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2025-05-09

本当の「エントロピー増大則」を小学生にもわかるように説明する

先に言っておくけど、真実を知ると、SF的な面白さなんか何もない、つまらない人にはつまらない話になる。

SF的な「面白い話」を期待している人は、以下を読んでも得られるものは何もないと思う。

これは、算数レベルに単純に説明できる、「エントロピー」の熱力学意味説明するだけの文章だ。

ファンタジー想像力より、正しい意味合いが知りたい理系学生(と賢い子供)向け。

 

理論的に正しい考え方をするために、まずは熱力学で扱う「熱機関」の原理ポイントを明確にし、これを噛み砕くことで「エントロピーの増大」とは何なのかを小学生でもわかるように説明してみる。

 

熱機関ポイント熱機関には『低温熱源』が必要

熱機関とは、蒸気機関などの「熱から仕事を生む」機械抽象的に表現したものだ。

カルノーサイクルで有名なカルノーは、この「熱から仕事を生む」が正確には「温度から仕事を生む」なんだということを初めて明確にした人。

 

簡単思考実験をしてみよう。

ここに、50℃のお湯を入れたビーカーがある。

このビーカーからまれ上昇気流は、『外気温が50℃のとき』と『外気温が0℃のとき』で同じか?

外気温が低い、つまり温度差が大きいときの方がより気流が生まれそうなことは、誰でもわかると思う。

「熱(温度差)から取り出せる仕事」とは、つまりこういうことだ。

熱機関を考えるときは、この『低温熱源』(多くの場合、外気)の影響を常に意識して考えることが大切だ。

 

熱機関における高温熱源(絶対温度T_H)からの熱移動をQ_H、低温熱源(絶対温度T_C)への熱移動をQ_Cとすると、

Q_C / T_C ≧ Q_H / T_H

という関係があることがわかっている。等号は理想的熱機関であるカルノーサイクルにおいて成り立ち、一般的にはただの不等号である

このQ_HとQ_Cには、熱機関における両熱源以外との熱移動がないと仮定すると、エネルギー保存則から

W = Q_H - Q_C

と言えることにも注意しよう。ここで、Wは熱機関のする仕事

熱機関効率的でないとき、Wが小さく⇔Q_Cが大きくなる(仕事をせずに熱が捨てられる)ので、最初の式は一般的に左辺が大きくなる。

 

先に結論から言ってしまうと、「エントロピーは増大する」とは、この「仕事をせずに熱が捨てられる」を言い換えたものに過ぎない。

そのことを、エントロピー定義から説明していく。

 

エントロピー定義エントロピーは『増加分』にしか意味がない

熱機関におけるエントロピー定量的定義(式)を知っている人がどれだけいるだろう。

それはほとんど算数理解できるほど単純なのに、みんな『曖昧文学的説明』ばかり好むから一般的には驚くほど知られていない。

 

熱機関におけるエントロピーの『増加分』ΔSは、

ΔS = Q_C / T_C - Q_H / T_H

計算できる。

この式が何を意味するのか?は、まだ考えなくてよい。

そもそも、これを見つけたクラウジウスさんも、それはわかっていなかった。

彼が考えたのはただ、ΔSをこう定義すると、前節の式からカルノーサイクルにおいてΔS=0、その他の現実的なサイクルにおいてはΔS>0になる、ということだけだ。

 

エントロピーSはこのΔSを熱サイクルのたびに足し合わせたものになるわけだが、実はこれには何の意味もない。

 

ΔS>0、すなわち「エントロピーは増大する」

よく「エントロピーは増大する」と、何か哲学的命題のように繰り返される。

実はこの言葉にはほとんど意味がない。

熱機関におけるエントロピー絶対量Sには意味がないので、意味がある数であるΔS、つまりエントロピーの増加分が0より大きいという話をしているだけだ。

 

理想的熱機関カルノーサイクル)においてはΔS=0、つまりエントロピーは維持される」が、普通無駄がある。

無駄があるとは、ΔSの式におけるQ_C(仕事をせずに低温熱源に逃げるエネルギー)がカルノーサイクルより多いということなので、一般にΔS>0。

まり、「エントロピーは増大する」。

 

この言葉意味はこれだけだ。それ以上のものは何もない。

理想的熱機関でなければ、Q_Cが無駄に大きくなる(熱が捨てられる)」ということを言い換えただけのものが「エントロピーは増大する」という言葉だ。

 

状態の乱雑さ」と説明されるエントロピーとは?

