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2025-10-24

最初にそれを見たのは、海の底だった。

海底の砂に、まるで呼吸するようにひとつの膨らみがあった。

貝でも、泡でもない。

ただ、そこになにかがいた。

僕が近づくと、それはわずかに震えた。

遅れて、頭の中に声が届いた。

 

――おかえり。

意味は分からない。だが確かに声だった。

海流も音もないはずの場所で、僕の内側だけが振動していた。

やがて、その膨らみが少しだけ裂けた。

から無数の礫が零れ落ち、僕の足元に散らばった。

それぞれが、僕の心臓の音に合わせて鼓動していた。

まるで僕の生を模倣しているように。

――おかえり。

再び声が響いた。

けれど今度は、僕の口が勝手に動いた。

「……ただいま」

海は黙っていた。

けれど砂の一粒ひとつぶが、かすかに笑ったように見えた。

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