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< 選挙っつ〜てもなぁ |anond:20250703032309 >

2025-07-03

梅雨の晴れ間、じっとりとした暑さが肌にまとわりつく昼下がり。ワイは流行りの波に乗ろうと、駅前スターバックスで新作のフラペチーノを手に入れた。メロンの果肉がゴロゴロ入った、見るからに甘くて美味そうな逸品や。

「いやー、これは大当たりやろ。チノちゃんに見せたら、少しはワイのこと見直してくれるかもしれん…!」

淡い期待を胸に、ワイはラビットハウスへの道を急いだ。店の前に、小さな人影を見つける。チノちゃんや。彼女は店の前の植木に水をやりながら、気難しそうな顔で街並みを眺めていた。

「チ、チノちゃんこんにちはやで!」

ワイは努めて明るく声をかけ、手にしたプラスチックカップを掲げて見せた。

「見てみ!スタバの新作!すっごい美味そうやろ?」

その瞬間、チノちゃんの動きがピタリと止まった。彼女ゆっくりと顔を上げ、ワイの掲げたカップ…その緑色ストローと、見慣れた女神ロゴを、虫ケラでも見るかのような目で一瞥した。

「……なんですか、それは」

温度のない声が、アスファルトに染み込むように響く。

「え?いや、やからスタバの…」

「その、砂糖と人工香料とショートニングを混ぜ合わせただけの、家畜の餌にも劣る代物を、わざわざ私の店の前で見せびらかしに来たと?」

「か、家畜の餌て…!そんなことないやん!美味しいんやで、これ!」

ワイが必死反論すると、チノちゃんは持っていたじょうろをカラン、と地面に置き、一歩ワイに近づいた。その小さなから発せられる威圧感に、ワイは思わず後ずさる。

「美味しい?あなたの味覚は、インスタ映えという名の情報汚染に完全に麻痺しているんですね。そもそも、あのチェーン店の豆は過剰にローストすることで品質の悪さをごまかしているだけ。そんなものに『コーヒー』を名乗る資格はありません。あなたは、コーヒー文化のものへの冒涜に加担しているんですよ。分かりますか?」

早口で、淀みなく、一切の感情を排した声がワイの鼓膜を叩く。これが噂に聞く「レスバ」か。反論余地が1ミリも与えられない。

「で、でも、みんな飲んでるし…流行ってるし…」

情けない言い訳が口から漏れる。それが最後の引き金だった。

チノちゃんは、フン、と鼻で笑うと、ワイの手からフラペチーノをひったくった。

「あっ!」

次の瞬間、ワイの目の前でメロン味の夢と希望が宙を舞い、ビシャッ!という無慈悲な音と共に地面に叩きつけられた。鮮やかな緑と白の液体が、汚れたアスファルトに無残な染みを作っていく。

呆然と立ち尽くすワイ。

チノちゃんスカートについた飛沫を軽く払うと、静かに言い放った。

「『みんな』と同じことをしていれば安心ですか。主体性のない、典型的な『チー牛』の発想ですね」

「……ひどいやん……あんまりや……」

涙目になるワイに、チノちゃんは店の扉を指差す。

「さあ、中へどうぞ。本物のコーヒーとは何か、その腐った舌に叩き込んであげますから

その目に宿る光は、喫茶店の店主のものではなかった。有無を言わさぬ絶対者の光だった。ワイは、砕け散ったフラペチーノの残骸に黙祷を捧げながら、震える足でラビットハウスの扉を開けるしかなかった。

Permalink |記事への反応(0) | 04:22

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