“レーニンはこう語ったと伝えられている。資本主義を破壊する最善の方法は、通貨を堕落させることだと。政府はインフレを継続することで、密かに、気づかれることなく、国民の富のうち、かなりの部分を吸収できる。この方法を使えば、国民の富を吸収できるだけでなく、恣意的に没収できる。その過程で、多くの国民は貧しくなるが、一部の国民は逆に豊かになる。このように富が恣意的に再分配されるために、既存の富の分配の安全性が脅かされるうえ、既存の富の分配の公平さが揺らぐことになる。”
これはケインズの「説得論集」からの引用である。最初の2文はあまりにも有名だが、次文以下にあるようにわが国でもインフレは国民を犠牲にするかたちで、税収の増加をもたらし、また低所得者を中心に生活苦を招き、一方富裕者を富ませ格差を拡大させている。このようにインフレは通常、経済のみならず社会を悪化させる。だがわが国では、デフレ脱却を旗頭にインフレが待望され、最近では「物価と賃金の好循環」が唱えられ、インフレは経済を活性化するとの議論がなされている。
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