10年付き合ってきた友人から、先週の夜、思いがけず「好きだ」と告白された。
高校の友人グループで、もう10年近く月2回のペースで飲み続けている。
コロナで一度途切れたが、それ以外はほぼ継続してる。そのメンツの一人が、A(男性)だ。
Aとの付き合いはそのなかでも長い。高1のときに同じクラスで、当時は女の子にモテる系の奴じゃなかったけど、気さくで一緒にいて楽しい奴だった。
大学で一度グループと疎遠になってた時期もあるけど、就職後に向こうから連絡があって、そこからまた毎月会うようになった。
グループのうち3人集まって、ビールと枝豆と唐揚げの定番セット。
会社の人間関係の愚痴が多いA。それを聞くのが習慣になってた。
ただ、終盤、他の二人が帰ったあたりで、Aが「ちょっと、話あるんだけど」と言い出した。
「ん?」って返したら、「外で」と言われた。
そこから先は、もう鮮明に覚えてる。繰り返し思い出して、その度に気持ち悪くなるくらい覚えてる。
なぜそこなのか、今でも理解できない。
Aは空を見上げたまま、こう言った。
「俺、ずっと好きだった。お前のこと」
沈黙した。10秒か20秒かわからない。時間が止まってるように感じた。
「えっ」としか出なかった。本当に「えっ」だけ。
「高校の時からずっと。でも無理だなって分かってたから、友人のままで、月に2回会うこと、それで充分だった。でも最近、こんなんじゃ駄目だと思って」
ここまで聞いた時点で、俺の脳のどこかは逃げモード全開だった。
Aの話が耳に入ってるけど、理解するのを拒否している、その感じ。
「でも、俺たちは友人だ」
Aはそう言った。
「だから、返事は今じゃなくていい。ただ、言っておきたかった。これからも友人でいられるなら、それでいい」
すごく大人っぽいセリフだった。多分、何か月も前から用意してたんだと思う。
でも、その「友人でいられるなら」という前提条件が、ぐさりと来た。
なぜなら、もうその時点で、俺たちはただの友人ではなくなってたから。
帰った。風呂に入って、ベッドに入った。
でも眠れなかった。
こっちからも、何も送れなかった。
10年間、月に2回会ってた。
その間、Aはずっと俺を好きでいたのか。
それなら、あの時間は何だったのか。
ここまで読んで、「かわいそうなA」みたいなコメントが来るかもしれない。
正直、Aに対して同情する。
でも、同時に俺のことも考えてほしい。
俺は何も悪いことをしてない。
Aを傷つけたつもりもない。
ただ友人だと思ってた関係に、勝手に「恋愛」というラベルが貼られた気分だ。
Aは「友人のままでいい」と言った。
それは相手への思いやりなんだと思う。
月に2回、Aと会うたびに、「この人は俺のことを好きなんだ」という事実が頭の片隅にある。
無邪気に飲み会の話をしていたAの顔を見ても、もう「このひとはいま何を考えてるんだろう」と探り始めてる自分がいる。
友人のままでいることは、既に不可能だ。
盆正月以外、ほぼ毎月。
バグのような話だけど、これって珍しくないんだろうと思う。
長く一緒にいると、どこかで感情のズレが生じるのかもしれない。
こっちからも、返事ができていない。
「友人のままでいい」って言われたから、返事の義務はないのかもしれない。
でも、「返事がない」ことが、最大のプレッシャーになってる。
月に2回の飲み会は、どうするのか。
次会ったときは、どんな顔をするのか。
普通に話せるのか。
親にも言えない。
Aは、本気で隠すつもりだったんだと思う。
でも、俺はもう知ってしまった。
同性愛の告白は「二人の問題」ではなく「二人のなかの一人の人生」なんだと、今になって分かる。
Aは何年も抱えてたんだろう。
俺はたった1週間で、もう友人という名前の何かが壊れた気分だ。
最後に書くなら、こういうことだ。
Aは「友人のままでいい」という逃げ道を用意したつもりなんだろう。
でも、知ってしまった側は、その逃げ道の中で永遠に歩き続けることになる。
10年の友人は、もう戻ってこない。
それが告白の代価なんだと思う。
いつか返事をしなきゃならないんだろう。
でも、その返事が何であれ、この関係は既に壊れてるんだと思う。
誰も悪くない。
ただ、そういう不幸なずれが存在する、というだけだ。