
はてなキーワード:カンタス航空とは
https://www.businessinsider.jp/article/2506-hoshinoresort-agoda-booking-trouble/
Agodaの悪質転売が話題だが、この裏にはもうひとつの悪者が存在する。
自分は都内のホテルでマネージャーをしていて、ブクマカよりはこの話題に明るいと思う。
もちろんいろんな人にこの構図を知ってほしい気持ちは大いにあるが、これから話すことにはかなり恨み節が混ざると思う。それぐらいAgodaはホテル業関係者から嫌われている。
Agodaは他OTAと同様に、ホテルと契約することで、ホテルは空室をAgodaに卸し、Agodaは集客手数料をホテルから受け取る。これが基本的なAgodaの商売だ。
Agodaがその他のOTAと異なるところは、ほかの旅行会社の在庫を自社サイトに掲載しているところ。IT業の知り合い曰くこれはメタサーチという商売に近いらしい。
たとえば国内大手OTAであるじゃらんネットや楽天トラベルとAgodaは提携していて、それらの空室がAgodaの検索結果として表示されている。
ただしこれはホテル側が「海外プラン販売」的なものに同意してチェックボックスにチェックを入れているから。だからまともな料金・キャンセルポリシー・内容でしか予約は成立しない。
おそらくこの予約経路でトラブルになるケースは皆無だろう。
予約が成立した際、ホテル側からは「予約経路:じゃらん」と見え、備考欄には「じゃらんネットAgoda海外プランで販売」的な文言が入る。
空室確保にトラブルがないのはもちろんのこと、ホテル側も「Agoda→じゃらん→ホテル」の流れであることを明確に認識できるので、お客様対応でコミュニケーションが行き違うこともない。 ※コメント指摘ありがとう!修正しますた
問題はここからで、Agodaはその他の有象無象の提携先(以下サプライヤーと呼ぶ)とも契約していて、それらのサプライヤーの空室を自社サイトの検索結果に掲載している。
おそらく星野リゾートや東横インが遭遇しているトラブルは、ここに絡んだものではないかと推測する。
あるユーザーがAgodaで空室を検索すると、気になっていたホテルの中でも圧倒的に安いプラン・部屋タイプが販売されている。
当然一番安い価格で予約手続きをするが、実際にはこれはAgodaでの予約成立ではない。先述の例のように、『予約経路:Agoda』としてホテルに通知されるわけではない。
ホテル側が受け取る情報においては、「予約経路:Expedia AffiliateNetwork」として通知される。
ここで突然Expediaの名前が出たことに疑問を感じる人もいるかもしれない。言わずもがな海外系有名OTAで、Hotels.comと運営会社を同じくする。
余談だが、Hotels.comの予約はすべて「予約経路:Expedia」として通知されるので、もしかしたらこの辺りのミスコミュニケーションは経験したことがある人がいるかも。
話は戻し、ExpediaAffiliateNetworkがなんなのかを説明したい。
OTA商売というのは、空室を掲載するホテルと個別に契約する必要があるし、それを掲載するプラットフォームも整備しなくちゃいけないからとてもコストがかかる商売だ。
Expedia AffiliateNetworkとは、そこまでリソースを注ぎ込めないホテル予約サイトに対して、Expediaの予約エンジンを使わせてあげるよっていう仕組み。
ぱっと思いつくところだと、カンタス航空の予約エンジンなんかはこれ。
航空会社は航空券とホテルを抱き合わせにする、いわゆるパッケージ予約の需要があるので、航空券は自社から卸して、抱き合わせのホテルはExpediaのシステムに乗っかる。
Agodaも先述の楽天トラベルやじゃらんネットのような提携を当然Expedia AffiliateNetworkとしている。
(あんまりないが)Expediaで他社より安い価格を掲載しているホテルなんかの空室・料金は、これによってAgodaの掲載に集約される。ユーザーは数あるOTAの中から一番リーズナブルな値段で予約ができる。
もしくはホテルが登録した販売価格が各OTA横並びであったとしても、自社取り分の販売手数料分をいくらか自腹切ることで安い値段をAgodaに掲載すれば、より優位に自社在庫へと誘導できる。
