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2025-11-14

anond:20251113231144

その一文を読み終えて、僕は思わず本を閉じた。

図書館蛍光灯がページの端を白く照らし、埃の舞う光の筋がまるで旅の道筋みたいに見えた。

ふと、隣の棚に目をやると、同じシリーズの別冊が並んでいる。

イタリアスペインギリシャ……どれも新品みたいにピカピカだ。

でも、僕が手に持ってるこの一冊だけが、まるで生きてるみたいに息づいてる。

「貸出カード、見てみようかな」

裏表紙ポケット差しまれカードをそっと引き抜く。

一番上の署名は、10年前のもの

それから、8年前、5年前、3年前……

そして去年、誰かがまた借りて、返却期限を1週間オーバーしてる。

最後の借り主の名前は、消しゴムで消されてる。

でも、鉛筆の跡がうっすら残ってる。

「M.」から始まる名前だ。

もしかして、あの「Have a great trip too!」を書いた人?

僕はカードの裏に、自分名前を書いた。

そして、そっと本を棚に戻す。

いや、待てよ。

今日は借りてみよう。

カウンターのおばちゃん差し出すと、

「あら、この本、久しぶりに借りる人いるのね。人気なかったのに」

って笑われた。

家に帰って、リュックにそっと忍ばせる。

来月、初めての海外一人旅

行き先は、この本の国。

ページを開くと、誰かの書き込みがまた一つ増えてた。

僕の知らない駅の名前と、「ここ、最高だった」の一言

……あれ? これ、僕が書いた覚えはない。

まさか図書館に戻す前に、誰かがまた借りてた?

いや、違う。

これは、未来の僕へのメッセージだ。

僕はペンを取り出して、空白のページに書いた。

Mさんありがとう

 あなたが残してくれた道、ちゃんと歩いてきます

 そして、次の誰かにちゃんバトンします。」

本を閉じて、リュックしまう。

重さは、ただの紙とインクの重さじゃない。

誰かの想いと、僕のこれからの旅が、ぎゅっと詰まった重さだ。

明日の朝、空港でこの本を開いたら、

また新しい書き込みが増えてるかもしれない。

誰かが、僕の知らない間に、僕の旅に加わってくれてるかもしれない。

旅って、

一人で始まって、

たくさんの人と繋がって、

また一人に戻って、

でも、ずっと誰かと一緒にいることなんだ。

「Have a great trip too!」

――僕も、誰かにそう言える旅をしよう。

Permalink |記事への反応(0) | 12:43

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記事への反応 -
  • 図書館に外国の旅行案内本があってさ、何となく手にとって見てみたんだけど使用感がすごい。 ずいぶんくたびれてるし、おまけにちょっと書き込みまである。チェックアウトの時間…...

    • その一文を読み終えて、僕は思わず本を閉じた。 図書館の蛍光灯がページの端を白く照らし、埃の舞う光の筋がまるで旅の道筋みたいに見えた。 ふと、隣の棚に目をやると、同じシリ...

    • 外国の「旅行案内本」 「外国の旅行」案内本

    • 図書館の本を持っていったのではなく持って帰ってきた本を寄贈した可能性もある。 ほとんどの場合に寄贈は断られると思うけど地元の有力者が亡くなったときとかにその蔵書の行き場...

    • 海外旅行のガイドブックなんて、毎年改定版がでるし、そもそも1回しか読まないし、図書館で借りれば十分だと思う。 なんなら図書館で一番借りるべき本が旅行のガイドブックだと思...

    • 図書館の本を持ってったんやない、持ってった本を図書館に寄付したんやで。

    • まじで?犯罪者じゃん

    • …煮てサ、焼いてサ、喰ってサ、はてサ

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