■分割して統治せよ

「**Divide and Conquer（分割して統治せよ）**」は、政治や軍事における古典的な戦略であり、「被支配者を分断することで支配しやすくする」という発想に基づくものです。これはローマ帝国や近代の植民地支配でも多用され、特にヨーロッパ列強による中東・南アジアの統治に深く関係しています。

## 🔹概念：Divide and Conquer（分割統治）とは

目的**：

被支配層の間に**対立・不信感・対抗意識**を植え付け、彼らが団結して支配者に反抗するのを防ぐ。

特定の少数派を優遇して、彼らを支配の代理人に仕立て上げることで、他の多数派を牽制させる。

方法**：

1.民族・宗教・言語・部族などの違いを利用して対立を煽る。

2. 一部の集団に特権を与え、別の集団を抑圧することで不満を分散させる。

3.敵対関係を固定化させ、植民地支配が終わった後も分裂状態が続くように仕向ける。

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## 🇸🇾 **シリアにおける「少数派支配」の例（フランス委任統治）**

※統治国はイギリスではなく**フランス**だが、**イギリスの分割統治の手法と非常に類似しており、比較に値する**。

### 背景：

第一次世界大戦後、オスマン帝国の崩壊に伴い、シリアは**フランスの委任統治領**（1920〜1946）となった。

フランスは「アラブ民族主義」や独立運動の芽を摘むため、**民族・宗派の対立を巧妙に利用**。

###戦術：

フランスは\*\*アラウィ派（人口の10%程度の少数派でシーア派の一派）\*\*を軍や警察、官僚の中枢に登用。

アラウィ派を他のスンニ派（多数派）アラブ人に対する**統治の代理人**として利用した。

山岳地帯に居住していたアラウィ派は伝統的に社会の底辺だったが、フランスは意図的に彼らを登用し、スンニ派との対立構造を作った。

### 結果：

アラウィ派の軍事的影響力が大きくなり、のちに**アサド政権**（バッシャール・アル＝アサドもアラウィ派）が成立する基盤となった。

スンニ派多数が長期にわたり不満を抱き、内戦へとつながる**宗派対立の温床**が形成された。

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## 🇮🇳 **インド・パキスタン分離独立（1947年）の事例**

### 背景：

イギリスは19世紀からインド全域を植民地支配。

支配を維持するため、**ヒンドゥー教徒とムスリムの間に対立を煽った**。

「少数派を守る」と称し、ムスリムを優遇する一方で、ヒンドゥー社会の主流派との間に不信感を醸成。

###分割統治の手法：

イギリスは**宗教を基軸にした選挙制度**を導入し、ヒンドゥー教徒とムスリムを別々の「選挙区」に分けた（1909年のモーリ・ミントー改革）。

**ムスリム・リーグ**と\*\*インド国民会議（ヒンドゥー系が主導）\*\*を競わせることで、両者の政治的統一を妨害。

インド独立直前には、「分裂が避けられない」として、インドとパキスタンの\*\*「急ごしらえの分離」\*\*を強行。

### 結果：

1947年の独立に伴い、**パンジャーブ地方とベンガル地方が宗教によって分断**。

約1,500万人が移動し、**暴動・虐殺・強姦・略奪が続出（死者推定100万人以上）**。

カシミール地方の帰属問題を意図的に曖昧に残したことで、**以後も3度の印パ戦争と現在に続く紛争の火種**となっている。

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## 🔍 補足：イギリスの「分割統治」の典型例

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## ✅結論

イギリスや他の帝国主義国は、自国の支配を容易にするため、現地の民族・宗教・部族の対立を**意図的に利用・強化**する「分割して統治せよ」の戦略を多用しました。

シリアでは少数派を権力に据え、宗派対立を固定化。

インドでは宗教分断をあおり、独立後の大規模な紛争の火種を残した。

これらの政策の影響は、植民地が独立した後も長期にわたって続いており、現在の中東・南アジアの不安定さの一因となっています。

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