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2025-07-12

「〇〇強」「〇〇弱」はどこまでの範囲を指すのか?

最近、少し話題になった「〇〇強」「〇〇弱」の話。

「一時間強と一時間弱についての解釈」について正解と間違えの図を描いたら確かに間違えているヒトはいると気付く、扇風機の強弱で勘違いするのかも - Togetter [トゥギャッター]

「5分弱煮るはどういう意味か?」というアンケートの結果を受けて白ごはん.comでは今後「5分弱」「大さじ1弱」といった表現は使わないことにした - Togetter [トゥギャッター]

「5分弱」が「5分よりわずかに少ない」と理解していたとしても、じゃあ実際には何分なんだよ、と多くの人が思っていることだろう。

4分50秒くらいなのか、4分30秒はどうなのか、あるいは4分10秒などでも「5分弱」と言えるのか。

誤用誤用だとは言っても、我々はそもそも「正用」とされる意味すらも把握できていない。

辞書を引くと、たとえば大辞泉は、

じゃく【弱】

[接尾]数量を表す語に付いて、実際はその数よりも少し少ないことを表す。数の端数を切り上げたときに用いる。

とし、日本国語大辞典は、

じゃく【弱】

〘 接尾語 〙 ある数の端数を切り上げたとき、示す数よりは少し、不足があることをいうために、数字のあとに付けて用いる。⇔強。

としている。

どちらも「端数を切り上げたとき」と書いてある。

まり「〇〇強」「〇〇弱」を使うときには、前提として端数の切り捨て・切り上げがあるのだ。

小数丸めとき、端数を切り捨てたのか、それとも切り上げたのか、それを示すために、切り捨てたときは「強」を付け、切り上げたときは「弱」を付ける。

というのが「〇〇強」「〇〇弱」のもともとの使われ方である

先に計算があって初めて「〇〇強」「〇〇弱」が成り立つのである

いきなり「〇〇強」という答えだけを提示されても元となった計算はわからない。

「4分1秒」を「分」に丸めとき四捨五入して切り捨てたのであれば「4分強」だが、切り上げたのなら「5分弱」になる。

1000円弱って何円くらいだと思う?」などと質問されたら「有効数字は何桁ですか?四捨五入ですか?」と聞き返さなければならない。

よって「〇〇強」「〇〇弱」を範囲として捉えるのがそもそも誤りなのである

もちろん「1時間強」などと言うとき無意識に「四捨五入して分を切り捨てている」のだろうから、そういう意味では間違いではない。

だが、それを「1時間よりちょっと長い時間を表すのに1時間強と言うんだ」というような理解をしているのは原義に悖る。

バーチャルのじゃロリおじさんが示した図などは誤った解釈典型と言えるのではないか



追記明治時代にどう使われていたか調査も行ったが、おおむね辞書のとおりだったので当初は省略していた。何かの参考になるかもしれないので公開しておく。

明治17年田中矢徳『算術教科書』にはこう書かれている。

少数ノ略値を要スルトキ末位ノ数若シ五ニ満タザルトキハ棄テテ用ヒズ之ヲ強ト云フ

又末位ノ数若シ五ニ満ルトキハ進メテ上位ノ一トナス之ヲ弱ト云フ

まり四捨五入」の話である

四捨五入したとき、端数を切り捨てたのか、それとも切り上げたのか、それを示すために、切り捨てたときは「強」を付け、切り上げたときは「弱」を付ける、ということである

もうひとつ明治21年の『数学講義録』、この講師は前述の田中矢徳である

数の末に強と弱との文字を添へて、末位の数に過不足あることを示します、この強と申は末位の数のさきになほ微小なる数が付き添へりと申意にて、三分二厘一毛五糸…を三分二厘強と申たぐひなり、この弱と申は末位の数に不足ありと申意にて右の奇零を三分二厘二毛弱と申たぐひなり、扨てこの切り上ぐると切り捨つるとは、何程の数が界ジャと申たしかなる定則のあるわけにもあらず、ホンの算者の意まかせなれど、本邦には四捨五入と申古き習慣あれば、私の教科書は大抵これにならひて、四までは切り捨て五にみちたるときは切り上ぐることといたしました

とりあえず、切り上げ切り捨ての端数を示すのに「強」「弱」を使うのが本義であって、四捨五入限定するような書き方をしていたのは田中矢徳のオリジナル、ということだろうか?

