私たちは「禁断の場所」の観察を日課にした。妹は毎朝、学校に行く前に植木鉢を覗き込み、私は放課後、誰にも見つからないように裏庭へ急ぐ。そんなある日、私は庭の隅で、予想外の人物と鉢合わせした。
「何してるの?」
透き通るような声に振り向くと、そこに立っていたのは、あの「卵の素」をくれた少女、泉だった。彼女は、制服のスカートの裾を少し汚しながら、植木鉢を興味深そうに見つめている。私の心臓は、見つかってしまった焦りよりも、彼女がそこにいるという事実に、大きく脈打った。
泉はふわりと微笑んだ。「ふふ。知ってるわよ。私が『卵の素』をあげたんでしょう?」
彼女の目には、私と同じ種類の、好奇心と秘密を共有する喜びが宿っていた。私は、車の中で隣に座って以来、ずっと心の中で彼女を特別な存在として意識していたのだ。彼女の白い指が、そっと土に触れる。
「ねえ、これ、もし本当に生まれてきたら、私とあなたが、二人だけの親になるんだよ」
その言葉は、思春期の私にとって、あまりにも甘く、そして危うい響きを持っていた。エイリアンだとか、怪獣だとか、そんな恐ろしい想像が一瞬で吹き飛び、代わりに、泉と二人で何かを育て、秘密を守り続ける未来が、目の前に広がった。その瞬間、私の「秘密の実験」は、泉への、ほのかな恋へと姿を変えたのだった。彼女の指先が土を撫でる仕草に、私はどうしようもなく見惚れていた。
車の中で隣に座った少女から「卵の素」をもらって興奮していた それを部屋に持っていき、卵を作って妹の部屋で魔法の白濁液と混ぜながら、「この液体、エイリアンが生み出されそう...
透明な器の中で白濁液と混ざり合う「卵の素」は、淡い黄色を帯びた、なんとも言えない不気味な光を放っていた。泡立ちながら、ねっとりと互いに絡みつき、次第に均一な粘度の高い...
私たちは「禁断の場所」の観察を日課にした。妹は毎朝、学校に行く前に植木鉢を覗き込み、私は放課後、誰にも見つからないように裏庭へ急ぐ。そんなある日、私は庭の隅で、予想外...
数日後、植木鉢から異変が起こった。土の表面がひび割れ、そこから淡い光が漏れ始めたのだ。夜の裏庭で、泉と二人、膝をついてそれを見つめていた。光は、まるで夜空に瞬く星々を...
泉が微笑みながら私を見つめ、土を指でなぞる。 「私たち二人だけの世界か…いい響きだね。だったら、この世界を最高の味で満たそうよ」 泉はそう言って、バッグから小さな瓶を取...
裏庭でのマヨネーズグルメ実験は、私たちの新しい日常になった。ポテトチップスに、庭で採れたトマトに、泉がこっそり作ってきたオムレツに。エイリアン・ソースをかけた瞬間、世...
静岡へ行くことを決めたのは、泉の「世界一のソースには、世界一の食材が必要だ」という一言からだった。 「この『膜』は通信を遮断しただけで、物理的な移動を完全に止めたわけじ...
静岡でマグロとエイリアン・ソースの究極の燃料を補給した直後、私たちは「膜」を通して聞こえてくる、かすかな、しかし切実なニュースを受信した。 「速報! 山梨県民団が富士山...
極限まで身体能力を高めた私は、標高3776メートルの世界を遮断する膜の境界を突破し、富士山頂の占拠現場へと駆けつけた。山頂には、武骨な格好をした山梨県民団が、手作りのバリケ...
なんだこりゃ 令和の『吉里吉里人』か?😅