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< まなざしヤクザ |anond:20250919044350 >

2025-09-19

先週の水曜日、久々に電車を乗り間違えた。乗る予定だった快速に間に合わず、鈍行に飛び乗った瞬間、スマホがないことに気づいた。鞄の中をひっくり返しても出てこない。心臓がキュッとなったまま、僕はそのまま降車ボタンを握りしめた。

「終わった……」

そんな気分で座席に突っ伏していたら、隣のサラリーマンが「スマホ出しっぱなしだよ」と僕のスマホ差し出してくれた。自分ズボンポケットからスルリと落ちて、あのとき僕は絶望と救いを同時に味わった。

金曜日カフェ原稿を書こうと思って早めに家を出たのに、規約改定の通知メールに気を取られて、気づけば店内の電源コンセントには誰かのスマホが4台も占領していた。まるで現代寺院か何かかと思うほどの勢いで、人々はスマホを充電していた。僕は仕方なくスタバの横のコンビニコーヒーを買い直し、立ち飲み原稿を打った。

土曜日は久々に友人とオンライン飲み会を開いた。Zoomで顔を合わせた瞬間、「なんか肌が綺麗になった?」と言われて、30分でスキンケアの話を延々と聞かされた。結局、カメラ越しに高級クリーム通販サイトを3人で覗き込み、散財の予感で夜を終えた。

日曜日の夜、ベッドの枕元には充電器に繋がれたスマホが三つ並び、通知音がリレーのように響き渡った。僕はそれを全部サイレントにして、慌ただしく歯を磨いた。鏡の前で自分の顔をじっと見つめ、明日からまた乗り過ごさないようにと心に誓った。

最近の僕はこんな感じで、電波と通知に囲まれながら小さなドラマを繰り返している。平凡な日常のはずなのに、たまに訪れるほんの少しの異変が妙に心に残る。おそらく、これが僕という人間の「仕草」なんだろう、と思う。

そして火曜日。朝のカフェラテを買いに近所の自販機へ向かったら、100円玉が詰まって落ちてこない。自販機を揺すっている僕を、横を通り過ぎる小学生不思議そうに見つめていた。結局、お釣りレバーガチャガチャと引きながら、後ろに並ぶ人たちの視線背中に刺さるのを実感した。

同じ火曜日の夜には、久しぶりに夜風に当たろうとベランダへ出た。腕時計を忘れて外に出たことに気づいて、一瞬「時間なんてどうでもいいか」と思った。でも、空に浮かぶ月を見たら、何かを忘れていた自分を思い出した。たぶん、大切な約束だった。

水曜の昼下がり、オフィス自分の席に戻ると、机の上に見知らぬ封筒が置いてあった。開けてみると、先輩から差し入れの焼き菓子と「頑張れよ」とだけ書かれたメモが一枚。小さな包みと一言が、妙に心に沁みた。

そして今、また週末が近づいている。僕はスマホを手に取り、見慣れた通知アイコンを見つめたまま、ふと思う。「こんな些細な出来事が、いつか大袈裟物語になるのだろうか」と。カチャリロックをかけて、その疑問をそっと胸にしまい込んだ。

Permalink |記事への反応(2) | 05:11

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