また亜剌伯(アラビア)記数式にてしるしたる数には強を加号+にて示し、弱を減号−にて示します、たとへば五厘強を .05+ かやうにしるし、また五厘弱を .05- かやうにしるす類ひなり

「+」「−」の訳語として「強」「弱」を充てたということなのだろうか、それとも数字に「強」「弱」を付ける書き方はもとからあったのだろうか、この記述ではよくわからない。

ちょっと脱線するが、この田中徳さん慶應義塾同人社とあわせて「三大義塾」と称された「攻玉塾」というところの出身らしい。

「攻玉塾」は明治六大教育家の一人・近藤真琴設立したもので、田中矢徳・鈴木長利・竹貫登代多・浅越金次郎などの数学者・教育者を輩出したという。

なるほど、この頃の数学教科書の著者を見ると、彼らの名前散見される。

ともあれ、田中矢徳ばかりでは偏ってしまうので、攻玉塾生以外の説明も見たい。

明治19年、遠藤利貞『高科算術書』。

四捨セシ数ヲ強ト謂フ

五入セシ数ヲ弱ト謂フ


明治25年、薗村宗太郎算術講義要略』。

既ニ夥多ノ小数位ヲ得テ尚除外セザルトキハ(中略)最下位ノ右に(+)号ヲ記シ以テ尚残数アルコトヲ示スヘシ

若シ其次ニ得ヘキ数5若クハ5ヨリ大ナルトキハ末位ニ一ヲ加ヘ(−)ノ符号ヲ記スヘシ

是レ此小数ハ稍々多キニ過クルヲ示ス所以ナリ

而シテ末位ノ右ニ(+)ヲ記ストキハ読テ強ト云ヒ(−)号ヲ記ストキハ読テ弱ト云フ


明治27年『活用練習実業珠算』。商工協会とあるだけで著者はわからない。

無限小数の除法に於て末位の小数四以下なるときは其四を払ひ唯捨てて何々強と呼ひ末位の小数五以上なるときは其五以下を払ひ上位に一を加へ何々弱と呼ふへし之れを四捨五入の法と云ふ


概ね、田中矢徳の説明に準じて、四捨五入したときの端数を示すのに使われていた、ということでよさそうだ。

当時の計算実例も挙げる。

明治13年の『岐阜県会議日誌』の学校の補助費のくだりである

今一万五百園ヲ生徒数(五万三千四百三拾八人)ニ除スレハ一人ニ十銭弱ナリ

又四千五百円ヲ校数(六百六十四校)ニ除スレハ一校六円七十七銭強ニ当ル

10500円を53438人で割るのだから0.196...円、つまり19.6...銭を切り上げて「20銭弱」。

4500円を664校で割るのだから6.777...円、四捨五入ではないが、端数を切り捨てて「6円77銭強」というわけである

なお、ひとつ混乱する事実提示する。

明治29年『帝国辞典』の「弱」の説明

五以下の数をいふ、五以上を強といふに対せり、即ち、十一円五十銭以下を十二円じやくといふが如し。

それは何か違くね?

これは編者が数学用語を誤解しているの?

それとも元々はこの意味だったのを数学用語転用したということなの?

なんもわからんね。

Permalink |記事への反応(5) | 16:00

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記事への反応 -
  • 辞書の説明に頼り過ぎじゃないかなあ。 強/弱が定義と同時にできた言葉だというなら辞書の説明も当てになるかもしれんけど、おそらくはそうじゃないし。 おおかた、明治時代に漢語...

    • ちゃんと明治時代の用例から調べてるけど冗長になるから省略しただけだよ。 現在の用法の元になった数学用語としての「○○強」「○○弱」が端数の切り上げ・切り捨てを示すものと...

  • あんまり深く考えるなよ 気持ち少なめ、気持ち多めくらいの曖昧さを表す用法なんだし。 4分50秒とか細かく言うのが面倒臭いから、「だいたい5分」と言おうとしてるところ、5分を超え...

    • 深く考えずに運用するならそれでもいいけど、それなら「1時間弱は1時間ちょっと」と考える人にもぐだぐだ文句言うなよ、とは思うな。

      • はぁ? 「1時間弱は1時間ちょっと」って考えてる奴は単純に意味を間違ってるバカだからバカ扱いを受け入れろよ

  • 四捨五入じゃなくて29捨30入な。ブコメに書ききれんかったから結論だけ増田に書いとくわ

    • ワイも今、辞書を見に行ってみたけど 弱:[接尾]数量を表す語に付いて、実際はその数よりも少し少ないことを表す。数の端数を切り上げたときに用いる。「500人弱の聴衆」「20万円...

  • 震度5弱→5.0〜5.5くらい 震度5強→5.6〜5.9くらい 1時間弱→1時間+数分 1時間強→1時間+10分〜20分くらい 1時間半→1時間+30分 1時間半弱→1時間+30分+数分 1時間半強→同様   お金も、同様に100...

  • 俺たち馬鹿界隈では1000円くらい、って言ってる これだと800円から1200円の間をなんとなく表してる

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