
はてなキーワード:スーパーはくととは
それが誘い文句だった。砂丘には雪ないからスノボなんてできないでしょ、なんていちいち言ったりせず、黙ってYahooを開いてGoogle検索をかけた。『砂丘でスノボ』は、正確にはサンドボードというらしい。鳥取砂丘の砂は粒子が細かく雪のように滑れる、らしい。
「私スキー場で滑れなくてボード担いでお尻で滑って降りたことあるぐらい苦手だけど、それでもいい?」
即レスだった。私に運動神経が存在していないことを知っていても誘ってくれる心が広い友人に感謝しながら、私も「じゃあ行く」と即レスした。
それから4日後、私たちは鳥取に向かう電車に乗っていた。スーパーはくとという名前のそれはなんの配慮か電車の真正面の景色がモニターで見えるようになっていた。短いトンネルに入っては抜けて、暗い画面が白く眩くなっては暗くなる。そんな画面を見ながら、友人はわたし達ワープしてるみたいだ、と言った。私はローソンで買った昆布おにぎりを食べながら乗り物酔いしそうになっていた。
鳥取駅はなんだかこじんまりしていた。清潔で、スタバもコンビニもお土産屋もあって、けれど人は少なかった。曇り空の下にはシャッターが閉まった店が沢山あって、何故だか占いのお店が幅を利かせていた。とりあえずお昼を食べようと鳥取名物を調べたら、カレーと、海鮮と、ラッキョウと、砂丘関連の名物(プリンやら砂で蒸した卵やら)、あと梨だった。じゃあカレーでいいか、とカレーの有名な店を調べて向かった。メインの計画以外はその場で決めよう、何事にも縁ってものがあるからさ。というのが彼女の考えだった。だから、2泊3日の旅の内2日目のサンドボード以外は全くの無計画だったのだ。
カレーのお店は鳥取名物を謳っているから、という理由だけで決めたが、建物も新しくリーズナブルで美味しかった。彼女はブラックカレー、私はスープカレーを頼んだ。美味しかった。
店員さんにどうしてカレーは鳥取名物なんですかって言ったら、鳥取はカレーの消費量が全国一位なんです、という答えが返ってきた。答えになってないような気がした。沢山食べたら自分たちの物にできるんですか。チェンソーマンみたいですね。そう思ったけど言わなかった。彼女はチェンソーマンを知らない人だから。
カレー食べた後は彼女の希望で、海沿いを歩いて白兎神社に行った。縁結びが出来るんだって。でも因幡の白兎が元ネタらしくて、あれサメを騙して海を渡ろうとした兎がサメを怒らせて全身の毛をむしられた話だよね、どっから恋結びのご利益出てきたんだろうね?そう言ったら彼女はまぁねー、でも兎かわいいよ、と兎モチーフの石像をニコニコ眺めていた。答えになっていなかったけれど、彼女はそもそも神なんか信じていないのかもしれない。それとも彼女はもう結婚しているから、ご利益があってもなくてもどっちでもいいのかもしれない。私は、転職の成功と、ついでにいい感じの恋人ができますようにとお願いした。嘘ついて騙して、結局身ぐるみ剥がされた間抜けで最悪な兎じゃなくて、ウサギを助けた優しい神様の方に祈った。私の次の職場は完全未経験の、クラスに一人はいるなんでもできる陽キャだけ集めたような、そんな職場です。目一杯見栄を張って、使命感のある溌剌とした人間のフリをして面接に受かりました。本当の私はクラスに一人はいる、真面目でも不良でもない、何を考えているか分からない女です。なんとか、どうにか、上手くやっていきたいです。ついでに誰か、今好きな人とは別の他の誰かを好きになれるようにしてください。優しい神様、どうか助けてください。
