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< ■ |anond:20250920164842 >

2025-09-20

この前私はちょっと洒落カフェ紅茶を飲んでたんだ。

テラス席に座って、風が髪をくすぐるのを感じながら一息ついてたら、ついウッカリ肘がテーブルに当たってカップがガシャーン

紅茶が白いテーブルクロスを伝って床にドパーッと流れ出した。

「あ゛あ゛あ゛あ゛!!」ってなるじゃん?

ところがだ、私が慌ててティッシュを探してるうちに、目の端に何かがチラチラ揺れてるのを感じたんだ。

見ると、床にこぼれた紅茶の水たまりの真ん中から、小さな光の粒がフワフワ集まってきて、気づけば全身キラキラ小人みたいなやつが立ってた。

あなた――飲んでいたのは金のコーヒーですか? 銀のコーヒーですか?」

おいおいおい、なんだこの展開は。金のコーヒー? 銀のコーヒー? 私は紅茶だよ、紅茶

「ち、違います紅茶です!」

そう答えた瞬間、妖精――いや、泉の妖精ってやつか?

そいつはめちゃくちゃ不満そうに眉をひそめて、ちっちゃい腕を組んだ。

こっち見上げながら、こんなことを言いやがったんだ。

「ハァ?紅茶? 紅茶など、魂の錆びを磨く術ではないわ!

「魂の錆びを磨く術?」

問い返す私を、妖精嘲笑うみたいにクルッと一回転してこう続けた。

「金のコーヒーは──希望を、銀のコーヒーは──絶望を、そして紅茶は──無邪気という幻想を宿すもの。だが無邪気は真実を映さぬ鏡。あなたの胸の奥で、何が渇望しているのかは、見せぬままだ!」

はあ!? 訳がわかんない。紅茶を飲んだだけなのに、なんで私の心を見透かされなきゃなんないのよ。

「だったらアンタ、私に何を望んでんのよ?」

妖精は少しだけ不敵に笑ってからひらりと空中で舞い上がり、テーブルの上に飛び移ってこう言った。

「それでも紅茶という虚飾を選んだあなたに告げる。今夜、月の影をすくい取る旅に出なさい。そして金と銀の杯を見つけし者のみが、本当の味を知るでしょう――」

――ああもう何言ってんのコイツは。旅になんて出ないっての!

シュワシュワした魔法の粉を振りかけるみたいに、妖精キラキラと輝きながら飛び去っていくのを見届けたあと、私はポカンと口を開けたまま紅茶をすすった。

あれ?紅茶を手に持ってる?

隣のテーブルマダムこちらを一瞬見たが何事もなかったように視線を戻した。

なんだか胸の中をコポコポと紅茶の気泡みたいな疑問が浮かんで、気づけば誰もいないテラスには、こぼれた紅茶の水たまりけがゆらゆら揺れていた。

やっぱり紅茶こぼれてるじゃん。

私は何食わぬ顔で、紅茶最後まで飲み切って何食わぬ顔で店を出て、何食わぬ顔で歩き出した。

まあ、こんなこともあるか。と切り替えて現実に集中することにした。

でも自分でもわかってる心の何処かで思ってるんだ。

あの妖精言葉──「無邪気という幻想」ってのが何を意味してるのか、本当は知りたいんじゃないかって。

Permalink |記事への反応(0) | 16:56

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