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2025-04-14

花畑チャイカ出会ってやっていけると思った話

3回目の休職の終わり頃、地元新幹線ホームで私は俯いていた。

きつい西日にじりじり焼かれる不健康な白い腕が、ほとんどのポケットと相性の悪い、重たいiPhone 13 ProMaxを支えていた。

通算すれば半年ほど休みを貰っていたにもかかわらず、エネルギーは常に枯渇していて、喉と胸がいつもチクチク痛かった。

平日の日中は、実家リビングソファに寝転がって、ひたすら人がたくさん死ぬ映画アニメを見て、耐えがたい出来事を思い出し、ひとりで過呼吸を起こして繋がることのないいのちの電話を鳴らした。

親に見つからないようにこっそりと買い集めた「いつでも現世から逃避できるよキット」を眺めては、悲しいとか怖いとか辛いとか、そういう感情を置いてけぼりにして溢れてくる涙を流して今日が終わるのを待つ日々が続いた。

メメントモリすぎである

あの頃、私の傍には常に死があった。

ある時、タイムラインで誰かがリポストした、Vtuberの切り抜きを見た。

もともとアイドルがたくさん出てくるソシャゲ出身自分からすれば、リアルタイムで動く3D素体は荒っぽく見えた。

画質が悪くなったり、ありえない方向に腕が捻れてしまったりする彼らは、画面の向こうで声を張り上げ、大げさに笑い、床に転がり、また笑った。母が夕食時に好んで見ているような、毒にも薬にもならないバラエティ番組の真似事だ。

調べてみると、彼らはROF-MAOというVtuber4人が組んだユニットで、週一回決まった時間20前後動画投稿しているとのことだった。

かにくだらなくはおるものの、彼らには不思議な魅力があった。沢山のくだらないの中に、今でも正体のわからない、なにかきらきらしたものがあった。

私は多分、そこに共鳴したのだと思う。

私は、この週に一度の投稿を、自分目標とした。それは、友達も居らず孤独だった子供時代、好きな児童文学作品の続きが出る日を心待ちにしていた頃と同じだった。

そうやって、一週間、二週間、半月、一か月と寿命が延びた。

人がたくさん死ぬ作品の代わりに、配信の切り抜きなど、ROF-MAOメンバー投稿しているものを見るようになった。

正直なところ、おもしろいとは思わなかったが、無音は孤独を思い出す。

私はBGMのように、彼らの動画を垂れ流した。

そのうち、コラボ配信で一緒になった他のライバー配信も追うようになり、ジョー力一(じょーりきいち。りきいちは漢字だ)のラジオに辿りついた。

力一は、ピエロのような風貌をした男性のライバーVtuber所属する事務所にじさんじでは配信者のことをこう呼ぶみたい)がひたすらに無い話をするラジオ

アンパンマンキャラクターとして転生するならどうサバイブするかの話を真剣にする彼の姿を見て、私は久しぶりに声をあげて笑った。笑った後に、ちょっとだけ泣いた。

私は、三回目の復職を決めた。

笑えたか大丈夫、とまでは思わなかったけど、いつまでも現状に甘えているわけにはいかない。

貯金は底が見えていたし、私のかなしみは田舎より東京の方が紛れる気がした。

東海道新幹線静岡を横断するとき電波が悪くなる。

私はホームで俯きながら、泣かないための、なるべくくだらなくて、できれば笑える、を基準動画吟味してオフラインでも見られるようにダウンロードをしていた。

そのうちの一つが、舞元啓介主催のローションカーリング選手権だった。

舞元が、有志を募って(?)行った、ローションまみれのコマ(もちろんライバーである)がカーリングコースを滑り、お尻の位置得点になるという催しだ。

私は迷わずダウンロードした。

そして私は出会ったのだ。女装したデカエルフ花畑チャイカに。

グリーンの唇、バレッタで留めた黒髪、あからさまに男性の体格であり全然着こなせていないメイド服

彼の姿を一目見たとき、我が目を疑った。彼こそが運命だと思った。したことないけど、ひとめぼれとは恐らくこんな感じなのだろう。

舞元のことはジョー力一と共同でやっているラジオ舞元力一で知っていたし、叶も有名人から知っていた。剣持刀也と加賀美ハヤトは言わずもがな、その時点で大変お世話になっていた。

しかし、チャイカ存在は知らなかった。

私はローションカーリング選手権で初めて、花畑チャイカ認識したのである

彼の見事なまでに珍妙な滑りに、私は季節を忘れた。

衝撃だった。自分の背丈くらいの大きさの空気砲でドカンと打たれたら、あのときの衝撃が再現できると思う。

ただひたすら、私は大きな画面を見つめた。間違えて買ってしまったiPhone13ProMAX感謝した。

気が付いたら私は新幹線座席に座り、普段はあまりしないマスクの上から口元を抑えて笑ってた。呼吸困難になるほど、声を殺して笑った。

笑いながら目的地に運ばて、私は今度こそやっていけると思った。

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