4月1日。
春にはふさわしくない、寒くて大雨の降る日だったことを今でも覚えてる。
入社式が始まっても一向に現れない君。
電話しても通じない。
人事担当の私は気が気じゃなく冷たい雨の中君の到着を外で待っていたら、30分以上遅れて、お母様の運転する車でやってきたね。
車を降りるや否や、君が発した言葉は「遅刻しましたごめんなさい」とかではなく、「傘入れてもらっていっスか?」。
あっけにとられてる私を見ながら、次に言ったのは「ご迷惑をおかけしました」とかではなく、「お母さんが寝坊して起こしてくれなくて。。。」。
私も「。。。」ってなったよ。
動乱の予感を感じた、冷たい春の雨の日だったね。
4月2日。
配属部署を告げる副社長に、「オレ、そういうのやってないんで。」と言ったね。
4月3日。
4月4日。
お母様が手配した退職代行業者から、退職する旨のご連絡をいただいたよ。
巣立つ君へ 言葉を贈る。
しかもおまえ、2日目来た時に「一番近かったから」って理由で”社長車専用”ってぶっ太い黄色の字で書かれた駐車スペースにとめやがったな。
ショッピングモールでたまたま入り口付近で見つけた駐車スペースにとめる感覚で社長専用の場所にとめてんじゃねぇよ。
そば専門店で「うどん!」って注文した客に向かって「ウチ、そういうのやってないんで。」なノリで辞令にタテついてんじゃねぇよ。
今日は、君のかつての同僚だった子たちは、名刺交換の作法を覚えましたよ。
動作こそまだまだぎこちないけれど、所作は正しく美しく、お取引様の前に出しても恥ずかしくない出来です。
まだ名刺交換ができるようになっただけですが、これからもっともっと、色々なことができるようになっていく頼もしい存在です。
もうきっと、いえ絶対二度と、お会いすることはないですが、例えば10年後に何者になったのかを知ることができたら、嬉しいです。
よかったね、
まさに君のためにあるような世の中だ。
1. コネ入社 2. 人事が無能 3. 人事を惑わす奇才 どれ?