まじで、こういう人いるんだな、と思ったのは、うちの会社のK先輩のことだ。
K先輩は私より年下だ。たしか、3歳下だったかな。でも、見た目も言動も、どう見ても私より年上に見える。っていうか、下手したら10個くらい上に余裕で見える時がある。だから、私たちは陰で「歳下ババア」って呼んでる。ひどいと思うかもしれないけど、なんかもうそういう形容詞がぴったりなんだよ。
例えば、朝のコーヒー。絶対マグカップじゃなくて湯飲みなんだよね。しかも、なんか柄がおばあちゃんちにあるようなやつ。デスクの上も、書類はピシッと重ねてあるんだけど、横に置いてあるお菓子がやたら渋い。黒糖かりんとうとか、大福とか。若い子が食べてるキラキラしたお菓子じゃないんだよ。
仕事の進め方も、妙に丁寧で石橋を叩いて渡るタイプ。そりゃ丁寧なのはいいことなんだけど、たまに「それって今そんなにじっくり考えること?」みたいな時があって、もうちょっとスピード感出せばいいのに、と思う。こっちが「これどうしましょう?」って聞くと、「うーん、これはねぇ、昔こういうことがあってねぇ…」みたいな感じで、謎の武勇伝(?)とか、過去の事例を延々と語り出す。それ、私が生まれる前の話じゃないですかね、先輩?って心の中でツッコミ入れてる。
飲み会の幹事とかやらせると、もう完璧主義炸裂で、お店選びから予約、当日の仕切りまで、無駄なくそつなくこなす。それはすごいなと思うんだけど、二次会のカラオケとか行っても、最近の曲全然知らないの。十八番が山口百恵とか河合奈保子とかでさ。いや、私も別にめちゃくちゃ詳しいわけじゃないけど、さすがにジェネレーションギャップ感じちゃう。
でもね。
なんだかんだ言って、仕事はできるんだよ、これが。地味なんだけど、ミスがない。細かいところに気づく。あと、誰に対しても態度を変えないというか、偉い人にもペコペコしないし、かといって新人にも上から目線じゃない。淡々としてるんだけど、なんか信頼できる。
私がうっかりミスした時も、「ドンマイ!次気をつけようね」みたいな軽い感じじゃなくて、「あー、これはね、ここをこうすれば防げたよ。次はこうしてみよう」って、冷静に、でもちゃんと改善策を具体的に教えてくれる。それが、なんか年上の頼れる上司みたいなんだよね。
最初は「なんだこの妙に落ち着いてる年下は…」って思ってたけど、一緒に仕事してると、ああ、この落ち着きとか、慎重さとか、経験に裏打ちされた物言い(経験って言ってもそんなに年上じゃないはずなんだけど)が、この人の強みなんだなって思うようになった。
「ババア」って呼んでるけど、それは多分、彼女の持つ年齢不詳の落ち着きとか、妙な貫禄に対する、こっちの照れ隠しみたいなもんなのかな、って最近は思う。