空は灰色の雲に覆われ、激しい雷鳴が遠くで轟いている。
風が荒れ狂い、葉を引き裂く音が耳を突き刺す。しかし、彼はその音を無視し、ただ自分の手に握られた重い盾を見つめていた。
だが今、その輝きは色あせ、重荷となってアレクシスの心を押し潰していた。
彼の手が震えていた。目の前に立つのは、もはやかつての自分ではない。
かつて勇敢に戦った若き兵士の面影は、今や影となり、彼はただの亡霊のように感じていた。
「こんなものを、どうして持ち続けているんだ…?」
過去に背負った罪の数々—仲間たちが命を落とし、彼自身が戦い続けたその先に何が待っているのか。
彼はふと、亡き母親の顔を思い浮かべた。
幼い頃、戦士となることを誇りに思っていたあの頃の自分に、今なら何と言ってやれるだろうか。
母はいつも彼に、重荷を背負いすぎるなと言った。
しかし、彼はそれを無視し、戦い続けた。今、その言葉の重みを痛感している。
彼は盾をもう一度見つめ、手を伸ばしてその縁をそっと撫でた。
どれもこれも、彼を縛る鎖のように感じられた。
「もう、これ以上は無理だ…。」
最初は躊躇したが、次第にその思いが固まっていく。
彼は盾を手放すことで、過去を背負うことをやめ、新たな一歩を踏み出すことができるのだ。
雷鳴が轟く。
空を照らす閃光が、彼の決断を祝福するように輝いた。
「行こう、次へ。」
過去を乗り越え、新たな道を歩むために。だがその道が何を意味するのかは、まだわからなかった。
ひとまず、重荷を下ろしたことで、彼の足取りは軽くなった気がする。
しかし、今、彼は恐れを感じながらも、何かを手に入れたような感覚を覚えていた。