ここにExpedia AffiliateNetworkを利用している旅行会社(あえてOTAとは呼ばない)にも有象無象がいて、その有象無象旅行会社がAgodaに空室を掲載するという構図が爆誕する。
ユーザーから見たときに予約が「Agoda→旅行会社→Expedia AffiliateNetwork」の順で空室が確保される、なんてのはまだ良いほうだ。
この「旅行会社」が有象無象すぎて、「Agoda→旅行会社A→旅行会社B→旅行会社C→Expedia AffiliateNetwork」なんてことになる。
冒頭の記事中にもある「何かあったら自分が使った旅行会社に聞いてくれ」とホテル側は言わざるを得ないのはここに理由があって、ホテル側からしたらExpedia AffiliateNetworkの予約でしかないので、ユーザーが「Agodaでどうこう」と言おうが知らん話なのだ。
実際、Expedia AffiliateNetworkのポリシーでもホテル向けには「何かあったらユーザーから使用した旅行会社に問い合わせるように。ホテルからうちに何か言われても一切対応できへんで」と言われている。
最近は都市部のホテルのインバウンド率が高くなったのもあって、今まで表に出てこなかったトラブルが顕在化していると言えると思う。ちなみに俺のとこのホテルは単価高いのもあるけど95%がインバウンド。
中華系サプライヤーを許容するExpedia AffiliateNetworkももちろん悪いんだけど、そういう構図があってもなお「うちのやったことじゃないから」というスタンスで有象無象から卸された空室を掲載し続けるAgodaがほんまにカッスだなと個人的には思う。
ExpediaはExpediaで、「我々もAffiliateNetworkの提携先には注意を払ってる。なにか不穏なことがあればレポートしてくれれば対応します」という、どいつもこいつも他人のせいってスタンスなんだよね。
我々のホテルには「スタンダードツインルーム・23平米」と記載された予約通知が来て、その通りに部屋を確保している。
お客様がチェックインし入室すると、「55平米の部屋で予約したはず」と言われる。いやそんなはずはない、とExpedia管理画面で予約情報を確認すると間違いなく23平米のツイン。
お客様の予約画面を見せてもらうと、Agodaの予約成立画面だし「Premium Twin Room/55m2」なんて書いてあるわけ。
結局ExpediaやAgodaのサポートに散々ヤカった結果、お客様は今確保された部屋で納得し、後の返金はAgodaが面倒見てくれるという。
いわく「Agodaに掲載されていた部屋情報のマッピングが本来のものとは異なっていた」らしい。
まともに英訳・突き合わせできない中華系サプライヤーがExpedia AffiliateNetworkの空室を自社在庫として登録、それをお客様がAgodaで予約したという構図だった。
OTA商売というものはまったく同じ商品を多数の他者が扱っている以上、「他者より安く販売する」しか勝ち筋がない。
Expediaの営業担当(マーケティングマネージャー爆笑)なんかが「Booking.comさんで掲載されている料金がうちより安いんですけどどうなってんの?」なんてメールを送ってくるのは日常茶飯事だ。
それどころか、「他社よりも安い値段を付けていないと検索結果の表示順位が下がる」なんてアルゴリズムが存在してて、それはもうホテル業の人間の間ではこのゲームのルールとして常識になっている。
このアルゴリズムは海外系OTAに顕著で、楽天トラベルやじゃらんnetはせいぜい「空室数たくさん登録してくれるとオススメ順で有利になります」ぐらいのマイルドなもんだ。
楽天もリクルートも個人的には嫌いだけど、随分な優良企業に思えてくる。
今イケてるホテルはどこもOTAからの脱却を図ろうとしていると聞く。
業界の噂で聞いた話だが、今もっともイケてる宿泊特化型ホテルである大和ハウス系列のMIMARUでは、自社サイトでの予約が半分以上らしい。
もうOTAの今までの「他社よりうちに安く出してくださいよぉ~~」の営業スタイルでは商売として限界があると思うし、我々ホテル業としてもいたずらに単価が下がるだけなので別の形で商売の価値を見つけてほしいところ。
