真ん中の弟と真冬の夜、灯油のファンヒーターの奥で揺らめく青い炎を一緒に眺めていて、彼が手を突っ込むことを止めなかったこと
熱いと気づいた弟が手を引っ込める際に私が彼の腕を持って反射的に捻ってしまったこと
文字通り火がついたように泣く弟に気づいた父と母が大慌てでストーブから手を引っ張り出し爛れた皮膚を見て、母が泣きながら病院に行かなきゃと言ったこと
パジャマの上にとりあえず上着を被せられ私を担いだ父が大急ぎで4階から階段を駆け下り車に走ったこと
ひどく泣く弟と涙声の母としかめっつらの父を横目に窓から夜の街を眺めてうっすら綺麗だと、なんと滅多にない外出だと思ったこと
後日、父がそのストーブを蹴り飛ばし、これが悪いんだとボコボコにして廃品回収に出したこと
幸い、処置も良かったようで来年で真ん中の弟は30歳になるがどこにも傷は残っていない、綺麗な手をした彼は笑ってそんなことあったんだと母の昔話に相槌を打つ
母に覚えてるよね?怖かったでしょと言われて、私は、覚えてるよ怖かったねと笑う
彼はその右手で今年公認会計士の試験に受かった、おめでとう本当におめでとう、私はずっと思い出す、ファンヒーターの青い炎、当時2歳の彼と5歳の私、夜中に猛スピードで病院へ向かう父の険しい横顔と母の頬をはらはらと流れる涙、車窓に流れてゆくクリスマス前のイルミネーション
おめでとうゆうすけ、その右手で姉ちゃんのこと殴ってよとか死んでも言わないけど、本当におめでとう、姉ちゃん仕事抜け出して官報走って買いに行ったよ、嬉しいよ本当に嬉しいよ、健やかに幸あれよ
再投稿だね!がんばれ〜!