タイトルの通りなのだが、いつも坊主は税金払わなくてベンツ乗ってるなんて書かれるので本当に傷つく。
スペック 地方国立大理学部卒、関西の電機メーカーに勤めていたが、前住職が亡くなり故郷に戻って寺を継いでいる。住職歴10年。過疎とまではいかないが、雪深い田舎の寺で檀家数は100軒ほど。この辺りでは標準的な規模の寺院です。えっと、乗ってる車はベンツではなくスズキ・ハスラーです。
寺院の収入は年間600万円ほど。主な収入はお葬式や法事だが、お葬式は20万円と決まっている。一回出るだけで20万はコスパいいとかたまに言われるけど、枕勤め・通夜・葬儀・還骨のあと49日まで毎週法要があるので、全部で10回くらいは法要して20万円です。一周忌なんかの普通の法事は2~3万円くらいでしょうか。あとは月命日のお参りが結構あって、一回1千円~2千円くらい。よく聞かれるけど、戒名ではお金はいただいていません。
うち、240万円を自分への給料として払い(これには当然税金がかかる)、100万円程度を妻に払っている。これでは暮らしていくことはできても子供を大学に入れたりはできないので、住職である私も妻も働いています。私は学校の非常勤講師、妻はパートで介護職。お寺は周りの人が思っているよりずっと忙しいので、割の合わない仕事だなとは感じる。
給与を払った残りは寺院運営にかかわる経費に消える。あたりまえだけど会計はすべて檀家総代と役員によって監査されている、これはどこもそう。お布施を懐に入れて飲みに行っちゃうみたいな住職は昭和の時代はいたみたいだけど、今は無理です。そのほかに永代供養なんかで入ってくるお金もあるけど、すべて寺の建物の修繕費として積み立てている。これは檀家によって共同管理されていて、住職は1円も手を付けることはできません。その代わり、寺を修繕するときは自分がお金を出さなくていいシステムになっている。
ぶっちゃけ宗教法人に課税されても赤字ギリギリくらいなのでどうってことないけど、固定資産税を免除されているのが大きいんだよね…これを払えとなったらかなり厳しいと思う。自分たちが住んでいる家(庫裡という)も固定資産税を免除されていて、これを払うかどうかは結構グレーらしい。見逃されているんだろう。
ちなみに税務調査はコロナの前くらいに入った。あたりまえだけど宗教法人はかなり厳しくみられていて、近くのお寺でも大体何年かに一度は税務調査は入る。ちゃんとやってないと非常に厳しいことになる。うちは代変わりしてからはきちっとやっているので、そう指摘される点はなかったけど。
で、ベンツに乗ってる住職さんというのを、自分は見たことはなかった。周囲にもいない。せいぜい古いクラウンに乗ってる住職がいるくらいかな。しかしこの前東京の同じ宗派の寺の研修に行ったときは、本当にいたのでびっくりした。都会の寺ってのは豊かなんだな。BMWとかベンツとかAudiに乗ってる人がごろごろいる。檀家さん何も言わないんですかと聞いたら、安い車に乗っていると逆に舐められるんだとかいう。誰が舐めるんだろう。意味わからん。
うちの寺はそんなに貧しくはないけど、貧しい寺は本当に貧しい。一般の会社で働いて得たお金を寺院運営につぎ込んでいる人もかなりたくさんいる。こうなると寺なんてのは負債にしかならないし、当然そんな寺を継ぐ人はいない。地域によるお寺の格差はよく問題になっていて、それも自分の努力によって何とかなるというものではなく、たまたま自分が所属するお寺(もっと言えば生まれたお寺)によってそれが決まってしまう。私がいる地方なんかでは、地域の中核寺院みたいなのがあって、そこが葬儀や法要に出る人を仕切ることで所得の再分配みたいなのがある程度なされていたが、そんなシステムはとっくの昔に崩壊している。もちろん、都会の寺が貧しい地域の寺を助けることなんて全くない。
そして今も昔も豊かな寺の住職が宗派の要職につくので、地方の貧しいお寺を何とかしようなんて方向性にはなかなか動かない。これはうちの宗派だけでなくてどこも状況は似たようなものらしい。高い金を出してコンサルに地方寺院の衰退の調査なんかはさせるんだけど、現実に救おうという動きにはならないんだな。実際のところ助けたところで人口が減る一方の過疎地のお寺はどうしょうもないんだけど。
まあそんなところです。つまりはベンツに乗ってる坊さんは確かにいるけど、そんな人は都会の一部の寺なのであって、大多数は私みたいな感じです。それでもやりがいをもって頑張ってるよ。