小さくまとまってはいるものの普通に ( ;∀;) イイハナシダナーってなれる佳作だった。71点。
ここで一句。
春すぎて 池田エライザ 乳でっか
※作品の大筋とは特に関係ありませんが最も印象に残ったので書き記しました。
大筋としては幼少期に母親に捨てられ育ててくれた祖母を亡くして叔父である日本一小汚いイケメン俳優にオダギリジョーに引き取られた陰キャの池田エライザは、彼が運営する心理的瑕疵物件(事故物件)に一時的に住むことで告知義務を解除するルームロンダリング業に従事している。霊が見える彼女は出会う霊と隣人との交流を通じて成長していくのであった。
「自分を受け入れること」という普遍的でポジティブなメッセージに溢れていてよかった。
エライザは「母親に捨てられた自分」を受け入れられず他人を拒否して人とうまく話せない。しかし事故物件に住む地縛霊とはちょっと話す。特に冒頭の30分くらいはマジで幽霊とだけしか話さないのでなんかギミックでもあるのかと思うくらいだったけど別にそんなことはなく、普通に心が解けていくと同時にポツポツ人間とも話しはじめていてそれはそれでよかった。
自殺したロッカーであるキミヒコは才能がないかもしれない自分が受け入れられず、結局デモテープをレコード会社に送ることもできずに世を儚んで自殺してしまうし、刺殺された光宗薫は冴えないOLとしての自分が受け入れられずコスプレで承認欲求を満たしその結果刺殺されてしまう。
その中で唯一ポジティブなド陰キャの伊藤健太郎は光宗が刺殺された夜、隣の部屋で助け声を聞いていたのに怖くて何もできなかった自分を受け入れて、次に隣人が越してきたらその人には積極的声をかけようと決めていて、その結果、隣に越してきたエライザに介入して心を少しずつ変えていく役割を果たすのは作中のロジックとして正しいと思った。
母が出て行ったのは自分にこんな力があるからではと悩むエライザは一度はその力を拒否するも、その辺をうろついてる地縛霊に気まぐれで些細な親切をして大感謝されたことから「本当は私にできることがあったんじゃないか」と自身を見つめ直し刺殺光宗事件の解決に乗り出し成功。最終的にオダギリの紹介で母親と再会する。母親は死んでいて、しかしエライザが霊をみえる力があったことで再会がかなったということ、そしてオダギリにも母親にも祖母にも同じ力があったことが分かり、力があってもいいということ、孤独じゃないんだいうことで自分を受け入れてFinish!
( ;∀;) イイハナシダナー
地縛霊ものとしては最終的になんか感動させて除霊してめでたしめでたしとなりがちだけど、この作品はあえてそこに踏み込まない誠実さがある。まぁ、パンクロッカーのキミヒコの残されたデモテープをエライザがレコード会社に送った結果認められて成仏しちゃう展開はあるんだけどこれは他人を拒否していたのアグレッシブな誠意の成就だということでご愛敬。
刺殺された光宗は今でも同じ部屋で次に越してきたイケメンに取り憑いたろうとしてるし、学芸会へ向かう途中で交通事故で死んだカニの服装をしたガキもずっとはしゃいだままだし。ちなみにこのガキは学芸会で猿蟹合戦をやる予定で、そのカニ役が潰れて死んだってのもアレだし、最終的にとある事件の解決にその猿蟹合戦が生きてくる展開はめちゃくちゃ無理やりでベタだけどまぁ本筋ではないしな。必然性頑張ったのかなと苦笑い。
後は自殺パンクロッカー編と刺殺OL編に大まかには分かれてるんだけど、エライザがデモテープを持ってきてしまったことでそれに憑いてきたパンクロッカーと光宗が邂逅して地縛霊同士気が合ってなんか仲良くなっちゃう展開は面白くてよかった。
あえて苦言を呈するならテーマ先行で登場人物の行動と思考が常に前のめりなので常にこっちが予想しているより半歩早くてつんのめる感じがあるなっていうのとあとはまぁ起きることがすげー地味なので緩急に弱いというところ。