むかしむかし、桃から生まれた男の子、桃太郎がいました。彼はその力強さと優しさで村人たちに愛され、成長しました。しかし、鬼ヶ島に住む鬼たちは、村を何度も襲い、村人たちを困らせていました。桃太郎はそんな鬼たちを討つ決意を固め、犬、サル、キジを仲間にして、鬼ヶ島へと旅立ちます。
鬼ヶ島で、桃太郎と仲間たちは鬼たちと戦い、ついに鬼の首領を倒すことに成功しました。だが、勝利の後、帰り道で桃太郎は不安を感じるようになります。おばあさんがどうしてもどこか冷たく、そして急に不自然なほど元気がないからです。
「おかえり、桃太郎。よくやったわ。」おばあさんの笑顔はどこかひきつっていて、桃太郎はその異常さに気づきませんでした。
だが、すぐにその真相が明らかになります。鬼たちが突然現れ、桃太郎を囲みました。そして、おばあさんは冷酷な言葉を口にしました。
「桃太郎、もう用済みよ。あなたが持ち帰った宝物は私のもの。鬼たちと共に、これからはこの村を支配するのよ。」
その瞬間、鬼たちに捕まった桃太郎は、もう後戻りできない運命に引き込まれました。
桃太郎と仲間たちは鬼たちに捕まり、鬼ヶ島へ連れ戻されました。サルはいつも通りにポジティブな言葉をかけ続けました。
「桃太郎さん、絶対に大丈夫っすよ!だって、桃太郎さんならどんな困難でも乗り越えられるっすから!」
だが、桃太郎はもう力を失いかけていました。仲間の犬も、キジも、そして桃太郎自身も、戦い疲れ、心身ともに衰弱していました。食事もろくに与えられず、寝床も悪条件の中、精神的にも追い詰められていきます。
サルはその中でも、変わらずポジティブな言葉を発し続けました。「すっごいっす!桃太郎さん、きっとこの苦境を乗り越えられるっすよ!次こそ絶対に勝つっすから!」
しかし、桃太郎はその言葉に答えることなく、ただ目を閉じ、静かに息を吐きました。犬もキジも力なくうなだれ、サルだけがその場に残り、ひとりで明るく言い続けました。「大丈夫っすよ!桃太郎さん、絶対にできるっすから!」
その日々が続くうちに、桃太郎たちはますます衰弱していきました。おばあさんは、もはやその存在すら気にせず、鬼たちとの支配体制を固めていきました。桃太郎はもはや動けなくなり、鬼たちに用意された牢屋の中でひたすらじっとしていました。
最期の時
最終的に、桃太郎の体力は尽き果て、息が細くなっていきました。サルはそれでも、いつものように明るく言いました。
「すっごいっすね!桃太郎さん、最後まで最高っすよ!絶対にきっと、良いことがあるっす!」
だが、桃太郎はその言葉に反応することなく、ただ目を閉じて静かに息を引き取りました。サルはその場で立ち尽くし、ポジティブな言葉を繰り返しながら、涙をこらえていました。
「桃太郎さん、すごいっすね…本当にすごかったっす…」
だが、その言葉はもはや誰の耳にも届くことはなかった。サルのポジティブな励ましは、空虚に響き渡るだけで、誰にも届かないまま時が過ぎていきました。
桃太郎の死後、鬼たちとおばあさんは村を支配し、村人たちはもはや反抗する力もなく、ただ静かに従うしかありませんでした。サルは今もなお、桃太郎が生きていた頃のように、ポジティブな言葉をかけ続けますが、その言葉がどれほど空しく響くか、誰もが理解していました。
そして、サルはひとり、あの言葉を繰り返しながら、日々を過ごしていきました。「桃太郎さん、きっとどんな状況でも、最強っすよ…」
その言葉は、もはや誰の耳にも届かず、ただ風に消えていった。