食べ物を一片たりとも無駄にしない完璧超人がこんなに多かったとは驚きだ。
失敗料理のひとつやふたつも作らず、常に理想のレシピ通りに生きている人たちがこんなに世の中に潜んでいたとは。
もしかするとあやつらは生まれた瞬間から最高火力と絶妙な塩加減を身につけていたのかもしれない。
凡人には理解しがたい高みにいるらしい。
料理で失敗したときに発生する食材ロスを重大犯罪のように扱う姿勢には頭が下がる。
チャレンジしようとした他人を瞬時に断罪できる能力、そして一切の試行錯誤を認めない強靭なメンタル。
もう少し別の分野に使えば世界平和に貢献できそうなのに、なぜかキッチン周辺にだけ全力を注いでいる。
普通ならそこで学んで次に活かすものだけれど、アンチ食べ物粗末派の視点では学びなど一切不要なのだ。
失敗を恐れて何もやらない生活を勧めてくれるあたり、挑戦心という概念そのものが存在しないようだ。
完璧さを求めるのは勝手にすればいいが、その基準を他人に押しつけて挑戦する意欲を削っていく姿を見ていると、もはや食材よりも知能の方が節約されすぎている気になっていく。
多少の失敗すら許容できない、日本社会を象徴したような世界観。