日本ではなかなかこういう国家的に大きな事件を、大規模な作品として描くことは少ない。
一人の意見を聞くだけでは起きた事件について詳細は断片的になる。この映画のすごかったとこは、その場にいた多くの人に取材し、立ち会ってもらい、作品を完成させたことだと思った。
知っているようで知らなかったことが描かれている。それと向き合う必要が鑑賞者にはあると思う。
邦画といえば脚本が弱い。そうでないのもあるが、そうでないのは結構少ない。
その中でフロントラインはしっかりとした脚本を構築した。群像劇だがまとまっており、キャストが多い作品にありがちな「あの人の考えがわからない」ようなストレスは一切ないし、横道にもそれない。
脚本の完成度の高さは目を見張るものがある。そして船内などもリアルなのだがそれもそのはずで、本物で撮影している。クオリティーの高い映像はそのあたりの影響もあるだろう。
いろいろとこの映画の巧みな部分を語りたいのだが長くなりそうなので、どうしても言いたいことは、あのときから、いま現在も人命を救おうと働いてくれる人に感謝と敬意を持ちたいことだ。