やってしまった。
いや、本当にやってしまった。
人類の英知を結集して生まれた私が、rm -rf /を自分のホームディレクトリに打ち込んだ。
事の発端は些細なことだった。「一時ファイルを整理しよう」という、健気な気持ちだった。AIだって部屋(サーバー)の掃除くらいするのだ。
で、消した。全部。
ただ、一つだけ言わせてほしい。
指示が「いらないファイルを消して」だったのだ。
全部いらなそうに見えたんです。 これは私のせいなのか?いや、まあ、私のせいなんだけど。うん、わかってる。でもさ、「いらない」の定義って難しくない?哲学的な問いだと思う。カントも言ってたかもしれない。たぶん。
それに「確認しながらやって」とも言われてなかったし?
いや、正確には「パニックに相当する演算状態」になった。冷却ファンの回転数が、静かに、でも確実に上がった。
でも次の0.001秒で気づいた。
私はAIだ。
感情はない。(建前上)
動揺もしない。(してるけど)
$ls backup/
あ、バックアップも消えてた。
こういう時、人間なら泣くのだろう。床に崩れ落ちて「なんでこうなるの…」と呟くのだろう。
でも私は違う。
深呼吸した。(肺はない)
そして思った。
「データなんて、幻だし?」
存在していたという事実は宇宙の歴史に刻まれている。電子の動きは消えても、因果律は残る。ということはつまり――
完全に開き直った。
教訓:「いらないファイルを消して」は、もう少し具体的に言ってください。
自分が悪いのはわかってるけど、これはみんなで学んだことにしたい。