」とか「新開地・ラブラドール州」は……駄目?)、色々と楽しいことになるので……
いいよねウェールズ語Seland Newydd「セランド・ネウィズ」とかエストニア語Uus-Meremaa「ウース=メレマー」とかソルブ語Nowoseelandska「ノウォセーランツカ」とかバスク語Zeelanda Berria「セーランダ・ベリア」とかハンガリー語Új-Zéland「ウーイ=ゼーランド」とかマダガスカル語Zelandy Vaovao「ゼレンディ・ヴァウヴァウ」とかラトヴィア語Jaunzēlande「ヤウンゼーランデ」とかとか……ところでニュージーランドは本来マオリ人の土地で英語は侵略者の言語なんだからマオリ語Aotearoa「アオテアロア」に統一で良くない?
節子それフランス語読みちゃう、単に自分らの言葉で「低地の国」って呼んでるだけや(英語でthe Nederlandsっていうふうに定冠詞+複数形になるのは、もともと「低地」っていう普通名詞だから。the United Statesと同じやね)。イタリア語Paesi Bassi「パエシ・バッシ」もカタルーニャ語Països Baixos「パイズス・バシュス」もスペイン語Países Bajos「パイセス・バホス」も全然フランス語Pays-Bas「ペイ=バ」とは違うじゃん?
ちな、ウェールズ語だとYrIseldiroedd「イール・イセルディロイズ」、ギリシャ語だとΚάτω Χώρες「カト・ホレス」、クロアチア語・スロヴェニア語だとNizozemska「ニゾゼムスカ」、チェコ語だとNizozemsko「ニゾゼムスコ」な。どれも「低地の国」って意味。
なお、沖縄語の「ウランダ」は「西洋」という意味だったりする。沖縄語をしゃべるオランダ人の動画おもしろいから観て(「ウランダ出身だけど、国の方のウランダね」って断ってるの草)>https://www.youtube.com/watch?v=SB1x8iqqSto。
増田にしつもーん
・コートジボワールの象牙海岸表記をやめたような変更したほうがいいなと思う国名ある?例えば中央アフリカをサントラフリケーヌにするみたいな
クロアチアは別にクロアチアでよくね? ただ世界史の教科書とかで「クロアティア」って書いてるのは無駄に煩雑だから高校生のためにもやめてあげた方がいいと思う。現地語がCroatiaならそこにこだわるのもわかるけど、それ現地語でもなんでもないじゃん、ってなるので。現地語を尊重してフルヴァツカと書くか、大人しく慣用に従ってクロアチアと書いておけばいいんじゃ。
変えたほうがいい国名はまさに「ジョージア」だわw 既に日本語で定着した複数の固有名詞(アメリカの州、コーヒー)とバッティングしてややこしいことこの上ないので、「グルジア」に戻すか、先方がどうしてもロシア語読みは嫌というなら現地語を尊重して「サカルトベロ」にすべき。
Permalink |記事への反応(17) | 20:08
モンゴル系の皇族が、法隆寺火災を書いてない古事記を出したので、法隆寺を建立した高句麗系の皇族は炎上して日本書紀を出した。
匈奴・鮮卑などの大陸文化を好んでいた聖武らは、法隆寺を破壊して彼らの北魏風に再建した。その後、奈良に平城京を立てて引越し、火災など知らないよと(平易な漢字で)古事記を出した。それ以降、ヒメヒコ制も急に廃れ男性天皇が主になった。
聖徳太子や聖武の前の文武天皇のほうは、もちろん飛鳥時代や初期法隆寺を作った高句麗系か倭国系の人物で、今でいう炎上で(難しい漢字で)日本書紀を出して火災に言及した。しかし天皇系図への異論までは書けなかった。
それでも聖武が文武の息子というのは疑わしい。7才の実の息子は追い払われ、のちに聖武がその子になりすましてるだろう。皇族は乗っ取りや合併が好きなんですか先生。
売りはじめた土地に人を座らせておけば直ちに誰かが現れて買ってくれるわけでもなさそうなのだが、とりあえず人を置いて「現地販売中」の赤旗なども立ててしまうのが弊社である。