2日目は本命のサンドボードだった。鳥取砂丘まではバスに揺られて一時間ほどだった。昨日の天気が嘘に思えるほどの晴天で、私は雨女だからあなたが晴れ女なんだね、あなたって運がいいもんね、と言ったら、わたし運はいいけど、天気なんて人一人の運でどうにかできるものじゃないでしょ、と穏やかに笑いながら言った。やっぱり彼女は、ほんとうは神様とか信じていないんだろうな、と思った。
サンドボードの参加者は私たち以外いなかった。早い時間の参加者は少ないんです、だそうだ。荷物を持って砂丘へ足を踏み入れると、泥の上でもないのに深く足が沈んで歩きにくかった。私は足にどうやって力を入れていいか分からなかったのだけれど、友達はスタスタ歩いていく。彼女は運もいいけれど運動神経も抜群にいいのだ。私はそれを追いかけるのに必死だった。その後どんどん丘陵地になっていき、荷物を抱えながら砂を蹴って丘を登った。ジグザグに歩きながら、息を切らしながら、ようやくてっぺんに辿り着き、インストラクターの説明を聞いた。ボードに足を固定して、滑る。そしてボードを抱えて登る。要約するとこれだけだった。また登る、と聞いた時、小さく最悪、と行ってしまったのだけど、彼女はそれを耳聡く聞きつけて、顔を顰めながらそういうこと言わないで、と私を軽く叱った。ごめん、と謝ったら、うん、と言って、まるで数秒前の記憶ごと消し去ったかのように表情を元通りにした。大人の嗜みとして不機嫌を表に出さないようにしている訳じゃない。彼女は昔から、心が広いのだ。
サンドボードで滑るのは楽しかった。とにかくバランスを取ることに必死になっているうちに丘の下に辿り着いていたが、それでもすぐに丘の上から砂を滑る爽快感が追いついて、楽しい、となる。体力が続く限り登って滑ってくださって結構ですよ、とインストラクターに言われたけど、滑る時より丘を登るのに体力を削られ、結局もう一度滑って体力が尽きてしまった。友達は体力が無地蔵なので滑っては登るを繰り返し、3回目からは丘をジグザグに登らず直線距離で駆け上ってきた。しんどくないの、疲れないの、と聞いたら、
「疲れるけど、その方が近いからさ」
って言って、そのまま4回目を滑り始めた。インストラクターが、すげーっすよあの子、歴代一位の体力ですよ、いくつぐらいですか?と、私に聞いてきたので、すごいですよね、すごいんですよ、とだけ相槌を打った。遠くの丘からパラシュートが飛んで行くのが見えた。パラシュートは風に乗って飛んでいき、私の友達を通り越して遠くに着地したのが見えた。こっちの方がワープみたいだな、と思った。友達とパラシュートの人の姿が、豆粒まではいかないけどずっと遠くに見えた。なんでかスピッツのロビンソンを思い出した。いいな。私もそっちにワープしたい。私とそこ代わってよ。お願い。
その後砂丘前のお土産屋に行った。私は転職予定で現職を有休消化中の一人暮らしだったので、自分用のお土産に砂漠プリンを一つと、近々会う予定の友達用に梨ジュースを買った。私の買い物はそれでおしまいだったけれど、彼女は実家に、職場に、とじっくりとお土産を吟味して、結局バスの時間ギリギリまで迷っていた。一番時間をかけて選んだのは彼女の旦那さんのお土産だった。何あげても喜んでくれるけど、やっぱり一番喜んでくれるものをあげたかったから、3つぐらい買ったんだって。お土産あげた時の旦那さん、本当に可愛くて好きなんだって。彼女は心が広いから、きっと家事分担やら稼ぎやら、結婚生活で起こり得る何かしらに少しも不満を抱いたりしないだろうな。長く続くんだろうな。きっと死ぬまで。
