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< dorawii@執筆依頼募集中 |anond:20250912183352 >

2025-09-12

届かぬ声

ある国で、人の思いを運ぶ者たちがいた。

彼らは朝ごとに封を抱え、

夕ごとに道を戻り、

声を声へとつなぐ役を担っていた。

けれどある時から、幾千の便りは行方を失った。

あるものは途中で消え、

あるものは誰にも触れられぬまま埋もれ、

あるものは灰となって散った。

便りそのものは年々薄くなり、

かつてあふれた紙の波は静まり

運ぶ者の列もまた細くなっていった。

残された者はより多くを背負い、

ときに力尽き、

ときに声を手放してしまった。

門を守る者は言った。

「すべてを告げることはできぬ

その言葉は、差し出した者を沈黙の中に残した。

彼らは知り得なかった。

託した声が、相手に届かなかったことを。

だが、本当に問うべきはここにある。

――なぜ声を運ぶ者が、それを捨てたのか。

重さに耐えられなかったのか。

心が疲れ果てたのか。

あるいは、その沈黙こそが彼ら自身

叫びだったのか。

声を運ぶ道は国の血脈である

そこに澱みが生じれば、

やがて誰の声も届かなくなる。

Permalink |記事への反応(1) | 18:39

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