テレビアニメ『グノーシア』は、原作ゲームより情報量を減らして分かりやすくしたつもりで逆に作品の世界観に納得するために必要な情報が足りていないという話がしたい。
同タイトルの原作ゲームを夢中になってプレイしたファンである者として、アニメ版には納得できない点が多く無限に文句を言いたくなってしまうため、今日ここに考えをまとめて終わらせたいと思う。
当方を原作厨と罵って議論を終了させたいならそれで結構だが、原作と違うからダメ!という感情論ではなく、SF的要素を備えた当該作品の舞台設定に対して前提条件を一つ変更することで起きる影響までが正しく考慮されておらず、それに伴って劇中で開示されるべき情報が受け取り手まで共有されていないためアニメ単体として作品が論理的に成立していない、という批判が本投稿の本質である。
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合わせて、作品の舞台である宇宙船を人狼ゲームにおける「夜」にするための舞台装置である「空間転移」の設定について。
・原作では『船が空間転移をすればその度にグノーシアが人間を一人消すリスクを伴うが、空間転移完了時にしか船内のグノーシア反応を検知できないため、議論→コールドスリープ(以下、CS)→空間転移をセットで繰り返して、最終的にグノーシアの排除を目指す』(※そのために船の航路は、可能な限り多くの空間転移を繰り返してたどり着くことのできる目的地が設定される)という理屈が説明されていたところ、
・アニメ版ではCS完了後にあらためて船内のグノーシア反応が検知されるかどうかという判定が行われており、それはつまり空間転移の実行時ではない、乗員が活動可能な環境下で、常時「船内のグノーシア反応」を検知できる…ということになっている。(※その判定を更新されるのが「CS完了後」のタイミングでなければならない必然性が存在するのだろうか? )
・原作の世界観では「空間転移完了時の船内のグノーシア反応」が船側の、グノーシアの所在を絞り込むことのできる技術的な限界であるという定義をとるのは自然だ。(検出の必須条件となる「空間転移」という現象が及ぶ対象は「船全体」であるため、それが検出範囲の限界と認識できる)
しかしアニメ版の世界観では「グノーシア反応」を検知できる範囲が「船内全域」にしか及ばない点の不自然さを指摘できる。
・「緊急事態のため船の機能が制限されている」という説明は原作でも存在しており、アニメ内でも描写されたが、すでに提示されたような技術が存在する条件下で、グノーシア対策規定というものがLeViのシステムに組み込まれるほど一般化・周知されていることにも鑑みれば、緊急時に制限されることのない隔離された機能として、船にグノーシアを特定するための装置(グノーシア反応を検知できる範囲を「船内全域」よりも狭く絞り込めるような設備)が実装された上で運用されていてしかるべきだ。
・また、そのような設備がやはり技術的に不可能であるか、現状の『D.Q.O』には存在しなかったという限定的な条件を仮定しても、この環境において「船内」に含まれない範囲、すなわち「船外」は存在している。
原作ゲームを未プレイであるアニメ勢の感想に挙げられていた、"乗員一人ずつに宇宙服を着用させて「船外」に出し、その都度「船内」をスクリーニングすることによって誰がグノーシアかを判別することはできないのか?"という指摘が生まれたことは、要領を得ない突飛な発想のようでいて、じつは当然のことである。
(※アニメ内で描写のあったテザー無しのEVA作業用宇宙服で離れた後に再度帰艦できるような距離の範囲を「船内」「船外」とは判別することができない検知方法である、という可能性はある)
また、アニメ版の設定において、船内のグノーシア反応が確実に残っていると分かった状況で空間転移を実行する理由とは?(※原作においては複数のグノーシア反応が認められた場合にこの状況が発生することはある)
そういった状況下で、例えば議論が紛糾した末にCS判断の誤りが判明した後、投票結果に異論があった者の暴動を招く危険性や、確実に誰か一人が消されると分かったまま空間転移を実行される乗員の心理的負荷等をLeViが考慮しない理由は?