3日目も当然予定を立ててなかったんだけど、2日目のメイン目的を達成したからもう帰っても別にいいよね、みたいな雰囲気があった。でももう少し引き伸ばしたくて、牛骨ラーメン食べに行こって言った。鳥取に牛肉のイメージなかったけど有名らしかったから。それで、Google マップで適当に検索して評価高いところに行った。チャーシュー多くてスープも上品な甘さがあって美味しかった。食べ終わった後、友達がわたしラーメン好きじゃないんだけどこれは美味しかったな、と言った。びっくりして、なんで言わなかったの、って言ったけど、いやでも美味しかったからよかったよー、としか言わなかった。ねぇ答えになってないんだけど。長い付き合いなのにそんなことすら全然知らなかったよ、心が広いの知ってるけど、でも、ちゃんと言ってくれたらいいのにさ。
ラーメンを食べた後、私たちはスーパーはくとに乗った。はくとのモニターには相変わらずトンネルと田園風景が交互に映っていた。友達は今度はワープみたいだとは言わなかったけれど、そういえばこの電車って白兎から文字ってるんだね〜、と言った。そうだね、と言って寝たふりをした。また、最悪、と言いそうになった。しばらくして目を覚ましたら、前を走行している電車で急病人が出たとかで何処かの駅で停車していた。
やっぱわたし運いい。と言って、彼女は窓から写真を撮っていた。私は寝たふりをしながら、このまま電車止まっててくれたらいいのにな、と思った。
Permalink |記事への反応(13) | 21:20
恋山形も最初からピンクだったわけではなく、当初は特に特色も味わいもない地方の過疎駅だった。来いと言われて行っても何もない。
ところが開業してしばらくたった2013年、名前に恋が付く4駅(恋山形駅、母恋駅、恋し浜駅、恋ヶ窪駅)による連携企画「恋駅プロジェクト」というのが立ち上がった。
そこで「恋駅きっぷ」という、4つの駅の入場券を集めると1つの絵が完成する特殊きっぷを売った。
https://news.mynavi.jp/article/20130115-a030/
これが完売。「バレンタインのプレゼントに」という無理なマーケティングがなされていたが、たぶんこのきっぷ買った奴は恋を叶えたいわけではなく特殊なきっぷが好きな切符鉄だろう。あるいは切符鉄の彼氏や夫を持つ女が買ったかもしれない。
ともあれ、それなりに反響もあり、話題になったことに気を良くして、智頭急行は恋山形を「恋が叶う駅」として大々的に売り出すこととし、駅舎をあのピンクに塗った。
そして、途中下車して記念写真取る人のためにわざわざ5分停車させた。
さらに恋の駅を盛り上げるべく、ハート型の絵馬掛けモニュメント、記念撮影スポットを作り、ピンクに塗った「恋ロード」という道をつくり、カップルで鳴らせる鐘や、恋ポスト(手紙を入れるとハートの消印がついて届く)など
徹底的にハートとピンクにこだわったアクティビティを加え、恋人の聖地的な方向を狙って年々進化させてきて今に至っている。
要は、地元の年寄り(たぶん。違ったらごめん)が1980年代清里的センスによって「若者」「恋」「乙女ちっく」といったイメージを散りばめた結果爆誕したというか錬成されたのがあの駅である。
今回の件では、あたかも萌えキャラに合わせて萌え萌えピンクに塗ったかのような誤解があるようだけれど、宮本えりおは智頭急行全体のキャラなので言ってみりゃおまけでそこにいるだけなのだ。
っていうか、本来はドル箱であるスーパーはくとの車掌って設定のえりお、僻地でバイトさせられた挙げ句に気持ち悪いとまで言われとんだ風評被害である。
まあ、その成立からして完全に「ダサピンク」案件であり正直微妙ではあるものの、10年以上にわたるこのような努力と工夫の結果、週末には人も来るし、イベントともなるとそれなりに観光客で賑わう駅になったので、一応の成功をおさめているとも言える。
