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< anond:20251008091036 |anond:20251008120737 >

2025-10-08

イラストレーター江口寿史トレス問題は、単なる一人の作家不祥事ではなく、クリエイティブ業界全体が抱える構造的な転換点を示していると思う。つまり、「人間が描いたか価値がある」「AI倫理的にグレー」という二項対立が、もはや崩壊しつつあるということだ。

これまで企業は、広告商品に使うビジュアル素材を人間クリエイターに依頼することで、“オリジナリティ”や“倫理的安全性”を担保してきた。だが今回の件のように、著名なプロでさえ他者作品を参照(あるいはトレス)してしま現実が露呈したことで、「人間クリーン」という幻想は完全に崩れた。むしろ人間の方が、意図的無意識的に他者成果物を混入させてしまリスクを常に孕んでいる。

その点、AIある意味で“透明”だ。学習データ出所を明示し、独自モデルを構築すれば、その生成プロセス管理できる。つまりクリーンであることをシステム的に保証できるわけだ。企業にとってリスク回避とコスト削減は常に最優先事項であり、「トレース疑惑がない」「著作権リスクがない」「修正が容易」という三拍子が揃うAI採用しない理由がなくなっていく。

さらに、倫理的観点からAI偏重は進む。人間作家感情政治的立場過去発言などで炎上リスクを背負うが、AIはその意味で“人格負債”を持たない。誰かの過去発言広告ブランドイメージを損なうリスクがないというだけで、企業にとってAIの方がはるか安全選択肢になる。

もちろん、AIモデル学習データ第三者著作物を含んでいるという問題は残る。しかし、今後は企業が自社でライセンスを取得したデータ群を用いて「独自AIモデル」を開発・運用する方向に進むだろう。クリーンAIを自社内で育てれば、法的にも倫理的にも“完全に自前”のクリエイティブが実現できる。実際、AdobeやCanvaなどはすでにこの方向に動いている。

皮肉なことに、「人間による創作不正」が「AIによる創作正当化」を後押ししているのが現状だ。江口寿史の件は、AI化の流れを加速させる象徴的な出来事になると思う。人間の手による“オリジナル”という神話はもう維持できない。これから時代は、「誰が描いたか」ではなく「どのように生成されたか」が価値判断の基準になるだろう。

AIが描いた絵が「安全」で、人間が描いた絵が「リスク」になる――そんな逆転の時代は、もうすぐそこまで来ていると思う。

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