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2025-08-17

ルー・リードルー・リード詩集」(河出書房新社

経歴

ルー・リード(1942-2013)は、ロックミュージシャンシンガーソングライターギタリスト)。

ニューヨーク郊外会計士を営む実家に生まれ、シラキュー大学では英米文学を専攻し、伝説的な作家デルモア・シュワルツ師事しながら、ギターを持ち、B級レコード会社のために流行にのったヒットソングパクリのような曲を提供していた。

この頃、同性愛(極度のホームシックによる鬱症状という説もある)治療のために家族の手配で電気ショック治療を受けさせられる。

1964年伝説ロックバンド「ヴェルヴェットアンダーグラウンド」のメンバーとしてデビューし、ショッキング歌詞前衛的な演奏カルト的人気を博した。

1970年代にはソロに転じ、前半はデヴィッドボウイプロデュースした「トランスフォーマー」で、グラムロック代表的ミュージシャンとして活躍した。お笑い芸人HG」のルックスはこの時期の彼に影響を受けている。

徐々に黒人音楽に傾倒し70年代後半はドンチェリーらと組んでフリージャズファンクラップのような歌が合体した奇妙な作品を出し、軽い混迷期に入った。

80年代以降はシンプルな4ピースギター×2,ベースドラム)の骨太演奏に語りのようなモノトーンな歌い方を乗せる方法論が定着し、「ブルーマスク」「ニューヨーク」などとっつきづらいがくせになる名盤を作った。

その後セールスは低迷し、本人も70年代後半のような実験的・音響的な方向に傾倒し、2000年代中盤以降新作はリリースされず、2011年に突然、スラッシュメタル大御所メタリカと共作アルバム「ルル」を作ったが、長尺でラフ演奏メロディほとんどない歌声が乗る(しか一曲が長い)作品は、特にメタリカファンから酷評された。2013年肝臓癌で死去。

作品紹介

この詩集生前に発表された唯一の詩集(多分)で、彼の歌詞と、雑誌に発表した詩・記事からなる。

詩の魅力

ボブディランのような多義性・はぐらかしや、レナードコーエンのような崇高さとは異なり、ルー・リード歌詞は明確、即物的客観的で、感情を乗せない、観察者的な視点が特徴である言葉遊びも少ない。

テーマ

テーマショッキングものが多いが、それが詩の構造精神にまで侵食せず、あくま象徴として機能しているのが魅力で、それゆえ、声を張らなくても、メロディを工夫しなくても(楽曲ほとんどが2~3コードで作られている)、演奏を盛り上げなくても、聞き手に迫る。

薬物

代表作「ヘロイン」は文字通りヘロインについて歌った作品であり

ヘロイン/ぼくの死であれ/ヘロイン/ぼくの女房でぼくの人生

と、その表現は率直で容赦ない。

ただ、ヘロイン自体の直接的・具体的な描写はなく、これは読み手聞き手)には、自分愛着をもち、人生代替となる「何か」と置き換え可能普遍性を持つ。

恋愛

1970年代中盤の名盤ベルリン」、「悲しい歌」の歌詞には

「ぼくは彼女スコットランド女王メリーだと思った/ものすごく努力したのに/まったくの勘違いだとわかっただけ」

と、ここだけ読むと幼稚なほどロマンチック失恋の歌なのだが、最後

「他のやつなら彼女の両腕を折ったことだろう」

と突然血なまぐさくなる。

家族

一見強面・ハードな印象のある作者だが、薬物以外に拘りがあるのが「家族」で、例えば、

「おふくろに恋人ができた」という歌は、

「おふくろに恋人ができた/昨日やつに会ってきた/おふくろが新しい人生の1ページを始める/やつとの関係が早く終わってほしい」

とあるルー・リード44歳のとき作品である

「妹へ」という歌は

「元気が無いって自分でもわかっている/このところ調子が良くないからな/でも信じてくれ/ぜんぶおれのせいだ/おれはずっと自分可愛い妹を愛してきた」

ストレート愛情を歌っている(妻を歌うときにこのような率直さはない)。

自殺

79年のアルバム「ザ・ベルズ」は控えめに言っても駄作だが、最終2曲が秀逸で、

「おれは家業なんていらない/あんたが死んだってそんなもの継ぎたくない」

「パパ/こうやって訪ねたのは間違いだった」

と歌う「家族」ルー・リード父親を憎む発言を繰り返し、生前最後インタビューでも「親父はオレにそんなクソ(注:ギターのこと)はよこさなかった」で締めた。)

に続き、

「宙を舞い/体をつなぎとめるものもなく/宙を舞い/膝から地面に落ちた時/パラシュートなしで公演するのは/あまりかっこ良いものではなかった」

と夜のブロードウェイでの飛び降り自殺を描く「鐘(The Bells)」で終える。

死を選び家族に別れを告げた遺書のようである

好きな理由

露悪的ではあるが、情緒に頼るところはなく、自分のことを歌っているようでもどこか第三者的目線を感じる。その透徹したところが魅力で、苦しさややるせなさを抱えていても、読むと「ふわっと」自分から離れられる不思議な癒やしが感じられる。

自分気持ちを抑えられないほど悲しいときや辛いときに読むと、不思議浄化作用を得られる。

ユーモア

自分が好きな歌詞は、本当に悪趣味なのだが、「黒人になりたい」という歌で、

黒人になりたい/ナチュラルリズムを身につけて/6メートル先まで精液をとばし/ユダヤ人のやつらを痛めつけてやる」

という、人によっては噴飯もの歌詞だが、リズムの良さと話題の飛躍に、どこか英雄に憧れるおとぎ話めいたユーモアがある。

そして、ルー・リードユダヤ系アメリカ人であることを念頭に置くと(そして、本人がそのことを歌で一切明かさないことを含めると)、この人の自虐性とユーモア、という側面も見えてくる。

読み手聞き手によって評価は異なるが、自分にとっては、「毒」を浄化してくれる「毒」(=解毒剤)だと思います

以上

参考資料

書影

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309257501/

(楽曲)

(heroin)

https://www.youtube.com/watch?v=yN-EZW0Plsg

(mama’sgot a lover)

https://www.youtube.com/watch?v=mEuShdchzkk

(families)

https://www.youtube.com/watch?v=JXbu4z2kc6s

(I wanna be black)

https://www.youtube.com/watch?v=H-ksg_ZVn8s

(sad song)

https://www.youtube.com/watch?v=QG_ooIR0DTY

(littlesister)

https://www.youtube.com/watch?v=ZbOG-2ahx4w

(the bells)

https://www.youtube.com/watch?v=9tS1wCEzOTk

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