CST複合体はDNA末端切除の選択を通じてDNA修復を制御する(2025年)Science
「この論文は、**DNA二本鎖切断(DSB)**の修復経路の選択において、**CTC1-STN1-TEN1(CST)複合体**が非常に重要な役割を果たすことを明らかにしています。DSBの修復は、エンド結合(NHEJ)か相同組換え(HR)のどちらかで行われるわけですが、その選択は53BP1軸と腫瘍抑制因子BRCA1-BARD1の拮抗的な活動によって決まる、とされています。
研究の結果、53BP1軸の主要な構成要素であるCST複合体が、**EXO1**と**BLM-DNA2ヘリカーゼ・ヌクレアーゼ複合体**によるDNA末端の切除を抑制することが示されました。しかし、CSTはこれら2つの酵素を異なるメカニズムで抑制するというんです。BRCA1-BARD1がCSTによるEXO1の抑制を解除する一方で、BLM-DNA2の抑制にはほとんど影響を与えないことが判明しました。
特に注目すべきは、DNA結合に欠陥がある、またはBLM-EXO1相互作用が損なわれたCST変異体を用いると、**過剰なDNA末端切除**が起こり、BRCA1欠損細胞が**PARP阻害剤に対して耐性を示す**ことが明らかになった点です。これは、CSTがDNA末端切除を抑制することで、BRCA1欠損細胞のPARP阻害剤への感受性を維持していることを示唆している、というわけです。
これらの発見は、CSTがDNA二本鎖切断の修復経路の選択において決定的な役割を果たしていることをメカニズム的に定義し、53BP1軸の機能不全に起因する**癌治療抵抗性の理解**に重要な示唆を与えるものです。まさに、この分野の進歩を大きく左右する発見と言えるでしょう。」