一方で、熱機関におけるエントロピーの増加分ΔSは、各熱源におけるエントロピーの移動Q/Tの差分とも解釈できる。

このQ/Tと計算上等しくなるのが「状態の乱雑さ」という説明表現される気体の状態量の変化だ。(複雑なので式は省略)

 

よく、部屋が散らかることを「エントロピーが増大した」などというが、正しくはエントロピーの増大則は「無駄な熱の移動」を意味するものであり、外から持ち込まれもので部屋が散らかるくらいのことは、「エントロピーが移動した」と表現する方が適切だ。

エントロピーは、エネルギーの増加により分子が取り得る「状態数の多さ」なので、部屋の中のものが散らかっていようと整頓されていようとそれは全て分子の取り得る状態ひとつに過ぎないとも言える。まあ、比喩意味を云々しても詮無いので深くは追及しないが。

 

単なる熱の移動は、仕事Wが0の熱機関とも言えるので、当然ΔS>0であり「エントロピーが増大した」と言えるが、仕事をしても無駄がある限りエントロピーは増大するので、この単純な熱移動だけをもって「エントロピーの増大」の説明とするのは混乱の元だ。

あくまで、エントロピーの増大則は、「無駄な廃熱のない熱機関はできない」ということを意味しているに過ぎない。

 

宇宙の熱的死」

エントロピーの増大則」「状態の乱雑さ」と関連して語られるのが、究極状態としての「宇宙の熱的死」という話だ。

エントロピーの増大により、最終的に宇宙全体の状態の乱雑さがピークを迎え、エネルギーが均一な「熱的死」に至る、というもの

これも実は単純化され過ぎた理屈で「エントロピー」に対する誤解を生んでいる。

 

かにエントロピーの増大則」は「熱的死」が避け得ないことの科学的な証拠だ。

しか証明根拠となることは意味することが同じであることとイコールではない。

 

エントロピーの増大則は、あくまで「自分自身エネルギー源となる熱(温度差)をロスなく作り続けられる熱機関と、そのエネルギーをまたロスなく利用できるヒートポンプ存在しない」ということだけを意味している。

仮に増大則に反してこれが可能であったとしても、それが即ち宇宙の熱的死が避け得る根拠にはならない。

エントロピーの増大則は、宇宙の熱的死に繋がる単純な事実証明に至るほど確実なもの)のひとつであるに過ぎず、他の現実的理由を上げれば限りがない。

 

エントロピーが増大するから熱的死が起こる」は、「いずれ死ぬからずっと健康はいられない」というくらいの大きな理論限界意味しているのであって、そのことからエントロピーの増大則」そのもの理解しようとするのもまた誤解を生む。

 

まとめ

以上の要点をまとめると、

となり、SF的な「凄い言葉」としてエントロピー解釈しようとするほど、エントロピーという単純な概念熱機関効率を考えるパラメータとしての数理的な意味理解から遠のいてしまうことになる。

SFって、科学技術に対する想像力を培うこともあるけど、こういう誤解を増大する負の側面もあるから困りものだね、と理系は思うのでした。

 

Permalink |記事への反応(2) | 23:22

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記事への反応 -
  • 何もわかってないクソボケが偉そうに講釈垂れるなカスが エントロピーの定義:エントロピーは『増加分』にしか意味がない ありまーす。エントロピーは状態量なので系の状態を指定...

  • 熱力学の教科書に書いてあることをまとめてるだけなのに、わけわかんないのが絡んでて笑う。 ネットの自称「物理学徒」ってマジで大学1、2年生の教科書も読んでないし読めない変な...

    • 教科書読んでちゃんと理解してたらあんな浅い間違いしないのよ。 反論出来ないから横田の振りしてトラバつけてるクソバカ元増田さん。 「完全に理解した」という段階ですらない...

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