もちろん、わざわざ恋を実らせるために訪れるカップルなんてのはレアで、訪れるのは「過疎地の特殊な駅」という一種色物っぽい位置づけの駅に興味を惹かれた鉄オタと好事家、集客効果としても、鉄道むすめとか駅メモとか鉄オタ兼萌えオタをターゲットにしたイベントがやっぱり強いんじゃないかな。あのへんの人たちはどんなに過疎な場所でも頑張って行くから。
絵馬掛けモニュメントにぶらさがってる絵馬の内容は現実の異性との恋を祈るものではなく、電車と2次元キャラ、あとはペットへの愛が綴られたものがほとんどらしい。
Permalink |記事への反応(11) | 11:24
恋山形駅に行ったことのある鉄オタが、呂布カルマ氏のポストで話題の恋山形駅を解説します。
鳥取県智頭町にある智頭急行線の駅です。山間の小集落にある駅で、普通列車しか止まりません。
兵庫県の上郡駅と、鳥取県の智頭駅を結ぶ路線です。関西や岡山(瀬戸内側)と、鳥取(日本海側)を短絡する目的で開通し、特急スーパーはくと(京都・大阪~鳥取・倉吉)や、特急スーパーいなば(岡山~鳥取)のルートとなっています。特急からの潤沢な収入により、田舎の路線としては珍しく黒字です(※ただし、コロナ禍のときは赤字に転落した)。
一方、都市間を短く結ぶという目的のため、人の多い地域を結びながらグネグネ進んでいくのではなく、山々を貫いてなるべく直線になるように路線が作られています。そのため、沿線の人口は少なく、周りに数えるほどしか家がないような駅もあります。
その場の勢いみたいな感じです。そもそもこの駅がある場所の地名は「山形」で、「恋」なんてワードは全く出てきません。もともと、駅名は山形県の同名駅と区別するために旧国名を冠した「因幡山形」となる予定でしたが、地元からの要望により、「来い山形」とかけて「恋」を付けたとされています。
駅の近くには小さな集落がありますが、谷底にある集落に対し、駅はそこより少し上の木々に囲まれた位置にあるので、色のわりにそこまで目立ちません。
観光客に来てもらうための策なのでしょう。前述のとおり、特急列車の利用は多い一方、沿線人口に乏しいことから普通列車の利用はわずかしかありません。特急の止まらない小さな駅にも立ち寄ってもらおうという観光振興策として、駅の装飾が行われているものと推測されます。普通列車の中には、あえてこの駅で長めの停車時間を取っているものもあります。
写真を見てインパクトのある駅だと思った方も多いでしょう。「それだけでこの駅に行こうと思うか?」と思う人も多いかもしれませんが、訪問しようと思う人が少しでもいれば、それだけでこの駅の利用者数は普段の何倍にも膨れ上がるのです。
→嵯峨野線(山陰線)は、京都駅から梅小路京都西の間(梅小路公園横付近から京都駅まで)に単線区間があることにより、嵯峨野線の需要が大きいにも関わらず増発が困難である。また、車両の増結は他の駅の改修も要することから非現実的である。
→京都駅東側(京都芸大崇仁キャンパスの南側付近)で地下化した場合、河原町通のアンダーパスと交差する可能性があり、かつ東福寺駅の北側で地下化した場合は鴨川と交差することから東福寺駅の地下化も必要となるため、費用が高額になりすぎる。また、北陸新幹線新大阪延伸を考慮し地下を使うことは避けた方が現実的である。
→ 現行の奈良線の系統はすべて嵯峨野線へ直通(現行通り6本/時)。その上て、需要に応じて嵯峨野線(京都折り返し・最大8両)を適宜追加することで本数調整を実施。
→ちゃんとした計算はしていないが、阪和線をモデルケースとして計算すると現行より輸送量が増加するのでは?(詳細な計算は未了)
→奈良線側は、現状京都芸大崇仁キャンパスの南側付近に多少の空き地があることからそれを活用する。嵯峨野線側は、京都鉄博のSL線を拝借した上で工事を実施する。よって、支障なし。(京都鉄博SLユーザーはごめんなさい)