(※アニメ版での表現では投票を行う際の手続きが原作と比較してかなり厳重であり、毎回「拒否権はありません」との警告と承認があることから結果に異議を唱えたい者の暴動対策は取られている可能性。)
・以上の疑問点が解消できるような状況を説明されない限り、アニメ版の舞台装置は論理的に納得できる情報が不足していると言える。
・我々の世界にはまだ確立されていない技術である「星間航行船の空間転移」というものがどのような事象であるかは原作でも詳細な説明はなく、その情報が不足しているために判断がつかないことであるが、原作での「グノーシア対策規定としてなるべく多く空間転移を行う」という船の挙動を、前提の異なったアニメ版の世界にそのまま適用されていることは、全く合理的判断であるように見えない。
・原作では「調査対象者の空間転移時の次元波を解析してグノーシアかどうかを判断できる」ため、空間転移時のグノーシアの活動による犠牲者が出るという危険を冒してでも空間転移が明けないと調査結果が出ないという設定に対し、
・アニメ版では「時間がかかるため調査結果がわかるのは空間転移後」という表現がされており、つまりアニメ版におけるエンジニアは船が空間転移を行うことでグノーシアに襲撃の機会を与えずとも"時間をかければ"グノーシアを特定することが技術的に可能ということだ。
(※「時間がかかる」と曖昧に表現された部分の実態は気が遠くなるほどの膨大な時間を必要とするもので、空間転移によって乗員の体感時間にしてそれを大幅に短縮するような効果がある可能性。相対性理論…?)
・以上の前提に基づいて判断すれば、アニメ版の世界ではなぜ"なるべく空間転移をせずに時間を稼ぐこと"がグノーシア対策規定の基本になっていないのか、どうしても空間転移が実行されなければならない理由があるのであればその情報が開示されなければ、乗員としてもこの状況に納得できる判断材料に欠けている。
論理的な思考の持ち主であるラキオが、その点を指摘しないのは不自然。
・『アニメ作品』に対する個人的な所感として、"そうなってないのは何か理由があるんだろうな"と考察することも可能であるが、この物語の舞台設定の状況が、こういった前提条件の世界観の中で最も一般的な、大多数の人間が納得できる合理的判断として成立しているものと理解するために"整合性のつく要因を勝手に推測するしかない"のでは、あまりにも粗末である。
・原作の設定にもなんとなく推測するしかない要素はある、エンジニアは次元波を云々も小難しいこと言ってSFっぽくしてるだけ、とかいえばそうなんだけど、論点がズレるのでそれは置いといて。
わかりやすいテレビアニメ『グノーシア』をつくるためにはそのように舞台上の様々な制約を読み手に共有させるSF的要素は"ノイズ"であり、
SFらしく小難しい舞台装置の論理的な整合性を減らしてでも、あえて原作では排除されていた「人狼」の表現を再度劇中に持ち込むことが作品をわかりやすくするために必要な判断だったんだ、と言う主張がある。
実際、アニメ版の制作方針としてそうなのだろうと思うし、いまさらそのような制作方針の根幹について、今後のアニメ展開で改訂される可能性は皆無と言える。
・"なら僕はもう……何も言えません……"と言うしかないのだが、アニメ版が本当にわかりやすくなっているのかというと、それは甚だ疑問である。
私だって粗探しをしていてこんな結論になった訳ではない。"原作とは違うんだな"と思ったから、検証を進めていただけだ。
そして、上述のような疑問や指摘が浮かび、ついぞ解消しそうにもない。
理解しようと思ったのに、全然わからなかった。ましてや整合性のとれる理由は劇中で明かされておらず、各自推測しなければいけないとなれば、アニメ版が初見である視聴者にとっては"理解しがたい前提で、納得できないまま物語を押し進められている"という印象を抱くのも無理はないのだ。
・実際にアニメ勢で"この作品、設定ガバいな"といった感想が出された実例も観測した。
アニメ本編の情報だけで判断したらそらそうなるわ、という話だ。
・個人的に、この作品が好きだったのは"一人用の対COM人狼ゲームシミュレーター"から発展させて「人狼」の要素を抜いてSFの世界観に物語を再構築しているという部分であったために、アニメ版において世界観がこうも変更されている点について"好きなものを否定されて悲しい…"という感情になっているのだと思われる。
アニメ版だけの論理性に欠いた表現のためアニメから触れた新規に原作ごと作品の価値が誤解されるのも遺憾であるが、もはやしかたない。
OK、原作ゲーム『グノーシア』はSF人狼SF濃いめ、テレビアニメ『グノーシア』はSF人狼のSF抜き、別ジャンルの別作品としてそれぞれのファンである我々は住み分けていこうじゃないか。
みすみすアニオリの改悪を許すなんて歯がゆいことだ。ああ歯がゆい。
本当に、君達にはガッカリだ!
アニメ面白いのに楽しめなくてかわいそう
「面白い」の定義があなたと
論理的整合性というなら全てのSFは破綻するぞ 「あるSF内の法則の存在を仮定した時にその宇宙が存在可能か」というテストにパスしないからな
そういうことではありません
その説のソース知りたい