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< 車を二十年以上運転し... |anond:20250915074054 >

2025-09-15

石に刻まれぬ名

彼はひとりごとのように語った。

わたしの背は曲がり、足はしばしばつまずく。

それでも働きに行けと呼ばれるのだ。

なぜなら子らは少なく、若者は足りず、

空いた椅子を埋める者がいないからだ」

だがその声は笑みを含んでいた。

まるで自分必要とされることが、

まだ生きている理由を示す証のように。

けれど昼の光の下で、影は長くのび、

そこには痛みもともに刻まれていた。

落ちる鉄の破片や、崩れた足場が彼を試し、

そのたびに骨と肉が危うく裂けそうになった。

「働くとは祝福か、それとも罰か」

彼はまた同じ問いを繰り返す。

「もし祝福なら、なぜ多くの老いた者が

血を流し、倒れ、誰にも気づかれずに

消えるのか。

もし罰なら、なぜそれを背負うのは

この国の最も弱い者たちなのか」

そして彼はさらに続ける。

わたしの名は契約書の片隅にある。

だがそこに刻まれたのは、終わりの見えぬ

労働であり、正規の居場所ではなく、仮の影の

ような雇い入れである

問いは答えを持たず、

答えはまた問いを生む。

それでも彼は明日も歩み出すだろう。

椅子を埋めるために、あるいは

まだ誰かの記憶必要とされるために。

夕陽は赤く、彼の影を地に広げる。

そこには問いと答えとが重なり合い、

やがて沈黙けが残る。

Permalink |記事への反応(1) | 17:12

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記事への反応 -
  • 終わりの見えぬ労働でありながら、有期契約である事の歪さ。 すべての労働は「正しい努力には祝福がある」信仰が招く罰。

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