古い木造の平屋に暮らしていたおばあさんが介護サービス付きの老人ホームに入るということで、土地を買い受けた途端に更地にしたのが弊社である。
まだショベルカーのキャタピラの跡が残る泥の上に「初売り出し」と書いた看板を突き刺し、アウトドア用のタープを設営し、キャンプ用のテーブルと折り畳み椅子を置いて座ったのが私である。
日中の気温が37度に達すると予報が出ている東京で、もちろんこのような布の屋根は、あってもなくてもたいして変わらない。テーブルに置いた麦茶のペットボトルが火にかけた薬缶のように熱い。
テーブルにはいろいろな家のイラストも重ねて置いてある。今は茶色いだけで何もない更地ですけど、弊社契約の業者を使って家を建てるとこんなに素敵になるんですよ、と説明する使命を帯びて、画像データをファミマで今朝印刷して持ってきたのだが、もう私の汗を吸ってボコボコと汚らしく波打つだけの紙の束になってしまった。
日が暮れるまでこの土地に陣取って「販売業務」に従事しなければならない。買い手が来ても来なくても、雲ひとつない8月の空の下、タープの布屋根一枚で直射日光を防ぎつつ座っていなくてはならない。東京の住宅街に突如出現した空き地の値段は、不動産会社の従業員一人の人件費よりもずっと高い。ひょっとすると命よりも。
そんなことを考えていてもまったく時間が経ってくれない。さっき近くのローソンから買ってきたガリガリ君は一瞬のうちになくなってしまった。これからは何を糧に生き延びればよいのか。
熱中症になるのが怖くて、自分の手首を掴んで脈を測ってみる。いつもより弱々しい気がする。黒い革靴に包まれた足がジュクジュクと蒸れて、沸かしたての風呂に入っているように熱い。たまらず靴も靴下も脱いで、椅子に座ったまま裸足を前に突き出し、風を待つがそよとも吹かない。日傘を差した女がこちらを二度三度チラ見しながら通り過ぎて行く。
もはや暑いのかどうかもわからず、ただ息苦しく、マスクを片耳からぶら下げ、意識が朦朧とした状態で椅子にひっくり返っていると、ようやく日が傾いてくる。焦点が合わない視界に、ひょろ長い人影が映る。黒いTシャツを着たマッシュルームカットの青年が、不安そうにこちらを見つめている。彼が連れている小さなパグがちゃむ、ちゃむと吠える。
「あの……ウラサワ君?」
なぜ彼は私の名前を知っているか。椅子に座り直してその顔を見る。彼がマスクを取る。
「メヒコ君?」
髪型が変わっていて、顔は大人になっていたが、わりとすぐに分かった。メヒコ君の本名はたしかヨモギダだったはずだが、中学のクラスではみんな彼をメヒコと呼んでいた。家庭の都合でメキシコシティから突然転校してきて、メキシコのことを「メヒコ」と発音する彼は、無知な中学生達にある種の衝撃を与えた。
ここでなにをしているの、土地を売っているんだ(自分の土地じゃないけど)、どうしてここにいるの、近所に住んでいるんだ、というやりとりを経て、仕事が終わったら一緒に晩ご飯に行くことになった。というか、今日はもう撤退することにした。
犬を家に置いて戻ってきたメヒコ君と歩きながら話を聞く。学校を出た後はスペイン語と英語を活かして国際線のフライトアテンダントをしていたが、どうしても時差のある生活に身体が慣れなくて2年でやめたらしい。何か接客業を続けようと思ってヒルトンのバーで修行した後、ちょっとしたメキシコ料理とテキーラを出すバーを高円寺に出したところ、けっこう繁盛した。2号店を出そうかと下北沢あたりで物件を探しはじめた頃、コロナが来た。
「バーをやってると、お客さんがいない時間は結構よくあるんだけど、あの時に誰かがドアを開けて入ってきてくれるまで待っている時間の重さは、それまでと何か違うものだったんだ。店を開けてることも、生きてること自体も、何から何まで否定されながら、それでも誰かを待っていなきゃいけないみたいな」
運転資金が残っていて少しでも退職金にあてられるうちに、メヒコ君は2人のスタッフと話し合って店を畳んだ。それまでは店の奥にある倉庫で寝起きしていたので住む所もなくなり、今は大叔母さんの家に居候しているらしい。
