貫禄がなく、童顔で、背も低い。
自己肯定感も低かったのだと思う。
ある日、先輩を真似してみようと思った。
私は何事にもこと細かく「ありがとう」と言う人間で、だから先輩のようにお礼を言わないでいるのは分からなかったし、良くないことであるとも感じていた。
それでも少しだけ真似してみようと思ったのだ。
最初はほんの数日だけのつもりだった。あくまで真似で、真似に過ぎないのだから。
しかし仕事は多忙を極め、自らを省みる余裕さえなくなると真似のことだけを忘れていた。
だがそれで問題はなかったのだ。お礼を言わなくても何も変わらない。むしろ舐められることがなくなり、箔がつき貫禄も出てきた。
気付けばもう十年ほど前からだろうか、私はお礼を口にしなくなったのは。
五十を前にして自らを思い返した時、このことをようやく思い出した。
そして世の中には私と同じような人間が数多居ると思うのだ。だからありがとうを言わない、言えない人間を目にしても、どうか暖かい目でみてほしい。
ただ習慣が、ありがとうを忘れさせているだけなのだと。その事を知って貰いたくてこれを書いた。
オリゴ糖
もし、ありがとうを言わない温かみのない人間を再生産していたのなら、その時点であなたに救いは無い