まともに見たら多分病む。
この映画の監督、絶対に病んでる。そうじゃなきゃ、ダニのあのメンヘラっぷりをここまでリアルに描けるはずがない。多くの人は「頭おかしい映画だな」と俯瞰して見るかもしれないが、自分にとっては他人事ではなかった。ダニの不安定さが妙に理解できてしまったからだ。フィクションでありながら、人が抱える問題を形を変えて描いているように感じた。
ホルガのカルト集団についても、その成り立ちや教義の背景が気になって仕方がない。彼らは自他の境界を曖昧にし、一つの生命体のように生きている。現代社会が「個」としての生き方を求めるのとは対照的で、その違いに強烈な違和感を覚えた。しかし、幼少期に歪んだ愛を向けられてきた自分としては、そんな共同体の在り方にほのかな憧れや癒しを感じてしまった。だからこそ、カルトのようなものがなくならないのだろうと妙に納得してしまった。
72歳になったら飛び降りて死ぬという風習も、終わりが決まっているからこそ、自分の時間を大切にできるし、周りも介護から解放されるという点で理にかなっている。しかし、それを倫理的に考えると完全にアウトだとも思う。介護を受けてまで生きることに疑問を抱いていた母のそばで過ごしてきた自分には、その価値観に対して少し歪んだ視点を持っているのかもしれない。
また、個を否定し、古い慣習に疑問を持たず生きるホルガの人々の姿は、正直気持ち悪かった。自分という存在を持たず、共同体の一部として生きる姿に恐怖すら感じた。しかし、それを完全に否定できなかったのも事実だ。個を重視する現代社会では孤独や不安を抱えるのが当たり前だが、ホルガでは苦しみすら共有される。その姿に、どこか安らぎや理にかなったものを感じてしまったのかもしれない。