とはいえOTAなくしてホテルが成立しないのも事実なので、今回の話が大いに燃えて膿をガンガン出してもらえればと思う限り。
東横インと星野リゾートの発信は、常にへりくだらなければならない我々ホテル業に「そんなの客の俺が知ったことか」では済まない、「ニュースで話題の通りこういうことあるんで」と胸を張って堂々とするきっかけをくれたとも言え、個人的にとても感謝している。
細かく書こうと思えば無限に書けるけど、多すぎるからこのへんで。何か質問あれば追記します。
以下追記
たくさん読んでくれてありがとう~仕事しながら合間で楽しくコメント読ませていただきました。
いつもありがたいと思ってますよー。初めての方なのに自社サイトでわざわざ予約してくれるの見ると、こちらとしても嬉しくなるし、良い部屋にアサインしたりしてる。メンバーにもそうするように指導してる。
これは一定の効果はあると思うんだけど、100%ではないから注意が必要。
連絡時点で部屋が確保されていることは確かに確認できるものの、めちゃくちゃなサプライヤーのやることなので直前でキャンセル通知が来るとかもあり得る。
あるOTAで事前決済で予約した場合、即座に決済とはならず、期日までに支払い手続きをしないと自動でキャンセルされるなんて仕組みがある。間に入っているサプライヤーが入金処理をお漏らしして、当日にはキャンセル済みになっているなんてことは十分にあり得る。
都内の築浅でモダンなビジュアルのホテルはたぶん今どこもこんなもんですよ。
インバウンド客は日本のホテルのことはほとんど知らない状態でOTAで検索するので、見た目がかっこいいホテルを選ぶのです。
ヤカラムーブをする、転じて強くコンプレーンを言うって意味合いでナチュラルに使ってた。
Agodaの夜間窓口は英語対応のみだったりするので、強く状況をアピールしないとゴリゴリの香港訛りのオペレーターにあしらわれたりするのです。
施設サポートの体制も手厚くて誠実なので、個人的には結構気に入っている。営業担当(マーケティングマネージャー)も常に有用な情報をシェアしてくれるし、戦略面でも親身に相談に乗ってくれて安売り以外の提案をきちんとしてくれる。
後発かつ中華系という先入観を打破しようと一生懸命なのが伝わってくる。管理画面の日本語表示がおかしな中華フォントだったり片言表現で使い物にならないのだけ直してほしい。
余談だけど、営業担当に商談のとき見せてもらった彼らのシステムのアナリティクス画面では「中国の台湾」「中国の香港」と表現されててちょっと感動した。わあマジでこういうのあるんだって。
Permalink |記事への反応(13) | 23:32
飛行機には履歴書みたいなものがある、という話をanond:20210809215439 で書いたところ、少し反応があって嬉しかったのでもう1個書いてみる。
今回は2021年7月半ばに引退したばかりの「JA01VA」について話そう。JA01VAはANAのエアバスA320型機で、2010年代から最近にかけてのANAの苦悩が見える機材である。
https://www.planespotters.net/airframe/airbus-a320-200-ja01va-all-nippon-airways/ey1ly5
日本で本格的にLCCが登場したのは2011年である。ジェットスター・ジャパン(GK)、ピーチ(MM)、エアアジア・ジャパン(JW、当時)の3社が相次いで設立された。
GKはJALとカンタス航空の合弁、MMはANAと香港の会社の合弁、JWはANAとエアアジア(マレーシア)の合弁で設立された。
かくも合弁企業ばかりなのは、日本における航空会社の外資規制(全株式の1/3まで)があるからだ。
このうち、ジェットスターとピーチは上手くいっていたのだが、エアアジア・ジャパンは失敗してしまった。というのも、エアアジアとANAでLCCを巡る運営方針に大きな違いがあったからである。
喧嘩別れによってエアアジア(マレーシア)はジャパンの運営から手を引く。これにより、エアアジア・ジャパンは「バニラエア」に社名を変え、ANAの100%子会社として再出発した。
(なお、その後エアアジアは非航空業界の日本企業と連携して再参入を図り、名古屋に2代目エアアジア・ジャパンを設立するも再び失敗した。日本での事業があまりにも下手なようである。)
