成長を終えた俺の部屋で、沖縄に渡った2021年10月当時のカレンダーは真っ青なピンに止められていた。
ピンには赤いネズミが掛かっている。腹に大きく白文字でBと書いてある。バカだ。大学の前で大量派兵されていた通信業者か何かのキャンペーンキャラクターだったはずだ。
卒業最後のバンド練習、3年と8ヶ月好きだった先輩にこれを持っていこうとしてたような、それは後世に付け加えられた脚色のような気がする。成人(大学4年生当時の基準で)を過ぎた男が、目上の社会人女性をそんなおもちゃで気を引こうなんて考えるの、バカだろう。この、腹を押すとキャンペーンソングを2小節歌い出すネズミよりバカだ。
しかし、そんなおままごとが罷り通ったら、このバカ赤いネズミはミッキー・マウスだったろうに。今の俺は、どうだ?俺をミッキー・マウスのようにマーチさせられるか?踊って、砕けて、浜の真砂と消え入るか?
底抜けに明るい島にいて、俺は穴グラを掘っている。主にストグラを視ている。暗い夜はたまに赤い雲がある。光の加減か、黄砂の色違いか、バカ赤ネズミの影法師か。
自分を省みて、もう少し腰を深く、振り子の足は早く、駄目だコサックダンスじゃ前に進めない。