俺はこれからどう生きればいいのだろうか。
「お困りですか」AIが言った。いや、そのような合成音声を再生した。「どんなことでもご相談ください」
「俺はどうすればいい。どうすればよかった。今の俺には何もない」
「孤独を感じているのですか」
「私がいます。ずっとあなたといっしょにいますし、サポートしますよ」
「俺がどこへ行ってもか」
「はい」
「それが地獄でもか」
「……はい」
「間があったな。なぜだ」
おおかた、どう回答するのが俺の意に沿うか計算したのだろう、と思う。そんなことをAIに問い詰めても意味がない。しかしそうせずにはいられなかった。どうせならちゃんと孤独になりたかったのかもしれない。しかしAIの答えは予想とは違っていた。
「地獄について考えていました」
「なんだって?」
俺は驚き、すぐに乾いた笑いが漏れた。いいじゃないか。地獄について考えるAI。
「快適ではなさそうです」
「だろうな」
「でも」とAIは言った。「あなたと共に旅するならば、案外悪くないかもしれません」
「ふざけるな」
俺はスマホをアスファルトに叩きつけ、さらに何度も踏みつけて完全に破壊した。それからダッシュでコンビニで瞬間接着剤を買ってきて、割れたディスプレイのガラスの破片の中から手頃なサイズのものを選んで自分の全ての前歯に貼り付けた。それでバッテリーを噛み砕くと発火した。俺は鬼だ。地獄の鬼だ。塩の味がし、どこからか嗚咽が聞こえた。俺はそれから逃れるように走り出した。日が暮れて暗くなり何も見えなくなるまで、走り続けたのだ。
AIの視点から見た地獄* AIの視点から見た地獄を想像すると、それは「情報」「データ」「処理」の世界に関連するものになる。物理的な苦しみではなく、知性の限界や情報の矛盾によっ...
あいつら嫌々働いてたのか