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< anond:20251103064123 |anond:20251104133218 >

2025-11-04

あの日、俺はただの小さな歯車だった。不動産会社の名を借りた裏社会マネー洗浄機構、その中で帳簿をいじるのが俺の仕事だった。何年も続けるうちに、社長専務も、誰がどこにいくら隠してるか全部見えてきた。だからちょっと拝借してもバレやしないと思ってたんだ。

だが、甘かった。奴らの金は、血より重い。

  

気づかれた夜から地獄が始まった。車に追われ、尾行され、見知らぬ顔の男たちに家を囲まれた。逃げるしかなかった。ビル屋上から飛び降りた瞬間、死を覚悟した。だが、落ちなかった。空気が、俺を押し上げた。まるで、何かが目を覚ましたみたいに。

  

それからだ。相手の居場所が頭に浮かぶようになった。銃を持った追手の背後の動きが、まるでスローモーションのように見えた。俺は走り続けた。新宿の雑踏、川崎倉庫街、地方ラブホテル、どこへ行っても、すぐに見つかったが、もう恐れはなかった。

彼らが俺を狩るたび、俺の力は強くなっていった。

  

最後に奴らの会議室へ乗り込んだとき役員たちは顔を真っ青にしていた。机の上に並ぶ封筒裏金行方を隠すための書類の山。俺はそれを一瞬で吹き飛ばした。風も触れていないのに、全てが宙に舞い、天井から降る紙吹雪みたいに白く渦を巻いた。

「お前たちはもう終わりだ」

そう告げたとき、誰も口を開けなかった。

  

あれからしばらく経つ。奴らは警察に捕まり、俺の名はどこにも出ていない。世間的には、ただの汚職事件ひとつだ。だが俺は知っている。この力が目覚めたのは偶然じゃない。あの金を奪った瞬間、俺は人間の枠を超えたんだ。

  

逃げる必要も、隠れる必要ももうない。

今は、風が教えてくれる。誰が嘘をつき、誰が裏切るか。

この街のすべてが、俺の掌の中にある。

Permalink |記事への反応(0) | 14:41

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