某ゲーム機の転売を転売ヤーから買った疑惑のタレントを見ていると、まだ若かった頃、明らかに同じ様な気質がある友人と付き合いがあった時のことを思い出す。一人で抱えている事がたまに辛くなるので、この場を借りて昇華したい。
その友人は大炎上した事がある。某匿名掲示板で燃えていた。実名も経歴も晒された。今だから言うが正直ここまで火が大きくなったのは自業自得である。
当時カラオケの映像をネットにアップする機能が追加されたばかりの頃で、友人はそこでランキング上位に居た。
その事実に私は驚いた。正直に言うが、友人はそんなに歌が上手くない。細いからかお腹で声がしっかりと支えられていないし、所々変な所で裏返る。音もちゃんと取れていない所もある。お世辞にも上手いと言えない歌声だったが友人は常に自信満々で、私や他の友人にも動画を投稿したからいい評価をしてくれとねだってきた事がある。お世辞でもいい評価をするのはどうなのだろうというレベルだったが、まあ趣味なら良いだろうと思っていた。どうせ身内位しか見ていないだろうと高を括っていた。けれど、この時にフレンド登録をしたことを後悔することになるとは思ってもみなかった。
友人がランキング上位になってから、掲示板では友人の自演投票を疑う人が増えたと本人から聞いた時は、なんだそりゃくだらないと思った。そのシステムは複垢を作って自分に投票すれば、幾らでもランキングを上げられる、ざるのようなものだったらしい。本気の人には悪いが、それに本気になるのもどうなのだろうと思う適当さだ。正直カラオケの点数も、上手くなくてもコツをつかめば上げられるものだろう。
しかし正直に言うと、私も友人があの歌声でランキング上位になる事に疑問しか無かったし、私にしつこく投票してくれと頼んできた熱意を思い出すと、やりかねないなと思った。なんの証拠も無いので、ただの勘でしかない。それでもやりかねない雰囲気はあった。
彼女は自分の経歴や、見た目について並々ならぬプライドがあって、隙があれば自分の話ばかりするから、反面自信がないんだろうなと感じていた。褒められたい欲求が無ければ、自慢なんてする必要が無いからだ。ありのままに評価される事が我慢ならない人間だと、この時には大分わかっていた。
専用の掲示板の事を私は存在すら知らなかったし、そして友人にもこれからは見なければいいと言った。見なければ何の問題もないし、無いのと同じだから。それから暫く動画をとったりしないほうがいいとも言った。暫くアカウントにログインもしないほうがいい。少し考えればわかることだ。私以外にもそう助言や忠告する人は何人かいた。
それでも友人は全く聞かなかった。こっそり自分を擁護する動画をとったりして、更に火を大きくした。そして何故か掲示板に私の偽物まで現れたらしくて、私に書き込んでないよねと聞いてきたりした。私は勿論書き込んでいない。見てみると確かに私のアカウントのネームを使った、幼稚な書き込みがあった。多分登録した年数がかなり古いので、なりすましに使われたのかもしれない。書き込んだ人は誰かはわからない。
それからも友人はやめろというのに掲示板を見るのをやめなかったし、あまりに事態が悪化するので仕方無く経緯を見ていると、客観的に見ても明らかに挙動がおかしかった。自分を擁護する書き込みはしていないと言いながら、顔を隠してよくわからない動画をとったり、それを脅されてとったのだと言う。誰に脅されるんだと言う話だが、元カレだとか仲が拗れた知人だと言う。私は顔も見たことが無い。更には消した筈のアカウントも作り直してまた動画をとる。すぐにバレて火は広がり続ける。正直何がなんだかわからなかった。すべての関係性を覚えたくもなかった。
けれど、友人が自分の妄想を本当だと思いこんで暴走していることだけはわかった。
友人の中では、自分は誰もが愛らしいと思う美少女で、凡人が羨む歌ウマで、才能のある自分は嫉妬されて貶められたということになっていた。はっきりと言うが事実とは著しくかけ離れている。友人は醜いわけではないが、決して誰もが羨む美少女ではないし、歌も上手くはない。それだけは紛れもない事実だ。だからその部分は妄想だと断言できる。
自演についてはもうわからない。やったという確証はないし、やったとしても確かな証拠はない。それに誰であってもシステムを提供されるだけの顧客は断罪する権利もない。その中で幾ら拗れようが断罪は出来ない。やれるとしたらシステムを作った運営だけだ。不正投票は回り回って、その機種の営業妨害になるから。
けれど、こういった妄想を本当だと世界を歪めてしまう人は、多分嘘を付いている自覚は無いのだと思う。だってその人の中ではそれが本当だから。客観的になんて見られない。所詮人間は主観の生き物だからだ。
私も自分が大事なのであまり詳しくは書けないが、同じ志を目指す同士ではあった。彼女の行動力は尊敬していたし、やる気も人一倍あった筈だった。けれど私は、他人の忠告を一切聞かない人と何かをするのは、無理だと思った。彼女の中にあるのは私達友人への心遣いや、やろうとしていることの成功を願う気持ちでは無いことがわかってしまった。そこにあるのは底無しの承認欲求と、可哀想な自分にかまってほしいという欲だけだ。そして本人にはその自覚がない。自覚する事も出来ない。救えるのは多分、心の専門家だけだろう。でも本人に自覚が無いから、病院の門を叩くこともしない。そうやって何度も同じ事を繰り返す。彼女にとっては自分こそが正常だから。
それからやんわりと、彼女とは知人になれるように振る舞い、今はもう何をしているかもわからない。
語っていないことの方が多いが、今でも承認欲求の為に何かを誇張し、それが嘘の領域まで来てしまう人を見るとこの時の事を思い出す。もうトラウマなんだと思う。そしてあの人達は多分、何を言っても変わらない。何らかの原因で自分の嘘を信じる事でしか生きていけない位、歪んでしまったからだ。そうやって自分の理想と現実の辻褄を合わせているつもりなんだろうが、何一つ合っていない。でもそれにも気が付かない。それを指摘されれば誹謗中傷をされたと被害者ぶる。本当に自分を思ってくれた人の忠告もひとまとめにしてしまう。その方が自分が可哀想で、都合がいいのだろう。
長く時が経って彼女がそのままの自分を愛せるようになっていればいい、そう綺麗事を言ってもしょうがない。私は見捨てたやつの一人だ。わかっていて、自分の身を守る事しかしなかった。面倒だったのだ、真面目に向き合うのが。だから、掲示板で誹謗中傷を書き込んだ他人と、大して変わらない。