あるとき旅人が、
神殿の柱に文字を刻んだ。
それは名でもなく祈りでもなく、
ただ己の痕を残そうとする線であった。
人々は集まり、憤り、
「ここは永き時を支えてきた柱だ。
神々の影を受けて立つものに、
軽き爪跡を許してはならぬ」と叫んだ。
けれど老いた者はつぶやいた。
「柱は傷を負ってもなお立ち、
陽と雨を受け続けるだろう。
だが我らの心の方が、
より深い傷を負ってはいないか」
柱は黙して、
ただ大地の上に影を落とした。
その影の中で人々は、
声を潜め、己の内を見つめた。
Permalink |記事への反応(1) | 17:17
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ここのところなんか一般的なものを 文学的に?ミステリアスに?書こうとしてるのずっとやってるけど 1個もしっくり来んね