「自分のペースで店を作っていくのは楽しいから、また機会があればやりたいね。いつになるかはわからないけど」
夕闇に信号機が点滅する横断歩道を並んで渡りながら、私はなにも言えなかった。
ラーメンでいいかな、と彼が立ち止まった先にあるのは住宅街の古い一軒家だった。看板もなにも出ていない。ああ、うん、と思わず答える。メヒコ君がためらわず玄関のチャイムを鳴らすと、インターフォンから返事が聞こえる。「二人なんですけど」というが早いか、ドアが静かに開き、白髪の薄くなったおじさんが出迎える。メヒコ君とは知り合いらしく、久しぶりなどとひとしきり話してから、私にも入るように促す。
案内された先はどう見ても普通の家のダイニングで、エアコンが効いていて涼しかった。つながっている居間には大きなテレビがあり、NHKのニュースが流れていた。ソファーの上には茶トラの猫が寝ていた。
「あったかいのと冷やしとどっちがいい?」 ダイニングテーブルについた私たちにおじさんが訊く。
「じゃあ、冷やしください」と私が答えると、「冷やし二つおねがいします」とメヒコ君がいう。
キッチンでおじさんが調理しているあいだ、私たちはテレビで関東地方の気象情報を眺めた。おじさんの方を振り返ると、冷凍庫から赤いコーラのペットボトルを取り出すところだった。料理しながら自分で飲むのかなと思って私はテレビの画面に視線を戻した。
出てきた冷やしラーメンは、家庭料理にどこか似つかわしくない端正なものだった。ガラスの鉢に黒いスープが入っていて、そこにひたされた金色の麺の島には、糸のように細かく切ったハムと白髪葱が載っていた。一口食べると、氷水からたった今引き出したような麺の冷たさに驚く。スープは甘辛く、どこかで味わった覚えのある下味を感じたが、はっきりとはわからず、謎めいた調和のうちにいそいそと箸を進めずにはいられない旨味があった。
食べ終えて外に出る頃には、昼間から感じていたどうしようもない倦怠感は消えて、全身が軽く感じた。地下鉄の駅に向かうため、メヒコ君と交差点で別れた。今度は何か冷たい差し入れを持っていくよと彼は笑っていた。明日の最高気温は何度だろう。さっきテレビで見たはずだが、よく思い出せなかった。
あとは誰か任せた
【北海道】
・「インデアン」のカレー
【青森】
【秋田】
【岩手】
【山形】
・「十一屋」のチルミー
・「とん八」のとんかつ
【福島】
【宮城】
・「まるまつ」の和食
【新潟】
・「フレンド」のイタリアン
【長野】
・「テンホウ」のラーメン
【山梨】
【千葉】
・「やまと」の回転寿司
【茨城】
・「とんQ」のとんかつ
【栃木】
・「正嗣」の餃子
【群馬】
・「登利平」の鳥めし
【埼玉】
【東京】
【神奈川】
・「元祖ニュータンタンメン本舗」のタンタンメン
【石川】
【富山】
【福井】
・「オレボ」のお惣菜
【静岡】
・「さわやか」のハンバーグ
【岐阜】
【愛知】
【三重】
・「一升びん」の焼肉
【奈良】
【滋賀】
【京都】
【大阪】
・「わなか」のたこ焼き
【和歌山】
【兵庫】
・「らぁめんたろう」のラーメン
【岡山】
・「岡山木村屋」のバナナクリームロール
・「海都」の回転寿司
【広島】
・「我馬」のラーメン
【山口】
・「どんどん」のうどん
【島根】
・「たまき」のうどん
【鳥取】
【徳島】
【愛媛】
・「がんば亭」のうどん
【香川】
・「こだわり麺や」のうどん
【高知】
【福岡】
・「ひらお」の天ぷら
【佐賀】
【長崎】
・「庄屋」の和食
・「牛右衛門」のハンバーグ
【大分】
【熊本】
【宮崎】
・「桝元」の辛麺
【鹿児島】
【沖縄】
関税かけまくってブロック経済を築き上げたせいで戦争をひきおこした反省から、自由貿易万歳な世界を作ろうとしたけどやっぱそれも色々無理があってみんな経済以外のことも包括した地域協定作るようになってまあTTPもその一貫だよ。
WWI終戦
アメリカ「ゾウさん(共和党)政権になりました。でも保護貿易はもっと好きです」
ヨーロッパ「こちとら世界大戦でボロボロなんじゃクソ米野郎殺すぞ」
アメリカ「うわあ、なんだか大変なことになったぞ」
