片頭痛持ちだと打ち明けると、「あ〜、わかる〜。私もたまに頭痛くなるタイプ〜」と気軽に返されることがある。うん、いや、うん、それはそうなんだけど……ちょっと違うのよ、たぶん。
目の奥がギュッとつかまれて、そのまま後頭部までずるずる引きずられるようなあの痛み。蛍光灯の光がナイフに見えてくるし、誰かの笑い声さえノイズに変わる。そう、世界が“うるさい”のだ。うるさくて、まぶしくて、重たくて、うんざりする。
そんな私が、ずっと憧れていたものがある。
でた、意識高い系の代名詞。なんなら「スタバでMac」よりも“できる感”が強い、あの2画面体制。だけど、まぶしい画面が2枚になるなんて、片頭痛持ちにとっては拷問でしかなくて、私にとっては夢のまた夢だった。
ところが最近、治療が効いた。予兆も減ったし、薬もよく効くようになってきた。ふと、思ったのだ。
「……もしかして、2画面、いけるんじゃ?」
思い立って、小さなサブモニターを買ってみた。ほんとに小さい、13インチ。慎重に、やさしく、まるで“新しい住人”を迎えるみたいにデスクに設置した。
結果。
使えた。ちゃんと、2画面を、使えたのだ。
Photoshopでメイン作業しながら、サブに参考画像。Googleドキュメントを開きつつ、もう一方で資料をめくる。あのときの感動ったら、「この靴、走れる!」って言いながらお気に入りのパンプスで駆け出すOLのCMくらいドラマチックだった。いや、ほんとに。
それまで、世界を避けるように、なるべくまぶしくないところで、なるべく小さく生きてきた。眩しさを遮るためにサングラスをかけ、通知を切り、なるべく音を閉じて。調子のいいふりをするのも、あきらめるのも、どちらもそれなりに疲れる。
だからこそ、この“画面がふたつある”というだけの、ささやかだけど革命的な変化に、ちょっと泣きそうになったりもする。
治療で良くなったから、ようやく「ふつうの人が当たり前にしていること」を私もできるようになった。ただそれだけなのに、「できない」時間が長かったぶん、ちょっとしたことがとても眩しい。
だけど、たぶんそれは悪いことじゃない。
ふつうが当たり前じゃなかったことを知っているからこそ、いまの“ちょっとラク”がちゃんと嬉しい。
2画面モニター。ぜいたくなんかじゃない。ただ、ずっと遠かっただけ。