108時間断眠した結果衝撃の結末に!という映画なんだけど衝撃の結末までに寝ちゃいそうな映画だった。42点。
・やりすぎ!視聴者参加型劇!
のリャンメンで捉えられるようには感じたんだけど、どっちにせよ教訓は
だと思いましたまる。
売れない役者のビアンカはとあるアナーキー劇演出家から声がかかる。その劇は事件が起きた廃病院を実際に使い、そこで108時間の断眠を行いながら役作りをするというもの。ライバルトともに不眠役作りを続けるが不眠期間が延びるにつれてビアンカの精神は役と同化し幻覚症状が発症していき……
というお話。
基はその精神病院で2020年代ホットトピックスの産後鬱で不眠になり夫を殺害、子供を殺し損ねたドラという女性が放火したという話があり、同じ状態に持っていくことでその悲劇を再現しようというもの。
シゴデキ感を出しまくる劇演出家が「108時間断眠すると憑依する」とかいうバチクソオカルト理論を平然と語るのでこれは真面目に見るべき映画ではないのでは?と不安になってくる。主演と助演はともかく他の美術スタッフもなぜか断眠してるのも意味わからんし、108時間寝ないと危ない!ってなってからも主人公はなかなか寝ようとしないし。
なにより、何時間経っても誰も眠そうなそぶりすら見せないし血色よく健康そうなのが最も解せない。
こいつら元気すぎるだろ。こちとら修羅場では仮眠挟んでも72時間連勤しただけでみんなゾンビみたいな顔で仕事してんぞ。シャブでもやってんのか。アドレナリンも108時間は到底持たないだろ。
途中でこいつらが断眠役作りしてたの忘れてたもんな。元気すぎて。
最終的に一緒に役作りしていた主人公のライバルが元の事件で殺され損ねた子供で、主人公に母親を憑依させることでなぜあんなことをしたのかを聞き出すことが目的だったことがわかる。ついに憑依覚醒した主人公はドラと同一化し心中を図ったけど愛する娘は殺せなかったことが分かり、ライバルは感動の涙に包まれるのであった。
という劇だったのさ!
という演出になってるんだけど、その後、一緒に断眠していた演出家の息子のスタッフがついでに発狂。演出家を殴り殺して廃病院に火をつけてすべては炎の中に包まれましたとさ。めでたしめでたし。
この「産後鬱で不眠になり夫を殺害、子供を殺し損ねたドラという女性が放火したという話」自体が実在したのかどうか。もろちん、映画を見てると"あった"痕跡があらゆる場所に仕込まれていてリアリティを持たされではいる。でも最終的にこの病院内で観客が起きていることを見ていたことがわかる展開になるので、これ自体がアナーキー演出家が作り上げたことで、「108時間役者を眠らせずに劇の台本を仕込めばなかったこともあると思い込む説公開収録」という水曜日のダウンタウン展開もあるのかなと思ってしまった。
だって逆に108時間役者を眠らせないことで霊をインストールして悲劇を再演して許しを得るって展開のほうが圧倒的に意味不明だし逆にチープじゃん。
キツすぎて役を降板(その代役で主人公が呼ばれる)した女優が後に舞台を逃げ出した主人公に「あの演出家はヤバい。私が発狂して自殺しようとしてたのをニヤニヤ見てた。このままじゃあんたのライバルこのままじゃ殺されちゃうよ」と告げて主人公が再び舞台に戻る展開があるんだけど、この降板女優も最後の「劇でした~」のところで一緒に観劇して感激してる描写がある。本当にそんなことがあったのなら観劇しにくるわけないからそう考えると彼女も仕込の可能性が高い。
そんなこんなでこのワークアウトに関わっていた人たちが最終的に観客としてわーっと出てくるのでつまりこのワークアウト自体が作劇、つまり役者を追い込むことを監察すること自体が目的の現代残酷ショーだったんだと考えるのが自然だし、その方が面白いとは思ったかな。倫理観はゼロだけど。ある意味で言えば、そういう現代の見世物小屋と化している前衛演劇界隈批判と受け止められなくなくなくなくなくなくなくなくYeah!
ホラーとしてはとってつけたような幻覚表現で現実の足元をぐらつかせる展開や、その中でのジャンプスケア、傷だらけのキモい顔の母親も悪くないし、過去に何があったのかの探索、解明パートも機能はしてた。必要な要素は割とそろってるとは思うんだけど、途中のワークアウトパートがたるくてたるくて。ついウトウトしちゃった。
結局、どっちなのかよくわからんし。
オカルトだとしても作劇だとしても「不眠による幻覚」という圧倒的に不確定で不安定なものを下敷きにしすぎていていや狙い通りになったからよかったようなもののそうなってなかったらどうするつもりやったん?っていうバカバカしさがぬぐえなかったのは大きなマイナス。