アメリカ「とりあえず、世界のことはほっといて国内産業を保護するか。いでよ! スムート・ホーリー法!」
スムート・ホーリー「歴史上類に見ないほどめっちゃ高い関税かけます」
アメリカ「ハハハ! つよいぞーかっこいいぞー!!」
→世界経済ますます悪化。ブロック経済化が促進。そして、WWIIへ。
ヨーロッパ「……という悲劇があったので、これからは関税とかなるべくかけるのナシにしよう」
アメリカ 「だよな。おれ昔からマジそれ考えて色々やってきてん。ってかみんなで最恵国待遇やればよくない?ピース」
ヨーロッパ「(マジむかつくなこのジャリ……)じゃあ、これからは自由貿易な。まず条約作ってそのあと機関的なもの設立しよう」
ヨーロッパ「どうした」
アメリカ「ごめーん。ママ(議会)がダメっていうから機関のほうは無理だわ」
ヨーロッパ「おまえなーっいつもなーっ」
アメリカ「あと加盟するから、うちの農産物のこれとこれとこれを対象から除外してくれ」
ヨーロッパ「」
1950's ディロン・ラウンド交渉
ヨーロッパ「と、とりあえずなんとかGATTができた。とりあえず関税率のひきさげとかこれからみんなで相談していきましょう」
60sケネディ・ラウンド交渉
GATT「工業製品の関税を一律で大幅引き下げることに成功したぞい」
70s 東京ラウンド交渉
ヨーロッパ「えー、今回も関税引き下げますけど、関税だけ下げても他に姑息な手段使って実質保護貿易じみたことしようとする(非関税障壁)馬鹿がおるので、そういうのもガンガン規制していきます」
アメリカ 「ギクッ」
80s ウルグアイ・ラウンド交渉
GATT「工業製品に比べてダンチにムズかった農業産品の関税も下げることにしました。
    あとまー、知的財産権とかサービス業の輸出入とか、そういうのも大事だよねこのグローバル化社会」
90s ドーハ・ラウンド交渉
GATT「途上国とか巻き込んでいろいろ欲張ろうとした結果、うまくいきませんでした」
世界貿易機関「苦節半世紀、やっとオトナ(機関)になれました」
アメリカ「感動的だなあ」
ヨーロッパ「ほんっっっとーにな」
アメリカ「すっかり自由貿易が世界の常識なってアメリカさんは満足です。議会は相変わらずうるさいけど。なあ、ヨーロッパさん」
ヨーロッパ「うん、そおね」
ヨーロッパ「あ、これはね……」
アメリカ「ブロック経済圏じゃない? ずるくない? みんなでやろうって言ったじゃん! なにヨーロッパだけ内輪でそんな作ってるの!! GATT違反だ!!!」
ヨーロッパ「ち、ちがうよ……そもそも違反じゃないよ。GATTの24条で「地域内における関税その他の貿易障壁を撤廃すれば地域経済協定OK」って規定されてんだよ……」
メヒコ「わーいやろうやろう」
カナダ「……やだなあ……」
NAFTA爆誕
2000年以後
日本「WTOは出来たけど、やっぱみんなでみんなで仲良く自由貿易やるのって限界があるよな。ドーハ・ラウンドはあんななっちゃったし、最近じゃEUさんが成功したおかげで各所で似たような枠組みが雨後の筍状態だし……のるしかないな、このビッグウェーブに!!」
→ASEANをはじめとした地域・国々と独自の自由貿易協定を結びまくる。
シンガポール「うちらもなんか作ろ。金融とか情報とか著作権とかその他もろもろナウいもん全部乗せでさ」
ニュージーランド「そっすね。名前は『環太平洋戦略的経済連携協定』がいいかな」
ブルネイ 「かっこいい」
チリ   「なんかバラバラな感じのメンツだけど気にしない方向で行こう」
アメリカ「NAFTAのおかげで南北アメリカ大陸は制覇したけど、やっぱこれからは環太平洋地域だよな……でも一から作るの面倒だし……」
アメリカ「お、あそこにちょうどよさげな枠組みあるやんけ! GATT24条もクリアしてるし! おーい、入れてくれ」
TPP 「マジか……まあアメリカさんが入ってくれたら心強いっちゃけど……」
オバマ「がんばろう」
議会「がんばれない」
オバマ「がんばろう」
オバマ「がんばろう」
民主党「がんばれない」
オバマ「がんばろう」
共和党「普段は敵だけど、今回は強力してやるよ」