2時間以内の返品を本気で考えた初めてのタイトルになっていたはずだからだ。
自分の溜飲を下げるためだけにこのしょうもない長文を書いている。
内容としては、ツクールMZ製のごく一般的・平均的な一本道ノベル+ミニゲーム。
まあ話の筋は普通に面白いけど、面白いのはARG的にお出しされる業界裏話が露悪的だからで、特にゲーム性が面白いとか、ミニゲームが歯ごたえあるとか、そういうことはない。
ミニゲームパートからノベルパートに遷移する方法を探る辺りに少しゲーム性があるくらいだ。
だったらそこにフォーカスして20面くらい出してくれたほうがまだよかった。
エピローグを見るためには、ノベルパートとは直接関係ないポイントをクリックして得られる情報の中にあるパス群を探し、所定の場所で入力する必要がある。
それ以外に分岐も何もなく、ただただパスを探してノベルを周回する作業が発生する。
勘の良いプレイヤー、あるいは全てを隅々まで調べないと気がすまないプレイヤーなら一周で済ませられるだろうが、ちゃんと見つけにくい仕掛けも意図的に仕掛けられている。
表示速度がややゆっくりで、かつ速度変更できるコンフィグ画面もないので、イライラして連打しているとクリックポイントに気付いても触る前に次の画面に進んでしまう事故が発生する。
なぜイライラするのか、というともう一点、クリックポイントを探すべきノベルパートに行くためには、必ずミニゲームパートをやらなければいけないからだ。
このミニゲームパートが、クリアしてもクリア済みステージをスキップできないし、一応加速も出来るようだが大して早くならない。
前のステージにも任意で戻ることが出来ず、通過済みステージをリプレイ(し、そのシーンから遷移するノベルパートを再読)するためには、全5ステージのミニゲームを一度最後まで完走して、その後に表示されるステージセレクト画面に移動しなければいけない。
つまり、一つでも見落としたが最後、スキップできない5ステージを、ノベルパートに移行するフラグを踏まないよう注意しながら最後までクリアし、そこからまた任意のステージを選んで戻るということを繰り返しプレイしなければならない。
このミニゲームは作中で「嫌々作らされたクソゲー」ということになっているが、いくらクソゲーという体だからって本当にクソ仕様でお出しするバカがあるか。
そしてこのミニゲーム、「当時のPCゲーの再現」という側面も持っていて、その点においてグラフィック・ボイス共に非常に秀逸なのだが(一度何某かの情報サイトで見ることをおすすめする、買うのはおすすめしない)、その秀逸さ故に何度も見せられるとだんだんしんどくなってくる。
今の時代にまだこんなしんどい声色できる人いるんだ…と最初は笑ったが、後々幾度となく頭を抱える羽目になった。
令和やぞ。令和にコンフィグ画面無しで有償リリースってしていいんだ。
考えれば怪しい部分はいくつかあって、その中の一つに「SEにツクールMZデフォルト決定音が使われている」というのがあった。
これの何がいけないのかというと、ツクールMZのデフォルト決定音というのは由緒正しいSE素材で、古くはツクール2000でもRTPに採用されている、親の声より聞いたあまり音質の良くないSE素材にあたる(XP頃に一度不採用になったが、その後VXかVXAceあたりで復活したと記憶している)
個人的な持論として、こだわりのあるゲーム制作者であれば、まず効果音を独自のものにするのは最初の変更箇所の一つに数えられるものだと考えているのだが、もうとにかく好きでこのSE以外決定音に使うつもりは一切ない!だとか、何らかの意図なくツクールデフォルト決定音を採用している辺りで、このゲームに対してどのくらいこだわりをもって作られているのか、ある程度察するべきだった。
チープさの演出にしたってもうちょっとなんか、なんかあるだろ……!
当時の美少女PCゲーってもっとこう、ぷにぷにしたかわいいSEとかじゃないのか……!
ツクール感をほぼ感じさせない作り込みで、常に背景のどこかしらに動きがあり、緊迫したシーンを盛り上げ飽きさせない仕掛けになっている。
それだけに、僅かなシーンで採用されているツクールMZデフォルトのマップ画面がチープさを際立たせている。
ぶつかるだけでイベントが発生するキャラクターが狭いマップに詰め込まれているせいで操作性も最悪。
そういうシーンといえばそうなんだけど、作中人物に対しての理不尽をプレイヤーへの理不尽と同一化するな。
エンディングには申し訳程度に取ってつけたようなトリックがあったりするが、いきなりの上に薄すぎてそっかぁ…としかならなかった。
それをやりたいなら最初から匂わせておいて、最後に「やっぱりね!」ってプレイヤーに思わせてくれよ。頼むよ。
こんな見えてる地雷になぜ引っかかったのかというと、PRに限りなく力が入っていたからだ。
イベント出店時のブースは見栄えするように作られており、SNSも活発で非常に力を込めて制作していることのアピールを繰り返し行っていた。
あるイベントでは持ち歩き用のタイトル入りショッパーを配布するなど、もうお誕生日壁席大手サークルみたいな動きを堂々としていたからだ。
だから、「これはインディーの中でも触っておいたほうがいいタイトルなのかな……」という気分にさせられた。
これがPRの力であり、人間は簡単に広告で騙されるという愚かさの証明になっている。
みんな同じような感想を抱えているのか、それともARGとしての今後の展開を期待して口を噤んでいるのかは分からない。
総じて、ARGで、人間関係のドロドロがテーマで、こんな凡作に収めることが出来るのか。という驚きが強い。
ゲーム中から見つけられるXの関連アカウントも、思わせぶりなPOSTと写真がいくつか上がっているだけで、特に動きは見られない。
いったい何がしたかったのか、それとも今後大きな動きがあるのか。それを期待する熱はとうに失われている。
おそらく、自分自身はこの制作陣のゲームは二度と買わないと思うし、なんならパブリッシャーの今後の動きも全てスルーしてしまいたい考えになっている。
そして問題だと思うのは、「インディーゲー売りたかったらイベント出展!ウィッシュリスト数稼ぎ!」と声高に叫ばれている中、自分は「イベントに力入れてるタイトルは広告詐欺なんちゃうか??」という疑念を抱いてしまったことだ。
インディーゲーム自体がそろそろ、面白い奴が面白いことをやっている時期が過ぎて、面白くない奴が面白い奴の真似事をし始めたのか……?という疑問を抱く。某ニコニコ動画で何度も見た懐かしい流れだ。もうこの後は全く面白くもない有象無象が荒らして情報商材屋が暴れてスパムとAIにまみれ、面白い奴は別のところでまた別のことを始めるんだろうか。