このとき、JWに5機あったA320(JA01AJ~JA05AJ)はエアアジア持ちだったようで、全機が東南アジアに移籍していった。
だが、この喧嘩別れの前に発注されていた機材がある。製造番号5844、JA01VAである。
一般的に航空機は、新造時にメーカー(エアバス、ボーイングなど)にて航空会社の塗装を実施して納入される。
しかしこの製造番号5844は納入先がゴタゴタしており、エアアジア塗装でいいのか、そもそも別塗装になるのかわからない状態で納入が進められた。
結果、真っ白な状態でエアバスから成田に回送され、大阪伊丹空港のANA整備拠点でバニラエア塗装が施されることになった。
https://flyteam.jp/registration/JA01VA/photo?sort=phototime&order=asc
さすがに内装は着工完了していたらしくらしく、エアアジア仕様、外装はバニラエアという機体が出来上がった。
ちなみに初期のバニラエアはANAから退役前の古いA320を転籍させるなど、JA01VA以外にもゴタゴタした機材が多かった。
こうして、ANA(ANAホールディングス)は自社傘下に2社のLCCを抱えることになった。
当初は「成田はバニラエア、関空はピーチ」「バニラはリゾート路線・訪日外国人に注力」などと素人目にはちょっと苦しい言い訳をして2社が棲み分けをしていたのだが、その境界線はどんどん曖昧になっていった。
LCCとしてのブランドはピーチの方が強く、業績も良かったことから2018年にはピーチへの統合が発表された。
バニラエア機材の大半はピーチ仕様に改修ののち、移管された。なお、日本の法令では国内で一度登録した機体番号は会社が変わっても変更できないため、ピーチ移籍後も「JA○○VA」となっている。
しかし、当然ながらピーチもそこそこの規模で機材を持っており、15機全部を移管すると過多になってしまう。そこでJA01VA~JA03VAが余り物となったのである。
この余ってしまった3機は2019年にANAが引き受けることになった。まだbeforeコロナの時代の話である。
ここでANAの機材運の悪さに触れておかねばならない。
ANAは老朽化した機材を三菱スペースジェット(MSJ、MRJ)、ボーイング737MAXなどで置き換えるプランを立てていたのだが、MSJの相次ぐ開発遅延(のちに中止)、737MAXの事故による世界的な運航中止など、どちらも見込みが立たなかった。
加えて、次世代の主力機としていたボーイング787のエンジン設計上の欠陥により改修作業を余儀なくされ、コロナ前の旺盛な需要の中、機材繰りがギリギリとなっていた。
余談だが、ANAはコロナ直前に明らかに供給過多で時代遅れなA380も掴まされて、クソ機材によって本来被らなくていいような赤字まで被っている。機材担当チームのセンスがないか、あるいは強烈に運が悪いかどちらかであろう。
ここでちょうどよく転がっていたのが旧バニラのA320である。ピーチとの統合で余ったとはいえ、機材のリース期間満了までは当時の段階で2年ちょっと残っていた。
しかし、これをANA仕様に改修するには時間もコスト、改修認可の手間も掛かる。その結果として「1年限定で、LCCの詰め込み仕様のままANA機として飛ばす」という奇策がとられた。
通常のANA仕様のA320なら166席のところ、LCCは同じサイズの機材に180席も詰め込んでしまっている。これをANAは機材コード「32G」と称し、塗装だけANAにしたのちに2020年1月から一部の路線に投入した。
ちなみに料金が安くなるわけでもない。何も知らず、ANAに乗ったと思ったらこの機材に当たった人は気の毒である。実際、ANAユーザからは「ハズレ機材」と言われていた。
2021年7月、JA01VAは予定通り約1年ちょっとの運航を終えて引退し、沖縄・那覇空港に回送された。おそらく現在、那覇にあるANAの整備拠点でリース会社に返却するための引退整備(片付け)をしていると推測される。
機齢は若く、まだ最前線で活躍できる。そのため、リースバック後には海外のどこかで活躍するだろう(尤も、コロナの影響でどうなるかわからないが)。
次はどこの航空会社に引き渡されるかはまだ不透明だが、製造番号をキーにしてまた追いかけることができるので楽しみである。仲間のJA02VA・JA03VAもまだ国内に留まっているが、順次同じ手続きを取ると思われる。