20年ほど前のある日、私は(20年後の今でもそうしているように)自宅のガレージで洗車をしていました。
ちょうどシャワーの水で愛車をザバザバ流している時、大学生二人組がうちの前を通りかかりました(なぜ大学生とわかるかというと、我が町は学生街で、我が家の周囲は学生アパートだらけだからです)。
ふたりは道の我が家寄りを歩いてきたので、私は彼らに水がかからないように水を止めて通り過ぎるのを待っていなければなりませんでした。
彼らには私が車に水を浴びせていることは数十メートル手前から見えていたはずです。
幅員6メートル未満の狭い生活道路ですから、道の反対側に寄って私の洗車の邪魔をしないという選択も彼らにはあったと思います。少なくとも私ならそうします。しかしともかく彼らはそうしなかったようです。
私が洗車の手を止めて通過を待っているということをまったく気にも留めずに、彼らは談笑しながらチンタラと通り過ぎていきました。もし気に留めていたら多少は歩調を速めていたでしょう。
あの大学(という名の動物園)がこの町から消えてなくなってくれないかな、と思いながら私は洗車を再開しました。
しかしすぐに路上に何かが落ちていることに気づきました。たった今まではなかったものです。黒い男物の財布でした。あの学生のうちのどちらかが落としたのです。
あわてて拾い上げて学生たちの歩いていった方を見ると、彼らはちょうど4~50mほど先の角を曲がるところでした。よかった。
「おーい!」
と私が大声で呼びかけると、ふたりとも足を止めてこちらを振り返りました。よかった。気づいてくれた。
「おーい、財布を落としましたよー!」
と私は拾った財布を頭の上にかかげました。学生のうちのひとりが身体を探り、落としたことを確認したようです。
「ありがとうございまーす!」
数秒の沈黙が流れました。
学生は4~50m先に立ち止まったままです。
私は財布を頭の上にかかげたままです。
私は頭を振りながら4~50m先で待っている学生の元まで歩いて行き、黙って財布を渡して家に戻りました。
今でも後悔しています。
あの時財布を渡しになど行かずに、また元のように地面に置けばよかった。
すっとぼけて洗車を続けて30分か1時間くらい経ってから警察に電話して、おまわりさん家の前に財布が落ちていたから届けに行きますねと言って所定の手続きをするべきでしたね (完全...
なんでこっちが行かなあかんねんってなるよね 今でも後悔してしまう気持ちも分かる 俺にもそういうの何度かある 思い出して、悔しいーっ!!てなる